第08話 - 敵が持つのはポンコツ銃器
しれっと、昼間に投稿してみる。
「一週間くらいで何人がアクセスするんだろう? 1~2人くらい気づくのかな?」
と思って投稿してみた作品ですが、意外と投稿後に毎回5~6PVあったみたいなので、ちょっと実験。
─ 2012年4月20日(金) 09:22 ─
「さて、リーダーの元に突入する準備は整ったけど、その前に……」
俺は先ほどまで気絶していたテロリストに向き直り、疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
[俺を初めに見つけたとき、お前は驚いていたな? そのあと、人間兵器かもしれないと判断して俺をリーダーの元に連れて行こうともした。 それぞれの理由を知りたい]
[学園敷地内に侵入する直前、教祖アリサ様より『後日、この学園に人間兵器が着任予定だが、まだ到着してはいない。今のうちに学園を制圧し、ノーマンを捕縛するための人質にせよ』との通達があったのだ。また、アリサ様からの情報によれば、この学園には女性しか居ないという話だったのだが、実際にはお前が居た。これが驚いた理由だ。 特徴は一致しなかったが、人間兵器である可能性が極めて高いと判断した。俺ではアリサ様に連絡を取る手段も無かったから、リーダー経由で指示を仰ぐつもだったのだ。 いくら人間兵器でも、これだけの人質が居れば大人しくついてくると考えていたのだがな…]
ところが実際は人間兵器のノーマンでもなく、大人しく連れて行かれることもなく、逆に気絶させられる羽目になったと…。
仮に制圧できたとしても、そのあとの交渉でノーマンにアラビア語が通じなかった場合どうしていたのだろうか、コイツは。いやまぁ、実際にノーマンはアラビア語も使えはするけどさ。
それに、教祖様とやらの情報を一から十まで信用し過ぎだろ。そこまで詳しく知ってる事に、誰も疑問を持たなかったのだろうか。どれだけ心酔してるんだよ。
しかし、俺が小一時間前に考えていた「ノーマン目的で襲撃した」というのは全くの見当違い…というほどでもなかったが、そもそもノーマンがまだ居ないという前提での襲撃だったのか。通りで、教室の制圧にテロリストを一人しか配置しないわけだ。アサルトライフルを持った人間を前にしてしまえば、一般人…しかも女性ではなすすべもなく投降せざるを得ないからな。あくまで、魔法を使うことができない一般人相手ならだが。
だがやはり妙だな。教祖様とやらは、どうしてノーマンが籠月学園に来ることを知っていたのだろう。しかも、通達の内容からして学園に来る時期もちゃんと知っていたようだし…謎が深まるな。
それにしても、魔力センサーやノーマンたちを認識阻害に陥らせるような魔法陣入りの高性能ベルトを計30人に用意しているくせに、一般人を相手にすることしか想定していないような武器を支給しているという点がどうにも引っかかるな。もしかして、コイツらが持ってるAK-47にも何らかの魔法陣が組まれていて、対ノーマン用或いは、対魔法使い用のギミックでも仕掛けられているのだろうか。
「BB、まだ確認に時間がかかりそうか? そんなに見つめ合ってると、そこの腐女子らがイキイキしていくぞ?」
「あぁ、そこはもう諦めたからいいや。好きに同人誌を厚くしてくれって感じ。 とりあえず、あと4~5分待ってくれないか? どうにもコイツらの武装がちぐはぐに感じてな。AK-47に何かギミックが仕掛けられていないか確認してみる」
試しに、俺が倒したテロリストの持っていたAK-47に“魔法陣解析魔法”をかけてみる。
この魔法は、文字通り魔法陣に刻まれた魔法効果を見やすくするもので、イメージとしてはプログラムコードを読む感覚に近い。魔法陣は肉眼でも読むことができるが、この魔法を使う事で対象に刻まれた魔法陣の見落としがなくなる上、陣の処理内容を追いやすくなるので地味に便利なのだ。ただし、建物のように広範囲が接しているものを対象とした場合、ある程度範囲を狭めないとブラウザクラッシュを踏んだ時のように豪い数の陣を発見してしまう事があるので注意が必要である。
ちなみに、例え同じ効果を発動する魔法陣でも人によって陣の構築方法に癖が出たりするので、時間が余った時に比較しているとなかなか興味深い発見ができたりする。
尚、普通に魔法を使う際は、俺や菜月先生が行っていたように頭の中で魔法式を構築して発動させるのが基本だ。発動された瞬間に効果を解析するという行為は自滅行為に等しいので、事前に相手の魔力の流れを見るための魔法を習得する必要がある。そのため、基本的に相手が魔法を発動しそうだと感じたら、まずは“抵抗魔法”で魔法への抵抗を高めるというのが定石となる。
また、魔力を込めた呪文の詠唱による構築も可能ではあるが、敵に発動内容が予測されやすく、発声というプロセスを含むため発動が遅延するといったデメリットが出てくる。味方が多い状況であれば仲間同士の連携や、魔法の効果範囲のバッティングを防ぐという意味でメリットが強くなるのだが、基本的に少人数一組での行動が多いので呪文詠唱の利便性はあまりない。強いて言えば、「魔法使いっぽくてカッコイイ!」というくらいである。
ざっと見た限り、目立った箇所に魔法陣は見当たらなかったのだが……やはり、反応があったか。しかも銃口内部に一箇所とマガジン内部に二箇所…計三箇所も刻んである。それを30人分もやったのか、とんでもなく根気のいる作業だったろうな。敵ながら感心せざるを得ない。
さて、一体どんな魔法陣が……えっ?
「はぁあ?!」
「BB?」「渉?」
ノーマンと菜月先生が、俺の反応に怪訝そうな顔を向けてくる。だが、魔法陣を解析したところ、コイツらが構えていたAK-47は致命的な欠陥を抱えたポンコツ兵器でしかなかったのだ。そりゃ驚きもするだろう。むしろ、素手で戦った方がマシかもしれないと言えるくらいの代物に成り下がっている。
念のため、他の8人が持っていたAK-47も一挺ずつ確認してみたが、やはりすべて同じ魔法陣が刻まれていた。手間暇のかかる丁寧な陣になっている分、余計に不気味である。
よく周りを見渡してみれば、現在この教室内に落っこちている薬莢は、俺がノーマンのおでこめがけて撃った時の1発分だけで、天井にめり込んでいる弾頭も俺が撃った1発だけだ。…どうやら、魔方陣の効果に間違いはないようである。
俺は先ほどのテロリストに向き直り、再び質問する。
[この武装は、ベルトも含めてすべて教祖様が用意したものなのか? 「誰がどのAK-47を持て」という指示等は受けていたか? 他に教祖様は何か言っていたか?]
[これらはアリサ様が直々に用意し、我々に直接手渡してくれたものだ。 どのAK-47を持てという命令は無かったが、手渡されて以降、各自大切に所持していたので実質固定武装と言えなくもない。 何か言っていたかと言われれば、「いくら撃とうと、私の加護により弾切れは起こさない。いざと言うときは乱射しても構わぬ」と仰せだったか]
[…そうか、わかった]
まるで、コイツらが捕まるように“わざと持たせたとしか思えない”と考えていたが、今それが確信に変わった。教祖様とやらは何が目的かは分からないが、コイツらを防衛軍或いは警察に捕えさせるつもりだ。
もし仮に、この学園を制圧できたとしても、防衛軍や警察が来てしまえばこの武器は絶対に役立たない。初めのうちこそ善戦できるかもしれないが、いずれコイツらの魔力が枯渇してぶっ倒れることになるので、お縄になってしまう未来しかないのだ。
念のため、AK-47を調べるついでに、各テロリストの体内に何らかの魔法陣が刻まれてはいないかと確認したが、反応があったのはベルトとAK-47だけだった。つまり、コイツらの身ぐるみを剥いで防衛軍や警察に引き渡してしまえば、あとは適切な対応を任せられるのだ。自爆して収容施設を破壊するなどといった迷惑行為はできないのである。
本来であれば同情してやる義理もないのだが、さすがに少し不憫に思えてしまった。…心酔されすぎて、鬱陶しく感じたのだろうか……いや、まさかね。
「BB、どうかしたのか?」「渉、どうしたっていうの?」
「マジカルゆかりん、こいつを見てくれ。どう思う?」
ノーマンと菜月先生が心配そうに声を掛けてきたので、とりあえず菜月先生にも判断させてみることにした。ノーマンは魔法陣解析魔法ができなさそうなので、悪いがスルーさせてもらう。
「ん~、重くて持ちづらいわね。それに、私には大き過ぎるわ」
「いや、ここでそんなボケはいいから魔法陣解析魔法を頼んます」
「…俺は放置プレイ?」
「ノーマンは神力関係だったらともかく、魔法はあまり慣れてないだろ。敢えてスルーしただけだ気にすんな」
「他人の刻んだ魔法陣を読むのは、地味に面倒なんだけど………ん?……え?!」
魔法陣の効果に気づいた菜月先生が、さっきの俺と同じ反応をする。他の8人のAK-47にも触れて回り、腑に落ちない表情をしながら俺に問いかけてくる。
「ちょっと、この手の込んだ自殺仕様の銃はなんなの? 意味が分からないのだけど」
「落ち着いてマジカルゆかりん。意味が分からないってのは俺も一緒」
「なぁ二人とも、俺にもAK-47のギミックについて三行で頼む」
一人だけ蚊帳の外になっているノーマンが、仲間に入れてほしそうにこちらを見てくる。
「ん~、ちょっと自信ないけどまとめるぞ。 “これで撃たれても、まず人が死ぬ事はない” “撃った1秒後に弾丸がマガジン内に復活する” “使用者が簡単に魔力枯渇でぶっ倒れる” こんな感じかな」
「マガジン内に弾が復活する? まさか、薬莢と弾丸だけって意味じゃねぇよな?」
「もちろん火薬入りで復活する。そういった意味ではリロード無しで弾切れもしない素晴らしい一品だ」
「でも、復活ってどうやってるんだってばよ? フルオートで毎分600発も連射できるように、弾丸は常にマガジンの下方向からスプリングで押し上げられてるんだぞ? BBだって、グロッグ26のメンテしてるんだろうし、弾込めの面倒臭さは分かるだろ?」
「あぁ、そこもちゃんとギミックがあってな。弾丸を押し上げるためのスプリングと繋がってる板があるだろ? それが、弾丸の復活…実際は使用前の状態に復元した上での転送なんだが、その際に弾丸一発分下がるように作られてるんだよ。 こう…口での説明は難しいんだけど、板に陣が刻まれてて、板そのものから弾が生えてくる感じ? で。生えてくるのに合わせて、板自身がスプリングを押して下がっていく…みたいな」
俺は身振り手振りをあわせて、どうにか魔法陣の効果を説明していく。これだけを見れば実に使い勝手が良さそうな気がするが、何の代償も無しにそんな事象を起こせる魔法や魔法陣は存在しない。必ず魔力消費というものがついて回るのだから。そして、その事実にノーマンも気付いたようである。
「あ~…そんだけ凝った作りだと、燃費が悪そうだな」
「悪いなんてもんじゃないわ。撃ち出した弾を、マガジン内に転送してるのよ? しかも、発射時に使った火薬は使用者の魔力で再構成するように組まれてるわ。どれだけの火薬が必要になるのかは私には分からないけど、こんなのを撃ち続けてたら30分持たずに気絶するわよ」
菜月先生が声を荒らげて回答する。まるで、「少し考えれば分かるでしょ!」と言わんばかりである。
「それに、俺が最初に挙げた通り、これで撃たれても人が死なないよう著しく速度を抑制している。更に、接触時の衝撃を分散するために弾頭の10mm先の位置に半円状のシールドが張られるよう、銃口に陣が刻まれている。そのせいで、一層魔力消費がでかくなってるんだ。 まぁ、そのおかげでマガジン内に転送した弾頭の変形を、修正する必要もなくリサイクルできているとも言えるんだが…」
結局のところ弾丸の殺傷力は、速度による貫通性能の高さに物を言わせている部分が大きい。速度を削られてしまえば、いくら硬いとはいえ10gもない弾頭なので逆に弾かれることになる…それでも音速よりちょっと遅い程度の速さで飛んでくるので、痛いものは痛いのだが。更に、半円状のシールドが張られているので接触時の衝撃が分散され、余程当たり所が悪くなければまず死人は出ない仕組みになっていたのだ。
また、ノーマンには詳細なギミック内容を端折ったが、これら三箇所の魔法陣はそれぞれ連動している。
まず、マガジンの上層部に刻まれた魔法陣で撃ち出される直前の弾丸の構成情報を記録。銃口の魔法陣で弾頭にギミックを施しつつ、発射されたというフラグを持たせる。マガジン内の板に刻まれた魔法陣により、発射フラグ検出後1秒経過すると排出された薬莢と弾頭を、記録した情報に基づき復元して転送させる…といったプロセスになっているのだ。
先ほど周りを確認した際、テロリストが教室に乱入した時に乱射していた数発分の痕跡が、綺麗さっぱり消えていたのはこのためである。銃口の魔法陣が殺傷力を落としていたので、天井に弾痕が残る事態にはならなかったわけだ。
…教室破壊をしたのは俺だけってことになってしまったな。しかも、ノーマンにツッコミを入れるためだけにぶっ放したのが原因である。なんとアホ臭い…。あとで理事長に謝りに行こう。
「しかしそうなると、なんでコイツらはそんな装備を持たされたんだ? わざと捕まって収容施設を破壊させたり、単に施設の位置を割り出すのが目的なんだろうか……いや、まだ全部の武器がポンコツ仕様とも限らないな。楽観は禁物か」
「おぉ、さすがは2年間も紛争鎮圧していただけはあるな。脳筋なようで、実はちゃんと考えてる。そこに痺れる憧れるぅ。 だがまぁ、少なくともここにいる9人に関してはそういった作業はできないよ。身体に魔法陣が刻まれているわけでもないし、コイツらに魔方陣を作成するだけの知識があるとも思えないからな」
もし、魔方陣の知識があったなら、まずはこのギミックに気づけただろう。魔法陣解析魔法ができなくとも、メンテナンスの際に目にする機会はあったはずだからな。
更に付け加えると、コイツらの魔力量はこの学園に在籍している生徒たちよりも圧倒的に低い。仮に魔法が使えたとしても長持ちはしないだろう。少なくともここに居る9人に関して言えば、学園の生徒数名だけでも無力化できることが確定しているのだ。
「マジかよ、いよいよもって不気味な話だな。親玉は一体何がしたいんだ?」
「俺にも分からん。だが、コイツらの親玉である教祖アリサ様とやらは、少なくともお前がこの学園に編入することを知っていたのは確かだ。その情報収集能力の高さだけでも既に不気味だよ。 何にせよ、真相は親玉である教祖様に聞いてみない事には分からないな」
「もし、その教祖様とやらも、裏ボスに操られているだけの存在だとしたら…BBどうする?」
「おいバカやめろ。下手にフラグを乱立させようとするんじゃない。 …まぁでも、その時はその時だよ。俺は俺でお前のサポートとして最善の働きをするだけだ。 お前もお前で、自分のやれる最善を実行するだけ…そうだろ?」
「フッ…それでこそBBだ。これからも頼りにさせてもらう」
ノーマンが安堵の混じった声で右手を差し出してくる。まるで映画終盤の決戦を前にしたワンシーンみたいだなと思いながら、俺もノーマンの手を取って固く握手した。「よし、やるか!」と無言で頷き合って気合を入れる。黒薔薇三連星から歓声を堪えて息をのむ音が聞こえてくるが、気にしてはいけないと自分に言い聞かせる。
「ちょっと二人とも。気合入れてるとこ悪いけど、さっさとリーダー格をぶっ飛ばして終わりにしてくれない? 私もテロリストのお守りなんてしたくないのだけど」
「「アッハイ、ごもっとも」」
ジト目の菜月先生から“巻き”の催促がきてしまった。厨二病男子なら、一度は憧れるシチュエーションだと思うのだが、腐女子以外にはどうでもよかったみたいである。
次回の投稿も、明日の昼を予定してます。




