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ヤキモチだって焼くんだもん1




「文化祭が終わったらーーーー」





 あれは一週間前の夕方。


 一つ上の先輩に、告白……


 の練習台にされた。


 おかしいな。


 なぜ練習台だったのだろうか。





 生徒会の仕事を終えたところで、私は突然声をかけられたのだったか。


 一つ上の先輩で、お世辞にもかっこいいとは言えない、でも不細工でもない。


 中の上と言ったところか。


 男気質が強くて、自分の発言に絶対の自信を持っていて、いかにも自分大好き! そんな人。


 誰に対しても優しい反面、好きになったらとことん突っ走る、落ち着きない人。



 なんでこんな酷評かって?




 この人のことが、好きだから。






 中学の時に同じ部活で切磋琢磨していた時から一目惚れしてた。


 でも、いつも彼は好きなタイプの女性の話ばかりをしてくる。


 どのクラスの誰が好きだとか、なんだとか。


 耳にタコができるほど聞かされていた。



「応援してますね!」


「先輩なら成功しますよ!」



 まるで定型文のように、大げさに応援していたのに、恋となると臆病になる先輩。


 なんて面倒くさい人なんだ。



「恥ずかしくて声もかけられないんだよねー、本当に好きってこういうことなのかなー」


「女の子みたいですね」



 生徒会室にて、先輩を追いかけて入学したこの学校で、私はまた、そんな話を聞かされている。



 私の気持ちなんてこれっぽっちも気付かない先輩は、嬉しそうにそんな話をする。


 あぁあ、どうして私じゃないんだろう。


 なんて感情をかれこれ五年も続けているわけで、いい加減諦めろよ私。と、言ってやりたいわけで……。


 でも大好きな先輩のためなら、一肌脱いじゃうよね!



「しょうがないですねぇ、私が協力しましょう! 今回はどこのクラスの誰ですか? 文化祭、一緒に回れるように算段すればいいですか?」



 我ながらなんてお人好し。


 私の発言に、わかりやすい程に笑顔を浮かべつつも、恥ずかしがる先輩は、モジモジと指を絡めて見せつける。


 えぇーい!


 男が何をうじうじしてる!


 こんな先輩が好きなのかと思うと、一瞬だけ、ほんの少しだけ、大丈夫かしら?


 なんて思っちゃうけど。


 それでもねぇ、好きなんだから仕方ない!



「でも、迷惑かけられないしな……でも……」


「先輩?」


「うん?」


「いつもの、俺についてこーい! という気迫はどこに行ったんですか」


「いやまぁ、そう言いたいんだけどさ」


「男らしい先輩好きですよー」


「そんな事言ってくれるの、あーちゃんだけだよ、ありがとね! よしっ! じゃあお願いしようかな。その算段を」


 もじもじしていた先輩は、嬉しそうに私へ笑顔を向ける。



 あぁ、この笑顔が大好きなんだよね。



 でも……私には向くわけないもんねぇ。


 何度目かのそんな心の呟きを、溜息に変えて吐き出した時、そうだ! と、先輩が手を鳴らした。


「何ですか!?」


「文化祭で仲良くなれた二人が、そのまま後夜祭に参加したら、生涯共にいられる、なんていうジンクス知ってる?」


「噂くらいでしたら」




 そう。


 この学校はちょっと変わってるのだ。




 確かに、文化祭もとても人気のある祭りだ。


 高校の割には、入場者も多いし、ニュースに出るくらい人気だったりする。


 それくらい、目玉の出しものが多い。


 私も生徒会を始めて、こんなにすごい出し物、物販があると知って、正直びっくりしている。


 だけれど、だからこそ、いろんな噂がある訳で。


 沢山の人で賑やかになる我が校の文化祭。


 その賑やかさの中で、出会ったり、くっついたりなんやらかんやらした二人が、一般の人が入れない後夜祭まで、一緒に参加することが出来たら




 その人と生涯共に出来る。




 そんな噂がある


 らしい。


 だって、私には経験が無いし、周りはどうかも……知らないし……。


 そんな噂話があると、小耳くらいには挟んでいたけれど、相手のいない私にはどうでもよかったし。


「今回の恋こそ、最後の恋にしたいんだよねー、だからこそ参加したいんだ、後夜祭に!」


「まだ高校生ですよー。何かっこいい事言ってるんですか」


「カッコイイだろ? だからこそだよ。あーちゃんは? 予定あるんだろー?」


 実のところ、こんなに恋話を聞きつつも、私は先輩のその後を一つも知らない。


 気になりつつも、怖くて……辛くって……探らなかった。


 先輩も話してこないし、何より、幸せそうに話す姿を見ているだけで、私は幸せだったからね。


 とか何とか言いつつ、またそうやって私に分かり切った質問をしてくる。


 私に相手がいないことくらい、知ってるくせにーーーー!!


「ある訳ないじゃないですか。嫌味ですか?」


 目を細めてみせると、またまたぁと。


 勢いよく頭を撫でて来た。



 そんな事するなよーー。

 余計に惚れるだろーーーー!!



「今年は、運命の出会いがあるかもよ? あーちゃん、可愛いんだから」


 はいはい、それも聞き飽きました。


 にっこり笑ってみせる先輩の笑顔と決まり文句に、私の心はいつだって締め付けられるんだ。



 もぉ。

 ばーか。



 だけどさ、好きな人には幸せになってもらいたい訳で。


 その為には、やっぱり一肌脱いじゃうわけで。


「じゃあ、先輩の最後の恋のために、告白の練習台になってあげますよ、ほら、私をその相手だと思って、思いの丈ぶつける練習しましょ」


「えぇ……恥ずかしいなぁ」


「今できないで、いつ出来るというのですか!」


「それもそうだね」


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