表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第五章 夏休み? いいえ、学園祭です
91/141

第06話 - 学園祭一日目 ~午後の部・網谷召喚~

前回のあらすじ。

 痴女コスの三人のランチ攻撃により、昼休みの時間を大きく超過してしまった渉。

 ノーマンへ何らかの形で埋め合わせする事を約束しつつ、彼を昼休みへと送り出す。

 ノーマンが休んでいる間に、渉はステージの準備を開始。

 すべての準備を滞りなく終わらせ、あとは開幕を待つばかりとなった。

 午後1時55分。劇本番まで残り5分となった時、ノーマンがステージ裏の控えスペースに到着した。


「待たせたな」

「どこのスネークだよ…。言うほど待ってないから、さっさとスーツ着てくれ。誰に見られてるわけでもねぇが、俺だけこの姿で居るのは何となく恥ずかしくてな…」

「あいよ」


 苦笑しながらも、ノーマンはテキパキと怪人スーツを着込んでいく。服を着たままでも装着できるように少しゆとりを持った構造をしているので、数十秒足らずで着替が完了した。

 このスーツは上下に分離させることができ、下半身はズボンの要領で脱着可能だ。そして、着づらそうな上半身も両脇腹に隠せるタイプのチャックがあるので、一人でも割と簡単に脱着できるのである。正に、家庭部・裁縫部門の努力の賜物たまものと言えるだろう。


 念のため、お互いのスーツの背部パックに、適量のC-4爆弾が起爆装置と一緒にセットされているかを確認。控えスペースの全身鏡の前で、軽くラジオ体操の動きをして中の服がチラ見えしないかをチェックする。

 特に問題が無い事を確認し、最後に各自の胸元に自分の起爆装置と連動した無線ボタンをセット。うつ伏せで倒れると同時に、自爆するという仕掛けの出来上がりである。

 大立ち回りの際は、基本的に腹から上に対しては攻撃を加えない手はずになっているので、心臓のやや上あたりにセットしたボタンには攻撃が届かない。せいぜい、俺やノーマンがガードした際に腕に当たるとか、顔を殴ってくるふりをするくらいである。

 まぁ、仮に攻撃が当たったとしても、俺達は神力製リダクションアーマーを展開している。観客からは、顔や腕、腹などに攻撃が当たった際、軽く爆発したように見えるだろうが、スーツの内側にはダメージは来ない。丸太で殴られたとしても、“何かが当たった”程度の衝撃しか感じないようになっている。たとえ彼岸島ひがんじまで吸血鬼に間違えられたとしても、神力が続く限り生き残れるという訳だ。


「よし、そろそろ時間だ。じゃ、打ち合わせ通り、俺は左手の舞台(そで)から。ノーマンは右手から頼む」

「OK。お互い、いい爆発しようぜ」


 ノーマンの言葉に無言で頷きながら拳を突き出す。ノーマンも俺の意図が分かったのか、無言で拳を突き出し、お互い軽く付き合わせてそれぞれの配置に着いた。

 チラッとステージ前の状況を確認してみると、俺がステージの準備をしていた時よりも遥かに多い人数が集まっていた。大人子供問わず、生贄用のマネキンが置かれている祭壇(もど)きに視線が集まっている。


「ふはははは…。ずいぶんと多くの崇拝希望者が集まっているではないか。素晴らしいっ!

 魔王様も、貴様らを喜んで受け入れてくれるだろう!」

 

 まずは俺がステージに登場し、軽くアドリブを入れながらそれっぽい台詞を述べる。マネキンに集まっていた視線が、一気に俺に集中した。

 やばい、これ凄く恥ずかしい。「余裕があれば、少しアドリブを挟みながら、観客を集めるようにして」とか演劇部部長が言っていたが、俺には無理だ。さっさと次のステップに進むために、ノーマンを呼び出しちゃおう。もともと、登場時の台詞が短めだったから助かった。


「さぁっ! 儀式の時間だっ! やるぞ、相棒っ!」

「了解だぜ、兄弟。そんじゃ、ギャラリーの期待に応えて、儀式としゃれ込みますか」


 軽く頷き合いながら、それぞれの定位置に移動する。マネキンの置かれた祭壇擬きを二人で挟み、生贄を捧げるように二人して同時にポーズをとる。両腕を大きく上にかかげながら天空を仰ぎ見て、元気玉のポーズ。


「「いざっ! 魔王様、しょうか──何っ!?」」


 祭壇擬きに仕組まれていたギミックが発動し、真っ白い煙がマネキン達を覆う。そして数秒後、煙が晴れたあとには祭壇擬きしかなく、マネキンの姿が綺麗さっぱり消えていた。


「「「「「おぉぉ~…」」」」」


 観客から良い感じの反応が聞こえてくる。少なくとも、掴みは成功した感じだ。

 ちなみに、種を明かすと“煙”はただの水蒸気である。祭壇擬きの周囲に濃霧を噴出させる魔法陣を仕込み、ポーズをとると同時に魔力を流して発動させたのだ。

 さらに、マネキン達の姿が見えなくなった頃合いを見計らい、祭壇擬きに仕込んであった魔法陣にも魔力を流し、転移魔法陣を起動。魔法陣起動の際に発生する光は、太陽光と濃霧によって目立たなくなり、一般人には気付かれないという寸法である。


「「な、何っ!? 生贄が消えただとっ!?」」

「はーっはっはっはっは!」

「貴様らが捕えていた人々は…」

「全員、私達が保護させてもらった!」


 俺とノーマンが芝居がかった感じに驚いた直後、聞きなれた演劇部員達の声が舞台に設けられたスピーカーから響き渡った。


「「おのれっ! 何奴なにやつっ!」」


 きょろきょろとしながら観客側を注目する俺達の視線の先に、様々な衣装に身を包んだ演劇部員達が姿を現す。その数、実に十数名。怪人相手とは言え、普通に考えてオーバーキルもいいところな数の暴力である。


「ふっ…。言うなればアタイ達は…」

「「「「「通りすがりの正義のヒロインさっ!」」」」」


 パパパパパパパパパパパーーーン!──


 登場時の決め台詞と共に彼女らの背後が軽く爆発し、次いでカラー煙幕が立ち上る。

 なにその演出。俺、聞いてない。

 「休憩時間の間に、ノーマンが火薬の類を渡したのだろうか?」と考えヤツに視線を向けてみると、俺の視線の意味に気付いたのか、首を横に振って関与していない事を主張していた。どうやら、俺達の知らない間に自力調達していたらしい。


「ヘイヘイ、怪人ビビってる~」「嬢ちゃんたち、やっちまいな~」「お姉ちゃんたちかっこいー!」


 俺とノーマンのやり取りを見て“ビビった演技している”と勘違いした観客達から、演劇部員達へ声援が送られる。

 いやまぁ、予定よりもいい感じに客が盛り上がっているから良いものの、演技初心者の俺らを巻き込んでサプライズ演出とか勘弁して欲しい。ただでさえアドリブに弱いのに、「他にどんな隠れた仕掛けがあるのか!?」と構えてしまうんだよ、我々素人は。

 そんな感じで心の中で愚痴ってたら、観客たちの隙間を縫って部員達がステージ前まで来ていた。この辺とかは台本通りで、まさにヒーローショーと言った感じの演出である。


「「「「「とぅっ!」」」」」


 駆けてきた勢いを使ってジャンプし、ステージ手前に設置した段差から俺達のもとまで飛び乗ってくる部員達。改めて彼女らのコスチュームを確認してみれば、本当にバリエーション豊かなラインナップだ。

 リハーサルではいつも私服姿だったが、本番当日はそれぞれお気に入りの衣装で登場すると息巻いていた彼女らである。実際、かなり気合の入った服装だとは思うのだが、それにしたって──


「──なんで古い作品(・・・・)ばっかりかなぁ…。一番新しいのが“初代プリキュア”のコスじゃねぇか。他は、“魔法少女ちゅうかないぱねま!”、“美少女仮面ポワトリン”、“不思議少女ナイルなトトメス”…で、ここまで連続してたのに一作飛んで“有言実行三姉妹シュシュトリアン”。そして、“世界忍者戦ジライヤ”の恵美破(えみは)かよ。またマイナーなところを攻めてやがる。……つか、日アサの作品ばっかじゃん!

 ……と思わせておいてからの、そこの二人! ちょっと、明確な武器を持ち出すのは反則じゃないかな?! “スケバン刑事(デカ)”、“セーラー服と機関銃”コスとは言え、鉄製ヨーヨーと機関銃はアウトでしょ! 武器なんて捨てて、拳で掛かってこいよ!」


 よくよく見れば、みんな何かしらの武器を持ってはいるが、全て当時発売されていたプラスチックベースのおもちゃばかりである。

 しかし、明らかに二人だけ、質感の違う得物を持っていた。そう、どう見ても鉄製なのである。まぁ、機関銃の方はただの“機関銃型の鉄の塊”だから銃弾は発射されないようになっているが、それでもあれで殴られるのは勘弁願いたい。

 殴られても平気なように、神力製リダクションアーマーコーティングされているとは言え、あれを目の前でぶん回されると思うとちょっと怖い。やられた直後の自爆の方が、見た目や規模を考えると危険なのだが、その時は俺の視界内に入ってこないから平気なのだ。

 ちなみに、異質な武器を持っている二人と言うのは、演劇部部長と副部長である。なんだろう、演劇部に長く所属していると、昭和の作品をリスペクトする病気にでも罹患りかんしてしまうのだろうか。


「ちょっと、兄弟? パッと見で作品を見抜けるとか…。お前、引くくらい詳しいな、オイ…」


 ノーマンが言葉通り引き気味に言ってきた。まったく、この程度はオタクとしてのたしなみみだよ。嗜み。

 だいたい、お前こそ“キン肉マン”に出てきた技名を全部覚えているくせに失礼過ぎる。パロスペシャルかけるぞ、この野郎。……筋力差が激し過ぎて、められる気がしないけど。


「ふっふっふ……私達の衣装を一発で当てられるとは、大した知識量ね。出会い方や、アンタの目的が異なっていれば、美味い酒が飲みかわせたでしょうに…残念だわ!」

「JKがオッサン臭い事言うなっつの! だいたい、酒も飲めない歳のくせして何言ってるんだか…」

「本当に残念ね、意見が平行線だわ。ここでアンタ達を倒させてもらう!」

「いや、俺はごく当然のツッコミを入れただけなんだが?!」

「問答無用! みんな、やっちゃうわよっ!」

「「「「「おうっ!」」」」」


 部長のアドリブに対し、ツッコミを入れていたら、いつの間にか台本の流れの通りに事が進んでいた件。しかし、このアホなやり取りが観客には受けたらしく、なぜか俺達を応援する人達まで出るようになってしまった。


「いいぞ~、怪人の兄ちゃん達~。ナイスなツッコミだ~」「もっと気張れ~! ポロリさせちまえ~」「JKの貴重な格闘シーン……はぁ…はぁ…」


 …訂正、普通に応援してる観客はごく少数で、残りは変態しか居なかった。


[さて、演劇部の皆さん。えんたけなわ──いえ、一部はセクハラ的な盛り上がり方をしているだけですが、そろそろこのヒーローショーも幕引きと致しましょうか]


 魔力通信を使い、ステージ上の全員に精神感応魔法テレパシーで連絡を取る。このあとに控えている網谷のライブを、早くスタートさせてやりたいからだ。


[そうね。私達も憧れの衣装で満足に大立ち回りできたし、そろそろ撤収しようかしら。みんなはどう?]

[[[[[異議なし]]]]]

[OK。それじゃあ、私と副部長が持ってる得物で、渉君達へ同時にフィニッシュを決めるから、いい感じに食らってね♪]

[[おうよ]]


 なるほど。二人があからさまな武器を持っていたのは、フィニッシュ様の演出のためだったのか。だからといって機関銃を鈍器の様に扱うのはどうかと思うが、あくまでコスプレメインで見れば仕方ないのかもしれない。

 何にせよ、スケバン刑事コスの部長が俺の対戦相手なのは救いだった。所詮、こぶし大の鉄製ヨーヨーが飛んでくるくらいだし、リダクションアーマーのおかげで実際のダメージはないから怖さも薄らぐ。

 そんな事を考えながら演劇部の攻撃を何発か食らっていると、部長と副部長が少し助走をつけながら大きく振りかぶってきた。


「「これで終わりよっ!」」


 気合の入った声と共に俺へとヨーヨーが迫り。ノーマンへは、銃口をバットの様に握られた機関銃が、フルスイングの要領で振り抜かれていた。


 パガァンッ!──


 リダクションアーマーによる破裂音と、それぞれの得物がぶつかった際の音が重なり、かなり派手な音が周囲に響く。だが中身も怪人スーツも無傷だ。

 演劇部の皆は観客側を向き、ヒーローが必殺技を使ったあとのような決めポーズを取っていた。俺達はそれを確認し、所定の爆破位置にふらふらとした足取りで移動する。


「ぐっ……こ、この様な無様を晒すとは…」

「ま、魔王様! 申し訳ございません!」


 チュドオォォォォン!──


「「「「「おぉぉ~……」」」」」


 俺とノーマンの派手な爆発っぷりに、観客から感嘆の声が漏れる。俺達は観客が驚いている隙に、煙に紛れてステージ袖に撤収した。


[よし、網谷これからステージ上の煙を散らせて、転移魔法陣を起動するぞ。準備はいいか?]

[えぇ、凄い爆発音が聞こえていたし、準備はOKよ。魔法陣の上で待機してるから、いつでもいいわ!]


 網谷からのGOサインも貰えたので、俺は早速ステージ上の煙を魔法で散らせる。そして、視界が良くなってきたあたりで祭壇擬きの昇降ギミックを発動。一番下まで下がったのを見計らい、転移魔法陣を作動させた。


「ん~~♪ 同年代のヒロイン達の熱い活躍を感じて、私もワクワクしてきちゃった♪」


 転移が完了すると同時に、スピーカーから網谷の声が聞こえてくる。

 突然の舞台装置の降下に続き、聞き覚えのある声が聞こえてきたからか、観客側のざわつきが徐々に大きくなってゆく。


「な、なぁ、オイ。この声って…」「いや……いやいやいや、ここは地方の学園だぞ?」「そっくりさんか何かなんじゃ…」


 観客のざわつきをBGMに、祭壇擬きをゆっくりとステージ上に戻していく。


「ふっ…。どうやら、魔王とは別の意味でとんでもない者が召喚されてしまったようだな」

「えぇ。でも、害意はなさそうだし、私達は退散しましょうか」

「「「「「じゃあ、あとは宜しくね! アイドルさん!」」」」」


 部長及び副部長のやり取りのあと、演劇部全員が大声で台詞を叫び散って行く。

 観客たちは、自分たちの隙間を縫うようにして退散して行く部員達へ詳細を訪ねようとするが、それよりも先にステージ上に答えが出てきていた。


「みんな~! 今から私、紗友莉さゆりのゲリラライブ、はじまるよ~♪」

「「「「「………」」」」」


 網谷の元気な挨拶とは逆に、静まり返る観客達。唖然、呆然、驚愕…それらがない交ぜになった静寂で満ちていた。

 しかし、その直後──


「「「「「おおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」


 ──割れんばかりの歓声がそこかしこから響き渡った。

 スマホを取り出し、録画する者。ビデオカメラを取り出そうと慌てる者。SNSに書き込みをしている者。必死にステージ上を凝視し、記憶に残そうとする者。にわかに様々な行動を起こす観客たちではあったが、皆が皆、思い思いの形で網谷のライブを楽しもうとしている事は、ステージ袖に居る俺にも伝わってきていた。


「それじゃあ、一曲目! いっくよ~♪」

「「「「「おおおおっ!」」」」」


 こうして、大歓声の中、網谷のゲリラライブは幕を開けるのだった。

毎度読んでいただきありがとうございます。

凄まじく懐かしい作品名を色々出しましたが、これを読んでいる方で分かる人は果たして居るのか…。


次回も金曜日の更新予定です。お暇でしたら宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ