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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第五章 夏休み? いいえ、学園祭です
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第04話 - 学園祭一日目 ~昼の部~

前回のあらすじ。

 ついに始まった学園祭の初日。

 開始直後は平和な学園祭だったが、昼を前にしてついに一人目のテロリストが動き始めた。

 演劇部員との連携を活かし、演目の一環というていでテロリストを攫う渉。

 人々の注目を集めつつ、無事にテロリストの捕獲任務を遂行するのであった。

 突然だが、今回のテロリスト対策用に用意した魔導具が2つある。いや、厳密には今着ている怪人スーツも魔導具の一種としてカウントできるので合計すると3つなのだが、これはおまけ程度の物なのでノーカンで行かせてもらおう。


 まず一つは、学園にいる全員に行き渡らせた“吸着式ボタン型魔力通信機”だ。俺が常日頃から左耳の裏側辺りに引っ付けているもので、精神感応魔法テレパシーを使う際に遠方の相手を容易に指定できるというメリットがある。

 ぶっちゃけると、こいつを準備するのが一番面倒だった。なにせ予備を含めて900個も作ったのだ、数が多すぎて涙が出たね。目標数になるまで、毎日毎日、ただひたすらボタンサイズの物体に魔法陣を刻み続ける日々を過ごしたものだ。普通の精神感応魔法テレパシーに一捻り加えた魔法陣だから、他の人に手伝ってもらうには難しい作業だった事もあり、全部俺が手掛ける事になったし…。


 もう一つが、倉庫に用意したテロリスト回収用の“檻”だ。俺がいま向かっている目的地である。

 こいつも、準備するのが中々に面倒だった。一体何が面倒だったのかと言うと、“材料の調達”と“刻むことになった魔法陣の煩雑はんざつさ”の二点である。

 檻は頑丈な鋼材をふんだんに使い、仮に100人の力自慢が束になって体当たりしようとも歪みねぇ硬さを誇る一品になっている。その分、お値段も、用意するまでの時間もやたら掛かる事になったが…。

 そして刻むことになった魔法陣。一つは檻を更に強固に保つために刻んだ俺のオリジナル魔法陣だが、他はこの学園の地下で今現在も稼働している魔法陣をコピーしたものである。

 普通に考えればオリジナルの魔法陣を作り出すのに手古摺てこずったと思われるだろうが、実際は地下の魔法陣をコピーする方が大変だった。何しろ、コピーした魔法陣の内容が下水処理の魔法陣──要は、檻に設置することにした簡易トイレ用の魔法陣だったので、手を抜くわけにはいかなかったのである。

 この魔方陣は完成度が高く、臭いの除去やら排泄物の分解やらが丁寧に作られている。そのため、コピーする際に“処理抜け”が存在しないか、三度は見直したくらいである。おかげでとても清潔なトイレが出来たわけだが、この魔方陣を他で使う機会は……トータルエクリプス島くらいでしかないだろうなぁ。


 さて、今回はどうして面倒な思いをしてまでトイレを用意したのか。それは、前回の体育祭の時の経験からである。

 前回は、思ってもみなかったテロリストの侵入に急遽対処する事になったため、在庫管理用の倉庫の一角に無理やりテロリストを押し込む事になったわけだが、何かあった時のためにマチュアを見張り役に立たせていた。その際、何度かテロリストをトイレに連れて行く羽目になったらしい。

 まぁ、食べ物系の在庫がある倉庫でなかったとは言え、大なり小なりお漏らしされては臭い移りが酷いだろうからな…。そのため、マチュアがテロリストをトイレに連行する間、売店のお姉さんたちに一時的に見張りをしてもらったりしていたわけだ。

 そういった手間を省くべく、今回は仮設トイレ付きの檻を用意したのである。そうすれば、わざわざ見張り要員を割かなくても、倉庫内に設置されている監視カメラだけで事足りるからな。トイレットペーパーも6ロール予備を備えているし、紙切れなどという悲惨な状況にはならないだろう。


「っし、一番乗り~──」


「よっ。BB、遅かったな。俺もテロリスト一体目、ゲットだぜ」


「──なんでノーマンが居るんだよ!? お前、俺が大学棟に向かったのを見送ってたハズだろ!? あと、その台詞、俺とかぶってっから!」


 一番乗りかと思っていたのに、檻の前にはしれっとノーマンが立っていた。

 しかも、ヤツの言葉通りであれば、檻の中でぐったりと転がっている男はテロリストという事になるわけだが…。


「いやぁ、BBが出撃ったあと、すぐに高等部の方でも怪しい動きをしている奴を発見したという報告があってな。こう、“パッ”と行って“キュッ”とシめてきた的な?」


「いやいや、だとしてもおかしくね? 捕えた後の寸劇をしてたら、いくら高等部棟がココから近いって言っても俺より早く戻ってくるって難しいよね?!」


 もしかしてコイツ、「ついに弾丸よりも速く走れるようになったんだぜ」とかぬかすつもりだろうか。もしかして、俺は今後コイツの事を“ノーマン”ではなく“エイトマン”とか呼ばなきゃいけなくなるのか?


「ふっ…、俺は戦闘のプロだぜ? 一般人に気付かれることなく、ターゲットを無力化して戻ってくるなんざ朝飯前よ」


「おいお前、つまりアレか? 掻っ攫ったあとの寸劇を行うこともなく、しれっとテロリストを伸して透明化ベルトで姿を隠し、さっさと戻ってきたって事か?

 …あと、その行動は“戦闘のプロ”じゃなくて、どっちかってぇと“暗殺者”とかの部類だよ。つるぎ鉄也てつやに謝れ!」


「いやぁ、あの台詞を言って立ち去るのはなんか恥ずかしくって…。つい、ちゃったったんだ♪ テヘペロ♪」


 ゴキュッ!──


 テヘペロのくだりが何となくイラッとしたので、つい反射的にノーマンのデコをぶん殴ってしまった。

 後悔はしている。なんせ、俺の右手が酷い音を出したから…。

 くそぅ、流石は神力式リダクションアーマーを展開してない状態で、拳銃の弾をはじくだけのデコをしてやがる。右手首がめちゃくちゃ痛い。

 とりあえず、手首に治癒魔法ヒールを連発しておいた。脱臼はしてなかったけど、捻挫はしてたっぽいし。


「BB、大丈夫か?」


「~~っ…辛うじてな。ちょっと手首の感覚が本調子じゃないから、ノーマン、代わりに俺の運んできたテロリストを檻に放り込んどいて…」


 くっ、殴られた側から心配されるとは……無念。



  ▲▽△▼△▽▲



 思わぬアホな怪我を負ったが、あのあとすぐに手首の痛みは取れていた。こういう時、魔法って本当に便利だと思う。湿布とかテーピングなんて目じゃない回復性能だぜ。

 さて、今現在はお昼時なわけだが、俺とノーマン、それから演劇部の皆は休んでいる暇が無かった。テロリスト達の動きが活発になったからである。

 どうやら連中は、一般参加者の目が屋台やら食事処の出し物なんかに向けられやすくなった頃合いを見計らっていたようだ。最初の二人を放り込んでからというもの、この一時間ちょっとの間に追加で5人ものテロリストを檻にぶち込んでいた。


 今の所、銃器の類を所持した者はなく、いくらまさぐってもC4爆弾に見立てた粘土くらいしか見当たらなかった。4月の強襲の時は非殺傷性の魔法陣が刻まれていたものの、アサルトライフルといった“目に見えた武器”と言えるものを所持していたのだが…。前回の体育祭の時と同じく、人目の多い中での活動の際は目立たないように自粛しているのかもしれない。

 正直言って、襲ってくる事自体を自粛して欲しいものである。


「なぁ、BB。マチュアからの追加報告も、ここ20分くらいは来ないし。今日の所は、襲撃は打ち止め…って見て良いと思うか?」


「まだ何とも言えないな。仲間が次々に捕まっているのを見て、様子見に移ったという可能性もある。

 だが、ついさっきまで10分も待たずに出動しまくってたからな。何にせよ、一度ローテーションを組んで昼休みを取っておくべきだろう。ノーマンはともかくとして、俺や演劇部の皆が、14時からの大立ち回りで力が出なくなっちまう…。

 というわけで、大立ち回りに出る皆さんは先にお昼休みに移って下さい。他の人達は数名残って、もしもの際の出撃に備えて待機をお願いします。申し訳ないけど、まだ残党が居るかもしれないので…」


「「「「「了解。他の子達と相談しておきます」」」」」


 ノーマンが言った通り、最後の動きを見せたテロリストを放り込んでからというもの、マチュアの監視網に引っかかるような人間は現れていなかった。それで不安になったのか、演劇部員が数人、俺達の居る倉庫まで足を運んできていたのである。

 俺は、来ていた演劇部員に休憩について注意事項を伝えると、ノーマンへ向き直った。


「それと、ノーマン。悪いけど、俺も先に昼食をとらせてもらう。食ってすぐに大立ち回なんかしたら、俺の脇腹が大変な事になりそうだからな。お前と違って、俺はホラ、戦闘のプロじゃねぇから」


「そこまで言われちゃあ、しょうがねぇなぁ。俺がBBに先を譲ってやるよ」


 大げさに仰け反りながら、ノーマンが調子づいた感じを装う。なんだろう、演じているだけだと理解できるのに、コイツが調子こいてる姿を見るとちょっと引っ叩きたくなる。

 結局、さっきの失敗もあったので、ノーマンのデコを軽く引っ叩く程度に留めておいた。


 俺は急いで怪人スーツを脱ぐと倉庫を出た。寮1Fの奥まった位置にあるこの場所には、デパートなどでよく見かける“STAFF ONRY”と書かれたプレートが立っている。その横を通り過ぎ、いくつもの店舗が並ぶ物販コーナーを横目に、玄関ホールから外へと移動する。

 今通り過ぎた物販コーナーの中にはコンビニもあるのだが、せっかくの学園祭なので他のクラスの出し物や、家庭部員が監修している屋台の食べ物を楽しみたいところだ。


「やっぱまずは、王道の“焼きそば”もしくは“たこ焼き”……“お好み焼き”も捨てがたいな。あと絶対に、“フランクフルト”の屋台は外せな──」


「渉、お昼まだでしょ? お弁当を準備しといたから、行きましょ♪」


 ──幼馴染み兼クラスメイトの滝川が突如現れ、俺の左腕をガッチリホールドしてきやがった。解きたいのに、GW中に行った神力を扱う修行の成果か、俺の素の筋力じゃあビクともしないし地味に痛い。しかも、滝川の巨乳に腕が綺麗に収まっているせいで、周りからの視線まで痛いときたもんだ。


「えぇい、HA☆NA☆SE(は・な・せ)!」


「嫌よ。離したら絶対、私を振り切って逃げるでしょ。私だって、学園祭を渉と一緒に過ごしたいもの。

 さ、諦めて一緒に行きましょ♪ 理事長とマチュア先生も待ってるわ」


「え?! なんで、その二人まで……ちょ、痛い。わかった。行くから、ついて行くから! 関節()めるのやめて!」


 テコでも動かないつもりでいたのだが、神力で強化しているらしい滝川にズルズル引き摺られる形になり、関節が凄く痛いことになってしまった。こんな事なら、最初から素直について行けばよかったと思う。

 このあと、無茶苦茶治癒魔法(ヒール)した。



  ▲▽△▼△▽▲



 滝川に連れてこられたのは教職員棟、その2Fだ。そしてこのフロアには、たった一室しか部屋らしい部屋は存在しない。そう、“理事長室”である。体育祭の事後処理の際は、テロリストを含め皆を収容して作戦会議部屋として使ったりした部屋だ。

 滝川が、右手で俺の左手を恋人繋ぎでガッチリとホールドしたまま、左手で理事長室の扉をノックする。


籠月こもつき理事長、滝川奈津美です。渉を連れてきました」


「滝川さん、良くやったわ! どうぞ入って頂戴。準備も出来てるわ」


 ガチャ──


「失礼します」


 部屋の中から由子お姉ちゃんの嬉々とした返事があったので、俺は滝川に続いて部屋に入った。


「ッ!!? なに……コレ……?!」


「いらっしゃい、渉君。さぁ、恥ずかしがらずココに座って頂戴。私達が“あ~ん”して食べさせてあげるから♪」


 いや、もう“あ~ん”については割と高頻度でやられていたから半ば諦めも付き始めていたが、その恰好は何だ。

 理事長である由子お姉ちゃんは、体育祭の時に装着していたウサ耳に加え尻尾まで装着したパーフェクト装備の上に、ブルマの体操服姿をしている。「その獣装備であれば、普通はバニーガールだろう!」と言いそうになってしまったが、今の服装も由子お姉ちゃんのワガママバディのせいで凄まじくけしからん状態だ。


 そして、もう一人──いや、一体(・・)である科学的人造人間アンドロイドのマチュア。こいつも体育祭直前に魔改造したネコ耳に、尻尾装備と言うパーフェクトスタイルである。しかも、こいつの場合は自身の電気信号を使い、耳と尻尾を本物の様に動かせるというオプション付きだ。師匠や義父とうさんとの共同制作とは言え、我が子ながら恐ろしい使い方をしやがる…。

 さらにマチュアの格好も問題だ。海開きの際、マジカルゆかりんと関口と妹尾せのおの三人に止められ、没収されていたスリングショットの水着を着ているではないか。実に目のやり場に困る。いや、生身の人間じゃないって分かってても、肉感とか皮膚の感じとか、研究所が総力を挙げて創り上げちゃったもんだから、生身の女性との違いが本当に分からないレベルでけしからんのよ。


 ……ふぅ。莉穂姉と言う心のストッパーが居なかったら、俺はこの二人のエロスな雰囲気に呑まれ、性欲を持て余して熱いパトスをほとばしらせていたことだろう。マジで危なかったと思う。

 それにしても、ただでさえ色香がヤバイってのに、そんな二人が陣取ってる間のソファに座れとか、どこのいかがわしいお店だよ…。いやまぁ、座らなかったら座らなかったで、二人が俺の両サイドに移動してくるだけだろうから、素直に従うけど…。


 俺は血流が良くなった頭を冷やすため、左隣に居る滝川に目を移す。

 左腕の一部が、非常に柔らかい滝川の巨乳に埋もれているので、これはこれでヤバイのだが、姿かたちは毎日のように見慣れた制服姿である。

 ……うん。すごく冷静になれた。滝川が「ぐぬぬ…」とでも言いそうな表情で二人を睨んでいたから…。


[くっ…。「理事長である私や、教師であるマチュア先生が渉君を迎えに行くと目立つので、滝川さんお手数ですが彼を連れてきて下さい。昼食はこちらで準備しておきますので」と、魔力通信が来た時点で疑っておくべきだったわ。私同様、渉と一緒に居たいと願っている女性だもの、何らかの仕掛けも準備するに決まっていたじゃない! 私としたことが、不覚! これじゃあ、渉の注意を私に向ける事なんて…]


 ちょっとプライバシー的にどうかとは思ったが、精神感応魔法テレパシーで滝川の考えを覗いてみたら案の定(くや)しがっていた。滝川としては忸怩じくじたる思いだろうが、俺からすれば冷静さを保つためにも滝川には是非ノーマルフォームで居て頂きたい。

 よし。クールダウンも済んだし、いざ決戦の舞台へ参ろうか。


「そうそう、滝川さん。あなたにも耳と尻尾を用意させて頂いてます。お好きなものを選んでくださいね。コスプレ衣装もそちらに多数用意していますので、お好きなのを着用してください。ご覧の通り、胸の大きな女性向けの服ですので、滝川さんでもキツくはないはずです」


「ッ!? ありがとうございます、理事長!」


「なん……だと……っ!!?」


 由子お姉ちゃんの言葉通り、確かに彼女は巨乳である。そして、言われてみれば着ている体操服もぱっつんぱっつんという状態ではなく、丁度良い感じにフィットしていた。

 その言葉を聞いた滝川は満面の笑みで返事をし、俺は己の理性と格闘する羽目になったという現実に戦慄を覚えた。

 由子お姉ちゃんが指した先──俺達が入ってきた扉のすぐ横には、獣耳と獣尻尾がワンセットでパッキングされた物が数種類吊るされており、その隣には様々なコスプレ衣装がハンガーに掛かって並んでいた。バニーガール、カウガール、春麗チュンリーが着てる服、チャイナ服、キャビンアテンダント風、OL風、オーソドックスなセーラー服、園児服……園児服?! いや、ダメだろそれは。完全にいかがわしい目的な服装じゃないですかね!?


 何にせよ、アレだ。滝川がどんな組み合わせでコスプレしようと、俺は理性を保ち続けながら昼食をとらなきゃいけない事が確定したわけだ。

 全世界の姉好き(シスコン)達よ。我に、力を──理性を保ち続けられるだけのオリハルコン・メンタルを与えたまえ…。そう、俺の闘いは、これからだっ!

毎度読んでいただきありがとうございます。

何とか金曜日更新に間に合いました。


まるで打ち切りエンドっぽい締め方ですが、来週も普通に続きます。


次回も金曜日更新予定なので、お暇でしたら宜しくお願いします。

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