2話 親友の友人っぽい人は凶器に満ちている
昨日の暴風とはいったい何ぞや言わんばかりに清清しいほどの朝だった。
周りには、俺と同じ制服を着た三杖高校の生徒たちが元気よく登校している。あるものは自転車で、またあるものは歩きながら、そしてあるものはバスで、電車でと各々が元気に登校している。
普段と変わらない、まさにそんなような光景だった。
……………………………隣の凛さえ男であれば。
とりあえず、いつも通りに登校するため玄関を出たらこいつがいてめっちゃ驚いた。まだ見慣れないせいか、凛ということに気づくのに約一秒を要した。
そしてなんといってもあれだ。昨日も相当攻撃されたがやはり視線が痛い。明らかな嫉妬の目線とか憎悪の目線とかを平気でこちらに向けてくる。そういう視線は向けられている人はとても感じ取りやすいのだ。
まあ、凛は客観的に見ても可愛い部類だとは思う。中身が男という点を除けば。彼女にしたいランキングなるものがあるなら常に上位にいそうな顔立ちだしな。対する俺は…………冴えない男子といったところかな……普通の人間だ。イケメンでもないしな。強いて言うなら、少し武術の心得と成績は常に上位にいることかな。
「?どうした動揺しているぞ」
「いや、お前はDIOかよ……言い方がいちいち怖いわ」
ぺシっと凛の頭を軽く叩く。
その際、あうっと声を出して周りにいた男たちが全員顔を赤くして早足に去って行ったのは彼らの名誉のために口をつぐんでおこう。
「それより、本当に元気がないな。やはり風邪でも引いたんじゃないのか?」
「…………いや、なんでもない」
ここで『周りからの視線が痛くて…』なんてでも出してみろ。こいつ、罪悪感でひたすら謝ってくるぞ、ただえさえ俺に迷惑かけてると思ってんだから。俺はお前のことに関しては一度も迷惑かけてるなんて思ったことすらねぇっつうの。むしろ退屈な日常にすこしの刺激くれて感謝してるんだけどな。
「……いらん心配だけはすんな。俺はこの状況を楽しんでんだから」
にっこりと、笑いながら言うとようやく凛の機嫌が戻ったのか、表情が明るくなり、俺が男のころに見ていた凛と同じ雰囲気を醸し出す。
そうだよ、お前はそういう風でいいんだよ、そんなことを内心思いつつも口には出さないでそんな凛を見つめる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
教室に入るなり、俺に視線が刃物のごとく突き刺さってきた。銃刀法がなければ間違いなく死んでたまである。
視線の原因は言うまでもなく凛のことだ。当然、質問攻めになりました。内容を簡単にそしてシンプルにまとめると、『なんでお前が凛ちゃんと一緒に登校してるんだ』だ。まったく、ひどい嫉妬を見た。
だから俺は、嘘偽りなく彼らに真実を教えてやることにした。
「いや……玄関に凛がいたから成り行きってやつ?」
まあ火に油を注いだだけで、更に嫉妬という名の炎は燃え上がりましたとさ。この後、男たちに制裁という面目で殴られました。なんでだよ。
「大丈夫か……?」
放課後、机で伏せている俺に声をかけるのは間違いなく凛。その隣には一名の女子。
「大丈夫だ……多分」
「無理はすんなよ」
「おう、それとお前の横にいる女子は誰だ?」
先ほどから横にいた――見た感じ育ちが良さそうなお嬢様だ。清楚というのかなんていうのか黒髪ロングがとても似合う。ていうか、ホント誰?
「自己紹介しますわね、私は楓花香と申します。以後お見知りおきを」
「……おぉ、俺は白樺紅、よろしく」
ずいぶんと礼儀の正しい子だった。なんていうのか凛とはまた違うタイプの子で扱い方がわからない。いや凛の扱い自体も長年の付き合いがあってのことだからなぁ。
「………凛さんと紅さんは付き合っているんですか?」
……いきなりなんて事を聞くんだ、この子は。
ここは普通に親友と言ったほうがいいのだろうか、それとも適当に言ったほうがいいのだろうか。俺があれこれ悩んでいると、凛が思いもよらないことを言い出す。
「お……私と紅は幼馴染なんだよ!」
はぁ?
いまこいつなんて言った?幼馴染?さすがに無理があると思うんだが……
「そうだったんですか、てっきり付き合っているのかと思ってました」
お前もだまされんなよ。んなわけないだろ。
てか凛も変な設定つけるのやめてくれないかな?それを通すの結構きついからさ。
「あー、参考程度に聞くけどもし付き合ってるって言ったら俺はどうなってたの?」
ビクっとなる凛に、向ける視線に少しばかし、相手に致命傷を与える程度の殺気を込めた楓花さん。なんていうのか大体想像がついてしまった。
「もちろん、社会的に殺してあげますわ。あなたを」
それはもう清々しいほどの笑顔で。なんなら満面の笑顔で。ただ、こちらに向ける視線には依然と殺気を込めたまま。
「そう………」
なんか怖いわ、この子。