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20歳 金ヶ崎の撤退戦3
その夜は何事もなく無事に朝を迎えた。
信長様は、部落の男たちに丁寧にお礼をいい、
京都への道も聞いていた。
人目を避けるため街道は使えないので、
所謂、獣道での山越えの方法だ。
こうして、部落を渡り歩き着々と京都に向かっていった。
しかし、整備された街道と違い進むのに時間がかかる。
いちいち方向を確かめつつ、足元も悪いなかを歩くのだ。
もちろん、こんな道を行くのだから軍隊での移動はない。
最初に泊まった部落の時点で、他の部隊に割り振った。
面子は、信長様、森蘭丸、柴田様、そして俺と、太助を含む従者が5人のみだ。
しかし、時間はかけた分だけ特に敵に襲われることもなく、
京都の近くまで来ることができた。
その日は、山の中にポツンとあったボロボロの寺に泊まることにした。
信長様は、
「たのもー」と大きな声で叫ぶと、
継ぎはぎだらけの袈裟と法衣の痩せた坊主が出てきた。