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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第三章 体育祭と海開き
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第08話 - 体育祭準備

  ─ 2012年6月6日(水) ─


「ところでBB、聞きたい事があるんだが」

「どうしたノーマン? おかずだったらやらんぞ?」


 朝の清掃を終え、由子お姉ちゃんを含むいつものメンバーで朝食を食べていると、斜向はすむかいにいるノーマンが突然話しかけてきた。

 そんなノーマンの両サイドには、スポーツ少女然とした篠山ねーちんと、狼耳を嬉しそうにピコピコ動かしている爆乳のけもマージちゃんの二人が座っている。尻尾の方は、今日からまた授業が再開するので俺の渡したシップ型魔導具で隠してもらっているところだ。

 なんにせよ、ノーマン周辺では見慣れた座席配置といったところか。

 ちなみに俺の方はと言うと、正面に和風美少女な巨乳幼馴染の滝川、金髪に小麦色の肌を持つアンドロイドのマチュアが座っており。左右に理事長である由子お姉ちゃん、我が愛しの義姉おねえちゃん莉穂りほ姉が座っている。

 毎朝、食堂前でジャンケンをして席順を決めているようだが、マチュアと由子お姉ちゃんは教職員として学園に居るのだから教職員棟に行って仕事しろよ、まったくもう。


「いや、おかずはどうでもいい。聞きたいのは、“BBが好きな下着の色は何?”だ」

「“黒のレース”よ!」


 事もあろうにノーマンの野郎、「好きな下着の色」というあたりを食堂全域に響き渡るくらいデカイ声で聞いてきやがった。しかも、それに負けないくらいの大声で莉穂姉が答えちゃうもんだから、俺は正直パニック状態である。


「ちょっ?! 莉穂姉?!」

「あら、違った? 最近好み変わったのかしら?」

「いや、違ってないよ?! むしろ正解だから驚いてるんですけど?! 俺、莉穂姉にそういった好みなんて言ったことなかったはずなのに…」

「フフ…。私が中学時代、風呂上りに色々な下着姿で渉の前を歩いてたでしょ? 渉の反応を見て、好みを調べていたのよ。でも良かったぁ、この2年の間に好みが変わってたらどうしようかと思っちゃったわ。あ。ちなみに、私はいつでも勝負下着の黒のレースを履いてるから安心してね♪ はい、“あ~ん”」

「あ~ん。…うん、さすが家庭部、いい味してる。……じゃない! 前にも言ったけど、卒業するまではそういう行為はしないからね! つかバカノーマン、お前も藪から棒に何てことを聞いてくるんだ!」


 二人が大声でとんでも会話をするもんだから、食堂に居た他の女生徒の視線が痛い。先輩や同級生からはニヤニヤした感じで見られてるし、後輩なんかは恥ずかしそうにしている子が多い印象だ。

 諸悪の根源たるノーマンを睨みながら文句を言ってみたが、ヤツはケロりとした顔でこう言い放った。


「いやぁ、ほら、俺らって今やこの学園で人気を二分する男子なわけじゃない?」

「まぁ、俺達しか男子が居ないからな、今の所。で、それが何で好みの下着の色に繋がるんだよ?」

「簡単な話、さっきの答えを聞いたBB派の女子なら今後は黒いレースの下着、或いは黒い下着を着用するよな? あ、“ちなみに、俺は純白の下着が好きだから、BBとは真逆だな!”……と、これで俺派の女子は白い下着を着用するはずだ。そして、どちらも好みじゃないという女子はそれ以外の下着になる」

「んなアホな理論展開、いまだかつて考えたこともなけりゃ、聞いたこともねぇよ…。だいたい、仮に女子がそういう事を意識したとしてだ、確認するすべは俺達にないじゃないか」


 ノーマンはたまに「それ、意味あるの?」と言いたくなる事をのたまう癖がある。

 昨今の代表的な例としては、「現在販売されているエアコンの大きさのままで、冷房機能特化や、暖房機能特化を仮に製造したら使用電力に対する効果は上がるかな?」とか、「回転弾倉の機構はそのままに、薬莢排出したらマガジンから自動リロードできる回転式拳銃リボルバーって作れないかな?」などが挙げられる。

 何にせよ、今回も間違いなくこのパターンだろう。

 本当、よくもまぁそんな意味不明イミフな事を考えられるもんだ。

 本人曰く「ロマンがあるじゃないか! 普通ならやらないような事を全力で試すというロマンが!」という話だが、そのアホな物品を作り出す側の気持ちにもなれってんだ。…はい、文句を言う割には何だかんだで付き合ってしまっているのは俺です。

 まぁ、今もノーマンが愛用している俺カスタムの回転式拳銃リボルバーに関して言えば、紛争地帯で役立ったらしいけどな。

 外見は回転式拳銃リボルバーの癖に、排莢しただけでリロード動作無しに連発してきたせいで、相手陣営がてんやわんやしたとか。世の中に出回っているどの銃とも企画が異なるせいで、実際に何発装填されているのかわからなくて相手側が総攻撃してくるタイミングを逃したとか、地味に活躍したとのことだ。


 そんなことを思い出していると、ノーマンは両手を肩ほどの位置に上げ、アメリカ人式やれやれのポーズで得意げに語りだした。

 殴りたい、この表情。


「はぁ~…BB、風でスカートが微妙にめくれたり、階段を上っている女子を下から見上げた時とかで確認するチャンスはいくらでもあるだろう?」

「篠山ねーちん、マージちゃん。ここに油性マジックが2本あるから、そのデコ助野郎のグラサンを左右から塗ったくってやりなさい」

「「任せて」」

「マジカルゆかりん。念のため、催眠魔法ヒュプノシスで下着云々の所から記憶操作しちゃおう。俺も手を貸す」

「わかったわ。…下着を覗くってのを実行できないように、強制力もかけといこうかしら?」

「いや、抵抗されて疲れそうだし、とっとと飯食って登校準備済ませたいから記憶操作だけでいいよ」

「覗かれる側からすれば見過ごせないところだけど、時間が掛かりそうなのは確かだわ。今度じっくり洗脳するから、その時は渉も手伝いなさい」

「了解」


 かくして、主に高等部の学生で賑わう朝の食堂でノーマンの公開改造イベントが始まった。

 ノーマンのヤツは始終「や、やめろぉ! やめるんだ、ショッカー!」だの、「目が! 目がぁあ!」だの叫んでいたが、処置が済む頃には大人しくなっていた。恐らく、記憶操作したせいで、何で自分がこんな目に遭っているのか分からなくなり、暴れるよりもまず現状認識を優先したのだろう。


「はて、なぜ俺のサングラスが黒く塗り潰されているんだ?」

「そりゃ、ただの罰ゲームだ。気にすんな」

「う~ん、おかしい。いきなり何故か罰ゲームをさせられているという現状もそうだが、何か…何かとても重要な話をBBとしていた気がする。…が、思い出せない…」

「思い出さなくていいから、とっとと飯を食って校舎に行こうぜ。今日から授業再開するんだからさ」


 俺の言葉に、篠山ねーちんやマージちゃんを始め、皆がコクコクと頷いた。

 釈然としない表情をするノーマンではあったが、肩をすくめると迷彩柄のズボンに手を突っ込み、換えのサングラスを装着して朝食を取りだした。…なんでコイツは頑なに裸眼を拒むんだろう。俺と同じ伊達のくせに。


 余談だが、この日の夕方以降から数日に渡り、1Fにある衣料販売の店舗にて黒と白の下着が妙に品薄になるという珍事が発生した事を、店舗責任者である“お姉さんにしか見えないおばちゃん”から聞いた。

 ノーマンが言っていた事を実行した女生徒が居るという事か?

 いや、でも、まさか…ねぇ……。偶然だと思いたい。



  ▲▽△▼△▽▲


  ─ 2012年6月8日(金) ─


 昨日、一昨日と久しぶりに授業を受けたり、返ってきた答案に一喜一憂するクラスメイトの姿を見たりとしたわけだが、今日からはまた通常授業とはおさらばとなる。何故なら、2日後の6月10日(日)は籠月学園の体育祭だからだ。

 今日はテントや競技用の道具の設営を行い、明日は競技の流れを掴むためのリハーサルという準備期間に入る。

 「テストが終わったと思ったらすぐに体育祭かよ。出場競技はいつ決めてるんだよ」などと言われそうな日程だが、ここの体育祭はどの競技に出るかを立候補することはできない。通常授業を行っていた2日間の内に教職員棟で教師達がくじを行い、生徒が出場する競技を決めるという流れを行っているのだ。

 病気になったとしても保険室担当の養護教諭が治癒魔法ヒールで綺麗さっぱり治してしまうので、「家族に不幸が…」といった余程の理由が無い限り、出場競技を変えることはまず不可能である。


 それに何より、「うちの娘は『走るのが得意だから』と、運動会に出るときはいつもリレー系の競技にしか出なくて…」とぼやく父親に、毎年ランダムな競技をこなす娘さんを見せられる機会を与えるというイベントでもあるのだ。

 ただでさえ、普段娘と会えない父親が親類特権で学園に踏み込める、数少ないイベントの内の一つである。“不慣れな競技を一生懸命攻略して行く我が子”という貴重な姿を、ファインダーに収めさてやる…そんな粋な計らいと言えなくもない。

 まぁ、実際に競技をする側としては、今日この日まで自分がどの種目に出るのか一切聞かされずに過ごすので、ある意味テストの返却よりもドキドキするから勘弁願いたいところではあるのだが…。


 ちなみに、体育祭当日は俺の義両親やノーマンの義両親も、親類枠で見学に来ることが決定している。

 滝川を始め、幼馴染メンバーの家族も同じく全員参加との事だ。とは言え、美希姉だけは大学生のため体育祭対象外となっており、残念ながら美希姉の家族は不参加である。11月頭の学園祭までおあずけだ。

 しかしまぁ、幼馴染メンバーほとんどの親兄弟にマージちゃんを紹介できるわけだし、この機会に顔合わせさせて──


「──しまった…。獣耳対策の事、すっかり忘れてた…」

「ハッハー。BBったらドジッ子お茶目さん」

「うっせ、バーカ! そう言うノーマンだって忘れてたろうがよ!」

「真にデキる男なら、誰かに言われる前に行動しているもんだぜ」

「くそっ、正論過ぎてぐうの音も出ない…」

「でも、BBだったらまた徹夜すれば、明日の朝には何らかの魔導具くらい作れるんじゃねぇの?」


 テント設営をし終えたノーマンが、四つん這いで打ちひしがれる俺に不思議そうに尋ねてくる。


「魔法陣を創作するだけならなんとかなるんだが、問題はそれを刻むための物品の方だよ。耳を覆えるくらいの幅広な金属製カチューシャか、金属板を覆えるくらいの幅広なリボンを手に入れるかしないと…」

「シップ型の尻尾隠しみたいに、布製じゃダメなのか?」


 ノーマンの質問もわからんではないが、アレは皮膚に吸着できるから魔法陣が直接魔力を供給し続けて安定稼働できるのだ。

 今回の様に吸着が難しい頭部への装備品、しかも運動しながらという点を考えると、魔力供給が不安定でもしっかりと魔法陣が刻みつけられる金属製の物が好ましいのである。


「なるほど…。確かに、そんな品物そうそう見つからなさそうだ」

「そうなんだよ。はぁ…参ったな。ノーマンが戻ってからというもの、俺ってホントダメダメになってきてるなぁ」

「『やだ。落ち込んでるBB、マジかわゆす』」

「『ノーマン。慰めてくれるか?』」

「『ウホッ! 今夜は俺がBBを寝かせないぜっ!』」

「センセー! ここで黒薔薇三連星がサボって妄想垂れ流してます! こき使ってやって下さーい!」

「「「殺生な」」」


 笑顔を貼り付けた我がクラスの担任、仁科にしな先生の手でドナドナされていく残念系大和撫子達を見送り、俺は当初の悩みに立ち返った。


「はてさて、どうしたものか…」

「下田周辺を歩き回っていたときのように、キャスケット帽とかで誤魔化すわけにもいかんしなぁ。紅白帽を被ったところで絶対に変な凸凹ができるし、そもそもそんなのを被るような年齢でもないからな。…あ。そうだBB、学園の出入り口に催眠魔法ヒュプノシスの魔法陣を張っておいて、来場者全員に『マージの獣耳を認識できない』っていう暗示をかけるってのはどうだ?」

「その発想はなかなか秀逸だが、体育祭に関して言えばあまり効果的ではないな。なんせ、来場者じゃなくとも、女生徒を遠巻きからデバガメする連中がわんさと増えるイベントなんだ。学園の出入り口だけでなく、周辺全域をカバーするような大掛かりな魔方陣が必要になる」


 そもそも、魔法陣は効果を発動する際に発光する性質があるから、そんなものを出入り口に張っておくなんて「この学園は魔法関係を扱ってます」と自白するようなものである。そんなんだったら、そもそもマージちゃんが獣っ娘であることをカミングアウトして開き直った方が早い。


「う~ん。『【悲報】BB、打つ手なし』か」

「いや、諦めんなよノーマン。もうちょっと一緒に打開策を練ってくれたっていいだろ」

「つってもなぁ…」

「二人して何を悩んでるの?」

「「あぁ、莉穂姉。丁度いいところに──ッ?!」」


 俺とノーマンの二人が、莉穂姉を見て絶句した。

 ノーマンは意表を突かれた純粋な驚きで、俺は“精度の高いネコミミ”を着けた莉穂姉の破壊力でそれぞれ驚いているのだが…。


「うふっ。どう、渉? 似合ってるかしら? ちょっと今はジャージ姿だから締まらないけど、当日はコレに体操服ブルマ姿の私が見られるわよ♪ 本当は、誕生日に見せたかったんだけど、通販の到着が間に合わなくって…」

「莉穂姉…」


 “がしっ!”と音がしそうな勢いで莉穂姉に抱き着く。悩みが解決した事と、莉穂姉の可愛さゆえのどさくさまぎれである。


「…えっ? えっ?! 何? 渉、こんな…外でなんて…ノーマンだって見てるのに…」

「ありがとう、莉穂姉! おかげで問題が解決したよ! …ノーマン! 外出許可を取って、今からドンキに行くぞ!」

「おうよ! 買えるだけ買うんだな!」

「もちろんだ!」

「……え? 何だったのよ、一体…。期待したのにおあずけって…」


 俺達が過ぎ去ったあとには、校庭の片隅でネコミミを着けて拍子抜けした表情の莉穂姉が取り残されていた。


 そして、その日の夜。

 獣耳カチューシャを大人買いしまくった俺が戻ってきた時には、完全におかんむりとなった莉穂姉が待っていたのだが、抱き着いて駄々甘な台詞を耳元で囁き続けたら許してもらえた。

 好感度がマイナスになったかも…と、内心生きた心地がしなかったのは内緒である。

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