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01 仕事、辞めたい


「あぁ、仕事辞めてぇー」


 駅前のベンチに座り込んで、うなだれる。


 この嘆きも、今週で何度目だろう?


 別に好きで営業職になったわけではないし。


 毎月、残業が百時間を下回ったことがないし。


 土日も関係なく仕事させられるし。


 どんなに頑張っても上司は評価してくれないし。


 後輩がやらかしたトラブルは押し付けられるし。


 愚痴を言い合える同僚もいないし。


 ……あれ? 俺、どうしてこんな会社に勤めているんだろう?


 本気でわからなくなってきた。


 辞めてしまおうか?


「でもなぁ」


 いまさら転職するのも面倒だ。


 新しい仕事を探すなんて、疲れるに決まってる。


 ただでさえ疲れ果てているのに、そんな面倒なことやっていられない。


「せめて休みがほしい……」


 これに尽きる。


 たまに休みがあっても、疲れが溜まっているので一日中眠っているだけ。


 ちゃんと休日を満喫したい。


 そのためには、まとまった休みが必要だ。


「神でも仏でも、誰でもいいから俺に休暇をくれ」


 つぶやいた直後だった。


 地面が崩落したのは。


 何が起きたのか、すぐには理解できなかった。


 俺が座っているベンチを中心にして、地面が陥没し始め、一瞬にして巨大な穴が生まれた。


 突然のことに、逃げるヒマもない。


 俺はそのまま深い穴へと飲み込まれていった。




「ん……んん……?」


 目を覚ますと、そこは知らない場所だった。


 石積みの建物の中。


 祭壇のような場所で、俺は横になっていた。


 病院、ということはないと思うが。


「ここは?」


「あっ、目が覚めましたか!?」


 近くに誰かいたらしい。


 俺が声を漏らすと、慌てて駆け寄ってくる。


 起き上がりながら声がしたほうに目を向けてみた。


「なかなか目を開けなかったので、心配してたんですよ」


 そこにいたのは、少女だった。


 小柄で、セミロングの黒髪。


 ハーフなのか、少し外人っぽい顔立ちをしている。


 年齢は十代後半といったところだろうか。


 その子の頭には、ずいぶんと高価そうなティアラが乗っている。


 幼い少女には不釣り合いな印象がある。


 けれど、それ以上に違和感があった。


 彼女の服装だ。


 鮮やかな桃色を基調としたドレス。


 頭のティアラもあって、まるでどこかのお姫様のようだった。


「えっと……君は?」


「あ、申し遅れました。私はアイリス・ティア・アトリア。アトリア国の王女です」


 本当にお姫様だった。


 しかもそのお姫様は満面の笑みを浮かべて、予想外なこと言い放つ。


「これからよろしくお願いしますね、勇者様!」


「……勇者?」


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