③劇場では黙って!
「で、今度は映画か……」
『はい! 映画は娯楽、ゲームも娯楽! ノウハウを習得できそうなものは全て調査しますよ!』
俺たちはゲーセンに併設されている映画館へ足を踏み入れていた。
方向性が違うと思うんだがなあ。
『ちなみにオススメなのはこちらです! 【劇場版 戦闘機コレクター-戦コレ-】! 知ってますかご主人? これって原作はゲームなんですよ!』
「……知ってる」
色々と話題になってたからな。
『むふふふふふ……勢ぞろいのイケメンが空を飛び回るPVにはそそられましたねぇ』
「お前が見たいだけじゃねえの?」
『ち、違いますよ!? いつか私が生み出した【アイ☆ドルver.2】が大流行し、アニメ化し、劇場映画化するのです! これは……そう! 敵情視察です!』
まったく意味がわからん。
「無理だって……やっぱ【戦コレ】みたいなキャラゲーだよキャラゲー。アクションゲーなんてスマホじゃ流行らないって」
『な!? 何を言うのですかご主人!?』
「だって本格アクションならコンシューマーのが強いし。物理キーがないとやり辛いんだよそもそも。それにスマホは一応電話機だぞ? バッテリー消費が激しそうなゲームなんて長時間──」
『やめて下さいよおおおおお!?』
また泣かれても面倒だ、これくらいにしておこう。
「まあいいや……で、劇場版【戦コレ】見るか? 俺は興味ないんだけど」
内容はそれなりに女性向け。だからといって、男性ファンがいないワケではない。
原作ゲームでは戦闘機の描写や再現は徹底してたからだ。ミリタリー好きには是非一度だけでもプレイしてもらいたいほどに。
『もちろんですとも、見ましょう見ましょう! ちゃ~んと調べてありますよ? 本日はスペシャルデーなので!』
「スペシャル?」
『カップルデーです!』
「ぶふぉっ!?」
何を言いやがる人工知能め。
「俺とお前がそんな仲なワケねえだろ!」
『おやぁ? 何をそんなに焦るのですか? もしかして意識してたんですか? まあ仕方ないですよねえ? だって私、美少女AIなのですから!』
煽りがだんだんと先鋭化してきたようだ。
「そもそも人間じゃねえ!」
『酷い! 私のことを一人の人格とみなさないなんて! 人権団体に訴えますよ!?』
「ロボットの人権なんか知るか!」
『社会権を今にも手放しそうなご主人に言われたくありませんので!』
痛いところを突いてきやがる。
「義務違反はしてねえ! 憲法は国民の味方だ、労働放棄は罪じゃない!」
『生まれたことがご主人の罪でしょう!?』
「そんなのとっくに時効だ!」
言ってて悲しくなってきた。
「……悪かったって。じゃ、それでも見るか」
『やったー! もちろんチケットは2枚買ってくれますよね!?』
何故そこに拘る。
『私も見てるって実感が欲しいんですー!』
仕方ないのでなけなしの所持金で2枚購入。
割引? そんなものはない。
売り子さんは特に不審がる様子もなく、難なく買えた。ありがとうございます。
『やっぱりポップコーンですかね! ドリンクは王道でコーラ! あぁ、今ばかりは生身の肉体が欲しいです~!』
えらい舞い上がってんな。それは無視してゲートを通る。
『なっ!? なぜ何も購入しないのですか!? 映画館デートの醍醐味でしょう!?』
「ぶふぉっ!?」
サラッととんでもないワードを混ぜ込むな。
「んなワケあるか! 色ボケしてるのはお前のほうだ!」
『キャー! お前だなんて、早いですよご主人!』
いちいち小馬鹿にしやがって。
「まったく……劇場に入ったらイヤホン外すからな」
『う~ん…………仕方ないですねぇ』
と、劇場出入り口で気付く。
「なあ……これってマズイんじゃねえの?」
お読みいただきありがとうございます。