第15話 - 体育祭ランチタイム~ネタばらしを少し添えて~
投稿が遅れました。ごめんなさい。
あと、半分以上が説明回です。進展が少なくてごめんなさい。
私立籠月学園。現理事長“籠月由子”の曽祖父母である“籠月弦十郎”、“寿美子”夫妻が創設した元女学園だ。
そして、学園敷地内の地上の建物のみならず下水処理等を行う地下施設の建築、一般人に気付かれないよう張り巡らされた学園生活を便利にする魔法陣の設置、学園南側に広がるプライベートビーチの作成及び、周辺地形の大改造に至るまでを一挙に担ったのが俺の師匠“伊藤歩”である。
1918年生まれの師匠が、1930年末竣工の校舎建設に携わっていたとなると、着工当時は年齢が二桁になったばかり…。もっと早くから作業していたとなると、年齢が一桁の時から取り組んでいたことになる。
中流階級生まれのガキンチョな年齢の師匠と、籠月コンツェルンの夫妻がどうして知り合えたのか。また、夫妻が子供一人に学園建設を任せるほど信用していたのは何故なのか。色々と考え直してみると頭のおかしな話ではある。
…が。俺やノーマンを造り出しちゃうような人だから、「昔から規格外だったんだろう」と深くは考えないことにした。どうしても気になるようだったら、また研究所に置いてあるゲートをくぐって異世界まで聞きに行けば良いだけだし…。
そんなわけで、師匠はこの学園に対してとんでもない発言権を持っていた。
故に、俺やノーマンを入学させる事ができるよう、数年前から学園を共学に変更するよう計画していたのも。共学化後も、体操服がブルマのままだったりするのも。制服にセーラータイプ、ブレザータイプが存在するのも。制服や指定の水着があるくせに、私服や私用水着の着用がOKなのも…全て師匠の粋な計らいである。
おかげ様で、色んな姿の莉穂姉が拝めてとても満足しております。本当にありがとう。
一応、生徒の自主独立を謳っているだけあって、早朝の学園全体の清掃活動という風習が残ったままではあるが、学園寮や敷地内に仕組まれた魔法陣への定期的な魔力供給といった意味があるのだから、生徒の魔力保有量アップの訓練としての側面も含まれているのだろう。
個々人の魔力保有量は、“異常に魔力保有量が多い人間と長く居る”事でも増えるが、筋トレと同じく“魔力の意図的な放出と休息”を日常的に行う事でも着実に増えていくのだ。
…とまぁ、その辺りの知識は一旦置いておくとして、今回は学園の建物の配置について説明したいと思う。
まずは、つい先ほどまで俺達が居た校庭だが、これは学園の一番東端に位置している。南北に130m、東西に80mといった広い長方形の校庭で、北側一面には更に父兄が観戦できるベンチスペースが設けられている。その更に北側に、大型トラックが余裕で通過できる程の幅広な二車線道路を挟んで警備員棟が存在する。
本日行っている体育祭の時は、大学校舎や教職員棟のある西側に各クラスの生徒スペースを設け、南側には教職員用テントや救護用、テロリスト対策として俺が使わせてもらった四方を布で仕切られた休憩用テントが併設されている。
学園敷地との区切り用フェンスのある東側には特にテントなどを配置することはなく、広めの駐車場を挟み、半人工的な雑木林がやや高台となっている国有地に広がっているのが見えるのみだ。雑木林には、師匠が手配したのかヤシ目の木が広葉樹に混じってちらほら確認できる。
視界が開けているため、雑木林に陣取っている覗き魔達は望遠鏡や望遠カメラを使う事で簡単に女生徒のブルマ姿を拝める仕様となっているのだが、学園のフェンスに設置された望遠カメラにより覗き魔達の顔写真は生徒達に公表する手筈になっているので、“将来、こいつらは絶対に彼氏にしないぞ”リストに刻まれる事になるわけだ。
これは、学園の創設当初から師匠が仕組んだ“やたら行動力のあるクズ男をあぶり出すためのハニートラップ”である。今でこそ科学技術だけで鮮明に撮れるようになった望遠カメラだが、当時はフルカラーで望遠仕様のカメラなんて存在しなかったので、師匠が魔導具を開発して無理やり実現させていたらしい。…ホント、師匠は無駄に多彩なガキンチョだったと言える。
テントの更に南側には高い金網で仕切られたテニスコートが四面“田”の形で配置されており、その西側と南側には今週頭にも楽しんだ学園のプライベートビーチが広がっている。
とはいえ、白砂が風などで巻き上がってこれないよう、校舎や校庭のある地面とビーチとは2m程の高低差が設けられている。ビーチでクタクタになるまで遊ぶと、帰りに階段や芝生を上るのがやたら億劫になるという罠に陥るので要注意だ。
4月末のテロリスト引き渡しの際に、日本国防衛軍のホバークラフト……じゃなくって、エア・クッション型揚陸艇が余裕で砂浜に乗り上げてこられたくらい波打ち際までの距離があるビーチなので、海で泳ぎまくると寮に戻るまでの苦労が更に増すというオマケ付きである。
まぁ、そのおかげで景観はとても良いのだが…。
色々と説明してきたが、俺が本来説明したかったのは高等部校舎、教職員棟、大学校舎などの位置関係である。
まずは大学校舎だ。先ほどちらっと説明した通り、大学校舎は校庭のすぐ西側に位置する。
階数は2階建てで、北西から南東にかけて建てられており、上空から確認すると“すごい幅広のバウムクーヘンを1/6カットしたような形”に見える。高さを低めにした反面、横方向を増やしたわけだ。
尚、弧の外側に位置するのが校庭方面で、内側がビーチ方面となる。
次に、大学校舎の北西に位置する太い円柱状の建物“教職員棟”。
テロリスト襲撃の際、ノーマンがあっという間に制圧し返した建物その2である。ちなみに、制圧し返した建物その1は高等部校舎、その3が警備員棟だ。
教職員棟は3階建てで、最上階が大講堂。2階が理事長室及び、最上階へ続く階段のある広いロビー。1階が教職員室及び、授業用資料等の倉庫となっている。
最後に、高等部校舎。
オーソドックスな長方形をした校舎で、東西に長く建てられている。西側部分が少し“L”の字状にまがっており、そこから南北方向に屋根のついた通路が延びて体育館へと繋がっている。
校舎は4階建てで、1階に下足箱、保健室、美術室などがある。2階から4階は、各学年の教室がある他、音楽室、理科実験室、家庭科室などが存在する。
特に家庭科室は設備が充実しており、他の教室の追随を許さないほど広く、火災対策もばっちりとなっている。裁縫や料理を行う事ができ、家事スキルブートキャンプと言えるほど至れり尽くせりな場所だ。家庭部の練習場にして戦場であり、興味本位で入っても立派な主婦能力を身に着けて出て来れる魔窟となっている。…素人にはオススメできない。
これらの建物だが、配置としては教職員棟を中心として“へ”の字のように並んでいる。
また、各建物ごとに1階層の高さも異なっているため、それぞれの建物に移動する際は1階──すなわち地上に出る必要があるわけだ。一応、渡り廊下のように屋根はついているので、よほどの暴風雨でない限り雨は凌げるようにはなっているが…。
…さて、延々と長い説明をしてきたが、まぁ、何が言いたかったかと言うと…だ。
仁科先生を伴って校庭から教職員室に寄り、先生が弁当を持って出てきたので、「さぁ、2-Bの教室に移動するざますよ」と思った矢先──
「あーーーっ!? 渉君が仁科先生と、う…浮気してるっ! 私というお姉ちゃんがありながらっ!」
──理事長室から弁当を取ってきた由子お姉ちゃんとバッタリ遭遇してしまったのだ。
しかも、酷い風評被害を大声で叫ばれるというオマケ付きである。
ついでに言うとこの人、いまだに体操服&ブルマ&獣耳といった姿なので、熟れたボディラインが強調されて非常にエロい。叫んだ内容も内容なので、色々と勘弁して欲しいところである。
「BB、早速のフラグ回収だな」
「ちっとも嬉しくねぇ…。つか、フラグ立てたのお前じゃねぇか。余計なことしやがって」
まったく、人のハプニングを面白おかしそうにニヤニヤしくさりやがって…。
幸い周囲に人影はないし、こちらを注視しても何を言っているのか完全には聞き取れる人はまず居ないだろうというくらいには距離が開いている。今のうちに由子お姉ちゃんを落ち着かせよう。
「落ち着くんだ、由子お姉ちゃん。そもそも、俺が恋人として扱っているのは莉穂姉だけだから、由子お姉ちゃん相手だろうと浮気になるよ」
「かっは…!」
「うわ…渉、容赦なくトドメを刺したわね」
俺の説得を聞いて大げさに苦しむ由子お姉ちゃんだが、手に持ったお弁当を落とすようなヘマはしていない。まぁ、落としても大丈夫なように俺もスタンバってはいたけどな。
そして、ドン引きした表情で俺を見てくるマージちゃんの視線が冷たい。…仕方ないじゃない、本当の事なんだもの。
「あ、あの理事長。私は伊藤君に、特に想うところはありませんので安心して下さい。今一緒に移動しているのも、本日あった出来事を伊藤君が昼食がてら説明してくれるというので付いてきただけですし…」
由子お姉ちゃんの惨状を見るに堪えかねたのか、おずおずという感じで仁科先生がフォローしてくれた。
実に気の利く先生だ。あとで「どういった男性がタイプなんですか?」と彼氏候補の条件を聞いといて、研究所に居る未婚男性の中から絞込みしよう。
以前から、「恋人が居ない」と言って少しへこんでいた仁科先生だ。きっと喜んでくれるに違いない。
「…そうでしたか。経緯はわかりました。それでは時間も惜しいですし、さっさと移動しましょう」
「由子お姉ちゃんも由子お姉ちゃんで、立ち直り早いな」などと思いながら、俺達一行は本来の目的地、2-Bの教室に移動を再開した。
▲▽△▼△▽▲
「「あーーーっ!? 渉君が仁科先生と浮気してるっ!」」
教室に着いたあと、莉穂姉と滝川を待つついでに机をくっつけて食べるための準備をしていると、デジャヴュと間違えそうなほど聞き覚えのある風評被害を口にする獣耳装備の女生徒二人が飛び込んできた。
はい。犯人は、待ち人であった莉穂姉と滝川の二人です。
「ちょっと、伊藤さん、滝川さん。私も渉君のすぐ近くにいるんですけど?」
「「あ。理事長はいつもの事なので特に驚かないです」」
「くっ…恥ずかしさを押してこんな恰好までしたというのに、今日の私、散々な扱いだわ…」
腰に手を当てながら堂々たるポーズで啖呵を切った由子お姉ちゃんだったが、莉穂姉達にユニゾンで軽くあしらわれて逆にダメージを追っていた。
恥ずかしかったのなら、無理してそんな恰好しなくてもいいのに…。俺も目のやり場に困らなくて済むし。
なんだかんだで、由子お姉ちゃんは俺のストライクゾーンなのだから、誘惑してくるのは勘弁して欲しい。理性を保つのも結構大変なのだ。
「はいはい。とりあえず莉穂姉達も来たことだし、昼食を取りながら仁科先生にご足労頂いた用件を済ませちゃおうか」
俺がそう声を掛けると、仁科先生は「ようやく本題が聞ける」といった感じに。莉穂姉と滝川、由子お姉ちゃんは不承不承と言った感じに。ノーマンとマージちゃんは、特にリアクションも無くそれぞれ席に着いた。
尚、俺の両サイドには近くに居たという理由で仁科先生と由子お姉ちゃんが座ることになり、対面に座った莉穂姉達から妙な圧を受ける羽目になった。
何とも言えない空気を正面から受け止めつつ空中に作り出した魔法陣に手を突っ込み、今朝ノーマンから預かった弁当箱を取り出して斜向かいのマージちゃんに手渡してやる。
ノーマンとマージちゃん以外の全員が唖然とした表情で見ていたが、「ノーマンがアレなんだし、渉にも凄い能力があったって不思議じゃないわよね」的な事を各々が口にしながら納得していた。
ちなみに、俺自身は弁当を特に用意していない。なぜなら、莉穂姉と滝川と由子お姉ちゃんが「私達が多めに準備するから!」と事前に念押ししていたからである。
「ンン…。じゃあ、昼食の準備もできたし、まずは食べながら話そうか。それでは…いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
挨拶が終わると同時に、マージちゃんがノーマンに「あーん」をし。莉穂姉達三人が一斉におかずを取った箸を俺に向け。それらを見ぬふりした仁科先生が、しとやかにお弁当を食べ始める。
そんな、三者三様な反応を見せる中、俺は誰の箸にも口をつけることなく、碇指令のポーズをとりながらこう切り出した。
「それでは、食べながらで良いので聞いて下さい。まず、先日のテロ騒動と本日のテロリスト侵入に関してですが、この学園の創設に携わっている俺達の生みの親にして師匠でもある伊藤博士が黒幕として絡んでいます」
「ぶふーーーっ?!」
俺の左隣に座っていた仁科先生が、俺に掛からないよう左側を向きながら思いっきり吹き出した。
ノーマンはテロ騒動の時から俺と一緒に真相をある程度知っていたので、顔色一つ変えることなく咀嚼している。
その他の皆は、箸を持ったまま驚きで硬直していた。
まぁ、今まで黒幕とかの話はしてこなかったし、ノーマン以外は驚くのも仕方ない。
「ちなみに、公的には死んだことにしている師匠ですが、実際は異世界で新たな人生を送り直しているので生きています」
「ケッホ…ケホ……はぁ…はぁ…」
さすがに仁科先生も吹き出し尽くしていたのか、今度はむせるだけで済んでいる。とは言え、だいぶ虫の息な感じではあるが…。
「あれ? BB、今言っちゃうの? てっきり、晩飯時に篠山ねーちんとかも含めた皆の前で言うのかと思ってたけど?」
「いや、今はさらっと説明するだけだよ。師匠が『なんでこんな事を企てているのか』とかそういった詳しい内容は、夕食の時に改めてガッツリ話す予定さ。…ところで、仁科先生大丈夫ですか?」
軽く治癒魔法を掛けながら仁科先生の背中をさすってやると、だいぶ呼吸が落ち着いてきた。
代わりに、右隣と正面二ヵ所から黒いオーラを感じることになったが…。
これくらいは救助の一環として大目に見て欲しいものだ。嫉妬、いくない。
「……ふぅ…、人が物を食べてる時に、なんでそんな驚きのカミングアウトをするんですか! それに、『本日のテロリスト侵入』って、どういうことですかっ!?」
獣耳を生やしながら、涙目で必死に怒鳴ってくる先生可愛い…などと頭の隅で考えながら、俺達は午前中に起こった事件のあらましを説明した。
次回も金曜日中に…。




