困惑、疑念、そして畏怖
「…は?」
ステータスを見たノマはマヌケな声を上げる。
「あれ? 足りなかったかな? これでも結構頑張ったんだだけど。」
僕の予想としては喜んでもらえるか、もしくは力を手に入れて復讐に燃えるか。
どちらに転んでも僕としては構わない。
でもやっぱりスキルレベルが1のままっていうのは足りなかったかな…。
できなくもないけど、
「あんまりやりすぎるとノマが壊れるからね。」
力を上げすぎて寿命が短くなった例もあるし。それが初代勇者。
しかもそれで世界にも傷がついて、そのせいで今もなお【勇者】と呼ばれる存在が生み出される。
…まあ、初代に比べたらだいぶ劣化されてるけど。
「…は、ははは…っ。この力、この力があれば…!!!」
長めの前髪をクシャリと握りながら顔を覆うノマ。
きっと今のノマの頭にはこれからのビジョンが描かれている事だろう。
「うんうん。その力を鍛えればあんなエセ勇者なんて、赤子の手を捻るも当然だね。」
あの高潔な勇者の力がこんな風になるなんて、僕も気にくわない。…まあ、ノマも勇者らしいかと言われれば違うのだけれど。
僕がそういうと、ノマの視線がこちらに向く。
「…これだけの力だ。代償は、…。」
あー、そういえばそんな事言ったね。雰囲気で。
力を授けるのに代償はいらない。普通の人間ならまだしもノマは勇者。器は整っていた。