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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第四章 無人島と学園祭への下準備と…
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第09話 - いざ変身実験

前回のあらすじ。

 夜の警備員棟に人が群がっていたのは、自分達の迂闊な発言のせいであった。

 尻拭いは自分でやると決めた渉は、群がっていた人々を速やかにトータルエクリプス島へ移動させるため複数の転移魔法陣を臨時に展開。

 莉穂姉達を含め、無事朝焼けを堪能する事に成功した。

 莉穂姉といいムードで朝焼けを堪能するついでに、天野と網谷のペアも呼んでみたが、天野は相変わらずなびく素振り無し。

 仕方なしに渉は、天野を呼び出した本来の目的“変身ベルト”をエサに、あるお願いをしようとするのだった。←今ココ

 嬉々としてベルトを手に取ろうとする天野だったが、ベルトを持ち上げようとした瞬間に俺の手がそれを邪魔していた。

 一連のやり取りの中、天野の表情が喜・驚・哀の順で変化する。

 …ふむ。中学を卒業以降、ほとんど顔を合わせる機会が無かったからか、天野って地味に表情豊かなイケメンだったんだなという事に今気づいた件。

 昔から莉穂姉の事以外は眼中にない生活だったし、幼馴染ということで近くに居すぎたせいか、あんま気付かなかったな。

 …などと、どうでもいい考察は置いといて、天野と交渉を始めるとしようか。


「まぁまぁ天野さんや、目の前にロマン溢れるものがあるから興奮するのも分かるが、ちょっと落ち着いてもらおうか。

 先ほど、『コイツを渡すため』と言ったが、タダで渡すとはまだ言ってないんだぜ」


「くっ…ここに来ておあずけかよっ!」


 苦悶の表情をしながらも、大人しくベルトをダンボールに戻す天野。

 そして、大きく息を吐くと何かを決心したかのように凛とした表情になり、俺に向き直る。

 その横で網谷が、「キリッとした薫の表情ステキ…」とか呟きながらうっとりしている姿が目に入るが、俺も莉穂姉を見ては似たような反応をしている自覚があるので、そっとしておくのが優しさというものだろう。「さっき天野からぞんざいな扱いを受けて打ちひしがれていたのに、逞しいな…」などと思っていても、である。


「…よしっ! さぁ、渉よ。願いを言え! どんな願いでも聞くだけ(・・・・)なら聞いてやろう」

「やる気の無い神龍シェンロンな対応(おつ)。 まぁでも、話が早くて助かる。流石は幼馴染にしてオタク仲間なだけあるな。

 …で、だ。願い自体は単純なんだが…。この前、俺達が造られた理由は話したよな? 天野にはその手伝い──要するに、そのベルトを使って俺達と一緒に戦って欲しいと思っているんだ」


 俺の言葉に一番強く反応したのは、やはり当事者である天野……ではなく、その横に居た網谷だ。「私の薫に、そんな危ない事をさせる気なの!?」とでも言いたげな険しい表情で俺の事を睨んでいる。

 個人的には、網谷には天野と幸せになってもらいたいと思っているので、もちろん天野の身に危険が迫るような状況にさせるつもりはない。そのための変身ベルトなのだ。

 俺は、網谷に手を上げて落ち着くようジェスチャーしつつ話を続ける。


「ぶっちゃけ、戦力としては『ノーマン一人居れば十分じゃないか?』とは思っている。…が、なにぶん最終的に相手にする存在が、『どういった規模、強さになるのか想像がつかない』と師匠すらお手上げ状態なんだ。

 こちとら、死人は当たり前だが、怪我人すら出したくはない。…となると、戦力は一人でも多い方が良いってなるよな?

 もちろん、お前にも怪我なんてさせるつもりはない。そのベルトで変身している限り、疲労や魔力の低下によるダルさなんかは起きるかもしれないが、それ以外の安全面であれば保障するぜ」


 最後の方は網谷を安心させるつもりで言った言葉である。その効果があってか、網谷をチラ見してみると安心した表情で胸を押さえていた。…胸を押さえているはずの手が、半分くらい谷間に埋もれていやがる。

 目のやり場に困ったので、天野の方に視線を戻す。

 お隣で起きているミラクルにはまったく気付いておらず、目を瞑ったまま大きく頷くや否や“カッ”と音がしそうな勢いでまなこを見開き──


「その話、乗ったぁ!」


 ──迷うことなくそう言い切った。

 めっちゃ凄い気迫と音量だったので、セーフハウス近くで遊んでいた女生徒達の幾人かは窺うようにこちらを見ている。

 莉穂姉達の反応も確認してみると、皆一様に驚いた表情をしていた。…ノーマンだけは顔色一つ変えることなく平常運転だったが。


 ちなみに、音の発生源の真横に居た網谷はさぞや驚いている事だろう……とか思っていたのだが、悔しそうにうつむきながらソファを叩いているだけだった。

 何やらブツブツを呟いているので、念のため注意深く聞いてみたのだが…。


「私の時は断ったのに…。私の時は期待させた挙句、断ったのに! 今回は二つ返事で……っ!」


 …先日の「現実世界を二次元世界として認識できるよう催眠魔法ヒュプノシスを使えば、網谷を“二次元の幼馴染美少女キャラ”として認識できるはず」という提案を蹴った癖に、今回は迷うことなくOKを出した事に対し不満を漏らしているだけだった。

 いやまぁ、網谷からすれば「こんなわけ分からないベルトなんかに、自分の魅力は負けたのか…」という話になるのだから、普通に考えれば忸怩じくじたる思いなのだろう。

 でもな、網谷。男の子としては、やっぱ一度くらいは変身するヒーローというものに憧れる時期があるんだ。むしろ二次元一直線だった天野のヤツが、非日常的な物品とはいえ現実(・・)の物を欲しがったのだから、コレは現実世界に目を向けさせる大いなる一歩と言えるだろう。

 何しろ、天野に関して言えば誕生日プレゼントを送っても「あぁ、なんかわ悪いな…これといって喜ぶような反応ができなくて…」といった感じで、ほとんどの品物に対して微妙な反応しかしなかったのだから…。

 今までで一番喜ばれたプレゼントと言ったら、皆でお金を出し合って手渡したゲーム機くらいな物じゃないだろうか…。あとは、天野が手に入れる事の出来ていなかったマイナーなギャルゲーとか…。


 何にせよ、ゲーム、アニメ以外で唯一興味を持っているだろう“特撮”好きの琴線に触れる一品、それが変身ベルトである。他にも色々と特撮モノで魅力的な変身アイテムはあるのだが、ベルトしか設計図を創っていなかったのでコレだけである。

 もともとは、ノーマンの監視役6人に任命された兵士ソルジャー仲間の一人であるグレッグが欲しがっていた物だったのだが、天野に俺達の秘密をバラしてしまうという失態を犯してしまったので、その罰としてグレッグ用に設計したベルトを没収し、天野に渡すという形で対処したのだ。

 もちろん、グレッグに渡した際も、俺達と一緒に戦ってもらうという面倒なお願いはするつもりだったがね。じゃないと、スコット、ラング、ビックス、ウェッジ、ダニーといった残りの5人にも悪いし…。


「あ~……え~っと、とりあえず、こちらの頼みを聞いてくれてありがとう。これからは、色々(・・)と世話になると思うんで、その辺も含め改めて宜しく」

「あぁ、こんな夢のアイテムをもらったんだ、協力させてもらうさ。『大いなる力には大いなる責任が伴う』って、っちゃが言ってたしな」


「お前の爺さんはベンおじさんかよ…。

 …さてと、天野が俺達に協力してくれるという事になったわけだし、約束通りこのベルトはお前のモンだ。

 …あぁ、そうそう。あとで学園の卒業者に渡している認識阻害の腕輪も用意しておくから、今後は出来る限りその腕輪を身に着けておくようにして欲しい。警察や、付近の魔女からの緊急出動要請(・・・・・・)を受信できるようになるから、そういう時に思うさま変身して犯人をしばき倒してくれ」


(((((あの腕輪、認識阻害だけじゃなくて、そういった魔力通信機能もあったんだ…)))))


 俺が天野に腕輪の説明をしていると、背後の女性陣から何かを納得したような雰囲気アトモスフィアが漂ってくる。…たぶん、腕輪の機能にでも納得したんだろうな。

 対して天野の方は、一瞬「マジか~、面倒臭そう」といった感情が顔に出ていたが、何かを諦めたように頷くと改めて協力することを誓ってくれた。


「くっ…思ってたより忙しくなりそうだが、魔女が出回るような案件なんてそうそう聞かないし、大丈夫だろう。……よし、男に二言はねぇ! その辺も含め、協力しようじゃないか!」

「よっしゃ! それじゃあ天野、今後とも宜しく」

「おう、こちらこそ宜しく。…ところで、渉。早速なんだけど、このベルト、試してみてもいい?」


 まるでクリスマスプレゼントで遊びたがっている子供の様に、キラキラした笑顔でベルトを手にした天野が問いかけてくる。

 …すごく、断りづらいです。


「あぁ、まぁ構わないけど…、その前に性能を見せておこうか。天野はともかくとして、網谷が心配そうに見てるし…。まずは俺が変身して、ノーマンの本気のパンチを食らっても平気という姿を見せようじゃないか」

「え~…実際に俺が変身した状態で体験してみたいんだけどなぁ…」

「言っとくが、ノーマン(コイツ)の全力パンチはZ戦士並みでな。戦車の前面──要するに装甲が分厚いと評判の部分なんだが、パンチ一発で陥没するレベルの破壊力を持っているんだ。そんな攻撃、例えお前が無事だとしても、網谷の心臓に悪いだろ」


 ノーマンの尋常じゃないスペックを聞いた網谷が、青白い顔をしながら天野の腕にすがりつきブンブン首を横に振っている。


「ん~…でもなぁ……」

「……もしどうしても体験したいって言うのなら、私にも考えがあるわ…」


 天野が渋っていると、突然マジなトーンの声になった網谷が不穏な空気を醸し出し、こう続けた。


「薫が寝入った頃に夜這いして、既成事実作ってやるんだから。ほら、この通り小父おじさんと小母おばさんからも家と部屋のスペアキーを頂いているわ…」


 ヤンデレちっくな表情を作りながら、胸の谷間から銀色に輝く二つの鍵を取り出す網谷。…なんつー所に隠してやがるんだアイツは。天野が迂闊に取り返すことのできない場所に隠すとか…不二子ちゃんかよ。

 先ほどとは打って変わって真っ青になる天野。

 「私も実力行使に出た方が良いかしら…」などと危険な発言をしだす、莉穂姉、滝川、マチュア、由子お姉ちゃんの4人。……いや待て、マチュアに引っ付いてるのはオナ○なんだから、妊娠はできねぇだろ。…だからといって、初めてを捧げる気も無いが。

 …それに対して、ノーマンを狙っているマージちゃんと篠山ねーちんの反応は静かだな。なんだろう、ライバル関係なのは一対一(サシ)なわけだし、何らかの協定とか取り決めとかが二人の間で交わされたのだろうか…。


「…渉。よく考えたんだが、やはり性能実験は製作者であるお前がやった方が良い気がしてきた。すまないが、頼む」


 いつの間にやら“キリッ”とした表情になった天野が、俺にベルトを手渡してくる。

 まったく、現役トップアイドルにあんなこと言われたら、たいていの男子高校生だったら「ヒャッホォウ!」とか喜びそうなもんなのに、イケメン面してヘタレな奴め。いやまぁ、俺も莉穂姉と肉体関係になってないから、ヘタレと言えなくもないわけだし口には出さないけどね。


「…ったく、多くの男子の憧れの的である網谷にそこまで言わせておきながら、俺にベルトを渡すとは……このヘタレめ! 見ろよ、網谷が『ホッとして良いんだか、悔しがった方が良いんだか』って反応してるじゃねぇか」

「待ってBB、それブーメラン発言(自分の首絞めてる)

「しまった…、つい本音がポロリしてしまった」


 ノーマンが言ったように、「自分だって人の事言えないくせに」とでも言いたげな莉穂姉達の視線が痛い。

 いや、でもホラ、学園の風紀とか評判に関わるし、俺やノーマンは自粛しないとダメ、絶対じゃない?


「フッ…ヘタレで結構! 俺は心に決めた二次元の女性以外に、初めてを捧げる気はないのでなっ!」

「その意気や良しっ! それじゃあ早速、外で実験しようじゃないか!」


 天野のヤツが潔く童貞を認めるような性格で助かった。

 おかげでグダグダになることなく、変身ベルトの検証に移れる。

 …まぁ、俺が余計な事を言っちゃったせいなので、完全に俺が悪いわけだが…。



  ▲▽△▼△▽▲



 朝日の煌めくビーチを背にたたずむ俺、それに向かい合う形で立つノーマン。

 そして周囲には、天野をはじめとしたリビングに居たメンバーと、さきほどまでこの辺で遊んでいた学園の生徒達がギャラリーとして見守っている。


「それじゃあ天野、まず変身の仕方だが、規定量の魔力をベルトに流してから“変身”と叫ぶだけだ。魔力の流し方は分からないだろうから、詳しくは……そうだな、妹尾せのおに教えてもらってくれ。妹尾にとっても、良い復習になるしな。

 一応、ベルトの方には強制的に魔力を吸い取るためのボタンも付いてるけど、慣れれば自力で魔力を流した方が早い。そんじゃ、いくぜ…変身!」


 ベルトから光が発せられ、視界が眩しくなったと感じた次の瞬間には、俺の身体はスーツ状の鎧に包まれ眼前には青白いモニター画面が広がっていた。

 うむ。スーツの損害状況や、背中にくっついている魔力タンクの残量も画面に表示されている。こちらが設計した通りの出来栄えである。

 少なくとも、内側(・・)は…。


「ふむ…。ボディはゴテゴテしたフォルムではなく、シュッとしたデザインか。顔の方は、口元が昭和ライダー風で、目の周りはバイザー風といった感じだな。カラーリングはオーソドックスに黒がベースと……うん。良い、実に良いぞ渉!」

「おぉ、天野はこのデザイン気に入ってくれたか。なら良かった。…ただ、今更ながら一つ残念な事に気付いた。……自分では外観を確認できない件」

「そりゃあ、しょうがねぇだろ。性能実験が終わったら俺が変身するんだし、その時にでも確認してくれ」

「おう、そうする。…んじゃ、ノーマン。遠慮なく全力でぶち込んで来い!」

「OK! 行くぜ、BB!」


 まずはオートで発動する防御性能を確認するため、無防備な状態で……などと考えていると、突然ノーマンが視界から消えた。

 そして次の瞬間、“ドガンッ!”という音と共にとんでもない速度で俺の身体が後方に吹っ飛んだ。

 時々刻々と視界から遠のくビーチ、俺が立っていたあたりを観察すると、拳を振り抜いた状態で中腰で佇むノーマンの姿が見える。


「……なるほど。ノーマンを相手にした敵勢力は、こんな理不尽な強さを目の当たりにしていたのか。こりゃ勝てる気がしねぇわ」


 およそ十秒に及ぶ滞空時間の後、ようやく失速したかなと思う頃には、師匠が島周辺の海に浮かせていた安全ブイを超えていた。

 そして自由落下による着水。

 眼下を見れば、優に1km(キロメートル)を超える真っ暗な海。

 次いでとばかりにアーマーの耐水性能をチェックする。


 体感で30(メートル)ほど沈んだ気がするが、特に水圧による損傷や浸水と言った不具合は無し。

 ただし、ノーマンにぶん殴られたと思しき胸部アーマーの損傷率が80%を超えていたので、これ以上沈むのは危険と判断。早速戻る事にする。

 バタ足を続けて海上を目指すが、そこである事に気付いた。


「やっべ、アーマーのデザインと重さの関係で、バタ足の推進力が足りてねぇや…」


 こりゃあ、水中での形状変化機能を盛り込んだ方が良いかもな…などと呑気のんきに考察しつつ、俺の身体は徐々に沈んでいくのだった。



  ▲▽△▼△▽▲



 今回の実験結果。

 耐衝撃性能:良好

 オートガード性能:良好(ただし、ノーマンレベルの攻撃は一回が限界の模様。完全を目指す場合は要改良)

 耐水性能:良好

 耐圧力性能:良好

 水中機動:改善が必要

 アーマー内酸素維持機能:良好

 暗視機能:要夜間での実験

毎度読んでいただきありがとうございます。

また次回も金曜日更新予定です。


今週は月曜日からずっと微熱、咳、鼻水に見舞われ、今日も若干ボーッとする中、作業をおこなっていました。

文章が雑だったり、誤字脱字が目立っていたら間違いなくそのせいです。

皆さまは、体調管理を怠らないようにしてくださいね。吾輩は完全に油断していました(キリッ

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