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始まり

私はバス停で次のバスが何時来るか確認していた筈である。そう、突き出された人差し指が語っていた。しかし今、その指が示す場所に時刻表も無ければ道路ですらない。足元は赤い絨毯。顔を上げると王座の様な立派な椅子に座り此方を見ている何か。そう鎧。しかも中身がある。というか顔は出ている。ただそれ以外は全身真っ黒な鎧で覆われ杖の様な前にある柄に手を乗せているマント男。まあ経験はないけど豪華なホテルのロビーとか豪華客船のダンス会場的な広さの場所にいた。訳も分からず更に顔を上げた数分前の自分に見るなと言いたい。そこにはまるで蜘蛛の足が生えた女性の様なものが数体天井に貼り付いていた。


「◇▽☆◇▽☆、◇▽☆」


何か椅子に座った鎧さんがこっちに話しかけた。でも聞きなれない発音。英語ではなさそう。首を傾げていると鎧さんの横に水色の髪の女性が現れてトレイの様な物に何か乗せて向かってくる。


「◇▽☆◇▽☆◇▽☆、◇▽☆◇▽☆」


差し出されたトレイには指輪が1つ乗っていた。手招きで「どうぞ」という仕草に思わず手に取ると彼女が自分自身の指を右手で摘み、指輪を付ける動作を繰り返した。言われたとおりに左の中指に通すと誂えた様にぴったりとハマった。


「どうだ言葉が分かるか?」


「えっ、あっ、はい」


「それは、ティマーリング。異種間の言葉の壁を取り払ってくれる。まあ、本来の使い方と異なるがな」


「はあ?」


「さて、我を助けよ。異界の者よ」


どういう事?異界?ここって異界なの。異界の者って私の事だよね。断ったらダメかな?そう思った時、視界の隅に入った蜘蛛女の目が光った様な気がして「ああ、断ったらダメな奴だ」と内心呟いた。アレでしょ。王国の危機に異世界召喚魔法で呼び出されて世界を救え勇者よ的な、その位は予想出来るし理解も出来る程度にその手の話は好きよ。自分じゃなければだけど。


「あのぉ・・・私、戦闘的なものはちょっと」


「ああ、安心しろ。そんな期待はしていない」


「では、なにを?」


「我が悩みを聞き意見を聞きたい。異界とは言え人間の考える事が我は知りたい」


「はあ。わかりました。私で良ければ」


「助かる」


それから私は指輪を運んで来た女性に、ある1室に連れて来た。長い廊下と幾つもの部屋を過ぎドアを開けた場所に入るとベットと机、そして入り口付近にある甲冑を見てドギマギしていると彼女が話しかけて来た。


「此方を自由にお使いください・・・何と御呼びすれば宜しいですか?」


「え、愛奈。細井愛奈です」


「では愛奈様、失礼いたします」


頭を下げた彼女が不意に斜め後ろに、そのまま視線を向けて少し体をビクッと動かした。


「うむ。失礼する」


ドアの後ろから現れたのは王であった。


「出かけるなら、その鎧を着用する事を義務付ける事を言い忘れたのでな」


彼は黒い鎧を呼びさしていた。


「こ、これをですか?」


私は鎧に近づき持ち上げようとして「む・・・無理です」と言ったが、有無を言わさぬ態度で王は隣に視線を向けて指示した。


「セフィー手伝ってやれ」


「はっ」


あれよあれよの内に着替えと言うか装備させられていた私は、「はい。此れで終わりです」と兜を被せられた途端に真後ろに倒れ込んだ。そしてまるでひっくり返った亀の様にジタバタと暫らくして力尽いた。


「重すぎて動けません」


「なに?セフィー」


彼女は私を引き起こして座らせると兜を取ってくれた。


「重い・・・あああ、重量の事かセフィー。これは重いのか?」


「いえ、片手でも持てますが?」


無茶苦茶な!こんなの着て動けません。


「あのぉ。これ着ないとダメですか?」


私の質問に王は暫らく黙り込む。


「余の関係者と一目で判る。そしてある程度の防御力を有していなければ、おそらく死ぬ事になるだろう」


何故ならと説明された内容は、まず魔族は例外なく人族を敵と認識している。特に恨みを持つ者も少なくない。そして我を排する動きを見せるものもゼロではない。まず帝都内では、そう言った輩は陰に潜む現状、それら全てを排除する事は余にも難しいのが現状だと言った。


「ならば・・・せめて材質を変える事は出来ませんか」


「材質・・・ん。成分の事か、その鎧は主にオスミウムと呼ばれる物で構成されているが、ふむ」


王は大きく頷いた。


「しかし、他の物では強度が・・・ふむ。最低でも鉄にしてみるか」


王は手を翳し何か唱えたが、指輪の力でもそこは翻訳できなかったのだろう。私には解らなかった。あ、少しだけ動ける。ギギとまるでロボットの様な、もしくはゾンビの様にギギギと動ける・・・いや、これ無理だわ、時間の問題。


「私の世界のものでも可能ですか」


「うむ。召喚後に融合は可能だな」


「ならば炭素繊維強化樹脂で、お願いします」


「ふむ」


再び何か唱えると魔法陣が足元に展開されて短距離スポーツでスタートに使うものや、見た事もない様々なものが現れた。そして王は手を翳して呪文を唱える。様々なものが形を変え不要な部品だけが残り炭素繊維強化樹脂だけが鎧へと向かい相反する様に鎧から鉄が押し出される。アイアンインゴットとビスやら何やら異世界の部品が残った時、私は普通に立つ事が出来た。


「ふむ・・・」


兜を掴むと王は、まるで羽の様に軽いと言って軽く叩いて「元の強度といかぬが、鋼並みの強度か」と呟いた。


「異界には魔法はないと聞いたが、魔力もなく此処までのことが出来るとはな盾と剣も、これにするのか?」


「えっ」


「其方の腕力では、このままでは振り回されるのが落ちだろからな」


私は「ああ、そちらは」といって2種類の金属を指定した。縦はチタン合金。剣は薄く伸ばしたタンクステンの刃を軽量化の為に中心は丸く幾つかの穴をあけ包む様にチタンで作り上げた。さらに王は鎧と盾、剣に魔法を付与した。それは自己修復、現状の状態を維持し続ける。大破しなければの条件は付くものの小さな欠けや腐食を回復するらしい。


「しかし、驚くものだな。それで、もちと・・・そうだな折角穴があるのだ有効活用してみるか」


王は剣の刃の中央の穴に手を翳した。何か輝き出した、それが収まった後。別に穴が埋まる訳でもなく見た目は何も変わらない剣を見つめて大きく頷き満足げに渡してきた。


「これで何とか様になるだろ」


王はその後、全ての装備を着用した後、城内や帝都内の自由行動を許可してくれた。黒騎士アリイと呼ばれる事となった。それが3日前。そして今日は此方に来て初めて城内以外へ外出することが出来る。


まっ護衛というなの監視付だけどね。因みに私の鎧とそっくりな鎧を着た人がそう。テクテク歩く私の横にいる彼がドーンさん、なんかとっても強いらしい。それと町の人?達も一応に挨拶してくる事から、そうとう名の知れた方なのでしょう。


「でぇ。お嬢さんは何処に行きたい?」


「・・・うぅ。折角だから冒険」


確かに、言いました。はい「冒険」と、でも、それは言葉のあやというか城下町の探索って意味だったんですけど。ど、どうしてこうなったの。私は今、なぜか森の中で角の生えた私の腰位の高さの小人と対峙していた。わらわらと3対1、いや2か。流石に半分しかない身長の小人さんの振り回す石斧ぐらいなら服飛ばされる事なく盾で受け止められるけど正直、痛いです。ガンガンとぶつかる度に盾から響く振動が左腕にビリビリとした感触です。


「おじょー、まともに受けちゃ。力を逸らさないと腕が痺れますよ」


いやいや、私。素人だし如何すりゃいいかなんて知りませんよ。それに幾ら小さいとは言っても額辺りから伸びる角と口元の2本の牙と深緑ポイ肌色で腰巻だけの小鬼なんて、あっちの世界に居ませんよ。


「おしい。そこは振り回さず突いた方が良かったですね」


3体いた小鬼の2体を、あっという間に倒したドーンさんが、私の後ろに立って指示してくる。


「少しは手伝って下さいよぉ」


「ん。まあまあ、それより良く相手を見て」


み、たくないのよ。顔、怖いし。笑ってないで助けてよ。サドか、あんた。もう、あんたはサドーンよ。サドーン。突然、目の前の小鬼が奇声を上げた事で、恐怖から私は盾の付いている腕で「いやぁー」と跳ねのける行為が盾で小鬼の頭を横殴りにしていた。ゴンと言う音と痺れていたと言ってもグニョっとした気持ち悪い感触でさらに力が籠もると気が付いた時は、ビクビクと痙攣して横たわる小鬼横にへたり込んでいた。


「まっ、初戦としては合格なんじゃないんですかね」


差し出された手を掴み、立ち上がる。


「なんで助けてくれなかったんですか」


抗議をん?って顔で右手は私の手を繋いだまま左手のに持ち替えていた剣を地面に突き刺した。いや、そこには小鬼が居た筈の位置だった事を思い出して、確認したいようなしたくない様な複雑な気持ちで、こうなった原因の少年にあえて視線を向けた。見ませんよ死体なんか。


「大丈夫?」


「・・・あ、ありがとう」


全ては、不注意な私の一言から森に連れていかれた先で小鬼に襲われている子供に気が付いた。隣の誰かさんの「まずいな」の一言で、勝手に体が動いて子供と小鬼の間に立ちはだかっていたのが始まりだった。全てが終わって3体の小鬼の死体を処理してからドーンは異界の少女に顔を向け、「実力の伴わない愚行だが、嫌いじゃないな」と呟きゆっくりと彼女へと歩き出す。歩きながら剣の血を拭い腰の鞘に納め、右手を上げて首もとにトントンと叩く。


それにしても盾打撃(シールドアタック)は基本中の基本だが素人のしかも女性が決定打(クリティカル)とはな。偶然か、あの盾が特別なのか、見た目は俺達の装備と変わらんが微妙に色が異なる事からしても後者の可能性が高いかと思案しているとドーンがたどり着く間に彼女と少年は打ち解けたようで手を繋いで、こっちに早く来いと手招きをしていた。


「送っていく事にしたわ」


「それは」


「ほら、帰りまた襲われるかもしれないじゃない」


「まっ、良いでしょう」


少年と手を繋ぐ彼女は今は兜を後ろに倒して顔を出し、その後を黒騎士(ドーン)がついて行く。その後方で一体の小鬼の体が光り出していた。やがて光が収まると突かれた筈の傷は癒えムックリと立ち上がった。コキコキと首を鳴らして落ちいてる石斧を担ぐ。不敵な笑いを浮かべて小鬼はテクテクと素足の足音をさせながら3人が向かった村へと歩いて行った。


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