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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第四章 無人島と学園祭への下準備と…
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第06話 - 絶海の孤島へようこそ

前回のあらすじ。

天野に渉達の素性を暴露ばらした翌日(6月12日)、野間俊之ノーマンが思い付きでC4を起爆させるという寝起きドッキリを実行したため、渉が朝っぱらから説教開始。

さらにその翌日(6月13日)、以前のテロリスト騒動の際に放置されていた潜水艇の引き取る準備ができたという知らせを横須賀の草壁くさかべ大佐からもらう。

そして、ノーマンが爆発させたC4の煙を、近くを巡回していた護衛艦が目撃したという報告を大佐から受けて焦る渉。

なんとか苦し紛れの誤魔化しで事なきを得た渉は、今日も早朝からノーマンを引っ叩く作業に移るのだった。←今ココ

 ノーマンの“C4爆弾を使った寝起きドッキリ”が、横須賀の草壁くさかべ大佐達にバレかけた罰としてヤツの額をしこたま引っ叩いたあと、早朝の清掃へ出かける。

 “清掃”とはいったものの、今日の内容は半月に一度の“設備系点検”である。学園の全関係者が一丸となって行う大掛かりな作業の日だ。


 日ごろから清掃活動を行っているので、この日ばかりは清掃時間を全て点検用に割り振るのである。

 その内容は上下水道設備の確認、電気系設備の確認を行うといったもので、本来ならば業者を呼ぶような内容といえる。だが、籠月こもつき学園の設備はかなり特殊な造りとなっており、普通の業者にはお任せできないのだ。

 その最たる理由の一つが、学園全体に張り巡らされている魔法陣の存在である。


 各部屋に通されている水道の水に関しては、一般的な上水道として浄水場からパイプ伝いで繋がっている。だが、学園寮16Fの大浴場に関して言えば、師匠が群馬で掘り当てた温泉を転移魔法陣で無理やり転送しているのだ。

 常にかけ流しの温泉を出している状態なので、使用魔力が一日当たり膨大になりそうなものだが、流量を絞っている上に人間大の大きな生物を転送しているわけでもないので、半月に一度の魔力補給で十分らしい。

 まだ由子お姉ちゃんがこの学園の生徒だった頃、師匠と一緒に訪れた時にそのような話を聞いた俺は不思議に思って問いかけたことがある。


「師匠は、どうしてそこまでして温泉を転送させようと思ったの?」


「そりゃ決まってる。いつか異世界に戻った時、お姉ちゃんと一緒に温泉に入れる実家を造るためさ! この学園はね、僕が異世界を開拓するための練習として造り上げた自慢の施設なんだ。

 もちろん練習だからと言って手は抜かなかったけどね。今となっては、創立当初からすると寮も校舎も外見がだいぶ変わったけど、内部の設備や地下の下水処理施設に施した魔法陣は変わってないよ。当時も今も、皆が生活する上で最高の環境を用意できたと胸を張って言えるね!

 …まぁ、学園を快適にさせ過ぎたせいで、卒業して実家に帰ったり嫁いだりした子達から『外の世界が不便すぎるから何とかして欲しい!』ってよく苦情が来るようになったのが、誤算と言えば誤算だったかな。…やはり、1930年代に“温水洗浄便座”や“赤外線センサー式蛇口”は早すぎたらしい」


 ……会話内容を思い出したが、あの人、第二次大戦以前にそんな未来技術を仕込んでたんだな。そりゃあ卒業生達も、和式便器や洗浄機能無しの便座には戻りづらいだろうさ。

 そして、しれっと“開拓”とかいう単語を出してたあたり、師匠が元々住んでいた“この世界とは別の世界”にある日本に帰る気が無かった事を当時から匂わせてたんだな。…気付かなかった。


 そんなわけで、この学園には師匠が施したオーパーツ的な魔法陣や設備が残されており、定期的に配管や導線に魔力を流して破断や断線の確認を行ったり、魔法陣への魔力補給を行ったり…といった作業が必要となっている。今日はその作業の日というわけだ。

 魔力保有量の少ない一年生には地味にきつい作業ではあるが、魔力が足りなくなった時の症状を体感できるので、いずれ魔女として活動した際に自分の魔力が枯渇しそうかどうかを判断する目安となる。

 安全マージンを取るための練習にもなるし、魔力保有量も多少鍛えられるので一石二鳥の作業と言うやつだ。


 さて、入学したての頃は魔力を通し過ぎてへばっていた一年生も、今ではかなり頑張って作業を続けられるようになり、問題なく点検作業を終えることができた。

 ……いや、本当に問題なさ過ぎて逆に驚いたくらいだ。

 俺達がまだ一年だった昨年6月の点検では、魔力残量が少なくなりフラついていた女生徒が数十人は出ていたはずである。

 今年入った生徒も、妹尾せのおの保有量530という規格外な存在を除けば、5月時点の保有量は例年と同程度の230前後がほとんどだったはず…。妹尾は俺やノーマンと幼少期から一緒に居たから、俺らの魔力保有量に当てられて成長に伴い保有量が多くなっていたからおかしくは無いのだが、他の生徒の成長っぷりが異常である。

 気になった俺は、授業の休み時間に4Fにある一年生の教室をざっと見ながら、色んな生徒の魔力保有量を軽く確認し──


「──どの子も保有量が300を超えている…だと…?」


 素直に驚くしかなかった。

 幼馴染ズは、幼少期から俺達と一緒にいる時間が多かったために保有量が引き上げられていたが、わずか一ヵ月程度で70以上も伸びるなんて事は無かった。


「……もしかして、2年や3年も?」


 ……次の休み時間を利用して2年と3年のクラスを見て回ったが、他の生徒も軒並み100以上は保有量が上がっていた。

 特に、幼馴染ズやマジカルゆかりん、マージちゃんといった元から保有量が多かった人に至っては200オーバーの成長が見られるほどである。



  ▲▽△▼△▽▲



「やはり間違いないな…」


「ん? 誰が“一番の巨乳か?”でも確認してたのか、BB。なんか今日一日、色んな生徒を見て回っていたみたいだが」


 放課後、寮へ戻る道すがらポロっと呟いた一言に対し、ノーマンがとんでもない爆弾を投下しやがった。

 一緒に帰っていた女性陣から冷たい視線と睨みが飛んでくる。


「おいこらノーマン、滅多な事を言うんじゃない。違ぇっての、確かに生徒を見てはいたけど“魔力保有量”をざっと確認してたんだよ。だから、莉穂姉も滝川も睨まないでくれ。あと、関口もマジカルゆかりんも冷たい目で見ないで。マジでへこむから…」


「「「「なら良し」」」」


「んでBB、何が『間違いない』ってんだ?」


 女性陣の誤解が解けてホッとしていると、ノーマンが悪びれもせずに聞き直してくる。

 コイツ、変な爆弾を投下しておきながらしれっとしやがって…。昨日は本当に爆弾を起爆させるし…。


「ったく、お前ってやつは引っ掻き回すだけ回してしれっとしやがって…。

 全生徒の魔力保有量が著しく成長していた事に気付いたんだが、“一体なぜか”を考えていたんだよ。で、その原因は“魔法式のフル構築”で間違いないなって思ったってだけさ。

 あとは、このまま皆の魔力保有量が成長すれば、学園祭での対応は容易くなるだろうなってふと思ってたんだ」


「あ~…なるほど。まったく、BBは真面目だなぁ。あと四ヵ月もあるんだから、対策を練って準備しておけば余裕っしょ」


「お前、昨日は『BBの気が緩んでる』的な事を言って早朝からC4を起爆させたくせに…」


「それはそれ、これはこれ。休む時は休んで、戦う時は戦う。何事もメリハリをつけて生きるのが大切だぜ、BB」


「っとに、いけしゃあしゃあと…。お前のせいで今朝だって草壁大佐に心配され……あっ!?」


 俺が草壁大佐とのやり取りを思い出して叫んでしまったせいで、ノーマンと幼馴染ズをはじめ、周囲に居た下校中の生徒からも視線を集めてしまった。

 「なんでもないですよ~」と会釈しながら周囲を誤魔化しつつ、ノーマン達に今朝の事を説明する。


「──そんなわけで、俺はこれから横須賀の海軍ネイビー基地ベースに行って潜水艇を転移させるための準備をしてこなきゃいかんのよ。んで、改めて受け入れの了解をえられたら、今度は例の無人島に転移してビーチに乗り上げさせていたテロリストの潜水艇を転移させる予定だ」


「なるほどな。昨日今日と慌ただしいなぁ、BBは」


「…言っとくが。昨日、俺が慌ただしかった原因はお前だからな?」


「ところでBB、潜水艇を転送しに例の無人島に行くなら…もう放課後だし、あとは夕飯を食べるだけだし、“私を海に連れてって”と言いたいんだが、可能かね?」


 思いっきり話をはぐらかしたノーマンが、“私をスキーに連れてって”をもじった事をぬかしおった。

 分かってしまう自分もアレだが、なんで俺達が産まれる前にやった映画タイトルを使うかな。しかも、わざわざその部分を言う時だけキャピキャピした感じの声色を使いやがって…。


「うっわ、キモッ! つかお前、話をはぐらかしにきたな。…まぁ、別にいいけど。

 で、無人島に行きたいって件だが、この時間に移動するのはオススメできないぞ。たぶん、つまんないから…」


「俺は一向に構わん!」


「そうかい…んじゃ、連れてってやる。俺は当初の予定通り、先に横須賀に転移して潜水艇の転移先をマーキングしてくるわ。お前は一旦寮に戻ったあと、警備員棟の転移部屋に待機しててくれ」


「あいよ」


 莉穂姉達が「さっきの元ネタは何だろう?」的な反応しているのを横目に見ながら、俺は鞄を持ったまま転移部屋から横須賀に移動した。



  ▲▽△▼△▽▲



「伊藤特佐、ここに転移をお願いします。ここでしたら一般人が立ち入れる場所からも死角になるので、秘密裏に転移が可能です。そのあとは、我々の方でドックまで潜水艇を曳航致します」


「了解致しました、草壁大佐。わざわざ大佐自らご案内頂き恐縮です。

 それでは、潜水艇を転送するために戻りますので、転移が確認できましたらお手数ですが携帯にご連絡願います」


「了解しました。よろしくお願いします」


 草壁大佐の返事を聞き、片道転移用の魔法陣を空中に展開してから横須賀海軍(ネイビー)基地ベースの転移部屋へと走り学園に戻る。


「「「「「お帰り! じゃあ行こうか」」」」」


 学園に戻った途端、俺の目に映ったのは笑顔で出迎えてくれたノーマン。…と、その後ろに勢ぞろいした美希姉を含めた幼馴染ズ、マジカルゆかりん、マージちゃん、定時上がりだったらしい美沙都みさとさんにマチュア本体、担任の仁科にしな先生、学園理事長の由子お姉ちゃん……以上の面々である。

 皆、完全なプライベートビーチに行けると思い、最小限の荷物と共にいい笑顔でいらっしゃる。


「……はぁ~。赤道上の“どの辺にある島か”をちゃんと伝えておけば良かったか…。

 …よしわかった。今から魔法陣の刻まれたシートを出すから、皆ちょっとだけ下がって」


 俺は、一昨日制約魔法(リストラクション)の魔導具を取り出した要領で空中に転移用の魔法陣を展開し、手を突っ込んで一枚の丸められたマットを取り出す。

 広げると1(メートル)四方の大きさになるマットの表面には、金属粉が塗布されており魔法陣を定着できるよう加工されている。研究所で師匠が開発した魔法陣用の特製マットだ。

 今取り出したマットには既に転移用の魔法陣が刻まれており、無人島に建てられたセーフハウスの転移部屋にアクセスできるよう魔法陣同士の認証作業が終わっている。


 転移の魔法を使う際には展開した魔法陣同士を認証させる必要があり、どちらか片方でも認証を拒否すると転移できないというプロテクトが仕込まれている。

 先月から、本来は承認されていない群馬の研究所や、東京の世界防衛軍本部、今日訪れた横須賀基地(ベース)などへ行き来しているが、それはこちらが転移魔法陣を通して受け手側の魔法陣へ認証許可依頼を出し、向こうが承認してくれているから移動できているのだ。

 要するに、誰かしら移動先の魔法陣で承認作業を行ってくれる人が居ないとどうしようもないのである。これから転移する先は現在誰も居ないため、俺の様に事前に認証作業が終わった魔法陣を用意していないと移動できないというわけだ。

 ちなみに、学園に設置されている魔法陣は更に特殊で、学生証ないし教職員証をかざすか所持していない場合、例え魔法陣同士の承認が終わっていようと転移できない上に、1分ほどのリキャストタイムまで設定されている。なぜか軍に設置されているものより、無駄に手間のかかった代物である。


「マットに刻まれた魔法陣はリキャストタイムも設定されてないし、カードを翳す必要も無いから、向こうに着いたらすぐに魔法陣から移動してね。扉を出るとすぐに広いリビングに出るから、そこで待ってて。皆が移動した後に俺も向かうから」


 そう伝えるや否や、ノーマンを先頭に綺麗に並んで皆が順次転移して行く。

 全員が転移したあと、邪魔にならないよう転移部屋の片隅にシートを移動させて俺も転移する。


 セーフハウスのリビングに行くと、外の様子を見たやや困惑気味の皆が待っていた。…いや、マチュアだけは学園に残っているコピーと位置情報のやり取りをしたのか、納得と諦めが混じったような表情をしている。

 俺はリビングのガラス戸を開いて皆を外へと連れ出し、大げさに振りかぶりながら真っ暗(・・・)な海を背に現在地の紹介をする。


「じゃあ、紹介するね。ここが前に話した無人島。師匠が異世界に旅立つ直前に、俺に引き継いだ“石垣島よりも一回りほど小さな島”だ。

 危険な動物や虫は居ないけど、ミツバチは居るからそこだけ注意してね。…とは言っても、今の時間じゃ動き回ってないだろうけど…。

 ちなみに、ここがどの辺に位置しているかと言うと、キリバス共和国とエクアドルの中間地点あたり。…サンフランシスコから真南に5000~6000km(キロメートル)ほど移動した場所にあって、周囲200km以内に島は存在しない。完全に孤島ってわけだ。

 日本に比べて16時間遅い場所だから、今は6月13日になったばかりの深夜12時過ぎ…ご覧の通り真夜中になる。綺麗なエメラルドグリーンの海を見るには、日本時間で午後10時以降から午前7時くらいの時間帯に来る必要がある。

 というわけで、改めて…。師匠命名“トータルエクリプスとう”へ、ようこそ!」


 島の紹介が終わった直後、マチュアを除いた女性陣から盛大な溜息が吐き出され、その場で打ちひしがれていた。

 何と言うか、本当にすまんかった…。

今回から前書きに前回のあらすじを書いてみました。

ただし、次回以降も書くだけの気力が残っているかは不明…。

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