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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第四章 無人島と学園祭への下準備と…
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第10話 - 無事生還…のち説教

前回のあらすじ

 変身ベルトを渡すことをエサに、天野を戦力に引き込もうとする渉。悩む素振りも無く、二つ返事で取引に応じる天野。

 しかし、変身後のスーツの性能を不安がる網谷を納得させるため、渉は自ら変身ベルトを使い“ノーマンの全力パンチを受けてみる”というガード性能の実験を試みる。

 戦車の前面装甲すら陥没させ、戦車ごとぶっ飛ばすというトンデモ破壊力なノーマンのパンチを受け、トータルエクリプス島の安全ブイを超えるほど吹っ飛ばされる渉。

 ガード機能、耐水機能、酸素供給等の性能は問題なくクリアしたものの、泳いで水面に移動する事が出来ないほどスーツが重い事に気付く。

 徐々に遠ざかる海面、泳いでも足りない推力。

 沈みゆく渉の運命やいかに←今ココ…だけどタイトルでネタバレしてる件

「ボイスレコーダー機能チェック開始、ボイスレコーダー起動。え~、テステス…。

 2012年6月16日、土曜日。日本時間では23:52、現地時間では7:52現在の記録。絶賛、南国の海中に沈み中なう…と。以上、テスト録音終わり。

 今録音した内容を再生開始」


 水面へ向けて泳いだものの、ちっとも浮かびそうにないので浮上を諦めたのがついさっきの話。

 まだまだキラキラと輝く太陽が目視できる位置なので、焦ることなく機能チェックの続きをすることにした。

 ぶっちゃけ、周りが徐々に暗くなってきて、ちょっとした恐怖心を覚え始めたために気を紛らわせたかっただけだったりする。


『え~、テステス…。

 2012年6月16日、土曜日。日本時間では23:52、現地時間では7:52現在の記録。絶賛、南国の海中に沈み中なう…と。以上、テスト録音終わり』


 うむ。ボイスレコーダーも無事に機能しているな。

 ただ、音声認識による起動だと隠密行動に支障がでるし、録音停止の声まで入ってしまうのでなんとも間抜けな感じだ。

 視線感知式でカーソルも表示できるようにするのも手だが、ここは魔力操作式にした方がいいだろうな。…というわけで、改善の余地あり…と。


「ん~。徐々に海面が遠のいていくし、海流で微妙に島から流されているしで怖さが際立つなぁ…。莉穂姉達も心配し始めている頃だろうし、いい加減何とかしたいけど…」


 まさか、ノーマンのパンチ一発で、島の安全ラインであるブイからはみ出るほど飛ばされるとは考えていなかった。

 でも思い返してみれば、アイツのパンチは戦車の装甲をぶち抜いただけじゃなく、戦車本体も吹き飛ばしてもいたんだっけか。…そう考えれば、こうなるのは目に見えていた結果だったのかもしれない。

 冷静になって振り返ると、“ガード機能の実験”という点にしか着目していなかった自分の間抜けっぷりが酷い。


「さて、本当にどうやって帰ろうか…。期せずしてこのスーツが優秀である事が実感できたわけだが、200(メートル)を超える深海となると流石に水圧でやられちまうだろうしなぁ…」

[ちょっと、バカ弟子。いつまで潜ってるつもりなの! 皆、心配してるからさっさと上がってきなさい!]


 独り言をつぶやきながら頭を悩ませていると、ビーチに居るマジカルゆかりんから精神感応魔法テレパシーが飛んできた。


[あ、マジカルゆかりん? いやぁ、実は困った事になってて──]



  ▲▽△▼△▽▲



 先程までは、ノーマンが凄まじい力で渉を吹き飛ばした光景を見た生徒達から、「おぉ~」だの「すご~い」だのと歓声が沸き上がっていた。

 だが、渉が海に落ちてから10秒、20秒と時間が経過するごとに徐々に静けさが広がるようになり、1分近く経過した今では波の音以外は聞こえなくなっていた。


「…なかなか浮かんでこないわね」


 静まりかえったビーチに、私、関口加奈子(かなこ)の言葉がハッキリと響き渡る。

 途端に慌てだす莉穂姉、奈津美なつみ、理事長、マチュア先生。

 顔色を悪くして、私の右手を掴んで震える一つ年下の久恵ひさえ。この小動物のような可愛さをいつまでも保っていて欲しいと思いつつ、「大丈夫。あの渉なんだし、きっと大丈夫よ…」と、安心させるように頭を撫でてやる。


 不安という波を広げてしまった私ではあるが、私自身としては「渉の事だから無事ではあるのだろう」という特に根拠のない安心感はあった。

 なので、先ほどの呟きも「海中で何をしているのかしら?」といったニュアンスでしかなかったのだが、まさかここまで不安をあおる結果になってしまうとは…。


「はぁ~…、あのバカ弟子ったら皆に心配かけて、もぅ……。久恵ちゃん、大丈夫よ。渉は無事だから」


 私の左隣から、マジカルゆかりんことゆかりさんが久恵を元気づけてくれる。

 聞くところによると、渉に精神感応魔法テレパシーを教えたのが彼女らしい。その為か、時折今のように渉の事を弟子扱いすることがある。

 その彼女が「無事」と断言してくれた甲斐もあり、不安や焦りからきていたざわつきが安堵のものへと変わり収まっていった。


[コラ、バカ弟子! あんたもさっさと皆に精神感応魔法テレパシー飛ばして安心させてあげなさい! あと、自分の間抜けっぷりを謝罪しつつさっさと海面から出てきなさい! 伊藤先輩や奈津美はもとより、久恵ちゃんなんか顔色悪くして震えてたんだからね!]


 ざわつきが収まった直後、紫の精神感応魔法テレパシーが私の頭に届いた。

 どうやら周りで見学していた人にも一斉に届かせているようで、久恵をはじめとした皆の身体が一瞬硬直している。


[あ~…、皆さんすんません。特に妹尾せのおには凄く心配かけちゃったみたいで…ごめん。…なので、無駄に心配かけちゃったお詫びとして……]


 遠くの海面が盛り上がり、渉が身にまとっていた黒いスーツが浮かび上がる。

 先ほどまでの姿と異なるのは、背中から青く透明な翼のようなものが生えている事と──


[よっと…このれたてピッチピチのサメを使ったフカヒレスープを御馳走するんで、許して♪]


 ──その両手に、渉の倍以上はあるサメが一匹ずつ、尾びれを掴まれビチビチと暴れまわっている姿が追加されている事くらいだろうか。


「……この辺って、サメが出るのね…」


 私のそんな呟きで、周囲に戦慄が走る。

 誰もが息を呑み、「ここでの海水浴は危険なのでは?!」という思考に陥っている事だろう──


[お~。BB、大漁じゃないか。俺の持ってるコンバットナイフでさばこうか?]

[いやいや、その必要はないよ。関口が気に入ってくれたトロピカルジュースを作ったりしてくれている、この島の自動人形オートマタ達に丸投げするから]


 ──この人外な二人以外は…。


[俊之! 私、サメ肉を食べてみたい!]

[渉、私が責任を持って捌きます! あんなずんぐりむっくりな量産型と、オリジナルとでは性能が違うってところを見せてあげますとも!]


 ……訂正、マージさんとマチュア先生もいつも通りだったわね。



  ▲▽△▼△▽▲



「いやぁ、ホント心配かけちゃって申し訳ない。スーツの耐久性能実験にばかり意識が向いちゃってたせいで、ガード用の魔法だけじゃなく、他にも幾つか魔法を組み込んでたのをすっかり忘れちゃっててさ。マジカルゆかりんからの精神感応魔法テレパシーで『そのスーツ着てると、空中浮遊魔法エリアル・フロートなり飛翔魔法フライなりの魔法が発動しなくなるわけ?』ってツッコミ入れられて、ようやく飛翔魔法フライがあった事を思い出したんだよねぇ。

 …で、背中のウィングパーツはどうかな? 画面にはウィングが正常に展開されている事を示す表示が出てるんだけど、俺からじゃあ客観的に見る事は出来ないんだ。デザインとか悪かったりしないかな?」


 ビーチに近づくと、天野を含んだ大多数の人の視線が、スーツ背部に展開されているであろうウィングパーツと、俺の手にぶら下がっているホホジロザメに集中しているのがわかる。

 サメの方は、引き上げた当初はビチビチと暴れまわっていたが、今ではだいぶぐったりして捌きやすくなった頃合いである。


 飛翔魔法フライを発動させた直後、大きな二匹のホホジロザメが口を開けて噛みついてきた時の迫力の凄い事。まさに、「超怖い!」の一言である。

 破壊力としては、ノーマンのパンチ一発の方が圧倒的に危険なんだけど、インパクトとしてはサメに噛みつかれた時の方が圧倒的に絶望感を感じた。

 スーツを通して“ベキベキ”という嫌な音が響いた時は、大真面目に血の気が引いたし…。まぁ、その音の正体はスーツが壊れたのではなく、サメの歯が砕けていく音だったわけだが…。

 すぐに噛み砕けない事を悟って撤退したサメだったが、こっちからすれば怖い思いをさせられた上に、地上にいる皆に珍味を振る舞えるチャンスだったわけで、数秒の追いかけっこの末、尾ヒレを掴んで浮上したという次第である。


 何やらマチュアが「私! 私が捌きます!」と息巻いているが、俺の身体よりも遥かにデカいので普通の包丁では無理だろう。

 トータルエクリプス島に常駐している師匠作の自動人形オートマタに丸投げする予定だ。そのため、皆に精神感応魔法テレパシーを送る直前に魔力通信で呼び出し済みである。


「渉、一言言わせてくれ」

「ん? 天野、もしかしてダメ出しか?」

「いいや。そのスーツのウィング、イエスだね!」


 天野としては、ウィングパーツのデザインも問題なく気に入って貰えたようだ。

 まだ確認できてはいないけど、使い手が気に入っているのなら十分だろう。


「おぉ、気に入って貰えたようで何よりだ……っと、自動人形オートマタ隊が到着したな。皆、道を開けてやってくれ。それと、サメを下ろすから、もう2歩くらい下がってもらえるかな?」


 俺の言葉を聞いた皆が素直に2歩ほど下がり、それにより出来た隙間から1(メートル)程度の白くプニプニした肌触りの自動人形オートマタが、トテトテとした足取りで20体ほど俺の真下に集まってきた。

 そこかしこで「可愛い…」という声が聞こえてくる。

 まぁ、見た目的にずんぐりむっくりな身体つき、肌触りも良く、ほど良い弾力を持つ癒し系のボディをコンセプトに作られたものだから、その反応は師匠の狙い通りと言える。

 なんでも、師匠が元々居た世界で映画になった“ベイマックス”を元にしたという話なのだが、教えてもらった時にGoogle検索したら、似ても似つかないゴツイロボットっぽいイラストばかりがヒットしたのを覚えている。


 師匠の話では、「再来年にはこの可愛らしい外見の方が有名になっている……ハズ!」という話なのだが、どうなのだろうか。

 師匠がこっちの世界で色々と作業をしたせいなのか、師匠の元の世界とは放送しているアニメとか、映画の内容とかが微妙に異なっている物があったりするらしいので何とも言えない。

 そういえば、師匠が元居た日本では去年の3月に大地震があったらしいのだが、去年も今年も特に何も起きていなかったな。まぁ、核爆弾の爆発を耐えきる魔法陣を創造した師匠が、海底のプレートに幾つか魔法陣を刻んで様子見していたから、もしかしたら大地震が発生することは無いかもしれない。


 …なんやかんや考えていたら、集まっていた自動人形オートマタ達がつぶらなお目々……型の二つのカメラをくりくり動かしながら、両手を上げ下げしてぴょんぴょん飛び跳ねていた。何ともほっこりしてしまう可愛さである。


『マスター、早く下ろしてください。調理場まで持っていきます。早く下ろしてください』

「あぁ、ごめんごめん。……はい、じゃあよろしくね」

『お任せください、マスター。…食材が通りま~す。ご注意くださ~い』


 少年とも少女とも言えない声色の合成音声を出しながら、数百kg(キログラム)はあるだろうホホジロザメを10体2組に分かれて受け取る自動人形オートマタ達。

 そして、来た時と同じようにトテトテと走りながらセーフハウスの裏にある調理施設へと消えて行った。

 その姿を見て「くっ…量産型のくせに、頑丈なずんぐりむっくりめ!」と、マチュアが悔しそうにしている。


 見た目こそ白くてふっくらした癒し系ボディだが、中心部分にはタングステン合金の骨組が仕込まれており、重たいものを持っても簡単に潰れる事はないのだ。

 魔法陣を刻んでいるので更に強度は増しているのだが、電気抵抗値が高めなせいか、こまめに電気を魔力へ変換して充電してやらないと魔法陣が長持ちしないという点が唯一ネックである。


「…さて、網谷。ご覧の通りこのスーツは、あんな衝撃があっても中身は無事だし、サメに齧られても無傷…というか、逆にサメの歯が砕けるレベルの頑丈さ。耐水性に優れ、水深60(メートル)程度の水圧でもびくともしない優れものだ。

 俺が忘れていただけで、飛翔魔法フライも使えるし、片手で数百kg(キログラム)の重たい物すら掴んで運べちゃうんだぜ。天野が使っても全く問題ないってのがお分かりいただけただろうか?」


 変身を解き、ベルトを天野に渡しながら網谷を説得する。


「えぇ、良く分かったわ。…でも渉君、その前に莉穂姉達に心配かけた事を土下座した方がいいんじゃないかしら? 見ての通り、結構お怒りよ?」


 恐る恐る網谷の目線を追いかけると、明らかに怒ってますと言わんばかりの表情をしている莉穂姉達の姿がある。


「え~っと…。お、怒った顔の莉穂姉も、凛々しくて実に良いと思います」

「そ、そんな事言われても、簡単には許しません!」

「ちょっと渉。どうして莉穂姉だけなの?! 私達は?!」

「渉君? 今の言葉も含め、お説教の必要があるわね」


 莉穂姉の怒った表情なんてそうそう見ることが無かったので素直な感想を述べただけなのだが、自分たちには褒め言葉が無かった事にお怒りになった滝川と由子お姉ちゃんから、更にお説教タイムの延長がされてしまった。

 ちなみに、マチュアからの反応がないのは、自動人形オートマタを追って調理施設に向かって行ったからである。


 ……数十分後。

 そこには、急遽きゅうきょ設置されたテーブルに所狭しと並べられたサメ料理に舌鼓を打つ女生徒と、正座で怒られる俺の姿があった。

 尚、料理を作り終えて途中参戦したマチュアからも、絶賛お説教中である。


 楽しげに会話しながら食事を満喫している友人たちを横目に、美女、美少女に見下ろされ、おあずけをくらいながら説教される俺。

 ……なんだろう、何か目覚めてはいけない世界に足を踏み入れかけている気がする。


「あのぉ…そろそろ俺もサメ料理を食べたいんで、解放してもらえないでしょうか?」

「「「「私達からの口移しで良ければ食べさせてあげる」」」」

「……恥ずかしいんで我慢します」


 こんな調子で説教が長引き、ようやく料理を口にできたのは更に20~30分ほど経ってからであった。


「うぅ…足は痺れるし、太陽熱と海風に晒されて料理はカピカピになってるし、島に来るまでに一騒動あるし…今日は散々な週末だぁ…」

「「「「そう思うんだったら、今度から心配かけるような真似はしないようにっ!」」」」

「…はい。すんませんでした」


 初めてのサメ料理は、ちょっと涙の味がしました…。

毎度読んでいただきありがとうございます。

GW中ですが、遅筆な吾輩は次回も金曜日更新予定です。


追伸。2週間経ったけど、いまだに微熱が続いてます。

皆さまも体調には十分お気を付け下さい。マジで、ダルいったらないです。

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