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三度目の正直は悪役ルートで!  作者: 有等
第二章 幼年期、組織作り編
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その後の話


 すっかりと話し込んでしまったことで、日が落ちかけた所でようやく彼女が帰らなければならない時間だという事に気が付いた。

 彼女は名残惜しそうに席を立つ。俺の横で少しウトウトとしていたエレオノーラも、メルが帰ると聞くと渋々起きた。 


 俺たち二人は彼女を馬車の所まで見送っていく。

 いつもの様に馬車のタラップを登りきるまでは手を取ってやる。


「それじゃあ、また来週」

「来月じゃないのか?」

「もう! 忘れられたんですの!? 来月の収穫祭で着るドレスを選んでくださるって話を! それで私どもの家まで辿り着けるんですの?」

「す、すまん」


 ツンとしながら、馬車の扉を閉めるメル。マズったなあ。

 しかし、エレオノーラが手を振りながら言う。


「バイバイ、おねえちゃん。またね」

「フフ、また会いましょう」


 妹のお陰で期限を直したらしい。ナイスだ愛妹よ。

 それを合図にしたのか、御者が馬に鞭を入れるとゆっくりと馬車は動き出す。 

 エレオノーラは、馬車が家の門を越えて見えなくなるまで手を振り続けていた。


「さ、中に入ろうか。そろそろ寒くなってきた」

「……うん」


 小さな手を握りしめながら家の中へと入っていく。

 俺はエレオノーラを部屋まで送り届けると、そのまま外に逆戻りしていった。


 目指すは家の左手の庭の半分を占拠するまで成長した薬草園だ。

 あの一件で母に有用性を認められて以来、拡大に拡大を続けた薬草園は遂にかつては芝生として手入れがされていた一帯をも飲み込んだ。


 小さな研究棟まで建てられたのは父の趣味だろうが、有用な薬草な植物が次々と植えられてその成長を楽しみにしているのは今や俺と父だけではない。


 茶草と呼ばれる薬用茶を抽出出来る薬草を植えて以降、地元の人々が根分けやそれを乾燥させた物を求めて度々訪れるようになったのだ。

 少し奇妙な匂いのする白い花が飲めると知った時の母の驚きようと言ったら。


 しかし、そこでやる気を出すのが母の母たる所以だ。今ではその茶草を更に飲みやすくするべく、他の薬草と合わせて様々なブレンドまで行うようになった。当家、いやベルンハルト領の小さな名物となる日はそう遠く無いだろう。


「ウゴナの実は今年は間に合わず、テレビンは大丈夫そうだな。明日採取するか。うわ、父上また新しい花壇増やしてるし……」


 しかし、この薬草園を拡大するのに最も尽力したのは父だ。

 今でもせっせと土いじりを行っているのだろう。


 あの時、父が家に戻ってきた時には全てが終わった後だった。

 俺とエレオノーラを抱きながらオイオイと泣き続けた姿を今でも良く覚えている。そして、俺に対する多種多様な褒め言葉も。


 それ以来、父もまたかつての学士時代の意欲を取り戻したようで、俺に負けじと薬学を始めとする知識の習得に励んでいる。


 ベルンハルトさん所の天才児と教授領主というのが俺と父の領民からのあだ名だ。

 そんな父は、薬草園の片隅で麦わら帽姿で新しく植えた木のスケッチを行っていた。


「おや、ウォルター。どうしたんだい」

「そろそろ夕食の時間ですので、呼びにと」

「もうそんな時間か、いやはや時が経つのは早いものだ」


 よっこらせ、と腰に手を当てつつ父は立ち上がる。

 俺たちはそのまま屋敷へと戻っていった。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 すっかりと夜が更けてきた頃、俺の部屋に音もなく忍び込む姿があった。

 アザリアだ。見ずとも分かる。


「ウォルター様、本日の装置の手入れが終わりました」

「ご苦労さん」


 彼女には、屋敷の内外数カ所に敵の出入りがあったらすぐに分かるような仕掛けを取り付けて貰った。

 朝晩の二回の見回りでそれを確認する事で良からぬ者が忍び込んだ形跡があれば、すぐに分かるという訳だ。

 

 ちなみに、あの無愛想な二人組の中年男女は、更に仲間を増やしてまだこの屋敷に居る。

 どうやら父の親友の元部下、バリバリの元軍人だった人たちという事で今でも時折訓練らしき事をしている。


 母も遂に観念したようで、最近では特に気にしている様子もない。


「明日は例の組織の立ち上げ集会の為に、廃教会へと向かうことになります。少し早めに起きていただく必要がありますね」

「……それは頼んだ」

「全く、何時になったら朝に強くなられるのやら」


 そいつは無理な話だ。三度目の人生を送っているのに治らないのだから治る希望など最早存在しない。未来を変える事は出来ても、変えられない事もあるって事だ。


「では、失礼致します」

「明日の朝、頼むぞ」

「ふう、分かりました」


 溜息を付きながら、アザリアは部屋を後にした。

 それを見送ると、俺はベッドの脇のランプを消して眠りについた。

 随分と長い一日だったと思いながら、明日の事に思いを巡らせている内に容易に眠りに落ちていった――

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