第07話 - 迂闊な会話の結果がこの有様だよ…
前回のあらすじ
テロリストが使っていた潜水艇を横須賀に転移させるため、潜水艇を放置していた無人島に移動しようとする渉。
しかし、そんな渉の前にノーマンをはじめとした仲間達が「自分も連れて行け」と立ちはだかる!
皆の勢いに負け、仕方なく件の無人島“トータルエクリプス島”へ案内する渉だったが、そこは日本との時差が16時間もある場所であった。
真っ暗闇で何も見えない南国ビーチを前に、肩透かしを食らって愕然とする女性陣達。
潜水艇を転移させる為だけに島へ移動した渉は、女性陣にフルボッコにされてしまうのか?!←今ココ
「え~っと…この島について何の説明もしてこなかったから、女性陣には申し訳ないとは思うけど…。まぁ、ご覧の通り時差が酷い場所なんだ。夏休み中だったらいざ知らず、放課後とか業務後にプチバカンスを堪能できるような場所じゃあないんだよね。
今日だって、ノーマンしか来ることが無いと思ってたから、『前情報無しで連れてきて、どんな反応をするか見てやろう』的に考えていたくらいだったし。ノーマン以外には決してワザと黙ってたわけじゃないんだ」
「BBがしれっと酷い…」
非難気味な視線を向けてくる女性陣に対して俺の本心を説明をしていると、ノーマンがボソっとそんな事を呟く。
いいじゃん、どうせノーマンなんだし。“持ちつ持たれつ”ならぬ“からかいつからかわれつ”な仲の方が調度良いんだよ、俺達は。
だいたい、こちとら老化魔法で大人なグラマラスバディ姿になったマジカルゆかりんから、割と本気のガンつけられてんだぞ。
覗き魔に「誰だ? あの娘は?」とか目を付けられると催し物の際に厄介だからと、学園では段階的に成長しているように気を使ってるから、絶対に今回の海を楽しみにしていたんだろうな。他の女性陣は不満そうな表情をしているだけだが、マジカルゆかりんの方はグーパンしてきそうな雰囲気だ。
そりゃあ俺だって、ノーマンをダシにしたくなるってもんさ。
「…とりあえず、今度の土曜、夜10時半過ぎにでも改めて招待するから機嫌を直して欲しい。その時間帯だと丁度夜明け頃になるんだ。ここから見る朝焼けは周囲に何も無いから、学園から見るものとはだいぶ違う雰囲気になるしオススメなんだよね。…そんなわけだから一つ、それでご容赦願いたく…」
「…ふぅ、分かった。“南国の無人島”って聞いて、浮かれて時差を考慮してなかった私達にも問題があったのは確かだし。そもそも、文句言える立場じゃないからね…」
俺が莉穂姉達に向かって拝むようにお願いしていると、女子の言葉を代表するように由子お姉ちゃんが応えてくれた。
まぁ、今回の件に関しては「誰が悪い」ってことも無いのだが、こう目の前で落胆している女性陣を見ていたら、凄い罪悪感が出てしまって謝らざるを得ない気分に…。なんにせよ、丸く収まって良かった。
「そう言ってもらえると助かるよ。お詫びと言ってはアレだけど、キッチンの冷蔵庫に入っている果物やジュースはあるだけ好きに飲んでくれて構わないから、俺達が戻るまでゆっくり寛いでいて欲しい。…あぁそうそう、トイレは転移部屋に繋がってない方のドアを出て左の突き当りにあるから。
よし伝える事も伝えたし。そんじゃ、行くぞノーマン!」
「は?」
俺がノーマンに声を掛けながら引っ張ろうとすると、意外そうな感じで素っ頓狂な声を上げやがった。
……つか、なんでコイツはこうも地面に根付いたかのように動かないんだ。研究所に居た時も思ったが、俺と体重は少ししか変わらないはずなのに…。
力を入れていると地面に引っ付く習性でもあるのか、コイツには。
「いや、『は?』じゃねぇよ。暗い夜道はテカテカのお前のデコが役に立つんだから、さっさと来いっての」
「そりゃただの歌だろ。あんな、謎の原理で赤鼻が輝くトナカイ型のクリーチャーなんぞと一緒にすんな。俺のチャームポイントは、光源も無く光り輝くようなシステムしてねぇぞ」
「細けぇこたぁいいんだよ。ホラ、ここからそんなに遠く離れた位置に置いたわけじゃねぇから、パパッと行ってパパッと帰るぞ」
「…だったらホレ、このLEDライトを渡すから、こっちを使えBB」
そういってノーマンは迷彩ズボンの数あるポケットの一つを弄ると、手のひら大のLED式懐中電灯を投げて寄越した。
ライトとは反対方向にあるボタンを一度押すと、眩い一条の光が地面を照らす。…くそっ、コンパクトな大きさの癖に凄く明るいじゃないか。実際、ノーマンのデコより使えるのは確定的に明らかだ。
「じゃ、俺はリビングに戻ってマージと篠山ねーちんと一緒にキャッキャウフフして待ってるから!」
「あっ、ちょっ……くそっ、本当に戻りやがった。仕方ねぇ、もともと一人でやるつもりの作業だったし、さっさと終わらせるか…。草壁大佐を待たせるのも悪いしな」
暗視魔法という暗闇でも物が良く見えるようになる魔法があったので、本来はそれを使って潜水艇まで移動する予定だったが、せっかくなので渡されたLEDライトを片手に移動することにした。
暗視魔法ほど全体を見通せるわけではないが、部分的とはいえやはりライトを使った方が良く見えるというのは実感できた。…なんか、ノーマンに負けた気がして少し悔しい。
▲▽△▼△▽▲
『──転移確認しました。現在、ゆっくりと降下中……着水しました。
まだ高さがありますので、もう少し降下をお願いします………もう大丈夫かと思われます。魔法を切って頂いて構いません』
「了解しました。潜水艇に掛けた空中浮遊魔法を解除します。波飛沫の発生が考えられますのでお気を付け下さい」
ノーマン達と別れたあと、俺は草壁大佐と電話でやり取りしながら現地の転移状況を確認していた。
現在俺が居る場所は、セーフハウスから1kmほど離れたビーチである。
波打ち際に乗り上げる形で放置していた潜水艇を空中浮遊魔法で浮かせ、ビーチと潜水艇との間に挟み込むように転移魔法陣を展開。空中浮遊魔法の魔法式を微調整しながらゆっくりと降下するように潜水艇を魔法陣に沈めていき、草壁大佐のOKサインをもらったので魔法を解除する。
『……海面での安定を確認。伊藤特佐、お疲れ様でした。あとはこちらで曳航作業に移りますので、特佐はゆっくりとお休みになって下さい』
「了解しました。草壁大佐もご無理をなさらぬよう…。また遠方への移動が必要となりましたら、ご連絡願います」
『はい、その際はお言葉に甘えさせて頂きます。…以上、失礼致します!』
──ブツッ
「……ふぃ~。ひとまずは任務完了っと。…さて、俺もセーフハウスに戻るとしますか……」
▲▽△▼△▽▲
…その後、セーフハウスに戻った俺を出迎えたのは、やたらセーフハウスを気に入ったらしいマジカルゆかりんと関口の姿であった。
マジカルゆかりんはともかく、関口が「やだっ! ここで朝焼けを見てから寮に帰るぅ!」などと二人して声を揃えて駄々を捏ね出したのは本当に意外であり、ノーマンをはじめとした幼馴染の面々も目を白黒させていたほどだ。ノーマンの場合は相変わらずのグラサン姿だったんで、本当に白黒させていたかは見えてないんだけど…。
最初は、「冷蔵庫にアルコール類でも放置されていて、関口がそれを誤飲したのか?」とも考えたのだが、どうやらトロピカルジュースの味を気に入ってしまい、雰囲気で酔っただけだったらしい。
普段は委員長然とした雰囲気を纏っている関口だが、内心はストレスを抱えていたのかもしれない…と闇を感じた出来事だった。まぁ、人目を気にする必要もない場所だし、どんな騒いでも時間を気にする必要もなく近所迷惑にもならない無人島だったが故の反動だろうとは思うが…。
4月のテロ襲撃事件の際に、警備員棟のモニタールームでノーマンの提案に乗りかけた美沙都さんの発言もあるし、学園に居る間は気軽に外に行ける環境でもないから、トータルエクリプス島を解放してやるのは良いストレス発散になってくれるかもしれんな。
…とまぁ、そんなハプニングもありつつ、何とかしてごねる関口達をソファーから引きはがし、学園に転移してもらった。
皆を転移させたあと、俺は一人でセーフハウスの魔法陣部屋に残っていた。警備員棟の転移魔法陣を承認するための手続きを行うためである。
警備員棟の転移魔法陣から承認要求を送ってくる作業は、先ほどまで一緒に居た警備員の美沙都さんに一任している。
承認要求を転移先の魔法陣に送る作業についてだが、転移先の魔法陣が設置されている場所を、ある程度特定しておく必要がある。なぜなら、その作業を行う際は作業者の脳裏に世界地図のイメージ映像が映し出され、そこで目標地点をある程度絞り込んでから近くの魔法陣を検索する…という流れとなるからだ。
イメージ的には、Googleアースでお店検索するようなもの……いや、むしろそのまんまな作業である。
ちなみに、皆を連れてきた際にトータルエクリプス島の大まかな位置を説明したのも、この作業を行うための布石だったりする。
「…お。来た来た。んじゃ早速、“承認”…と」
承認作業が終わったので、早速学園に設置された方の転移魔法陣を選択し、転移を試みる。
一瞬にして景色が変わり、最近見慣れてきた学園の転移部屋の風景になった。
「…ふぅ。これで、ここの転移魔法陣からトータルエクリプス島の魔法陣を選択できるようになったよ。これからは、時差に注意して好きなタイミングで気晴らしに行くことができるから、他の人達にも情報共有してくれて構わない」
「「了解」」
「「「「「分かったわ」」」」」
俺の話を聞いたノーマンとマージちゃん、その他の女性陣がそれぞれ同時に返事をする。
「うん。それじゃ、今日の所は解散! 次は今週末の土曜の夜に集合ね。関口用にトロピカルジュースを量産しておくから、それを片手に朝焼けをのんびり楽しもう!」
「「「「「おー!」」」」」
ジュースの件の辺りで痴態を思い出したのか関口がやや赤面していたが、楽しみには変わりないようで他の皆と一緒に元気に返事をしていた。
その後は、時間も頃合いだったので寮に着くなり食堂に移動し、いつものように俺とノーマンが“あ~ん”をされながら晩御飯を食べつつ、「土曜日は朝焼けを見たあとにどうやって楽しむか?」などを予定立てて楽しく過ごした。
そう、学園の生徒のみならず関係者全員が利用可能なこの食堂で、トータルエクリプス島の事をあれこれと楽しそうに会話してしまったのだ。
俺はその事を、数日後に後悔する羽目になる。
▲▽△▼△▽▲
─ 2012年6月16日(土) ─
「………どうしてこうなった?」
土曜日の午後10時過ぎ──いつもであれば就寝している人もチラホラ出始める時間である。
そんな時間であるにもかかわらず、警備員棟…それも、転移部屋の前に数百人規模の人だかりができ上がっていたのだった。
毎度読んでいただきありがとうございます。
今回も前書き部分にあらすじを書く気力があったので頑張りました。
前回より文字数が少なくなっていますが、これ以上書くと区切りが悪そうだったので今回はこの辺で…。
また次回も金曜日更新予定です。




