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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第三章 体育祭と海開き
62/141

第19話 - 報告会、終了

今回はなんとか金曜日中に投稿できました。


2018/02/22

最後の方のアリサの発言の「文化祭」を「学園祭」に訂正しました。

「ねぇ、渉。テロリストが崇拝しているという“教祖アリサ”及び“伊藤博士”の目的としていることは、分かったわ。…納得はしかねているけれどね。

 ただ、それよりも午前中から気になっていた事があるから、早く教えて欲しいのだけど…」

「あ、うん。関口、何が聞きたい?」


 ノーマンの一言で場の空気が軽くなったのを見計らったのか、軽く手を挙げながら関口が俺に話しかけてきた。


「テロリスト達はどうやって、警備員棟のチェックを掻い潜って潜入したの? どう見ても日本人には見えないし。それに、鞄のチェックだってするだろうから、彼らの持ってる銃にも気付かないとは思えないわ」


 さすがは見た目から何から優等生然とした関口である。俺が「後ほど説明する」と言っておきながら、忘れかけていた点を挙げてくれた。

 滝川も優等生なんだが、どうにも莉穂姉と張り合うようになってからそういった雰囲気が薄れている気がする。現に今も、「傷心の渉は、私が癒します!」みたいな感じに、莉穂姉、由子お姉ちゃん、マチュアの三人で牽制し合っているように見受けられる。

 今まではあまり見られなかった“年相応の少女”らしい表情をするようになったとは思うが、ついこの間までのしっかりとした雰囲気とのギャップが激しいので、早く俺なんか諦めて昔に戻って欲しい。


「あ~、それについては…、仁科先生や由子お姉ちゃん、それに籠月学園ここの卒業生である菜月さん、義母かあさん、野間義母(はは)なら答えを持っている(・・・・・)と思う。というのも、この学園を卒業して魔女として活躍するにあたり、世間の人々から顔が割れないように“とある腕輪”が配布されるんだが…。

 えっと…どなたか『今、手元に持ってるよ』って方、いらっしゃいます?」

「「「えぇ、持っているわ」」」


 名前を挙げた人達を見渡しながら問いかけると、マジカルゆかりんの母親、義母さん、野間義母の三人がすぐにハンドバッグから腕輪を取り出した。

 あまり出動依頼が来ることはないとはいえ、一応外出する際は手元に持ち歩いているようだ。魔女として素晴らしく模範的な反応である。


「私は、下に取りに行けば…」

「私も、そこの机の中に…」


 仁科先生も由子お姉ちゃんも、基本は学園内から動くことが無いので持ち歩いているという事は少ないらしい。学園内なら、今日みたいに覗き魔(デバガメ)が大量に居る場合を除き、基本的に生徒の目しかないから腕輪の効果を使うまでも無い。肌身離さず持ち歩く必要がなくなるので、当然の反応と言える。

 どうやら仁科先生の腕輪は、教職員室の机の中、あるいは鞄に入れてあるのだろう。由子お姉ちゃんの場合、この部屋の奥に鎮座している大きな机の引き出しに入れているようだ。


「じゃあ、お母さん方だけで良いので腕輪の効果を発動させて下さい。

 関口、三人をよく見ててくれ。さっきの疑問が解決すると思うぞ」

「え? あ、うん…」


 俺は三人に視線を戻し、一つ頷いて合図を送る。

 すると腕輪の効果が発動し、一瞬のうちに三人の姿を正しく認識できなくなった。

 母親達の突然変化に、間近で見ていた幼馴染ズが驚きの声を上げる。


「「「「え?!」」」」

「おぉ、知識としては知っていたが、こうやて発動するのを目の当たりにするのは初めてだ。

 しかし凄いな。座ってる位置は変わってないはずだから、お袋がどこに居るかは分かるとしても、顔はおろか服装すら正常に認識できない。そのくせ、違和感を抱くことなく『ここに居ても不自然ではない』という風に脳が処理をしようとする…。何とも不思議な感覚だな。これじゃあ、常に自分に対して抵抗魔法レジストを使い続けない限り、腕輪の効果を相殺できそうもないな」

「皆、新鮮な反応をありがとう。そしてノーマン、グルメレポートの様な的確な表現お疲れ様」


 それぞれの反応に労いの言葉を掛けていると、不意に誰かから袖を引っ張られた。


「ね、ねぇ渉お兄ちゃん。これって、一体どうなってるの? 俊之お兄ちゃんも言ってたけど、凄く不思議な感じがして…私、混乱しそう」

「あぁ、さすがに目の前で使われるとそうなるわな。そんじゃ、妹尾せのおもこう言ってるんで、お母さん方、効果を切って下さい」


 若干涙目になって袖を引っ張っていた妹尾の頭を撫でて落ち着かせつつ、俺の目にも正常に姿を認識できなくなっている義母さん達へ話しかける。

 莉穂姉達が妹尾を見て、「しまった。先を越された!?」的な反応をして悔しがっていたが、この子は計算してあざとくしているわけじゃないので素直に可愛がることができる。

 逆に莉穂姉達がやると、たぶん違和感を覚えていただろうな。もう魔法を使うようになって結構経ってるから、この程度で取り乱すわけがないのだ。妹尾は、学園に入ってまだ2ヶ月ちょっとである。まだ、こういった奇妙な感覚に対する耐性が少ないのだろう。


 義母さんをはじめとした三人の姿が認識できるようになり、妹尾の身体から緊張感が抜けるのが分かった。撫でていた手を離しポンポンと肩を叩いてやると、恥ずかしさで顔を少し赤らめながら俺から離れていった。

 …なんだろう、恋愛対象としては莉穂姉の様な“お姉ちゃんキャラ”にしか目が行かない俺だが、こういう可愛らしい反応を見るとほっこりしてしまうな。今なら「これはこれで悪くない」と、ロリコン共の言いぶんを素直に理解出来てしまいそうな気さえする。妹尾、恐ろしい子。


「さて、ご覧いただいた通り、この“認識阻害の腕輪”を発動させれば、事前に抵抗魔法レジストを発動させでもしない限り、警備員のチェックを違和感なくすり抜ける事が可能だ。で、コイツらテロリストは今の腕輪と似たような魔法陣が刻まれた物を所持していた。それが…コレだ」


 “ゴトッ”という音をたてながら机に置いたのは、マチュアにテロリストを運んでもらった際に受け取っていた腕輪である。

 皆の視線が一斉に腕輪に集まった。


「コレの効果としては、“姿を正常に認識できなくなりつつ、それに対して違和感を感じさせない”という点に関しては一緒です。ただし、異なる点が一つ。“頭に浮かべた通りの人物”として認識してしまうという追加効果があります。

 警備員棟にて来場者の顔の認証を行っていますが、ご存知の通りそれらは全て人の目によって行っています。そのため、この腕輪の効果によってすんなりとチェックを掻い潜れたという事です。

 まず、この腕輪を使い、他人からは正常に姿を認識できなくした状態で認証チェックを行います。その際、入場用チケットを機械に通すことで、チケットに対応した生徒の家族の写真が映ります。そして、腕輪のもう一つの効果によって、テロリストたちの姿は違和感を持たれることなく、その家族の姿として認識され、チェックを素通り出来る。…という訳です」


 師匠が関与しているという事実もあり、皆「なるほど」という表情で納得していたが、関口がすぐに疑問を口にしてきた。


「チェックを掻い潜れた理由は分かった。だけど、どうやって入場チケットを手に入れたのかしら?

 …まさか、誰かの家族を──」

「あぁ、関口、そこは安心していいよ。別段誰も犠牲に何てなってないから。

 一応、テロリスト反応があった際、警備員の美沙都みさとさんにも裏で確認してもらったんだけど、同じ人物の入場記録が2回行われていることが判明したんだよ。で、今日一日、マチュアにテロリスト共の監視をお願いしつつ、学園管理のクラウドサーバーに外部からアクセスした形跡がないか確認を取って貰ったら……」


 血の気が引いた関口に心配する必要がない事を伝えつつ、マチュアにチケットの件の続きを促すよう目配せする。


「調べたところ5月3日の20時頃、体育祭関連のデータが管理されているフォルダに外部からのアクセスが確認されました。クラッキングによる強引なものではなく、正規のアクセスに見せかけた方法でしたので見落としておりました。申し訳ありません。

 アクセスされていたのは、6名分のチケットデータのみ──入場の際に使われたものですね。これを印刷して潜入してきた模様です。

 尚、アクセス元を探ろうと解析を試みましたが、魔法によるジャミングが掛けられていたようで、詳細な地域の絞込みはおろか国すら識別ができないようになっていました」

「まぁ、その辺は師匠が端末やらツールやらを事前に用意して手を打っていたんだろうよ。だとしたら、すでに動かれていた時点で俺達が出来る事なんて無かったんだ。マチュアが無能ってわけじゃない、そう落ち込むな」


 落ち込んだ表情を見せるマチュアに対し、労いの言葉を掛けておく。

 言動がアレなせいで普段はぞんざいに扱っているが、なんだかんだで働き者だし、人間には面倒だろう作業なども行ってもらっているので非常に助かっているのは事実である。ボディにさえ入っていなければ極めて優秀な自慢の(AI)なのだ。


「渉。言葉での慰めより、性的な意味で抱いてくれる方が私は嬉し──」

「もう用件も済んだし、変な事をこれ以上言わせないためにボディの主電源落としてやろうか?」

「慰めるのであれば頭をなでなでして下さいお願いします」

「まったく、初めから無難なものにしてくれ…。

 というわけで、今回の潜入の種明かしとしては以上になりますかね。他に何か聞きたい事とかある人はいらっしゃいますか?」


 要望通りマチュアの頭を撫でながら室内を見回す。マチュアの頭には、無駄にハイスペックに改造された手触りの良い獣耳が装着されたままなので、ちょっと手触りが幸せである。

 まぁ、そのせいかお父さん方から何とも言えない表情で見られていてちょっと居た堪れない…。


「「「あ…、じゃあ次は私も──ハッ?!」」」


 莉穂姉、滝川、由子お姉ちゃんの三人が同時に口を開いたが、次になでなでして欲しいというだけの内容だったみたいなので盛大にスルーした。

 でも、莉穂姉にだけは後でなでなでしておこうと心に決めておく。


「え~…、他に何かある方、居ませんか?」

「あ…。それじゃあ、私から一つ…。今日のお昼に聞いた例の通信機で、今から教祖アリサに連絡を取れないかしら? 前に連絡が取れたのって、テロリスト達を倒した後に使ったタイミングだったのよね? もしかしたら、今だったら繋がるんじゃないかしら?」


 昼間に聞いた教祖アリサと連絡のつく通信機が気になったのか、仁科先生が使ってみることを推奨してきた。

 確かに、前回同様テロリストをいなした今ならば、教祖アリサの方も連絡待ちでスタンバってる可能性はある。試してみる価値はあるだろう。


「そうですね。やってみましょう。…マチュア、俺が預けた通信機は持っているな?」

「えぇ、大事におっぱいの間に挟んでおきました」

「お前ェ…。俺達みたいな体操服姿と違って、ちゃんとポケットのある服装なんだから、そっちに入れとけよ…ったく」


 マチュアの谷間にすっぽりと隠されていた通信機を受け取り、魔方陣に魔力を込めて使用する。

 アンドロイドとは言え、人に見せかけるために体温を持たせただけあり、受け取った通信機は生温かった。ちょっとドキドキしてしまったが、辛うじてポーカーフェイスが出来たと思いたい。

 義母さんが若干ニヤついていたり、莉穂姉達がジト目になっているのはきっと偶然に違いないんだ。


「BB、表情は普通だけど顔が赤くなってるから恥ずかしがってるのバレバレだぞ?」

「指摘されると余計に恥ずかしくなるのが辛い…。つか、ここは黙っていてくれるのが優しさってもんだろうがよ」

「いいや、ここは敢えて教えてやるのが友人としての思いやりってもんだぜ、BB?」


 ブツッ──


『…まったく、あなた達は楽しそうね。で、連絡を寄越したって事は、うちの雑兵達は無事(・・)倒されたって事で良いのかしら?』


 一瞬のノイズ音の直後、以前聞いたことのある女性の声が通信機から響いた。若干呆れ交じりな雰囲気だったのが地味にショックである。

 相変わらず声が高めで若々しい感じだが、師匠の知り合いということはかなりの高齢のはず…。一体何歳なのだろうか。


「やっぱり繋がったわね…。妙に慣れ慣れしくて驚きましたが…」

「それが先生、実はこの人、初めて連絡を取った時からこんな感じなんですよ。俺とノーマンの名前とかも知っていて──」

『…先生? 今回はあなた達だけじゃなくて、他にも人が居るの?』


 教祖アリサが少し驚いた感じの声で聞いてくる。

 前回はこちらが驚かされた上、一向に連絡がつかなくなっていたので意趣返しができた感じで少しすっきりした。


「えぇ、今回はそちらが事前連絡も無しに送ってきたテロリスト達のおかげで色々ありましてね。今は俺達の関係者が二十名以上周りに居る状況ですよ。まぁ、詳しい紹介は置いとくとして……なんで前回の会話以降、通信機に応答してくれなかったんですか!

 こちとら、人の目が多い中、体育祭の競技の合間に気を揉みながら対処しなくちゃいけなくて面倒だったんですよ!?

 貴女あなた、入場用チケットの複製や認識阻害の腕輪とか準備万端だったくらいだから、体育祭があるって知ってた上でテロリスト寄越したんですよね? こっちにも心の準備ってもんが欲しかったですよ…。以後、気を付けてくださいね!」

『あ~、はいはい。ごめんなさい、ごめんなさい。ホラ、こういったイベント事は「サプライズでやった方が良いかな?」…って、思ってね。ま、次回の予行演習とでも思って今回の件は怒りを収めて頂戴ちょうだいな』


 凄く投げやりな態度で謝られた上、「次回の予行演習」とか不穏な単語を聞いた気がする。

 次回も一般人が多い中、テロリストを寄越すって意味だろうか。…できれば違っていて欲しい。


『とりあえず、心の準備が欲しいって言われたし、次の予定を教えるわね。

 次回は11月の学園祭に送り込む予定よ。金曜日から三日間にわたって25名ほど送り込むつもりだから、頑張って撃退してね♪ それまでの間、心置きなく準備して頂戴。それじゃ、バイバーイ』


 ブツッ──


「…前回同様、言うだけ言ってあっという間に切られちまったな、BB」

「あぁ…。やっぱ、年を取ると人の話を聞かないってのは本当なのかもな…あの人の実年齢知らねぇけど」


 少し呆然とした感じでノーマンと俺がぼやく。

 他の人達はどんな反応だろうかと見渡してみると、全員呆気にとられたような表情で通信機を見ていた。


「……さ。じゃあそういう訳で、次の予定も分かった事だし、今日の所は撤収! お疲れ様でした!」


 とりあえず、教祖アリサのあまりのインパクトに皆も毒気を抜かれたのか、俺の投げやり気味な解散宣言を拒否することも無く報告会はお開きとなった。


 尚、うち捨てられていたテロリスト6名は、前回同様、縛り上げて警備員棟に転がして警備員のお姉さん方に見張りを頼むという流れになった。…あとでおき中将に連絡とって、引き取ってもらうための手続きを済ませよう。

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