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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第二章 ドキッ!女の子だらけのGW~修行もあるよ!~
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第13話 - 大乱闘スマッシュ幼馴染ズ(中半戦)

前回、「後半へ続く」と書いたな…あれは嘘だ。

…ごめんなさい。あっけなく終わらないように少し引っ張ろうとしたら、予想以上に長くなっただけです。

「悪いけど、莉穂姉に危害は加えさせないよ。どうしてもと言うのであれば、この俺を倒してからにしてもらおうか」

「渉君。その泥棒猫は、私たちの条約を無視して明らかな“抜け駆け”行為をしたわ。故に有罪なのよ!」

「条約の仲間入りはさせてもらってはいませんが、今の行いは“抜け駆け”としか言えません。よって裁かれるべきです。そして、代わりに私を条約に組み込むべきです」


 満足そうに気絶している莉穂姉を背後に庇いながら、由子お姉ちゃんとマチュアに向き合う。

 両者とも、今しがた行われた莉穂姉のベロチュー行為にレッドカードを突き付けたいようだ。

 滝川を最初に気絶させておいて正解だったな。怒り狂いはしなかったろうが、この二人側につく可能性がデカかったから…と少し安堵しつつ、マチュアの図々しさに頭を抱えそうになる。


 コインが落ちてから既に数分経っているが、美希姉、関口、マジカルゆかりん、妹尾はいまだに初期位置から動く気配はない。

 目の前の二人に集中できるから良いが、いつ動き出すのかと気が気でないのも事実だ。

 真っ先に飛び出した5人と1体の気迫に、若干引いているのかそれともフレンドリーファイアを恐れているのか、あるいは虎視眈眈と俺かノーマンの隙を窺っているのか…。

 まぁ、仮にあの4人全員のクリーンヒットを食らったとしても、まっとうなお願いしかされないだろうから、そこだけは不幸中の幸いと言える。


 さて、とりあえず目の前の二人を言いくるめないと…。


「二人とも、落ち着いてよく聞くんだ。今のは“抜け駆け”ではない」

「「どこが?!」」

「今のは…俺の油断が招いた、莉穂姉からの攻撃だ。クリーンヒットとは言えない攻撃だから、お願いを聞く対象とは言えないがな」

「「!!? なるほど…つまりこれは、修行成果確認にかこつけた“私たちの本気”を見せる場面ってことね!」」

「……間違ってないはずなんだけど、別の意味で“本気”を見せられそうな気がするのは何故だろうか」


 だが、二人の矛先が俺に集中してくれそうなので、とりあえず良しとしておこう。

 これで少なくとも、俺がどちらかを相手にしている間に莉穂姉が攻撃されるという心配はなくなったわけだ。

 本当は莉穂姉を護りながら戦えるのがいいのだが、ただでさえ戦い慣れしていない俺には、多対一の戦いをしながら莉穂姉を庇える自信がない。魔導具作りの様に、じっくりと考えて魔法陣を構築するのは自信があるのだが…。

 何にせよ、早々に二人には意識を手放してもらわなきゃいけない事に変わりはない。

 …由子お姉ちゃんは雷撃魔法サンダーで気絶してもらうとして、マチュアをどうしたもんか──って、そういやアレがあったか。


「「隙ありっ!」」


 思案中、一瞬だけ目を逸らしたのを見逃さなかった二人が一気に距離を詰めてくる。

 さっきまでは魔法による遠距離攻撃をしていた由子お姉ちゃんすら、近距離攻撃にシフトしている。間違いなく俺の唇狙いだろう。

 計画通り……ってわけじゃないけど、この状況であれば迎撃の方がやり易いっ!


「まずは…マチュアお前からだっ!」

「やっと私を受け入れてくれるんですね、渉!」


 正面から抱き着こうとしてきたマチュアの腕をすり抜け、素早く背後に回り込み背中の中央付近に手を当てる。


「残念、しばらく大人しくしててもらう」


 構築していたマチュアボディ専用の魔法式を発動させると、手を当てていた部分のボディ装甲がスライドし、緊急停止用の赤いボタンがあらわになった。

 万が一、スカイネットのように暴走した場合を想定したボタンだ。間違ってもこんな状況で使うために用意されたものではないが、面倒なので使わせてもらう。


「ハッ!? そのスイッチ押しちゃダメッ!」

「いいや、押すねッ!」


 スイッチを押すと同時にマチュアの全身から力が抜け、抱き着くような姿勢のまま前のめりに倒れる。

 他の二人はちゃんと受け止める様に配慮していたが、今は真後ろから由子お姉ちゃんの気迫が迫っているのでそのまま地面にダイブしてもらった。

 痛そうだとは思うが、今のマチュアには痛覚はおろか全てのエネルギーラインがストップしている状態なので何も感じないだろう。

 まぁ、擦り傷くらいはできているだろうが、再起動させれば自動修復により綺麗に復元されるから許せ。


「さて次、由子お姉ちゃん! って、思ったよりも近っ?!」

「渉君、頂きますっ!」


 振り向くと同時に見えたのは、ほぼ目の前まで接近していた由子お姉ちゃんが飛びつくために踏み切りをするところだった。…というか、飛びつくところだった。

 くっ…このまま避けるのは簡単だが、それだといくらなんでも可哀想だし…かといって受け止めたら抱き着かれてベロチューされそうだ。折角、莉穂姉の余韻が残っている状態で上書きされるのは、何としてでも阻止したい!

 雷撃魔法サンダーで気絶させるのが確実だけど、0.2秒ほど間に合わない可能性が高い…こうなったら

──


[──今、俺とキスすると、莉穂姉と間接キスしたことになるよ! 由子お姉ちゃん!]

「なっ!?」


 精神感応魔法テレパシーによるノータイムでの意思伝達。

 去年一年間、マジカルゆかりん指導のもと、視界にとらえてさえいれば一瞬で相手に話しかけることができるくらいには修行してきたのだ。

 おかげで由子お姉ちゃんに隙ができ、俺に抱き着きはしたものの一瞬躊躇するだけの時間ができた。

 汚いと罵られたって良い。それでも俺には、|義姉のベロチューの余韻《守りたいもの》があるんだっ!


「構築完了…雷撃魔法サンダー

「しまっ──」


 俺の肩に回していた由子お姉ちゃんの手を取り、威力にZ(アルジズ)のルーンを加えた雷撃魔法サンダーを放つ。

 意識を手放した由子お姉ちゃんを抱きかかえ、演習場の壁に備え付けられたベンチへ横たえる。

 次いで、莉穂姉、滝川、一応マチュアもそれぞれベンチへ運んだ。

 ……ふぅ、俺の方は第一ラッシュ終了と言ったところか。

 俺が対戦者を運んでいる間、様子見らしい4人は手を出してはこなかった。まぁ、彼女らの場合はそこまで必死になる理由もなさそうだし、フェアにやってくれそうだったので心配はしていなかったが。


 さて、ノーマンと別行動をしてからまだ十数秒も経ってないだろうが、ふとノーマンサイドが気になってそちらに目を向ける。

 もう「篠山ねーちんを気絶させて、マージちゃんと一騎打ちをしている頃だろうか?」などと思いながら見ると、まだノーマンは二人を相手に攻撃を捌いていた。

 素人目なので正しく評価できているかわからないが、神力を操れるようになった篠山ねーちんの動きは「凄い」の一言だった。

 普段から走の速さが売りな篠山ねーちんではあるが、今ではバトルものの主人公のような動きを披露している。連続蹴りを放つ足が、たまにブレて見えるくらいだ。


 そして、それを危なげなく捌ききるノーマンはさすがと言ったところか…。

 なんせ、篠山ねーちんよりも更に素早く攻撃してくるマージちゃんもいなしながら二人同時に相手をして尚余裕なのだ。

 しかし妙だな、あいつなら速攻で篠山ねーちんを戦闘不能リタイヤにできそうなもんなのに…。

 ひょっとして、ノーマンの奴は篠山ねーちんの戦闘力を調べようとしているのか?

 しまった。俺の方は全然余裕が無かったから、莉穂姉たちの戦闘力をまともに吟味できてねぇ…などと思っていたら、ふとニヤついたノーマンと目が合った。


[フ…BBの戦い方、童貞感丸出し]

「なんでや! 童貞関係ないやろ! ってか、お前だって童て──ハッ!?」


 精神感応魔法テレパシーでノーマンの考えを覗いたら、バカにされてそうな雰囲気だったのでつい声に出して反論してしまった。

 「アホな事を口走っちまった!」と思い、残っている4人を見ると、困った感じに笑っている美希姉、額に手を当てて溜息をつくマジカルゆかりん、少し赤くなりながら眼を逸らす関口と妹尾が居た。

 …妹尾。そんな反応するって事は、“オナホ”は知らないのに“童貞”は知っているんだね。お兄ちゃん、ちょっと複雑な心境だよ…。


「ガハッ!」

「うん。篠山ねーちんは、BBよりか接近戦の素質あるな」

「さらっと人をディスってんじゃねぇ! このデコ助野郎! ……って、篠山ねーちんは大丈夫なのか? なんか凄い声出してたけど」


 ノーマンの攻撃で倒れたらしい篠山ねーちんをベンチへ運ぶついでに調べたが、普通に気絶しているだけだった。


「目を離していたとはいえ、一体どんな攻撃を食らってこうなったのやら…」

「戦場で敵対者をミンチにしないように作り上げた手加減用の神力の技を使った。BBがさっき使ってた魔法と同じように、触れた相手を気絶させるって効果を発揮するんだ。篠山ねーちんには、首筋に手刀を当てる形で気絶してもらった」


 篠山ねーちんが倒れたためか、本気を出したらしいマージちゃんの高速パンチ及び、キックの攻撃を捌きながらノーマンが律儀に答えてくれた。

 アニヲタ軍人仲間のグレッグみたいな感想になっちまうが、少年漫画の主人公みたいなやつだなホント。


「まぁ確かに、お前がついうっかり本気で殴っちゃったら、人間の体を突き破るか、殴った箇所を中心に体がちぎれ飛びそうだもんな…」


 それにしても、一体どういう原理で気絶に持ち込んだんだろうか。

 俺の場合、普通なら感電死するような威力で構築した雷撃魔法サンダーの魔法式を、Z(アルジズ)のルーンで強制的に保護能力を持たせて気絶に留めるという荒業を使っているだけである。

 本来なら触れなくても良いのだが、確実にターゲットに当てるという目的と、変にフレンドリーファイアをしたくないというだけの理由でゼロ距離使用しているに過ぎない。


「ちなみに、どういう原理なのか教えると、接触した瞬間に相手の体内へ俺の神力を無理やり送り込んで、体内の身体機能を一瞬だけマヒさせてるだけ。脳内にも作用するから、確実に気絶してくれるんだ。名付けて“異物混入撃いぶつこんにゅうげき”!」

「酷ぇネーミングセンスだな! ちったぁマシな名前にしろや!」

「尚、心臓も含め、呼吸器系まで一瞬いう事を効かなくなるから、心臓が弱い方にはオススメできないね」

「しかも危なっかしいな、オイ!」

「まぁ、命に別状が出るくらいの症状の奴が、俺と敵対するって場面がまずないから、基本的に遠慮なくぶちかましてるがな!」

「……確かに──うおっ?!」


 ノーマン相手にツッコミをしていたら、今まで動くそぶりの無かったマジカルゆかりんから突如として火炎魔法ファイアによるデカイ火球がすっ飛んできた。

 念のため、全方位型の防御壁魔法シールドを展開しておいて良かった…。


「ちっ…渉の張る防御壁魔法シールドって硬いわね。確実に割るつもりで攻撃したってのに…弟子の癖に生意気よ」

「いや、精神系はマジカルゆかりんが師匠だし敵わないけど、物理系──特に防御壁魔法シールドに関しては負ける気はしないぜ! 抵抗魔法レジストでの威力減衰よりも確実に防げるし」

「そんなんだから、BBはいつまで経っても童貞なんだよ…」

「うっせ! 関係ないだろノーマン…ってあれ? マージちゃんとバトってたんじゃ」


 いつの間にかマージちゃんの攻撃音が止んでおり、肩をすくめて「やれやれ」のポーズを決めたノーマンが隣に立っていた。


「ん? マージなら、ホレ、あそこで寝てるよ」

「…ホントだ」


 恐らく異物混入撃を食らったであろうマージちゃんが、篠山ねーちんの横でのびていた。

 実力を知っているからこそ早めに蹴りをつけたのか、はたまた余裕がなかったのか…。


「単に残り4人の実力を早く見たかったからだぞ?」

「…俺って、そんなに考えてる事が顔に出てる?」

「まぁ、長い付き合いだからな。普通の人だったらまず絶対に分からないから、安心していいぜ」

「…ならいいけど」

「そんじゃ、第二ラウンドだ。さぁ、俺かBB、どっちでもいいから攻撃を当てられるかな?」


 ノーマンの合図(?)に触発されたのか、4人が全員同時に動いた。

 ……俺に向かって。


「ちょ!? ナンデ? ナンデ俺?!」

「あぁ…やっぱBB相手なら一撃くらい当てられると思ったんだろうねぇ。ホラ、俺じゃあ攻撃が当てられそうにないくらい見事に捌いてたからさ」

「ちくしょう! 自分でもそう思うけど、お前に真面目に指摘されると凄くムカツク!」

「ほらほら、俺に文句言ってないで、ちゃんと攻撃に転じなきゃジリ貧だぞ? さっきから見てたけど、防御壁魔法シールド張ってると、攻撃を食らう事もないけど中から攻撃する事もできないんだろ?」

「正解だよ! こんちくしょう!」


 俺の戦いはもう少し続くらしい…。

今度こそ、後半へ続く。

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