第13話 - 学園祭二日目 ~午後の部・一難去ってまた一難~
前回のあらすじ。
迸りかける性欲を押さえつけ、なんとか誘惑のランチタイムを乗り切った渉は、精根尽きかけながらもヒーローショーを開始した。
いきなりだが言い訳させてほしい。俺は決して甘く見ていたわけではないんだ。
このヒーローショーの後には、目玉イベントの網谷のライブが控えている。それは、今ステージ前に居る観客も分かっているはずなんだ。例え、ネット動画で知名度が鰻登りになっている天野が出てきたとしても、「網谷の前では霞んでしまうから大丈夫」そう思っていたんだ。
だというのにっ!
「すっげ! アレ、本物の“謎仮面ライダー”じゃね?」
「いや、他のヒーローコスを見てみろよ。あのパネェ再現率の高さ!」
「なるほど。それを考慮すれば、あのライダースーツもレプリカに違いない…という事は確定的に明らか」
「なんだ、ニセモノか…。でも、どっちにしろデキが良いから録画しとこ…っと」
…などと、面白そうにスマホで撮りだす大学生くらいの青年グループに…。
「うおぉお! 懐かしのメタルヒーロー達が今ここに蘇り、俺の目の前で怪人を討つとか胸熱展開キタコレッ!!」
「スーツアクター…まさか、スーツアクターも本家の方々にやってもらっていたり!?」
「いや、さっきの声は昨日も聞いたJKの声だったから、中身もきっとスケバン刑事とかをやってた娘達じゃないだろうか?」
「んなっ?! 昨日は皆スケバン刑事コスだったのかよっ?! くぅぅ、それはそれで見たかった!」
「否。本日と同じく、一人一人違うコスでござったぞ? ナイルなトトメスやら、ポワトリンやら、世界忍者戦ジライヤの妹御やら…あ、シュシュトリアンはちゃんと三人一組でござったが。ちな、これがその証拠写真でござる。デュフフ…コポォ…」
「ぐぬぬ…! なんというオッサンホイホイなラインナップ!」
興奮した様子で熱く叫ぶオッサン達に…と、想定外の大ウケ状態になっていたのだ。
しかし、スケバン刑事やジライヤはともかくとして、他の作品は女児向けの特撮なんだから、どっちかってぇと“オバサンホイホイ”だろう。常識的に考えて。
…とまぁ、こんな感じで前寄りに居た男連中が妙にヒートアップしている次第である。
考えてみれば、網谷ファンは必然的に男メインになるだろうから、こんな懐かしのヒーローコスをしていれば興奮する連中が出てきてもおかしくはないか…。
それにしても、天野だけだったらこんなフィーバー状態にはならなかったハズだ。これは間違いなく、演劇部員達のメタルヒーローコスによる相乗効果によるもの…。俺も、こんな手の込んだものまで用意すなんて考えてもみなかったからな。誤算も良いところだ。
今度似たような催しをする時は、「ヒ☆ミ☆ツ♪」などというあざとい言葉で煙に巻かれることなく、しっかりと検閲しよう。……でも、昨日は色々混ざった感じで、今日はメタルヒーロー縛り…、「明日は何が来るんだろう?」と、ちょっとワクワクしているのも事実。検閲して事前に知っちゃうと、このワクワク感が楽しめなくなるのはジレンマだな。
「フッ…怪人のくせに中々やるな。だが、これでフィニッシュだ! そこのお二人さん! 準備はよろしいですかな?」
「「いいですとも!」」
観客の反応に耳を傾けながらヒーロー達の攻撃いなしていると、天野が部長と副部長にトドメ演出の合図をした。
ギャバン姿の部長と、ダイアナレディ姿の副部長が勢いよく頷き、それぞれがステージの左右方向に大きく移動する。天野は、観客に背中を向けるようにステージ手前中央へ移動。他の部員達は、俺達に攻撃を仕掛けながらも包囲の輪を広げる感じに陣取り、タイミングをずらしながら走り抜けて攻撃するという動きへとシフトして行く。
そして、俺とノーマンは二人してステージの中央付近へと移動し、背中合わせで部長と副部長方向を向く。全て、事前に練習した通りの流れである。
ただ、一つだけ不満があったので、その点だけ指摘した上で爆死しようと思う。
「貴様ら! 百歩譲って集団で襲ってくるのは認めよう。どんな特撮番組も、基本的にヒーローに集団攻撃するのは俺達だからな! 『逆は許さない!』という我が儘は言わないでおいてやる!
だが、そこのダイアナレディ! なんでアンタだけ主人公格のスピルバンじゃねぇんだよ! ウィンスペクターのコスだって、バイクルやウォルターではなく主人公格のファイヤーなのに!
それに、今日がメタルヒーローデーだったンなら、なんで昨日の時点でジライヤのコスを出しちゃうかな! もう、『俺~の怒りは爆発寸前~♪』状態だよコンチクショウ!」
なんかもう、勢い余って“一つ”どころか“二つ”も文句を言ってしまった。地団駄踏みながら…。
「「「「「……お前、マニアだな」」」」」
「おい。敵のヒーロー達だけならともかく、相棒であるお前まで呆れた声を出すなよ。地味に傷つくぞ」
天野を始めとしたヒーロー役の演劇部員全員と、怪人コスのノーマンから心底呆れ気味な反応をされた。結構ショックだ。
「よく言ったぞ! オタクな方の怪人!」
「俺達の言えなかった疑問を平然とツッコめる! そこにシビれる! 憧れるぅ!」
「もう殺られる頃合いだろうが、明日も頑張れよ! オタク怪人!」
……身内からは呆れられたが、特撮好きっぽいオッサン達の好感度は上がったみたいだった。嬉しいんだけど、なんか切ない!
「どうやらオーディエンスの一部を味方につける事には成功したようだが、負ける前提で応援されているようだな。武士の情けと言う奴だ、最後に言い残すことがあるなら聞いてやろう」
「……しいて言えば、先ほどの文句に対し『申し開きが有るのなら聞いてやろう!』と言いたいくらいだな。チラッチラッ」
「これから殺られるハズの怪人が、何でそんなに上から目線なんだよ…」
バトルスーツに身を包んだ天野がアドリブで話しかけてきたので、俺も擬音を口で言いながらダイアナレディに視線を向ける。……怪人スーツ姿だから、わざわざ顔ごと向ける必要があって非常に面倒臭かった。
「ん~…。理由ね…。これと言ったポリシーがあるわけじゃないんだけど、しいて言うなら『皆とは敢えて違うコンセプトの恰好をしたかったから』…って感じかしら? 実を言うとね、昨日のジライヤの恵美破コスは、今日私がする予定だったのよ。ただ、メタルヒーローっぽくないからって理由で、昨日の枠組みに入れられちゃったのよね~」
「どっち道、主人公格のコスじゃないんかい!」
「あら? いけないかしら?」
「いいや。嫌いじゃないぜ、そういうの」
「なら文句は無いわね? じゃあ、とっとと殺られちゃいなさい! いくわよ!」
「「「とぅっ!」」」
ダイアナレディ…もとい、副部長の合図と共に、部長、天野を含めた三人が同時にジャンプキックの構えで飛んでくる。
「ギャバン──」
「ダイアナ──」
「謎ライダー──」
「「「──キーック!」」」
「ダイアナはヒップアタックじゃねぇのかよぉぉぉ!」
ダイアナレディの技に文句を言いつつも、台本通りにキックを食らい、俺とノーマンはステージ上でしめやかに爆散した。爆発に合わせて、天野を中心としたヒーロー達がかっこよく決めポーズを披露しているらしく、観客からは大きな拍手が起きている。
煙に紛れて退散しなければいけなかったので、ちゃんとは見れなかったが、そんな姿を煙越しに確認できた。正面から見れなかったのが実に惜しい。きっと壮観なんだろうなぁ、十数人規模の決めポーズ…。
何はともあれライブの前座も無事に終わり、昨日と同様に網谷の召喚を行った俺は、ライブ開始と共に透明化ベルトを起動してステージを後にした。
……また囮役を追加されても大変だしな。
▲▽△▼△▽▲
ステージを後にしてから私室へと戻った俺は、別の私服に着替えて伊達メガネを外した。そして、莉穂姉の部屋へと侵入し、あるものを手にしてからメイド喫茶の出し物へと向かうのだった。
「というわけで、莉穂姉を迎えに着ました~。はい、莉穂姉、私服持ってきたからこれに着替えて~」
莉穂姉のクラスへと足を運んだ俺は、喫茶スペースを素通りて厨房兼休憩スペースへと流れるように移動する。そして、クラスメイトとまったりしていた莉穂姉に話しかけた。
昼間は他のメンツも居て落ち着けなかったし、今度こそ真っ当な学園祭デートをしてやる。
「渉? あれ? 伊達メガネはどうしたの? それに、なんで私の服を──って、どうやって私の部屋に入ったの?!」
「あ~…、どう控えめに言っても犯罪になっちゃうから学園の生徒は使えなくなるんだけど、俺やノーマンなんかは師匠の魔導具の枷が緩くてね。軍の任務とかで牢屋に入れられた捕虜やら人質やらを発見した際、安全に助けるために開錠魔法ってのが使えるんだ。その魔法を使って、莉穂姉とルームメイトが居る部屋の玄関を開錠して、莉穂姉の私室のクローゼットから見繕って持ってきた…って寸法さ。
…あ。莉穂姉のルームメイトの私室には足を踏み入れてないから、ご安心を」
無断で部屋に侵入した時点でアレだが、「最低限のエチケットは守ったぞ」というアピールをしておく。
「なら良かったわ。私の部屋以外に渉が足を踏み入れてたら、嫉妬してたところよ」
「いや、莉穂! ちっとも良くないんじゃないかしら、それ!?」
「ところで、個人部屋は構造上“二択”しかないとは言え、どうやって私の部屋を当てたのかしら?」
「ねぇ、クラスメイトである私のツッコミを無視しないで? 悲しいから…」
莉穂姉のクラスメイトが真っ当な意見を述べているが、莉穂姉は華麗にスルーしていた。
「ごめんなさいね、先輩。でも、俺もさらっと会話を続けさせてもらいます。莉穂姉の私室を当てたのは非常に簡単な話だよ。莉穂姉の残り香の有無。これだけ」
「流石は渉ね。毎日のように抱きしめて覚え込ませたのが幸いして良かったわ」
「……っとに、このバカップル共はっ! はぁ~、話しを聞いてると私の頭が痛くなってくるわ。もうさっさと着替えてデートに行ってらっしゃい」
「「では、お言葉に甘えて」」
「くっ…! こんな時ばっかり反応しやがって!」
昨日に引き続き、先輩の許可を頂いた俺達は、すぐさま出し物巡りに繰り出した。
昼飯をたらふく食べていたので、残念ながら“たこ焼き”や“お好み焼き”といった食べ物系は見送らざるを得なかったが、“射的”などのアトラクション系を中心に満足に楽しんだ。
俺のクラスの“バーチャル(という事になってる魔法の)お化け屋敷”にも足を運び、なかなかのスリルを味わう事ができた。“最新技術”と銘打ってる事と、本物と見まごうくらいリアルな体験を安全に楽しめるとあって、かなりの人気アトラクションになっていたようだ。……一度も様子見に来てなかったから、我がクラスのことなのに全く知らなかったのはお恥ずかしい限りである。
こんな感じで俺と莉穂姉はリア充な一時を満喫していたのだが、小一時間ほど経った時、突然魔力通信が届いた。
[こちら演劇部部長。渉君、至急応答求む。至急、応答求む]
[こちら莉穂姉と絶賛デート中の渉です。一体何が起きたのですか? テロリスト問題は、もう本日分は解決しているハズですが…]
[いや、テロは全く関係ないんだけど、渉君じゃないと対応が難しい問題が発生しちゃって…]
[俺じゃないと難しい? 一体何が…]
[網谷さんのライブ前に、ヒーローショーで盛り上がってた特撮好きらしい男性陣が居たでしょ? 彼らが部室になだれ込んで来て、「“謎のライダー”コスを見せてくれ!」と駄々を捏ねてるのよ…]
[………分かりました。天野にも連絡をして、そちらに向かう準備をします]
[お楽しみのところ、ごめんなさいね。お願いするわ]
俺は深くため息を吐くと怪訝そうに俺を見ている莉穂姉に向き直り、真っ直ぐに目を見つめて莉穂姉の両手を握る。
「ごめん、莉穂姉。演劇部部室で事件が起きちまったから、処理担当の俺が向かわなくちゃならなくなった」
「…それ、普通は逆じゃないかしら?」
「とにかく、とっとと事件を解決してすぐに戻ってくるから! そしたら、またデートの続きをしよう」
「なんだか死亡フラグが立ちそうな言い回しだけど、無事に戻ってきてね?」
「|畏まりました、ご主人様《イエス、マム》!」
こうなったらさっさと厄介事片付けて、「あばよ事件、よろしくデート」してやるっ!
毎度読んでいただきありがとうございます。
いつもより投稿時間が遅れて申し訳ないです。ちょっと、久々にスパロボXをプレイしていたら仕上げるのが遅れました。
はい、体調不良でも何でもなく、ただの遊びが原因です(開き直り)
そんな吾輩ですが、次回も金曜日の更新予定です。お暇でしたら宜しくお願いします。




