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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第三章 体育祭と海開き
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第18話 - 俺達が生まれた理由(わけ)

すみません。投稿日に間に合いませんでした。

気付いたらいつもの2倍もの文量になっていて、分割するとおさまりが悪いし…ということで作業が長引いてしまいました。

「はぁ~…。これでようやく一段落かぁ~…」


 体育祭も終わり、幼馴染ズの両親が乗った送迎用のバスを見送ったあと、俺は盛大に溜息を吐いた。


「どうした、BB? 目標通り優勝できたんだから、もっとはしゃいでもいいんだぜ?」

「いや、それは良かったんだけどさ。お前とマージちゃんの身体能力が高すぎるからって事で、来年からそれぞれ別のクラスにするって話を、さっき由子お姉ちゃんから聞いてな…」


 今年はノーマンが言った通り無事優勝できたが、あまりにも余裕過ぎたためにパワーバランスの分散という話が教師陣で挙がったらしい。

 まぁ確かに、ノーマンとマージちゃんは魔力を使わなくても素の身体能力がバカ高いから、手加減していたところで常人レベルの身体能力では歯が立たないだろう。その点、俺の場合は素の身体能力はそこそこ高いものの、運動部のエースレベルの人間であればいい勝負が出来る程度のスペックである。

 おかげで、去年の体育祭では接戦を繰り返しながらの優勝という“いい感じの勝負”ができていたのだが、「来年は実質、ノーマンとマージちゃんのツートップバトルになるだろうなぁ」という想像しか浮かばず、それが溜息として出てきてしまっていた。


「なるほど。BBは俺と離れ離れになるからってんで、寂しくなったんだな」

「ぷっ…渉、俊之としゆきと離れ離れになるからってダサ」


 俺の心情を斜め上方向に勘違いしたノーマンが、自慢のサングラスをとおでこを輝かせながらからかい気味に。マージちゃんに至っては、莉穂姉を超えるほどの巨乳を“たぷん”と揺らしながらドヤ顔で俺を小馬鹿にしてきた。

 コイツら、そのおでことおっぱいを引っ叩いてやろうか。…いや、ノーマンはともかくとして、マージちゃんの方はセクハラになるからやめとこう。


「ちっげぇよ! 俺とお前らとじゃ身体能力の差が激し過ぎて、『来年は勝てそうにないな』って気落ちしてるだけだよっ! あと、マージちゃん。俺をあざ笑っているけど、平気なのか? お前さんだって、ノーマンとは別クラスに配属されるって事なんだぞ?」

「なん…ですって…?!」


 どうやら本気で「自分は俊之と一緒のクラス」だと思い込んでいたらしく、マージちゃんが愕然とした顔で驚いていた。

 まったく、実力差で考えれば、“俺とノーマンの組合せ”あるいは“俺とマージちゃんの組合せ”もしくは“全員違うクラス”くらいしかバリエーションが無いだろうに…。


「フフフ…。私も来年からは大学校舎に移るから寂しいけど、二人が別のクラスになると聞いて少し気が晴れたわ! マージも、私の気苦労の10分の1でも味わうといいわ!」


 ノーマンを挟んで、マージちゃんの反対方向に陣取っていた篠山ねーちんが、ここぞとばかりにマージちゃんを攻めたてている。

 くそ、これが百合ゆり百合しい展開だったらキマシタワーを建てて興奮していたというのに…勿体ない。


「ぐぬぬ…! で、でも私の場合は同じ校舎だし、休み時間に気軽に会いに行ける距離だからマシよね。かえでは校舎がかなり離れているから、昼休みくらいしか来れないだろうし…。あ~あ、楓かわいそ~」

「なっ!? 言ってくれるわね、この魔乳犬耳娘がっ!」

「犬じゃありません~、狼ですぅ~!」

「同じイヌ科じゃないの! 誤差よ、誤差!」

「二人ともやめて! 私のために争わないで!」


 マージちゃんと篠山ねーちんの口論が少しヒートアップし始めた頃、ノーマンが突如として裏声気味に割って入ってきた。

 あと、その台詞、リアルで聞いたのは初めてかもしれない。まぁ、普通は言えないよな。どれだけ自分に自信があるんだよ…って感じだし。


「今までも結構な頻度でお前の取り合いをしていたのに、何を今更になってベタな止め方してるんだか…」

「いや、ホラ。せっかく獣耳けもみみコスしてるんだし、ここは一つ“少女マンガの主人公的な喧嘩の止め方”をしてみようかと思ってな」

「コスプレ扱いすんなよ。俺は好きでやってたわけじゃねぇ」

「そうか? 俺はカチューシャがグラついて動きづらくなるし、丁度いいハンデとして結構楽しめたんだがな」

「男性観戦者からは不評だったから“来年は男性は獣耳を除外する方針”だったみたいだが、気に入ってたのならしょうがない。お前は来年も獣耳を装備しての参加な」


 とりあえず、これで少しは来年の勝率が上がったかもしれない。

 とまぁ、来年の体育祭の話はこの辺で一度置いといて、俺はこのあとの事について「どう話を切り出したもんか」と、先ほどから頭を悩ませていた。


「ねぇ、渉。来年の体育祭の事だけじゃなくて、他にも何か悩み事があるわね? お姉ちゃんには分かるわ」

「さすがは莉穂姉、俺のちょっとした機微を感じ取ってくれる。そこに痺れる、惚れ直すぅ。

 いや、実はこのあとの“話し合い”…と言うか、“報告会?”…をするのが気が重くてね…。うちの義両親やマジカルゆかりんの両親が参加するのは良いとして、ノーマンの義両親まで参加するってのがねぇ…。防衛システム関係で色々と小言を言われそうなんだよなぁ…。考えただけで面倒臭ぇ…」


 頭を抱えながら莉穂姉に心情を吐露していると、俺の前に回り込んできた莉穂姉が前かがみになりながら上目づかいで微笑んできた。

 うむ。巨乳で、黒髪ロングで、凛とした顔立ちの莉穂姉がそういう行動をしてくれると、普段の表情とのギャップも相まって破壊力抜群である。

 良し。ディ・モールト、良し!


「渉、大丈夫? おっぱい揉む?」

「いや、どっちかというと“揉む”より“顔を埋める”の方が嬉しいかな──」


 いかん。莉穂姉の可愛さに注意が向き過ぎて、ついうっかり本音が駄々漏れしてしまった。


「──って、そうじゃない! 何その発言?! 莉穂姉こそ大丈夫? もしかして、マチュアのセクハラ発言に感化されて、常識とか良識が麻痺しちゃってない?」

「だって…、なんだかんだ言っても渉だってお年頃なわけだし…。やっぱり“ギュッ”ってハグするより、もっと肉欲的な方が癒せるんじゃないかな…って、お姉ちゃん思ったの」


 表情、仕草、声色、発言内容…そのどれもが一々あざとい。だが、それがいい。

 まったく、義姉おねえちゃんは最高だぜ。

 だがしかし、俺も常日頃からルパンダイブしないよう、自身を律してきた男。ここで性欲に負けるわけにはいかないのだ。…ノーマンをはじめ、人の目もあるし。


「その気遣いはありがたいけれども! …今まで欲望に負けないよう我慢してた悶々としたアレコレが、無駄になりそうで素直に喜べねぇ!」

「渉、私もおっぱいの大きさなら莉穂姉に負けない自信があるわよっ!」

「渉君、私の方が“大人の色香”というものを教えてあげられるわよ?」

「ちょっと、滝川も由子お姉ちゃんも自重しようか。…昼にも言ったと思うけど、そういった“性的なキャッキャウフフ…”は、学園に在学している間は自重するつもりだから!

 だいたい、そういった誘惑を我慢できないようなら、中学生時代に莉穂姉を押し倒してるっての。そういった事をしないよう、血の涙を流しながら理性を保つ男…それが俺だっ!」


 大声で宣言しながらドヤ顔気味に言い切っていると、お腹をさすりながら義母さんが近づいて来て俺の肩に手を置いた。


「ま。お母さんとしては、早く初孫ういまごが見たいんだけどね」

義母かあさんも変に発破をかけるなっての。歴代卒業生が築いてきた学園の風評を、創設者のクローンである俺が崩すわけにもいかないでしょうが…ったく。

 ホラ。もう目的地に着いたし、この話題は終わり。夕飯を食べながら、本題に移ろうジャマイカ」


 先ほどからワイワイと騒いでいた俺達だが、実は全て教職員棟へと移動しながらのやり取りである。

 というのも、これから行う報告会をするにあたり、俺の義両親なども含めかなりの大所帯となってしまったのだ。

 さすがに寮の食堂では目立ち過ぎるし、座席の確保も難しそうということから教職員棟2Fの理事長室を話し合いの場とする事に決まり、今に至るというわけである。

 尚、夕飯については家庭部員が理事長室まで運んでくれており、既に準備済みと言う至れり尽くせりっぷりである。

 理事長の職権乱用と言われれば返す言葉もないだろうが、学園の今後に関わる話なので目を瞑ってもらいたいところだ。


 そして、今まさに理事長室に入ろうと扉に手を掛けた瞬間、俺達の事をやや離れた位置から見ていた関口が突然ボソッとつぶやいた。


「ふぅ…。それにしても、ちょっと前では考えられないくらい、渉の周りが騒がしくなったわね…」

「いや、関口。俺が好きで騒がしくしているわけじゃないからね? 頼むから、そんな呆れたような顔して見てくるの止めて? …妹尾せのおと仁科先生も、横で力強く頷かないで、切なくなるから!」


 俺は何とも居た堪れない気分になりながら、今度こそ理事長室に足を踏み入れるのだった。



  ▲▽△▼△▽▲



「──とまぁそんなこんなで、今日侵入してきたくだんのテロリストがそこに転がってる連中です。

 どうやって入口のチェックを掻い潜ったのか等、細かい経緯は後ほどお話しますが、その前に何か質問がある方はいらっしゃいますか?」


 俺は、白目を剥いて雑然と積み上げられたテロリスト6名をチラ見してから、参加メンバーをぐるっと見回した。

 現在は夕飯を食べ終え、じっくりと本日起こったテロリストの侵入事件について説明し終わったところである。

 積み上がっているテロリスト達は、食事が終わる頃合いを見計らってマチュアに運んできてもらったものだ。

 夕飯の時から参加したかったのか、マチュアがやや恨めし気な視線を向けてきている。あとで、頭を撫でながら褒めるか、ハグしながら耳元で労いの言葉を掛ける事にしよう。


 さて、改めて室内を見回してみたが、やはりというか人数が凄い事になっている。

 莉穂姉をはじめ、美希姉、篠山ねーちん、関口、滝川、妹尾…の、幼馴染ズ。計6名。

 ほぼ毎回レギュラー入りしている、由子お姉ちゃん、マジカルゆかりん、仁科先生…の、籠月学園仲間。計3名。

 まぁ、厳密に言えば、由子お姉ちゃんとは俺が幼い頃から親交があったので幼馴染と言えなくもないのだが、他の幼馴染達とはつい最近になってからの絡みになっているため、グループ分け的にはこちらということで…。

 次に、家族枠として参加しているのが、俺の義両親、ノーマンの義両親、マジカルゆかりんこと菜月紫の両親…の、計6名。

 幼馴染ズの両親達は完全に一般人なので帰宅してもらっているが、うちの義両親もノーマンの義両親も師匠の研究所員なので、魔法に関する話をしても全く問題ないため参加を許可している状態だ。

 菜月夫妻は、奥さんが籠月学園の卒業生で、師匠が実力を認めるほどの精神系魔法の使い手である。その才能はマジカルゆかりんにも余すところなく受け継がれており、旦那さんに隠し通すのも面倒だからという理由で、師匠が制約魔法リストラクションを使った上で旦那さんに魔女等に関しての知識を暴露している。…そんなアホみたいな理由でOKを出して良いのかと思わないでもないが、そういった事情もあり今回の参加を許可した次第である。

 そして最後に、俺、ノーマン、マージちゃん、マチュアの、人外枠4名。

 合計19名の大所帯である。もはや物扱いされているテロリストも含めれば25名になる。

 一クラスに匹敵しそうな人数である。


「…本来は部外者である身ですが、我々夫婦からいくつか質問してもよろしいかしら?」

「……やはり野間夫妻からの質問ですか…。はい、覚悟はできてます。どうぞ…」


 スッと自然な流れで手を挙げながら、野間義母(はは)が名乗りを上げてきた。

 「防衛設備がなってない」的な事をたくさん言われるんだろうなぁ…と腹を括りつつ、発言を促す。


「ざっと見たところ、この学園にはトーチカやタレットといったものが見受けられませんが、一体どういった防衛システムを取っているのかしら?」

「あんたら夫妻は学園をなんだと思っているんだ、本当に…。そんな軍事的な防衛システム、ただの学校にあるわけないでしょうが!」


 一方的に設備の甘さを責められるのかと思いきや、本当にただの質問だったあたり拍子抜けである。

 おかげで緊張が抜けてしまい、思わずノーマンにツッコミを入れる調子で言動が崩れてしまった。


「そうは言うがね、渉君。この学園は魔女養成学校のはずだろう? つまり、“ただの学園”ではないわけだ。であれば、それ相応の設備が必要に──」

「なってたまるかっての! よぉく聞けよ、このミリオタバカ夫婦。この学園は、公的には“交通の便が不便だから全寮制を取ってる”ってだけの、普通の学園(・・・・・)という体で存在してるの! そんな学園に、トーチカだのタレットだのと、『何と戦争する気だ?』って思われるような設備を用意してどうするのさ!?」


 野間義父(ちち)が「渉君、なに言ってるの?」的な雰囲気で言ってくるので、俺もツッコミ口調のままで「あんたこそなに言ってるんだ!」と反論を続ける。


「え? でも、現にこうしてテロリストが侵入してきたわけだし、そういった防衛システムも必要だろう?」

「いや、結果的にはそうなんだけど、大前提として“普通の学園に見せかける”という──」

「BB、ここは俺に任せろ」


 横で聞いていたノーマンが、俺の肩を叩きながらグッと親指を上げた。久々にコイツが頼もしく見えた瞬間である。


「ノーマン…。分かった、頼む。お前の義両親を、ビシッと説得してくれ!」

「おうよ! …親父、お袋、よく聞いてくれ。そんな設備は必要ない! なぜなら……ここには俺()が居る!」


 「何が起きようと、俺が全て対処して見せるぜ」などと続くのかなと思ったのだが、そんなこともなく数秒ほど室内に沈黙が訪れるだけだった。


「……えっ?! 説得内容、それだけ? それじゃあ、いくらなんでも──」

「言われてみれば、それもそうね」

「確かに、伊藤博士が本気で造った人造人間ホムンクルスが二体も居れば、他の防衛システムは不要かもしれないな」

「──えぇ~……納得しちゃうの? アレで?」


 「俺が丁寧に説得していた意味は一体」などと思いながら落胆していると、野間義母がマージちゃんに視線を移して言葉を続けた。


「それに、俊之に懐いている合成人間キメラの少女も、相当な魔力と神力を持っている様子ですし…」

「そのようだな。いやはや失敬、確かに要らぬ心配だったようだ。渉君、先ほどの質問は忘れてくれ」


 野間義父もマージちゃんを観察しながら鷹揚に頷いて質問を撤回し、改めて俺に向き直った。


「…では、気を取り直して次の質問だ」

「え…あ、はい。どうぞ…」

「侵入したテロリストは、俊之達が素早く対処した…という話でしたが、その前にテロリストが何か仕掛けていたといったことは無かったのかしら? 例えば、“爆弾を設置していた”とか…」

「おっと、意外と普通の質問だった…。とりあえず、この時間になっても学園内が無事な事から分かる通り、爆弾が設置されたという事はないです。まぁ、それは小母さんも分かった上での問いかけでしょうが…。

 実戦経験が乏しい俺はともかくとして、コイツがそんな初歩的なミスを犯すことはありませんよ。なぁ、ノーマン?」

「…なぜだろう。BBが俺を素直に褒めてくれる事に、違和感を感じてしまう俺ガイル」


 そりゃ、お前が普段からアホな事をしようとするから必然的にツッコミを入れる事が多くなってるだけだ。ちゃんと評価するべきところはしてるぞ、失敬な。


「…っと、それはともかくとして…。

 BBが言った通り、校内に爆弾が設置されたという事は無かったな。設置場所を決め居ようとウロウロしていたところを、俺達が速やかに気絶させて事なきを得た…って感じだ。

 まぁ、一応このテロリスト達も爆弾らしき(・・・)ものは持ってたけど、仮に設置できていたとしても何も起こらなかっただろうよ」

「えっ?! コイツら、そんなもん持ってたの?! ちょっと渉、どういうことよ! 私、聞いてないんだけど?!」


 ノーマンの発言が予想外だったのか、マジカルゆかりんが立ち上がりながら俺に物申してくる。


「まぁまぁ、マジカルゆかりん落ち着いて。あくまで“らしき”だから。

 …ってわけでマチュア、説明してやってくれ」

「では、渉の期待に応えられるよう、今回()下ネタ成分無しでご説明しましょう」

「今後一切、下ネタ発言を禁止してもらっても俺は構わんよ。…というか、むしろそうしてくれ」

「お断りします。そんな事をしては、渉を籠絡するチャンスが減るじゃないですか!」


 「いや、下ネタ成分を含めれば含めるほど、そのチャンスは減る一方だと思うぞ。俺、しっかりした風の大人びた女性が好きだから」と内心ツッコミつつ、舞台俳優の様な演技であしらう事にした。


「まったく、人工知能(AI)の上、起きたまま寝言を言うだなんて…。はぁ…俺達は、なんて高性能なものを創ってしまったんだ!

 ……はい、ってわけでマチュア、さっさと説明してくれ」

「ぁン…。最近、渉がぞんざいに扱ってくる事に、ある種の愛を感じる…」


 …師匠や義父とうさんと力を合わせて創った“自己進化する人工知能(AI)”のマチュアだが、こうなると考え物だな。これじゃあ、自己進化ならぬ事故(・・)進化だ。


「さて、彼らが所持していたものですが。先日、学園を襲撃した際に装備していたものと同様の魔法陣処理が施されている“殺傷性の抑えられたAK-47”。それに加え今回は、一見すると粘土のように見えるC-4(シー・フォー)爆弾…に見せかけただけの“紙粘土と油粘土の合成物”。起爆用の雷管…に見せかけただけの“電極が飛び出たガラクタ”。

 以上が、今回のテロリストが所持していた主な武装となります」


 一瞬にして雰囲気を変えたマチュアが、いかにも秘書然とした態度で淡々と説明する。その姿は、まさに俺が求めていた“褐色肌の金髪美人秘書”そのものであった。

 普段からずっとこの雰囲気だったら文句無しだというのに…。

 「ひょっとして、わざと残念なキャラを演じているのではなかろうか?」と疑いたくなってくる。


「……はぁ~…。一瞬とはいえ、本気で焦った自分がバカだったわ。つまりコイツらは、前回と変わらずガラクタ兵器を持って来て捕まったってわけね。ホントに、コイツらの親玉である“教祖アリサ”とやらは、一体何をさせたいのかしら…」

「…その疑問の答えが、お昼に聞いた『伊藤博士のねらい』に関わってくる…のよね、伊藤君?」


 今まで聞きに徹していた仁科先生が、マジカルゆかりんの疑問を継ぐ形で俺に話を促してきたので、俺もその流れに乗らせてもらう。


「えぇ、その通りです仁科先生。

 まず、俺の師匠である伊藤博士ですが、『異世界に居る自分のお姉ちゃんと、キャッキャウフフな生活を送りたい』という、一般人が聞いたら“頭の悪い願望”と一蹴されそうな願いを叶えるため、とある存在と“約束事”を交わしました。

 そして、その約束の内容とは、『教祖アリサの手助けをする』というものでした」

「ちょっと待って! 伊藤博士が元々は異世界出身だとか、教祖アリサとの繋がり云々っていう話はGW中に聞いたから分かるとして、その博士の願いってのは、もしかして叶ってるわけ?」


 マジカルゆかりんが手を挙げながら俺に質問してくる。

 体育祭の時の姿のままなので、小柄な体躯に獣耳装備と言う出で立ちと相まって仕草が非常に微笑ましい。


「あぁ、師匠の願いは叶っているよ。現に、俺とノーマンはGW中、皆が修行している間に師匠の居る異世界に行って、直接本人の口から聞いてきたわけだしね」

「…じゃあ、以前『師匠の部屋にあった手記を読んで分かった』って言って説明してくれた“儀式”とかの内容は…」

「うむ。全部、本人から口頭で教えてもらった事だな」

「ちょっと、それもっと早く教えてよ! 博士が生きてるなら、色々と魔法についての話を直接聞きたかったのに!」


 まぁ、そう言われるだろうと思ったから、敢えてマジカルゆかりんには黙ってたわけだが…。やはり、あの時は黙っていて正解だったな。教えていたら、絶対に異世界に連れて行くよう駄々を捏ねられていたはずだ。

 ちなみに、研究所員の一部の連中は、師匠が異世界ゲートを潜って旅立つ瞬間を俺と一緒に目撃していたので、彼が異世界で生きているという事を知っている。俺の義両親とノーマンの義両親も、師匠が生きている事を知っている陣営である。

 ただし、師匠が教祖アリサと組んで何をやっていたか…という事を知っているのは、GW中にネタばらしをしたメンバー──幼馴染ズとマジカルゆかりん、由子お姉ちゃんにマチュアといった面々だけだ。

 こうして考えると、“師匠が異世界で生活していることを知っている組”と“師匠のねらいを知っている組”そして“どちらも初耳組”というグループに分かれているな。…一から説明するのは面倒だが、変に情報開示を渋っていた俺のせいだし、改めて情報整理する良い機会だと思って割り切るとしよう。


 俺は、再びフォーマルな口調に戻しながら説明を再開した。


「さて、本題に戻ります。

 GW中、俺達と共に修行に参加していた皆にはざっと説明しましたが、師匠と教祖アリサの真のねらいは“世界平和”です。…『なら、“テロ組織ラスト・ワン”なんか立ち上げてないで、慈善活動に注力しろよ』と、ツッコミを入れたくなるでしょうが、今は我慢して下さい。

 師匠達の真のねらいは、“『襲撃しに来た』と思い込んでいる配下のテロリスト達を、この学園に設置してある魔法陣の効果範囲内で俺達に倒させる”という点にあります。師匠の話によると、教祖アリサを信奉している彼らが“任務失敗”という無念の内に倒されることで、この学園に設置している魔法陣に彼らの“負の感情”が集まる…という仕組みになっているそうです」

「それで、その魔法陣というのが、校舎と学園寮の間にある“六芒星を描いた広場”という話だったのよね?」



「そう。莉穂姉の言った通り、この教職員棟に来る途中に見えていた“中心に大樹が生えている広場”。俺も魔法陣解析魔法マジック・アナライズで確認しましたが、広場に走っている道の真下に六芒星を描いた巨大な魔法陣が造られていました。

 まぁ、その魔法陣というのも、先ほどマジカルゆかりんが口にした“儀式”を行う事で完成する様に造ったからなのか、あくまで魔法陣の土台としての効果しかなく、“負の感情”を保存するためのストレージ的な機能しかありませんでしたが…。

 そして、その“儀式”を行う事で、魔方陣に蓄積されていた“負の感情”が呼び水となり、大樹を中心点として世界中の“負の感情”を集めるシステムとして完成する。

 師匠は、『完成と同時に“負の感情が具現化したもの”が生じるはずだ。それを消滅させれば、僕達の目指していた平和へのいしずえが完成する。そのために、籠月学園を建設し、魔女の育成に励んできた』と語りました。

 ちなみに、俺とノーマンは、その具現化したものを確実に消滅させるために、師匠が生みだした人造人間ホムンクルスとのことです。

 まぁ、魔女とは言え人間ですし、教え子達から犠牲者は出したくなかったのでしょう。その点、俺達──特にノーマンなんかは、破壊力に関しては尋常じゃない能力の持ち主として調整されています。自分達を含め、誰一人として犠牲者を出すことなく師匠の目的を完遂かんすいできるでしょう」


 これで一通り説明できたかな…と思い周りを見渡すと、幼馴染ズはおろかマチュアでさえ何やら神妙な面持ちで俺とノーマンを見ていた。

 どうやら、俺達が兵器目的として造られた事を知り、やるせない気持ちになったようだ。

 そう言った心遣いはありがたいのだが、残念ながら俺もノーマンも悲嘆に暮れるような事は無い。むしろ、師匠の英才教育によりアニメやゲームにどっぷりハマっていたせいで、こういった厨二ちゅうに心を刺激してくれる設定というのはご褒美と言える。

 それに、俺に至っては理想的な義姉である莉穂姉とキャッキャウフフできているし、ノーマンだってマージちゃんや篠山ねーちんと戯れていて満更でもなさそうである。

 「皆が心配している様な思いはしていないから安心してくれ」そう伝えようとしたら、ノーマンが先に口を開いていた。


「あぁ! だから俺達って、無駄に過剰なスペックで造られていたのか。今まで漠然と『どうしてだろう?』的に思ってた疑問がスッキリ解決したわ。ありがとう、BB」

「お前……、いくらなんでも話を聞いて無さすぎだ、阿呆!」


 とりあえず、“本気マジ”だったのか“冗談ネタ”だったのかはともかくとして、ノーマンがすっとぼけた事を言ってくれたおかげで室内の重苦しい雰囲気が一掃されたことには感謝しておいてやろう。

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