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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第五章 夏休み? いいえ、学園祭です
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第05話 - 学園祭一日目 ~昼から午後の部にかけて~

前回のあらすじ。

 魔王様復活という筋書きの演技をしつつ、怪人スーツで颯爽とテロリストを拉致った渉。

 その後、数分おきに入るテロリスト連絡に対し、ノーマン+演劇部員達と力を合わせ立ち向かい続け、ついに昼休みを迎える事ができた。

 「万が一のために」とノーマン及び数名の演劇部員を待機状態にして、先に昼休みを取らせてもらうことにした渉。

 そんな渉の休憩時間を、エロいコスプレ衣装に身を包んだ籠月こもつき由子とマチュア、滝川奈津美の三人が阻む。

 渉の理性や如何いかに。

 “心頭を滅却すれば火もまた涼し”

 「心の持ち方ひとつで、いかなる困難や苦痛を感じなくなる」といった意味の故事成語である。この考えに至った人物は、控えめに言ってド(エム)あるいは、自身の我慢の限界を通り越して思考がマヒしていたに違いない。

 だって、どう考えても“難しいものは難しい”し、“痛いものは痛い”という事実に変化はないんだもの。例えば、シューティングゲームをプレイしている際、“ボム残量ゼロ。自キャラの残機ゼロ。そんな中、自キャラの逃げ場が無いくらいの弾幕に囲まれている状況”で心頭を滅却したとしよう。操作ミスをしない程度に“冷静さ”は保てるだろうが、“打開できるわけではない”という事実に行き着くハズだ。…神プレイヤーなら十分に打開できそうな状況ではあるが、一般人では到底無理だろう。

 まぁ、長々と説明してきたが、要するに「心頭を滅却しても、己のポテンシャルを超えた状況を打開できるとは限らないんだぜ?」と、俺は言いたいのだ。

 そう、つまり──


「はい、渉くん。“あ~ん”」

「渉、次は私ね。はい、“あ~ん”」


 ──こんな状況でいくら無心を貫こうとしても、健全な男子高校生であれば目線が自然と行っちゃうわけですよ、女性のたわわな胸部装甲になっ!

 右隣からは、黒髪巨乳美女の由子お姉ちゃんが、ウサ耳ブルマ体操服の姿で箸を構え。正面からは、前かがみになってあからさまな巨乳アピールをする美少女幼馴染みクラスメイトの滝川が、折れ犬耳ナース服姿で上目遣いしながら箸を構えてるんだぞ。これで反応しないとか、ガチホモか、植物人間か、ガチの二次オタ(俺の交友関係では天野が該当)のいずれかだろうよ。


「渉。飲み物なら私の“谷間”に汲んであるので、顔を突っ込んで飲んで下さい。大丈夫、私の人工樹皮は常に清潔になるよう体内の魔法陣が仕事をしています。さぁ、遠慮なくずずいっとどうぞ!」


 左隣では、きわどい水着(スリングショット)姿に可動式ネコ耳・ネコ尻尾を装備した、金髪褐色美女型科学的人造人間(アンドロイド)のマチュアがド変態な事を言っている。


「由子お姉ちゃんと滝川のはありがたく頂戴するとして…。マチュア、お前は俺を“スケベ親父か何か”と勘違いしてるんじゃあないか?」


 腹立たしい事に、そういったエロい飲み方に興味が無いわけではないので、誘惑を振り切るのに必死なわけだが…。


「でも、渉。既にこうして準備済みなわけですし、この体勢からグラスへとこぼさずに注ぐのはとても困難です。私自身で啜るのも難しいので、もったいないから飲んで下さい。一回…この一回だけでいいですからっ! わかめ酒よりも難易度が低いと思って、さぁ、一気にどうぞっ!」


 マチュアはそう言うや否や、両手で包み込むように寄せた胸部装甲を俺の口元に近づけてきた。その谷間には、零れんばかりに汲まれた茶褐色の液体が溜まっている。

 ふと目線を逸らすと、テーブルの上に目減りしたウーロン茶のペットボトルが置かれている。どうやら、谷間の液体はそれらしい。少なくとも、薄口うすくちしょうゆや、薄めためんつゆといったオチは無いようなので安心である。


 いや、ここに顔を突っ込んでじか飲みしなくちゃいけないから、“飲む”という行為に関しては安心でもないんだがな。でも、これがカルピスやら牛乳やらの乳白色の液体だったら…と考えると、「見た目がR-18待った無しだったなぁ」なんて思ったり思わなかったり──俺は何を言っているんだ。

 よし、余計な事は考えるな。マチュアの表面装甲を素材として捕えるんだ。こんなの、例え美女のおっぱいに見えたとしても、所詮はシリコンベースの人口樹皮でしかない。そう、半導体。これは半導体の薄膜の上に零れてしまったウーロン茶を、もったいないから顔を突っ込んで飲む…ただそれだけの事。


 ゴクッ…ゴクッ──


「……ん。……んふぅ…」


 ちょっとなまめかしい息遣いが聞こえるけど、これは俺が漏らしちゃった鼻息。決してマチュアの吐息ではない…そう自分に言い聞かせて平常心を維持するんだ、俺。


「「ギギギ…」」


 由子お姉ちゃんと滝川から、“はだしのゲン”っぽい音が聞こえてくるんだが、まさか表情までそれっぽくなってないよな。顔のタッチが変わってたら、俺、泣いた上でSAN値が減っちまうぞ。


 ゴクッ…チュゥゥ~──


「……ぷはっ……。はぁ…はぁ…。な、何とか耐え切れた……じゃなくて飲み切れた」


 飲んだ量は大したことは無いハズだが、凄く疲れた。これが莉穂姉相手だったら、俺は間違いなくお子様には見せられないような行為に及んでいただろう。マチュア相手でさえ、かなり危なかったんだ。これは童貞には危険極まりない儀式だな。


「ふふ…お粗末様♪ どう? もう一杯いっとく?」


 少し顔を赤らめたマチュアが、胸部装甲を寄せ上げながらそんな事を言ってくる。


「さっき『一回だけ』っつったろうがっ! 普通にグラスにつげっての! この変態AIめ!」

「え~…。じゃあ、次はストローを使っても良いですから」

「そういう問題じゃな──今、お前なんつった?」


 俺の問いかけに対し、マチュアがスッと細長いものを差し出してくる。それは、先端から三分の一くらいのところで曲がるタイプのストローだった。

 「そんなのがあるんだったら、最初から出せよ」という思いを込めてマチュアを睨むと、ヤツは恥ずかしそうな表情でモジモジしながら口を開いた。


「自由に動けるボディを持っちゃうと、ついカラダを持て余しちゃうの…」

「こいつ、スパムメールみたいな事言いやがって…。AIだからって、ウイルスにでも感染したか?」

「えぇ、“恋のウイルス”に…」

「よし、初期化して綺麗さっぱり治してやろう」

「ごめんなさいもうしませんからそれだけは堪忍して下さい」


 流れるような動作で床に移動し、土下座をしながら一息で言い切りおった。……いや、よく考えれば、こいつはそもそも息してないんだったっけ。何にせよ、一応は反省したようだから許してやるか。

 情操教育的に悪い事をしただけであって、社会的に悪い事をしたわけではないからな。まぁ、セクハラには分類されるだろうけど。


「……はぁ…。以後、無駄に俺を挑発するような事は控え──」

「ひゃん!?」

「──どうした滝川?」


 マチュアに釘を刺しておこうと思ったら、滝川が急に変な声を挙げたので顔だけそっちに向けた。そしたら、なんということでしょう。ナース服越しでも自己主張の激しかった滝川の上乳が露わになり、谷間にはソーセージが挟まれているではありませんか。

 ……由子お姉ちゃんが用意していた弁当には、から揚げとかもあったというのに、よりにもよってなぜソレをチョイスしたかな。作為的なものを感じる。


「え、え~っと…。ちょ、ちょっと、手が滑っちゃって。…その、もったいないから、た、食べてもらえないかな? なんて、思ってたり…」

「はいDoubt(ダウト)ッ! 滝川、お前はもっと冷静な女の子だと思ってたのに……俺は残念で仕方ないよ…」


 そう、手が滑って落としただけでは、ナース服に包まれていた滝川の北半球うえちちが露出する訳がないのだ。つまり、この状況は意図的に起こされたものであるということ。

 俺は、谷間からソーセージを摘まむと、恥ずかしさと驚きがない交ぜになった表情で固まる滝川の口にそっとかえしてやった。

 ……なんか、余計に卑猥な事をしでかしちまった気がするが、気付かないふりしてポーカーフェイスを決め込むとしよう。


「くっ…! 二人とも積極的に攻めていくわね…。わ、私だって…っ!!」

「止めて! 由子お姉ちゃん、その服で胸元を開けるのは無理だってっ! ゴム繊維が全滅して伸びきっちゃうから止めたげてっ!」


 ブチブチィッと繊維が切れたような音をたてながら、由子お姉ちゃんが体操服の首周りを無理やり引っ張る。

 これ以上おっぱいぷるんぷるんされた日には、俺の中の恋の抑止力が、残酷な天使のテーゼしちゃうから勘弁して欲しい。それに何より、レンタル衣装なのか、自前で用意していたものなのかは不明だが、服が勿体ないから是非とも止めて頂きたい。


「だって! 私だけおっぱいを露出できてないから!」

「しなくていいからっ! “あ~ん”してくれてる時点で十分すぎるほど魅力的だからっ! だから落ち着いてっ! 脱ごうとしないでっ!」


 そんなこんなで、昼食そっちのけで由子お姉ちゃんを必死に説得すること数分。最終的に、「今後、過剰な色目を使うなら、俺はもう莉穂姉以外と食事を共にしないぞ!」と引導を渡すことで事態は収束した。

 おかげで、それ以降は問題なくお弁当と、グラスに入ったウーロン茶を堪能できた。まぁ、食べるときは三人から“あ~ん”をされることになったわけだが、下手にエロサービスを受けるより精神的に楽だったので良しとしよう。



  ▲▽△▼△▽▲



「で。BBは優雅にランチタイムを堪能してきたわけだ? エロコス美女を3人もはべらせて」


 結局、俺が倉庫に戻ったのは午後1時を過ぎてからだった。扉を開けると同時にノーマンに土下座した俺は、絶賛嫌味を言われ中というわけである。

 まぁ、俺がもっとしっかりしていれば、昼食に時間を割くこともなかっただろうし。その点に関しては、首を長くして交代時間を待っていたノーマンには申し訳ないと思っている。だからこうして、甘んじて嫌味を受け入れ──いや、一点だけ物申したい。


「昼食に時間が掛かったのは俺の不手際だと思うが、別にエロコス美女を侍らせたかったわけじゃないからな? そこだけは、ハッキリさせておきたい。それに、一体は人間ですらねぇし…。

 だいたい、俺がエロコスを求めるのは後にも先にも莉穂姉だけだっ! 他の女性に対しては……求めてはいないが、目に付いたら反射的に見入っちゃうだけだからっ!」


「そこは“莉穂姉一筋(ひとすじ)”を貫けよ…と、言いたいところだが、同じ男として気持ちはよくわかる」

「ノーマン。お前なら分かってくれると思ってたぜ!」


 俺の力説に対し理解を示すノーマン、固く握手をする熱き青少年の姿がそこにはあった。


「だが戻ってくるのが遅れた事に関しては許さん。今度、何かしらの埋め合わせをしてもらおうか」

「ぅぐっ……。ま、まぁ、そこに関しては、待たせている事を忘れてた俺のせいだしな。甘んじて受け入れよう。…ただ、お手柔らかに頼む」


 残念ながら、遅刻に関しては容赦してもらえなかったようである。


「安心しろ。今のところ考え付く埋め合わせ内容なんて、せいぜい“サバゲ部を立ち上げるのに尽力してもらう”ってくらいだ。そんなに難しい事でもないだろう?」

「お前…、まだアレを諦めてなかったのかよ…」

「当たり前じゃないかっ! ここ半年くらい、まともに銃撃戦ができてないんだぞ?! なんかこう…、不完全燃焼気味なんだよ!」


 いつぞや女子のパンティについて力説した事があるノーマンだが、今のはその時並みの熱の入りっぷりだった気がする。余程サバゲで銃をぶっ放したいらしい。

 しかし、今のノーマンの勢いだと“サバゲ部”から“ゲーム要素”を取っ払いそうな気がするなぁ。“サバイバル部”略して“サバイ部”になっちまうんじゃないか? 少なくとも、籠月学園うちの生徒は入りそうにないと思う。ノーマンの事が大好きなマージちゃんと篠山ねーちん以外は…。

 しかしこう、「銃撃戦がないとやってらんねぇ」的な言い方だけ見ると、まるでアルコール中毒患者の銃バージョンである。“銃器中毒”、略して“銃中”……頃が悪いな。“火薬中毒”略して“ヤク中”ってところか。うん、実に響きが危険だ。ピーポくんが駆けつけて来て「ダメ。ゼッタイ」とか言われそうだ。

 ……って、こんなアホなやり取りをしている場合じゃあない。


「まぁ、ノーマンの熱意は嫌ってほど伝わったから、とりあえず昼飯食ってこい。ステージの準備とかは俺が今からやっとくから、たっぷり休んでくると良い。ただ、14時にはステージ裏の控えスペースに来れるよう、時間には注意しといてくれ……俺が言えた事じゃないかもしれんが」

「あいよ。じゃあ、準備もろもろ、よろしく頼むわ。…ノーマン、怪人スーツをパージ! 出撃ますっ!」


 力強く宣言すると同時に、颯爽と扉の向こうに消えるノーマン。俺はノーマンの脱ぎ捨てた怪人スーツを持バッグに詰め、中央広場のステージ裏へと移動した。


 まだ劇の開始まで40分以上あるというのに、ステージ前にはかなりの結構な人だかりができていた。だがよく見れば、レジャーシートを広げてランチタイムの余韻をまったりと過ごしている風の人が大半のようだ。どうやら俺達が宣伝して回った劇に関しては、あまり興味が無さそうな感じである。

 まぁ、学園祭でやる劇に対する期待値なんてこんなもんだわな。しかし、だからこそ見ものである。学生の演劇が終わった直後、トップアイドルの網谷紗友莉(さゆり)がゲリラライブを開始した時の観客の表情が…。


 そんなこんなで、観客の反応を楽しみにしつつ、せっせと舞台の準備を行う。

 まずは、怪人スーツに仕込むC-4(シー・フォー)爆弾の準備だ。ノーマンに教えてもらった分量を捻って千切ちぎり、遠隔操作式の起爆装置を埋め込んで使い捨ての背面パックに入れる。

 スーツの裏地には、研究所の実験室に刻んである強力な防御用魔法陣が仕込まれているので、「さすがゴックだ。なんともないぜ」という状況も再現可能となっている。まぁ、俺もノーマンも着衣ごとコーティングできる神力製リダクションアーマーを扱えるので、魔法陣は念のため用意した安全装置のようなものだ。

 家庭部の力作スーツが、ヒーローショーを一回演じるごとに吹っ飛ぶなんて勿体なさすぎるからな。……だったらC-4なんて使わず、普通の火薬で誤魔化せばいいだけなんだが、そこは男の子として譲れなかった部分である。やはり、特撮を見て育った男の子としては、“怪人は、派手に爆死してこそなんぼ”なのだ。


 次に、ステージ上の舞台の準備だ。

 控えスペースに準備しておいた“カジュアルな服を着せたマネキン”を、ステージ中央の少し盛り上がった祭壇風のスペースに座りこませる。

 もちろん、俺自身は怪人スーツを着込んでおり、マネキンは一人一人ロープで縛っている状態だ。生贄として縛り上げられ、力なくぐったりと座り込んでいるように見せかける演出である。これを準備しておいた全7体設置し、“魔王様降臨の儀式”準備完了だ。


 あとは、俺とノーマンが爆発する位置が指定された目印をステージ上から確認。

 ステージの床下にも入り込んで、目印があった位置の床裏に防御用魔法陣がしっかりと刻まれている事も確認した。これで、俺達がステージ上で派手に爆発しても、ステージはピンピンしていることだろう。


 よし、こっちでできる準備は全て完了した。

 あとは──


[──こちら渉。網谷、聞こえるかな?]

[えぇ、しっかりと聞こえるわ]

[あと30分ほどで、例のギミックを発動する段階に入ると思うんだが、そっちの準備はOK?]

[OKよ。ショーが始まったら、また連絡頂戴。ずっとスタンバイしておくから]

[おぉ、心強いねぇ。んじゃ、また開始したら連絡する]


 よし、これで主役である網谷の事前準備も完璧だ。

 ヒーローショー開始まであと20分足らず。本日のメインイベント開始まで、あと少しである。

毎度読んでいただきありがとうございます。

今回は思ったよりも執筆が進んだので、木曜日更新とさせていただきました。


次回は来週金曜日の更新予定です。お暇でしたら宜しくお願いします。

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