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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第三章 体育祭と海開き
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第02話 - 姉禁による禁断症状

投稿を待ってた…っていう奇特な人はまず居ないと思いますが、すんません。

日常的な内容を書いてみようと思ったら、思った以上に変人度合が強調された挙句、落としどころが迷子になって、一日遅れました。

  ─ 2012年6月2日(土) ─


 籠月こもつき学園では、月曜から水曜までの3日間で基礎教科の筆記試験。木曜から土曜までの3日間で魔法の実技試験といった感じで、中間期末問わず合計6日間の考査期間が設けられている。

 今日は、中間考査の最終日。そして今は、最後の魔法試験も終わり、ランチを取るべく寮の食堂へ移動中である。その途中で、校舎と寮とを繋ぐ歩道に併設されている広場を横切りながら、ふと広場中央にそびえ立つ大きな樹を眺める。

 先月の今頃、師匠を詰問きつもんした際に、「世界平和を実現させるための計画用に準備した樹」という事は聞いたのだが、詳しい仕掛けなどは教えてもらえなかった。そんなわけで、一体どういったギミックが発動するのか、地味にワクワクしていたりする。

 実は、その計画を実行した際の後処理なんぞを押し付けられているので、師匠には「面倒事を押し付けやがって!」という文句もあったりするのだが、俺も男の子である以上、そういった仕掛けとかにちょっとロマンを感じてしまうのだ。

 ちなみに、どんな魔法陣が刻まれているのか気になったので魔法陣解析魔法マジック・アナライズで調べたところ、樹自体に仕掛けは施されていなかった。他に分かった事と言えば、この広場全体が巨大な六芒星ヘキサグラムを描いている事くらいだったのだが、こちらにも魔法陣が仕掛けられておらず、謎が深まるだけとなった。


 …とまぁ、そういったなんやかんやは置いといて──


「──終わった…。これで……これでようやく! ようやく莉穂姉の匂いをクンカクンカできるようになったヒャッホーー!」

「と、突然どうしたBB?! ちょ…落ち着けって!」


 ふはは…ノーマンが狼狽うろたえておるわ、珍しい。

 だが、今まで我慢していた禁莉穂姉(りほねえ)生活からの解放! 叫ばずにはいられない!


「バッカ、ノーマン! これが落ち着いていられるかってんだ!

 あのテロリスト騒動が起きるまでは、毎日10回は『莉穂姉』の姿を脳裏に思い出しては崇め、最低3回は抱き着いてクンカクンカするというただれた生活を続けていたというのに、ここ1ヶ月半の生活はどうだ?!

 テロ騒動の後片付けで徐々にスキンシップが取りづらくなり、GWは修行に温泉巡りに買い…物…くっ! 頭が…。

 そんで、それらが終わったあとは試験勉強期間になだれ込み、禁イチャイチャタイム生活に突入だ!

 朝食時に『おはよう』を言い、昼食や夕食時は一緒にご飯を食べるだけ、大浴場から上がったあとは『おやすみ』を言うだけの超健全な生活! 昭和かっ!?」


「……聞いている限り、とても健全な高校生カップル(カポー)の模範の様な暮らしで、リア充爆発しろ展開じゃないか」


 ノーマンが呆れ顔を隠しもせずそんな事を言ってくる。

 まったく、ノーマンの分際でまともな事をぬかしおってからに…。


「何を言うか! 風呂上りの上気した莉穂姉の肌を前に、抱き着くことも許されず、ほんのりと漂う薫りを堪能するだけの、かすみを食わされたかのようなおあずけ感!

 『渉が抱き着いたあとは、ドキドキしちゃって勉強に集中できなくなっちゃうから…』なんて莉穂姉に言われた日にゃ、そりゃ俺だって我慢せざるを得ないでしょう! っていうか、よく考えたら何このエロ漫画みたいな台詞!? 俺、もう我慢できな──」


「北斗! 百烈拳ッ! アータタタタタ……お前はもう、気絶しているッ!」

「──ひでぶっ!!」

「今まで、俊之としゆきと渉の間に友情以外の怪しい気配があるんじゃないかと疑ってたけど、今の渉の魂の叫びを聞く限り、本当に何もなさそうで安心したわ。…ごめんね、今まで疑ったりしてて。これからは私、渉とも仲良くできそうだわ」


 ノーマンから目にも止まらぬ速さの連撃を食らったあと、マージちゃんのホッとしたような声を最後に俺の意識は途絶えた。

 そして、次に目が覚めた時は、寮の最上階にある男子用大浴場の湯船の中だった。


「……ハッ!? ここは…大浴場か?」

「正解だ、BB」


 横から声が聞こえたので振り向くと、ノーマンがリラックスした感じに入浴していた。

 …サングラスを着用したままで。もうここまでくると、コイツのサングラスって顔と融合してるんじゃないかと疑わしくなってくる。

 頭上を仰ぎ見れば、一面ガラス張りになっている天井から月と星空が楽しめた。

 うむ。今日も良い眺め──いや待て、俺の記憶が確かならば、ついさっきまで昼間だったはずだ。

 なんで空には星が瞬いているのか?

 その謎を探るべく、大浴場壁面の時計に目を移す……10:20。最後の記憶から、10時間以上経過している事になる。


「ノーマン、お前まさか…キングクリムゾンまで使えるようになっていたのか」


「ハッハッハ…まさか! 発情したBBを止めるために、見よう見まねで北斗神拳を使ってみたんだが、ところどころクリティカルヒットしてたみたいで、なかなか目覚めてくれなかっただけだよ。

 いやぁ、BBが気絶したあと酷かったんだぜ? 昼食と夕食の時に、莉穂姉、滝川、理事長、マチュアの四人が、口移しで食べ物を流し込もうとするもんだからさ~。俺をはじめ、関口、妹尾せのお、美希姉で説得して何とか防げたから良かったものの…」


「Shit! 何か妙に腹が減ってると思ったら、何も食ってなかったからかよ! てか、滝川と由子お姉ちゃんはともかく、なぜ莉穂姉の口移し流動食を止めたんだ! 記憶が無かったとしても、その状況は勿体ないと言わざるを得ない!」


 できれば、口移しシーンを動画保存してもらうと尚良しである。


「BB、『あ~ん』してもらう時は恥ずかしがってたのに、口移しは良いのかよ…。いや、それはともかく、まだ脳内が状態異常らしいな。いいか、よぉく考えてくれ? 意識のない人間に、直通の管を通したわけでもない状態で流動食なんて流し込んだら、気道が塞がったり誤嚥ごえんに繋がったりで、BBが大変な目に遭うだけなんだぜ?」

「自力で呼吸できなくなったら、人工呼吸すればいいじゃない」

「ダメだコイツ、早くなんとかしないと…」

「『ダメだ』とはなん──ッ?!」


 文句を言おうとした瞬間、顎に軽く衝撃が走る。次の瞬間には、目の前が暗転し始めていた。

 ノーマンのヤツ、また俺を気絶させ…やがっ……。


「ふぅ…。いつもだったら、俺が面白おかしくBBをからかってボケ役になってるというのに、姉禁あねきんしたあとの反動がこれほど酷いとはな…。調子が狂ってしょうがねぇや」



  ▲▽△▼△▽▲


  ─ 2012年6月3日(日) ─


「ハッ!? ここは!?」

「おはよう、渉。気分はどうですか?」


 部屋の片隅から機械合成っぽい声が聞こえてくる。

 これは、マチュア・コピーの声だ。俺の部屋のPCにインストールされ、ボディを得ていないためか、欲望にまみれた発言をしてこないキレイな頃のマチュアのままである。


「……マチュア・コピーの声がするってことは、ここは俺の部屋か」

「そう。昨日、BBが大浴場で気絶したあと、俺が着替えさせて運び込んだんだよ。…あ、ちゃんと髪や体も洗っといてやったからな……隅・々(す・み・ず・み)まで」


 俺の声に気付いたからか、ノーマンが扉を開けながら説明しに入ってきた。

 学園寮の部屋の作りは全室同じで、浴室、洗面所、台所兼ダイニング兼リビング、トイレ、私室用の部屋が2つという構造になっており、今のタイミングを見る限り、ノーマンはリビングで待機していたようだ。


「……最後の発言が不穏当な何かを感じるが、ありがとよノーマ──いや待て、そもそも俺を二回も気絶させた張本人はお前じゃないか。…ったくもう、おかげで昨日は昼夜と食べ損なうし、今も胃袋がオーケストラを奏でそうなくらい腹ペコなんだが」

「いやぁ、BBの暴走っぷりがあまりにも酷いもんだから、てっとり早く落ち着かせようと思って気絶させた次第」

「俺の扱いが雑過ぎね?」


 暴走だなんて人聞きの悪い。俺だって言ってもらえれば……あ、いや、全然落ち着く素振そぶりも見せなかったし、口頭での説得を諦めたくもなるか。


「いいえ、そうでもありませんよ。渉が気を失っている最中、唇を奪おうとしてくる私の本体や、莉穂達から、ガーディアンの様に守っていたのは俊之ですからね」

「マジで?! そんな面倒なアフターケアをするくらいなら、普通にロープとかで俺を拘束すりゃ良かっただろうに…」

「え? BBってまさか、そういうの(・・・・・)が、お好みだったりする?」

「いや性癖じゃねぇよ、その方が楽だったろうなって──」


 ──と、アホなやり取りを行っていたところで胃袋が限界を迎えたのか“ぐきゅるるるるぅ”といった音を立てて空腹をアピールしてきおった。

 考えてみたら、昨日は昼以降食べてないのでほぼ丸っと24時間栄養補給をしていなかった事になる。

 何よりもまずは「莉穂姉をクンカクンカしたい!」という欲求があるのだが、それ以上に本能の方が物を食べろと囁いて…否、わめいてくるので、俺は素直に食堂へ移動する事にした。


 まったく飲み食いせずに居たためか、立ち上がった際にふらついてしまい、結局食堂までノーマンの肩を借りる羽目になってしまったのが情けない。…そして、その光景を黒薔薇三連星にガッツリ目撃されていたことを、俺は数ヵ月後に同人誌と言う形で知ることになるのだった。

 彼女らの嗅覚の鋭さが恨めしい…。



  ▲▽△▼△▽▲



「ふぅ……食った食った。心なしか、頭がすっきりしてくるようだわ」

「そりゃ良かった。…にしてもBB、そんな調子でどうやって中三の受験シーズンを乗り越えたんだ? 莉穂姉が籠月学園に入学して以降、ほぼ一年中姉禁状態だったろうに…」


 朝食を食べ終わったところで、ノーマンがそんな事を訊ねてきた。

 ノーマンの言ってる事はもっともで、籠月学園は伊豆半島最南端“石廊崎いろうざき”の西側に位置している。対して、俺達の実家があるのは神奈川県大和市だ。

 莉穂姉が気軽に帰って来れるような距離ではないし、往復の移動費だって馬鹿にならない。


「転移部屋を使わせてもらっていたのさ…って、言いたいところだけど、職員とかでもない限りアレは基本的には使えないし、生徒に公開もされてないからね。この前の修行で利用させてもらったのは、異例中の異例だ。

 で、答えについてはかなりシンプルで、莉穂姉が居ない間は莉穂姉の許可の下、莉穂姉の使っていたベッドや枕に顔を埋めたり、中学の制服に抱き着いたりして無理やり気を紛らわせていたんだよ。たまに、実家に残したままの服の匂いも嗅いでたかな」


「……うっわ。完全にド変態のソレじゃないか。白濁液をまき散らしたりしてねぇだろうな?」

「失敬な! そんな台無しにするような真似するわけないだろう。堪能した後は、天日干ししたり陰干ししたりで、アフターケアしていたさ。それに、なんやかんやでGWとか期末考査後の休み期間やら、夏季休暇やらで2~3ヵ月に一度は戻ってきてくれてたからな。その際に、目一杯抱き着いて、甘えてイチャイチャしていたのだよ! ま、今回はノーマンという抑止力が邪魔をしてくれたせいで、いつもの様なキャッキャウフフができなかったわけだがな」

「「………」」


 ノーマンが、とても可哀想なものを見るような目で俺を見ていた。

 そして、いつの間に来たのか分からなかったが、マージちゃんまでもがノーマンの横で何とも言えない表情で俺を見ていた。


「……おい、二人とも何だってんだよ、その表情は? 姉好き(シスコン)なら、これくらい当たり前のスキンシップじゃねぇか!」

「うん。渉の言う通りだわ! というわけで、渉。一ヵ月ぶりの弟分補給させて頂戴!」


 これまたいつの間に来ていたのか、莉穂姉が突然現れて横から抱き着いてきてくれた。

 ……そう、コレ! コレなのだよ。俺が求めていたものは…。

 満たされる! 実に満たされるぞ!

 お腹も一杯だし、これならなんの障害も無く莉穂姉を堪能できる。

 来てる。今まさに、俺に流れが来ているぞ。乗るしかない、このビッグウェーブに。


「うっわーい! 莉穂姉の感触だぁっ! 嗚呼ああ、莉穂姉の匂いクンカクン──かふぉっ!?」

「わ、渉?! ちょっと、ノーマン! 邪魔しないでよっ! 久しぶりの至福タイムなのにっ!」

「あ~…自分でもよく分からないんだが、ついイラっとしちまって…。気づいたら、BBの頭をどついちゃってた。テヘペロ♪」


 そんなわけで、どうにも莉穂姉に抱き着いたあとからの記憶がなかったのだが、嬉しくて意識が無くなったのではなく、ノーマンが所謂いわゆる首トンをやって意識を刈り取ったらしい。全く気付かなかったが、そういやコイツ、紛争地帯でこういったことをしながら敵対勢力を無力化してたんだったな。

 尚、今回は夕方頃には目覚められたのだが、多少なりとも姉分あねぶん補給できたのが効いたのか非常にスッキリした目覚めになった。


 そのあとは、ノーマン監修の下、莉穂姉とんずほぐれつすることも、気絶させられることもなく平和に夕食や入浴を終わらせた。

 そして、「さぁ、あとは寝るだけだ」となった際、ノーマンに共有しておくべき事を思い出したのだ。


「あぁ、そうだったノーマン。中間考査が入る前々日の事なんだが、どうもラスト・ワンの残党が成田空港で見つかったらしい。見つかったのは一人だけだが、取り逃がしてしまったという報告があったから伝えとくね。

 たぶん、近々またここまで攻めてくると思うから、マチュアから警報が入るかもしれないってのを覚えといて。あ、それと、日本に入国したのは絶対に一人だけじゃないはずだから、その辺も併せて伝えとく」


「俺が言うのも何だけど、姉禁した時のBBってビックリするくらいポンコツになっちまうんだな?! 頼むから、今後は莉穂姉とのスキンシップを毎日取ってくれ!

 あいつらに強襲されても大したことはないけど、こういった重要事項が二の次になるのは恐ろし過ぎる!」


 このあと、ノーマンからめちゃくちゃ説教された。

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