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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第三章 体育祭と海開き
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第11話 - 水面下での死闘…になると思ってた

[ノーマンを始め、先月の修行に参加していた人員に告ぐ。たった今、マチュア・コピーから例のテロリスト──ラスト・ワンと思しき反応があったと連絡が入った。これから始まる100m走及び、次の障害物競争に出場する人はそのまま待機。それ以外の人は、すまないが教職員テントに集合で頼む。特に美希姉は体育祭とは無関係だから、是非とも協力を頼みたい]


 マチュア・コピーからラスト・ワンらしき反応があるポイントを教えてもらったあと、俺は修行でパワーアップした皆に精神感応魔法テレパシーで連絡を行っていた。

 今や学園関係者全員が大幅にレベルアップしているので、生徒を含め皆に手分けして手伝ってもらえばあっという間に片が付くだろう。実戦経験が無いので、そこだけ不安要素ではあるが…。

 しかし、学園関係者の多くがいきなり警戒するような挙動をしてしまえば、父兄や覗き魔(デバガメ)共から怪しまれてしまう。そこで、俺とノーマンが直々に修行した皆に的を絞って連絡した次第だ。


[は~い。私は教職員のお手伝いでテントに居るから、そのまま待ってるわね~]


 美希姉から速攻で精神感応魔法テレパシーが返ってきた。その直後、他の皆からも了解の旨が返ってくる。

 結局、ノーマンとマージちゃんの二人が競技に出るので集まることができず、まともな実戦経験のある人間は誰一人居ない状態の面々が集まる事となった。

 ただのお手伝い枠であった美希姉以外の全員が、体操服に獣耳を装備したままという異様な光景だが、マージちゃんのリアル獣耳を誤魔化すためにおいそれと外すわけにもいかず、今の様な状態となってしまっている。

 …まさか、ここまで計算ずくでラスト・ワンが行動を起こしたわけじゃあないと思うが、何とも嫌なタイミングである。

 一瞬、どっちか一人は代打で誰かと代わってもらって、こちらの方に応援に来てもらおうとも考えたのだが、テントに集まった全員は主力二人が居ない事が分かっても「自分達の力を試してみたい」という意気込みであった。

 特に、莉穂姉と滝川、由子お姉ちゃん、篠山ねーちんの四人からは、並々ならない意欲が感じられる。どうやら、先日のテロ騒動の際、守られる側の立場であるという事実がやるせなかったようだ。

 四人とも、俺達と違って肉体改造されているわけじゃあないんだから、そのポジションに甘んじて良いと思うんだけどなぁ…。


「さて、集まってもらって早速だが、先日のテロリストの仲間らしき反応が計6人分確認された。口で伝えるのは時間が掛かるので、精神感応魔法テレパシーを使ってマチュア・コピーから送られてくる位置情報を映像で伝える」

「その前に、渉。マチュア・コピーと直接やり取りできる魔力通信機って、私達の分も作れないかしら? 今後もこういった事がありそうな気がするし、そのたびに渉を介して情報共有していたらあなたが大変でしょう?」


 俺が情報共有しようと挨拶をしたところで、すかさず莉穂姉から提案が飛んでくる。

 俺を気遣ってくれるとか、流石は最愛の義姉。こんなん、惚れ直してしまうわ。


「俺の心配をしてもらえるのは素直に嬉しいけど、マチュア・コピーを忍ばせているPCの電源供給量に不安があってね。電力を魔力に変換する魔方陣を組み込んでいるけど、その供給元である電源ボックスの性能に不安があるんだよね。なんせ、マチュア・コピーを常駐してるだけでも結構な電力消費だし…。由子お姉ちゃんにお願いして大容量のブレーカーを用意してもらっているけど、最悪、俺達の部屋のブレーカーが落ちるかもしれないんだ。そういうわけで、迂闊に魔力通信の回線数を増やすわけにもいかないんだよね」


 まぁ、同時に魔力通信を行わなければいいだけの話にはなるのだが、情報伝達速度に差が生じてしまうので、リアルタイムのやり取りが必要になる今回の様なケースではもどかしさが先に出るだろう。

 その点、俺やノーマンなんかは意図的に魔力保有量やら神力精製量を調整されているので、この学園関係者全員に同時連絡を行っても魔力枯渇の心配はない。シームレスとはいかないが、現時点での応急対応としてはこの方法がベターだと思われる。

 ただし、精神系魔法を得意としているマジカルゆかりんに言わせれば、多人数一斉送信型の精神感応魔法テレパシーの完成度に不満があるらしく、「イメージの伝達にむらが出るから、同時に使うとノイズが混じりやすいわね。まだまだ胸を張って合格点を上げられないわ」と厳しい意見を頂いている。

 「そもそも老化魔法エイジングをフル構築で強化できるようになるまで、張る胸が無かったじゃないですかやだー」とか頭の中だけでツッコミ入れていたのだが、どうやらそれを精神感応魔法テレパシーでバッチリ読み取られてしまったらしく、思いっきり腹パンされてしまったのは記憶に新しい。


「そう…、渉の手を煩わせずに役立てるんじゃないかと思ってたから残念だわ」

「まぁ、この問題は警備員棟の中に簡易のサーバールームを設けさせてもらって、電力供給の強化を図ることで解決しようとは思っているから、近々解決させる予定ではあるよ。…願わくば、この対応が無意味になる事を祈りたいところだけどね…。さて、じゃあ敵の居場所を伝えるよ」


 師匠が言っていた目的達成のためには、ラスト・ワンの面々がこの学園でぶちのめされる必要が有るらしい。それを行う事で、学園のほぼ中央にある広場の仕掛けが徐々に完成するとかなんとか…。

 そんなわけで、つつがなくテロリスト達をボコるためには、サーバールームの用意は必要な措置なんだろうな…と半ば諦めつつ、今回潜入してきた連中の位置情報を皆に共有する。

 この場には居ないが、念のためノーマンとマージちゃんにも位置情報をリアルタイムで共有している。

 マジカルゆかりん以外は、精神感応魔法テレパシーの受信に慣れていないのか、一瞬体がビクッっとなっていた。

 …これがエロ漫画とかだったら、俺がこの場に居る女性全員に大人のおもちゃを装備させて、一斉にスイッチをオンにしたかのような反応だよな…とか思ってしまった俺は、だいぶ疲れているに違いない。

 尚、マチュアに関しては、マチュア・コピーと内蔵型無線LANによるリアルタイム情報共有をしているので精神感応魔法テレパシーから除外しておいた。…なんか、「私には渉経由で情報くれないの?」的な目で俺を見ているが、意味が無いからスルーである。


「ところで、渉ちゃん。素朴な疑問なんだけど、今回のテロリスト達はどうやって学園内に侵入してきたわけ? この前の様に、姿を隠しつつ無理やりフェンスを上ったってわけじゃなさそうよね? これだけ人が集まって見ているわけだし、不自然にフェンスがきしみを上げたりしたら騒ぎになりそうだもの」


 皆に位置情報を共有し、リアルタイムで情報を送信し続けているとタイミングを見計らって美希姉が質問してきた。

 由子お姉ちゃんとマチュアの二人は事情を知っているが、その他の面々は美希姉の質問に同調するように頷いている。


「良い質問をありがとう、美希姉。そのことについては、由子お姉ちゃんやマチュア、警備員のお姉さん方は知っている事実だが…。実は、父兄入場用チケットが複製されていたらしい。どうやら今回は、それを使って正面から入り込んだみたいなんだ」


 籠月こもつき学園の催しに外部の人間が参加するには、学園に居る生徒から送られてくるチケットを渡す必要がある。

 これは、一昨年まで女子校であった名残なのだが、共学になった今でも男性は俺とノーマンの二人だけであり、まだまだ女子校に近い状態であるが故の措置である。

 今年は新入生で男子が入学するかな…などと考えていたのだが、どうも去年の合格者が俺だけだったという情報から「俺もハーレムに混ざりたい!」という欲望に忠実な連中ばかりが受験しに来たらしい。学園設立当初から存在する性格判断用の魔導具により、その辺が看破されてしまった男子共はあえなく全滅してしまったという訳だ。

 まぁ、もともと男性自体が魔力保有量が少なめで神力精製量は多めという特性があり、女性はその逆というパターンが多い。性格云々だけではなく、魔法を習う上での安全マージンが取りづらいという事で足切りされる連中も多かっただろう。


 話しが逸れてしまったので父兄が学園内に入るための手続きに戻すが、父兄用に発行されるチケットは毎回デザインが異なる。

 教職員棟に設置されているサーバーにはチケットのデザインが入っているが、流出するようなヘマはしない。なにせ、マチュアが外部からの不自然なアクセスに目を光らせているからだ。

 とすると、オークションなどで流出したなどの方法が考えられるのだが、この場合は入場する際の身分証明書のチェックで弾かれる事になる。チケットを機械にかけた際、発送元である生徒の情報が出力されるので、父兄の苗字が異なる場合は魔導具を使った真偽判定をされるからだ。

 …とまぁ、この様なチェックをクリアしたのちに入館証を手渡されるので、入場までに微妙に時間を費やすことになるのだが、今回はそれらの工程をすり抜けたという事になるわけである。

 裏を返せば、生徒の身内がテロリストであった…という風にしか取れないわけで、それに気付いた美希姉達に緊張が走った。

 だが、GWにわざわざ異世界に行き、師匠を詰問した俺とノーマンは、ラスト・ワンのトップである教祖アリサと師匠が旧知の仲であり、協力関係だったという事実を知っている。

 今回のチェックすり抜けのトリックも、師匠が異世界に行く前から用意していた対応策の一つなのだろうと、半ば確信しているのだ。


「とりあえず、皆の心配は察しているけど、“生徒の身内がテロリストだった”という事ではないから安心して対応して欲しい。その理由については、この騒動が収束したら夕飯の時間にでも話すから…。だから、納得はできないかもしれないけど、俺の事を信じた上で、テロリストを捕まえるのに協力して欲しいんだ。…頼む」

「そ、そうね。渉がそう言うんだもの、義姉おねえちゃんとして信じないわけにはいかないわよね!」

「わ、私だって、いつも近くに居た幼馴染として信じないわけにはいかないものね!」


 頭を下げた俺を見て、莉穂姉と滝川が慌ててそんな事を言ってくれる。

 二人の好意を利用するような形になっているので心苦しいところだが、そのお蔭か他の面々からも緊張が和らいだ雰囲気を感じられた。


「皆、ありが──」


 「──とう」と言おうとした矢先、マチュア・コピーから送られてきていたテロリストGPSの信号が2つ一気に消えた。

 俺を介して、皆にもリアルタイムで情報共有していたので、テント内に先ほどとは別の緊張が走る。

 一体何が起きたのかと緊張が走る中、いつもの調子で話しかけてますといった感じの精神感応魔法テレパシーがノーマンから全員に送られてきた。


[BB~。とりあえず100m走が終わったんで、トイレ行くふりしてテロリストをぶちのめしといたぞ~]

「バカな、早すぎる!?」

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