第12話 - 学園祭について相談してみた
前回のあらすじ
ここ最近、莉穂姉とキャッキャウフフ…したり、莉穂姉を妄想する時間が足りてない事に気付いてショックを受ける渉。
ノーマンに愚痴をこぼす中、天野がとんでもない爆弾発言を投下する。
「この島はどこの国にも属してない。であれば、渉が“一夫多妻制もOK”という法律を作ってしまえば、滝川達も満足なんじゃね?」と…。
喜びをあらわにする滝川達の期待を余所に、「その件は考えさせてください」と渉はヘタレるのであった。←今ココ(前回って、本当に話の内容が薄いんだなって思いました)
「まったく、これで重婚オッケーって流れにしてくれれば、名実共に『ハーレム系ラノベ主人公野郎』が完成していたのに…。
ま、渉の姉好きっぷりは10年以上見てきたから、素直に頷くことは無いって分かってたけど」
ついさっき爆弾発言をした張本人の天野が、ひょうひょうとした態度でそんな事を言いやがった。
それにしても、俺のさじ加減一つで“ソドムとゴモラ”のような爛れた国にも、楽園のように住みよい国にもできるという事に気付くとは…こやつ天才か。
単に「師匠から島を引き継いだだけ」程度にしか考えてなかった俺とは一味違う。…一味違うのだが──
「──なんで天野は、莉穂姉達が居るタイミングで言っちゃうかな。…ほら見ろ、なんか莉穂姉達が4人で集まって“審議中”な雰囲気になっちゃってるじゃないか。ったく、どう収拾をつける気だよ…」
「何言ってるんだ。“お前を狙ってる女性陣が居る中で言う事”が目的だったんだから、他の場面でいう訳ないだろ」
「…嫌がらせかよ」
「いいえ、ケフィアです」
「また懐かしいCMネタを──って、そうじゃなくて! 嫌がらせじゃないなら、何だってんだよ?」
俺が不満気に聞くと、天野はヤレヤレと言った感じで頭を振って答えた。
その仕草、ノーマンがたまにやるから止めて欲しい。反射的に引っ叩きたくなる。
「気付かんのか? 滝川達のヤキモキした思いと、お前の悩みを解決させるために決まってんだろ? まぁ、一時的なものかもしれないがな」
「滝川や由子お姉ちゃんの件は…まぁ、何となく分かるとして、“俺の悩み”ってのはどういう意味だよ?」
「あれ? 莉穂姉以外からも過度なスキンシップを取られてるせいで、『莉穂姉以外の女性にドキドキしそうになるだなんて…悔しい、でも感じちゃう!』みたいな、煩悩と冷静の間に悩まされてたんじゃないかな…と思ったんだけど、実は平気だった?」
「ぐっ…その辺は、確かに平気じゃなかった」
何しろ、滝川も由子お姉ちゃんも胸部装甲が実に豊かで、意識が持って行かれそうになるほどの感触である。
莉穂姉と言う心の支えがあったからこそ煩悩を退散できていたとはいえ、素直に好意を寄せてきている女性からスキンシップを取られるのは、正直きつかったというのが本音だ。
俺は義理の姉に性欲を持て余す変態だと自負してはいるが、誰彼構わず手を出すようなチャラ男には、断じてなるつもりはない。
鋼の精神で耐えてはいるが、いつ誘惑に負けて「ハーレムもいいよね」などと吹っ切れちゃうか分かったものではなかったので、彼女らには「俺を諦めてくれないかなぁ」と思っていたのだが…。
「…それで、さっきの爆弾発言で俺の悩みがどう解決するのかを詳しく。俺にはむしろ、“俺を諦める”という着地点を見てくれなくなったようにしか思えないのだが?」
「甘いな、渉。仮に俺がさっきの話をしなかったとしたら、明日も明後日も…これからずぅ~っと、滝川達にスキンシップをとられ、煩悩を押し殺す修行生活が続いていただろうよ。なんせ、莉穂姉とお前の呆れるほどのバカップルぶりを近くでみていたにも関わらず、グイグイ来ていたのだろう?」
「チッチッチ…」と言わんばかりに人差し指を振りながら、ドヤ顔をする天野。
確かに、滝川や由子お姉ちゃんにはやらないようなベッタベタの莉穂姉とのスキンシップを、ことあるごとに見せつけていたにも関わらず、二人とも……いや、マチュアを含めると三人だが、皆諦めることなくグイグイ来ていたのは事実だ。
莉穂姉も最初の内は余裕を見せていたが、いつの頃からか俺を抱きしめる時の力が以前と比べて3割増しくらいになっていたくらいである。
そんな事を思い出していると、俺の表情を見た天野がドヤ顔をキープしたまま続ける。
「要するに、“北風と太陽”というか、“押してダメなら引いてみろ”的な理屈だよ。渉の横が一枠しか空いてないから、滝川達も『何とか自分の事もちゃんと見て欲しい』と必死になるわけだ。
だが、俺が“枠を一つだけにしない方法”を提示した事で、彼女らの心にも少し余裕ができたはずだ。特に滝川なんかはお前の性格を良く知っているだろうから、『今までのように無理に迫ると、渉の好感度を下げかねない』と判断してスキンシップも控えめになるだろう。たぶん、あの色っぽい理事長さんや、アンドロイドの姉ちゃんも同じ結論に至って大人しくなるはずだ」
「そうか。つまり薫は、奈津美達を“賢者タイム”状態にしたってわけだな」
「「ノーマン、他に表現方法はなかったのか?」」
間違ってはいないと思うが、オナニー後のクールタイムと同列に扱うのは酷くないだろうか。
天野の方も同じ心境だったらしく、俺と同様にジト目でノーマンを見ている。
「…ノーマンの表現のせいで微妙な感じになっちまったが、まぁそういう訳だ。
莉穂姉と渉の仲を見てきた上で参戦していたのだから、彼女らも相当な覚悟の上で諦めてこなかったんだろうが、少なくともこれ以上過激なスキンシップはしてこないだろう。
学園を卒業しても彼女らが諦めず。渉が莉穂姉との結婚を発表しても諦めないようなら、その時はお前が受け入れるか、それとも完全に拒否するか……その時のお前の気持ち次第だな。なんにせよ、これで少しは落ち着いた学園生活ができると思うぜ?」
一度溜息をついた天野が、俺に視線を戻して改めて説明してきた。
話を聞いてみると、意外にも俺にとっての利益が大きい気がしてくる内容だ。
当初は、「俺にドタバタラブコメ的なイベントをさせたいだけなんじゃなかろうか?」と邪推していたのだが、ここは素直に礼を言っておこう。
「ありがとう、天野。まぁ正直な所、とんでもない爆弾発言ではあったが、俺の今後の学園生活にとっては必要な措置だったと思う。今度、何らかの形で改めて礼をさせて欲しい。…それにしても、よくそんな発想が出てきたよな。俺なんて、『どうやったら諦めさせることができるのか?』などと悩む一方で、邪険に扱えるわけでもなく…と、煮え切らないまま考えがまとまらなかったくらいなのに」
「あぁ、そりゃあ俺も二次元の女性を求めて十数年、叶わないかもしれない理想を求めて邁進してきたからな。何となく、滝川達の『諦めたくない』という思いに共感できたし、どうやったら心に余裕が持てるか…って事に気づき易かったんだと思う」
そこで一度区切ると、天野は俺にニヤリと笑いかけながら続けた。
「ま、そういう方法もあるんだと気付く事ができたのは、渉のおかげだったりするんだがな」
「えっ? 俺?」
「おうよ。今週頭、お前から提案があったろ? まぁ、断った話ではあるけど…」
「あぁ。『現実を二次元として魔法で認識させる』っていう、あの提案か」
これと言って思い当たる節はなかったのだが、“天野が断った話”となるとそれしか浮かばなかった。
「そう、それだ。今でも、あの提案を受ける気はない事に変わりはない。だがそれでも、“そういう解決方法がある”って分かったあの時から、俺の中の焦燥感が凄く落ち着いたのを実感できたんだ。
そしたら、急に視野が広がったというか、落ち着いて色々な物事を捉えられる余裕ができたというか……ま、ハッキリ言うと、『網谷の気持ちにしっかりと向き合った上で、ちゃんと結論を出そう』っていう気になれてな。
今までは、『網谷がどんなに俺に好意を寄せていようと、俺は絶対に二次元に行って理想の女性と添い遂げるんだ!』と必死だったんだが、渉がある種の解決策を提案してくれたおかげで、俺は心に余裕を持てるようになったんだな…と感じたんだ」
やだ、何このイケメン二次オタ野郎。普通にカッコイイって思ってしまうじゃないか。
ただの嫌がらせで変な提案をしてきた…などと疑ってすまない。
「ま。最初に言った通り、渉が諦めて重婚オッケーな法律を発布すれば、名実ともに『ハーレム系ラノベ主人公野郎』って言えるんだがなぁ…という考えがあったのも事実だけどな!」
「一瞬感動しかけた俺の想いを返せ」
「フヒヒ…サーセン」
ジト目で非難する俺に対し、キモオタ風に天野が謝ってくる。
まぁ、俺も本気で非難していたわけではないので、天野もそれを分かった上での反応だろう。
「ところで、BB。さっきの“莉穂姉分不足による発作”的な症状は、薫のおかげで少しは軽減できたのか?」
変なドタバタが入ったせいですっかりそれどころじゃなくなっていたが、確かについさっきまで「もっと莉穂姉とイチャイチャしてぇ!」的な心の叫びをノーマンに語っていたな。
「莉穂姉分不足については、軽減と言うか……こう、アレだ。ビックリしちゃって、尿意が引いた時の様なそんな感じで落ち着いてはいる」
俺の返答を聞いたノーマンのヤツが、「BBこそ、その表現はどうなんだよ?」とでも言いたげな表情でこちらをみているが気にしない。
「さて、現地時間ではそろそろ昼ではあるが、日本時間ではガッツリ深夜の時間帯だ。ノーマンは戦場で徹夜することもあったろうから問題ないとして、天野や網谷はどうだ? 眠くなってきているのなら、俺の実家に戻すこともできるが」
「俺は…、たまにゲームで徹夜することもあるし、今のところ問題ないな」
「私も。撮影時間の関係とかで、変則的な睡眠を取ることがあるから平気よ」
何やら会議をしだした莉穂姉達はひとまず置いといて、天野と網谷にまだ大丈夫か確認してみると、二人とも中々にタフなようである。
ちなみに、学園の生徒達はと言うと、睡魔の限界が来た人から転送部屋に行き、学園へ帰還している姿をチラホラと見かけている。
まぁ、南国の日差しに照らされているとは言え、本来寝ている時間帯にビーチではしゃぎまわっていれば、ほど良い疲れと共に睡魔がやってくるというものだ。
俺はと言うと、悲しいかな正座で説教させられていた時間が長いので、割と体力的には問題ない状態である。…そうじゃなくても、稀にノーマンから夜中に叩き起こされる案件もあったから、急な夜更かしには耐性があったりするわけだが。
「そうか。んじゃあ、認識阻害の腕輪はまだあとでいいな。……っと、そういや関口や妹尾、マジカルゆかりんとかは大丈夫だろうか?」
「…あぁ、それなら薫のヤツが魔力を通せるようになったのを確認したあと、『そろそろ眠くなってきたから帰る』って、BBに伝言を頼まれてたんだ。……そうだよ、もともとはそのためにBBの所に来たってのに、いきなり変な愚痴を聞かされてこんな事に」
ごめん、ノーマン。今回ばかりは、全面的に俺の責任だわ。
正直、すまんかった…。
「…とまぁ、心の中でノーマンに謝罪したから“良し”として──」
「いや、そこは面倒がらずに声に出して謝って欲しいところなんだが…」
「──“良し”として…だ。天野にちと相談してみたい事ができたんだが、良いかね?」
「俺に? 別に構わんが、大した反応はできないと思うぞ?」
「それでもいい。もしかしたら何かしらのヒントがもらえるかもしれないからな。…とりあえず、太陽光が眩しいビーチじゃあアレなんで、セーフハウスのリビングに戻ろうか」
釈然としない表情のノーマンや、不思議そうに首を傾げる天野を引き連れ、俺達はリビングに戻った。
尚、莉穂姉達は俺に話の内容を聞かせたくないのか、俺達から若干距離のあるヤシの木の木陰で談議していたのでそっとしておいた。
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「それで、相談と言うのは一体?」
ソファに座るなり天野がそう促してきたので、俺も素直に話すことにする。
「この前、天野に俺達の事を話した際、『テロリスト達を学園敷地内で倒す必要がある。そのために、ちょいちょいテロリストの襲撃がある』ってことをサラっと話したよな?」
「あ~…、そういやそんな“嘘みたいな本当の話”もあったな」
「まるで中二病の妄想みたいな内容だから、そう感じるのも無理はないな。で、だ。そのテロリストの親玉である教祖アリサって人物から『次回の襲撃は学園祭だから』という情報をもらったわけだ」
「ふむふむ、それで?」
テロリストの親玉とは言え、教祖アリサは俺の師匠の協力者であるので、天野もテロ予告は嘘じゃないという前提で素直に話を聞いてくれている。
「天野も去年の学園祭に来てくれたから分かると思うが、籠月学園の学園祭はチケットによる入場制限があるとは言え、身内だけじゃなく友人や知人といったグループでも参加可能だ。要するに、“俺達が魔法を使える”という事を知らない一般人が多く居る状態になるんだが──」
「なるほど、つまり“一般人に知られることなく、秘密裏にテロリスト共を倒したい”ってことだな?」
「──そういう事だ。というわけで、何か良い案はないだろうか? まだ数ヵ月の猶予があるが、場合によっては準備に時間が掛かる可能性もあるから、早めに手を打てるのであればやっておきたくてな…」
一般人の目を気にしなくて良いのであれば、ノーマン一人でテロリストを引っ叩きまわって鎮圧してしまえば手っ取り早いのだが、そういった目立った事はしたくない。
そういった俺の心情を加味してくれているのか、天野は天井を仰ぎながら数秒考えると幾つか質問してきた。
「ちょいと質問があるんだが、その学園祭でのテロ鎮圧って、在校生の力も借りる前提で対応するのはアリ?」
「まぁ、そうならざるを得ないだろうな」
何しろ、体育祭で侵入された時ですら、外見を誤魔化す魔導具を装備していたのだ。学園祭も同様の手口で侵入してくるだろう。
見破るための魔導具を作り、入場の際に相手の効果を打ち消してしまえば手っ取り早いのだろうが、他の一般の参加者から「今のは一体なんだ?!」という騒ぎが起きるのが目に見えている。
そうなってしまった場合、“目撃者一人一人に催眠魔法を掛けて忘れさせる”くらいしか対応策が浮かばないのだが、体育祭同様デバガメ軍団も敷地外から覗き見してくる事が予想される。正直、魔法の存在を隠蔽するのは難しいと言えよう。
となると、テロリストを水際で食い止めるのではなく、侵入されるのを見越した上で教師と生徒が一丸となって秘密裏に対応するという方法が、魔法の件を一般人にバラすことなく済ませる事が出来るハズだ。
「そうか。じゃあ次、学園に“演劇部”ってある?」
「…? まぁ、人数は多くないけど、あるにはあるな」
俺の答えに満足したのか、天野は爽やかな笑顔と共にあっけらかんと言い放った。
「なんだ。じゃあ簡単じゃん。“部外者参加型のゲリラ演劇”という名目で、ヒーローショーの要領でテロリストを巻き込んじまえば良いんだよ。こう、テロリストだと判明した人間を見つけたら、どこからともなく悪役が現れて、演技っぽく大げさに殴と同時に魔法で眠らせるなり何なりして連れ去ればいい。で、ヒーロー役の人間が『待てぃ!』とか言って演技っぽく追いかけると」
「うん。それ、採用!」
ここ数日、どうやって対応しようかと悩むこともあったが、天野のおかげであっという間に打開策が見いだせた。
もうテロ襲撃されようと、何も怖くないぜ。
毎度読んでいただきありがとうございます。
今回も投稿が遅れてしまい、申し訳ないです。
いやぁ、長い事体調不良で悩まされたと思ったら、今週頭にはPCのHDDの一つが逝くという緊急事態になりまして…ちょっと、執筆時間が取りづらかったんです(言い訳)
それにしても、ここ最近ツイてない気がする。厄年ではないハズなのに…。
そんなこんなで、次回更新も金曜日更新予定です。




