第09話 - 体育祭リハーサル
投稿が遅れました。申し訳ないです。
お気に入りのなろう小説を色々読んでいたら、キングクリムゾンを食らってしまったようで…。
─ 2012年6月9日(土) ─
俺とノーマンで、近場(と言っても、石廊崎から遥か北東の伊東まで移動する必要あり)のドンキから獣耳カチューシャを可能な限り買占め、店員から物凄く不信な目で見られるというイベントを耐えた翌日の朝。
俺達は、学園理事長である由子お姉ちゃん監修の下、高等部全校生徒に対して今回の体育祭の注意点を説明していた。
その注意点とはすなわち、マージちゃんの獣耳を誤魔化すために生徒全員に獣耳カチューシャを装備して競技に出場してもらうという話である。
マージちゃんの尻尾については、既に“俺開発のシップ型魔導具で別空間に収納している”という内容で学園関係者全員が納得している。まぁ、本当は『別空間』というか『別の場所に用意した部屋の中』へ部分的に転移させているだけなのだが、その辺の仕組みは厳密に教える必要もないだろう。
とにかく、俺達からすれば既に見慣れてしまっている獣耳を、この学園がただの全寮制の学園と思っている親御さん達の前で披露する訳にはいかない。
さりとて、すぐさま耳を隠せるような魔導具を用意したくとも、彼女の耳を自然な形で覆える程の頭装備なんて、俺やノーマンでは見当もつかなかった。
そんな風に頭を悩ませていた俺達の前に、莉穂姉が救いの女神として降臨し、俺に一つの天啓を授けてくれたのだ。
それが、『木を隠すなら森』作戦である。要するに、獣耳を隠せないなら、他の生徒にも獣耳を着けて貰えば目立たなくなるだろうという作戦だ。
さすがにマージちゃんの持つ“本物”の質感には遠く及ばないが、莉穂姉が通販で取り寄せたという気合の入った獣耳カチューシャはなかなかの出来栄えだったし、ある程度遠くから観戦せざるを得ない親御さん達からは余程ガン見されない限りバレやしないだろう。
まぁ、バレるもバレないも、本当に獣耳が生えているなど夢にも思うまい。300人以上の獣耳っ娘を用意してしまえば、全員が獣耳カチューシャを着けていると錯覚してくれるハズだ。
「──というわけで皆さん、非常に運動しづらくはなると思いますが、何卒ご協力の程お願いいたします。尚、これは決して私、伊藤渉の個人的な趣味だから…というわけではありません。くれぐれも、誤解なきようお願いいたします。…以上です」
ちなみに、このとんでもない量のカチューシャだが、どうやって二人だけで運んできたのか?
答えは“魔法を行使しまくった”である。
まず、外出許可を由子お姉ちゃんに直接お願いして通してもらい、買い物に行くための準備をする。
次に、紛争地帯最前線でも活躍していたノーマンの空間拡張バッグを用意。さらに、先日のテロ騒動時にテロリストから拝借したベルトを着用。
俺とノーマンとで人力レーダーを総動員し、目撃者になり得る人物がいない事を確認してベルトの魔法陣を発動させ、姿をくらませる魔力膜を作り出す。
この魔力膜だが、外部からは魔力や電波、光、音などを“膜を這わせて反対方向へいなす”という性質を持つのだが、一定以上の物理的干渉を受けると膜を破ることなく突き抜けるという特徴がある。そして、もう一つ、内側から外側への干渉は容易という特徴もあるのだ。
ついでに言うと、「光や音をいなすのなら、中から外を見ることができないし、聞き取れないのではないか」と思われるだろうが、そんな不便な事は無い。ちゃんと内側から外を見ることができる。
ただし、光や音を素直に透過させないというギミックを施している影響からか、見える景色は若干歪んでいるし、音も質の悪いスピーカーを通しているように聞こえてくる欠点がある。
まぁそれはともかくとして、中から外への干渉が容易なので、俺とノーマンは姿を隠した状態のまま飛翔魔法を行使し、公共機関を使うよりも遥かに早く伊東のドンキまで移動できた。
多くの学園の生徒では、ベルトの魔力消費と飛翔魔法の魔力消費とで魔力回復量が追いつかず、移動途中で魔力切れを起こしていた事だろう。
マージちゃんやマジカルゆかりん、幼馴染ズで辛うじて往復できるくらいと言ったところか。まぁ、俺とノーマンは、彼女らの3倍以上の魔力保有量と神力精製量があるので、かなり余裕で往復できた。
これは、最近ダメっぷりが加速している俺が、唯一自慢できる部分である。
…とまぁ、あとは大量買いしたダンボール数箱分の獣耳カチューシャの山を、誰にも目撃されない場所で空間拡張バッグに詰め込み、姿を隠して飛んで戻ってきたという次第である。
さて、そんな風に昨日の事を思い出しながら生徒達の様子を見ると、これといって反対意見も無いようで静かに頷く者、何とも言えない表情で恥ずかしそうにしている者と反応は様々だ。
ただ、俺が最後に「個人的な趣味ではない」と断った辺りで[本当に?]と、探るような精神感応魔法が多数飛んできたのはショックだったでござる。
「ね…ねぇ、渉? 獣耳カチューシャを着けさせるのは、『個人的な趣味じゃない』って話だったけど、私も着けないままの方が渉的には好みになるのかしら?」
「とんでもない! 獣耳は好きだよ? でも、わざわざ仮装してくれって頼むほどじゃないってだけ。昨日の莉穂姉の獣耳姿はグッと来てたから、たまに見せてもらえるのなら寧ろ嬉しいってもんよ! というか、奇抜なファッションじゃなければ莉穂姉は何を着ても似合うから、好みから外れるなんてことは一切ないね!」
校庭にある壇上から降りた際、莉穂姉が不安げな表情で駆け寄って訊ねてきた。
昨日、準備中に見せた獣耳姿が似合ってなかったのでは…と不安になったのだろう。もちろん、全く持ってそんなことはなかったのでキメ顔で即否定しましたとも。
ただ、このやり取りを近くで見ていた由子お姉ちゃんと滝川が、ホッとしたような…それでいてどこか悔しそうな表情をしていたのが引っかかった。“悔しそう”ってのは莉穂姉への対抗心なんだろうが、“ホッ”としていたのは何に対してなのだろうか…と。
まぁ、その謎は割とすぐに解決することになったが…。
▲▽△▼△▽▲
俺達で用意していた獣耳カチューシャを生徒に配り、全員が装着したのを確認していると、警備員のお姉さんから魔力通信による連絡が入った。今回は、美沙都さんではなく他のお姉さんである。
[マチュア・コピーのレーダーに複数の反応を確認。肉眼でも、双眼鏡で校庭を覗き見している人間を複数確認したわ。場所は、東の林の切れ目あたりよ]
[連絡ありがとうございます。こちらでも人力レーダーで確認しました。ただの覗き魔である可能性が高いので、しばらく放置しておきましょう。何か怪しい動きをし始めたら、また連絡をお願いします]
[わかったわ。任せて]
魔力通信を終わらせ、横に居るノーマンに情報共有すべく話しかける。
「ノーマン、気付いているかもしれないが──」
「あぁ、俺も今さっき気付いたところだ」
「──そうか、なら良かった。とりあえずは、ただのデバガメの線も濃いから変な動きが無い限り放置で行こうと思う……って、お前どこ見てるんだよ?」
かなり真剣な表情で、やや上方に視線を向けているノーマン。ただし、視線を向けているのは森とは反対方向の西側である。
西側にある覗き見スポットとしては、小山…というか小高い丘みたいな所しかない。テロ騒動の日まで、ノーマンとマージちゃんがキャンプしていた場所だ。
ただ、そこから見下ろすと寮が邪魔になるので、覗きスポットとしては不人気だったはずである。
不思議に思い、ノーマンの視線を辿って行くと…寮に行きついた。
本当に、何を見ているんだコイツは?
「…白が多いんだ」
ノーマンが何やら言い出した。
「は? 白が多い? 何の話だよマジで。そんなのはいいから、とりあえずお前も東の林に居る連中をだな──」
「どうでも良くなんてないだろ! 純白だぞ!? 純白のパンティだ! 俺好みの下着が、あんなに干されているんだぞ! 興奮しないわけがない! まさか、こんな堂々と女子の下着を拝めるスポットがあったとは…実に盲点だった!」
「………オーケー、わかった。篠山ねーちん! マージちゃん! 俺がコイツを押さえている間に、サングラスを塗り潰してくれ!」
「「了解!」」
「ぐわぁぁあ! な、何をするショッカー!」
俺に後ろから羽交い絞めにされたノーマンがもがき、どこからともなく油性ペンを取り出した篠山ねーちんとマージちゃんがにじり寄ってくる。
マージちゃんは普段通りの姿だが、篠山ねーちんの頭には少し安っぽい雰囲気のする獣耳カチューシャが装備されており、なんというか二人とも獲物を狙う獣の様である。
ちなみに、ノーマンを相手にしたら間違いなく力負けする俺だが、今はノーマンの足を地面に着かせないよう、軽く仰け反って羽交い絞めにしているので辛うじて抑え切れている。
「テメェのサングラスの改造手術だよ! あ、篠山ねーちん、ついでにノーマンの額に“肉”って書いてやって」
「う~ん。そうなると、ツバ付きの紅白帽が無いのが残念ね」
「ちょっと! なんで二人ともBBの言う事を素直に聞いてるのさ!?」
「「俊之が、他の女に目移りしないようによ」」
「なるほど…って、アレ? 何かつい最近も、こんなことがあったような…」
「ハッハー。気のせいだよのび太くん。さぁ、悔い改めるのだ」
「くっそ! HA☆NA☆SE! ぬわあああ、目が、目がー!」
サングラスを真っ黒に塗り潰され、大人しくなったノーマンを放す。
「「「フッ…成敗!」」」
ドサリという音と共に四つん這いに項垂れるノーマンを見下ろしながら、俺達三人は何かをやり遂げたかのようなキメポーズをとっていた。
「「あーっ! 渉がノーマン達とイチャイチャしてる!」」
「ちょっと、二人ともやめてよね。また黒薔薇三連星が興奮しちゃ──ッ?! Excellent!」
莉穂姉と滝川の文句が聞こえたので振り返ると、臙脂色のブルマにデキの良い獣耳カチューシャを装備した二人の姿が飛び込んできた。
莉穂姉の方は昨日も見せに来ただけあってやや堂々としているが、少し恥ずかしいものがあるのかその頬は少し赤みを帯びている。ボディラインと合わさり、実にエロスを感じる。
対して滝川だが、こちらは完全に恥ずかしさが出ている。体操服を恥ずかしそうに引っ張ってブルマを隠そうとしているようだが、その仕草がたまりません。ちょっと内股気味になっている点もポイントが高くて素晴らしい。普段、同じクラスなのでブルマ姿なんて見せ慣れているはずなのに、獣耳を着けたことで羞恥心が出てきてしまったのだろう。実にエロスを感じる。
控えめに言って、二人ともパーフェクトである。
尚、酷くどうでもいい話だろうが、俺とノーマンの姿は体操服に群青色の短パンといった服装だ。女子がジャージじゃないのだから、男子もジャージ着用は認めないという流れらしい。
まったく、誰が得するってんだよ……黒薔薇三連星以外。
「お。莉穂姉も奈津美も、かなりしっかりしたデキの獣耳を買ってたんだな。よく似合ってるじゃん」
いつの間にか、代えのサングラスを装備しなおしたノーマンがケロリと表情で感想を述べていた。
…短パンにポケットはついているが、コイツはどんな時も代えのサングラスを用意しているのだろうか。
「あ。ところでBB、いつの間にか東の林に怪しげな人影が複数居るんだが…」
「うん。それ、お前が下着云々言ってた時に俺が説明してた話しな。聞いてなかった罰として、明日はキサマも獣耳カチューシャを装備して出場してもらおう」
「なっ?! BB、正気かっ?! そんな事をしてみろ、誰も得をしないぞっ!」
「「え? 私達にはご褒美だけど?」」
「篠山ねーちんとマージちゃんはこう言ってるぜ? それに、仮に誰も得をしなくても、ノーマンが苦行だと感じてればいいんだよ。だって、“罰”なんだから」
「「あ! だったら、渉も獣耳着けてよ。私達にはご褒美だから」」
ノーマンを弄って勝ち誇った気分で居たら、莉穂姉と滝川から恐ろしい提案が飛び出てきた。
「そうだな。せっかくだからBBも一緒に装備しようず!」
そして、しれっとその提案に乗ってくるノーマン。
「渉君が獣耳を着けてくれると聞いて!」
「由子お姉ちゃんまで何を言って──ガハッ?! なん……だと……?!」
いつの間にか姿を見かけなくなっていた由子お姉ちゃんの声がした方を振り向くと、そこには体操服に濃紺のブルマ、そしてデキの良い獣耳カチューシャを装備したエロイお姉さんが立っていた。
ちくしょう。この歳にしてイメクラの良さが分かる日が来てしまうなんて…悔しい、でもGJ!
しかし、さっき由子お姉ちゃんと滝川がホッとしていたのは、莉穂姉と同じく獣耳を事前に用意してたからだな。…なんでそんな事をしていたのか、色々と問い詰めたいところだが、似合ってるからいいやもう。
「「むっ!? 私達の時よりも反応が激しい! 有罪! 渉も罰として絶対に獣耳装備よ!」」
「マジで?! …あ、ハイ。分かりました」
本気で抵抗したかったが、獣耳をつけたまま怒った表情をしている莉穂姉達が可愛かったので素直に従う事にした。
こんなご褒美をもらってしまったら、嫌とは言えるわけがない。JK。
▲▽△▼△▽▲
さて、そんなこんなでグダグダなスタートになってしまったが、軽く流す感じで競技を行うだけのリハーサルだったので、無事に最終プログラムまで終わらせることができた。
尚、東の林に居た人影はただのデバガメだったようで、特に何をするでもなく、こちらを覗くだけ覗いて帰って行った。
皆がカチューシャを装備し終わったあとに覗いていたので、マージちゃんの耳については誤魔化せている。ただ、今回はブルマに獣耳を装備した美人女子高生ばかりの体育祭になる…という情報が拡散する事だろう。
……明日は、去年以上のデバガメ祭りになりそうだ。
ちなみに、いつもだったらエロアピールの酷いマチュアが妙に大人しいな…と思っていたが、俺が注意事項を話したあと、すぐに獣耳カチューシャの魔改造に取り組んでいたらしい。
リハーサルが一通り終わるころになって漸く戻ってきたと思ったら、物凄い達成感のある表情でデキの良い獣耳を見せてきたのだ。しかも、マチュアの頭部に装着する事で電力供給を行い、ある程度意図的に動かせる仕様になっていた。
オーバースペックすぎるので、作り物っぽい動きになるようダウングレードさせたのは言うまでもない。




