第09話 - 修行2
ちょっと頑張って早めに投稿してみた。
「はい…。じゃあ、全部構築した場合の魔法式を精神感応魔法で直接教えるから、それをベースに雷撃魔法を構築してみようか」
マジカルゆかりんのロケット頭突きによるダメージを治癒魔法で回復させたあと、精神感応魔法で二人にフル構築した際の魔法式を転送する。
マジカルゆかりんには老化魔法の式を、由子お姉ちゃんには老化抑制魔法の式をそれぞれ教える。
「…なんか、やたら指定が細かい構築式ね。効果範囲に、限界値に……速度? あぁ、成長速度みたいなものかしら…。本当に、こんないっぱい指定する必要あるの?」
「省いても問題ない箇所はあるっちゃあるけど、その場合は本人が強くイメージしておく必要があったりするね。まぁ、ほとんどの場合はエーテルに融合している規定値から引っ張り出されるし、魔法によってはまるで使わない式もあるけど。
稀に発動しないだけって場合もあるけど、最悪の場合は想定外の効果を発揮する可能性もあるから、慣れない内は省かない事をお勧めするね。
それに、老化魔法の場合は速度指定しわすれて、『早く大人になりたい!』みたいなイメージしてたら、一気に老人になる…っていう浦島太郎状態になる可能性もあるわけで」
「ゴクリ……わ、分かったわ。横着しちゃダメって事ね…」
マジカルゆかりんが面倒臭そうにしてたので、大失敗する可能性を仄めかして軽く脅かしておいた。
大抵の場合は魔力保有量の関係で不発になるだけだが、マジカルゆかりんほどの保有量があるとガチで大失敗する可能性もあり得るので嘘はついてない。
まぁ、マジカルゆかりんの場合は“ボンッキュッボンッ!”のナイスバディになることが目的みたいだし、行き過ぎても20代中盤くらいで成長は止まるだろうけどな。
二人には説明しなかったが、師匠がプログラム構築という感覚を念頭に置いて造っただけあって、本当に構築が不十分だったり、式の不足分を補うだけのイメージが足りていなかった場合、構築した魔法式に魔力が吸収されないというギミックが施されている。
どういう風に二人がフル構築の練習をするかわからないが、色々と試すうちに気付いてくれるだろう。
……もし、気付くことなく成功し続けてマスターしてしまった場合は、その時に種明かししようかな。
「薬にしろ魔法にしろ、用法用量を守ってしっかり使わないとダメってことね…。ところで渉君? どうして私に送られた魔法式が老化抑制魔法なのかしら?」
「……それは、アレだよ。二人でフル構築の内容を伝え合って、“何処がどう違う事によって、魔法効果に違いが出ているのか”を感じて貰ったり、“どうして魔法なのに人体に浸透しやすいのかを自分自身の力で感じて貰ったり”して欲しかったからだよ。そう、いわば修行の一環だね!」
「…なるほど、わかりました。少し間が有った事はこの際目を瞑りましょう。でも、これを口で伝え合って比較するのは難しいわね。かといって、私は渉君みたいに精神感応魔法を自由に使いこなせているわけではないし、菜月さんもそれは同じではないかしら?」
「あ、私は精神感応魔法普通に使えるので大丈夫です。というか、その修行を渉にしたのは私です」
マジカルゆかりんのしれっとした告白に、由子お姉ちゃんが驚愕の表情を浮かべる。
艶やかなロングストレートが一瞬“バサッ”と翻るほどの速さでマジカルゆかりんの方を向いたので、普段の冷静な雰囲気とのギャップに笑いそうになってしまった。
「そういうわけだから、マジカルゆかりんに老化抑制魔法のフル構築を読み取ってもらって、比較してもらう方が早いかもね。
まぁ、まずはさっき言った通り雷撃魔法をフル構築して慣れてもらうってことで。今から的を用意するから、構築はゆっくりでいいよ~」
ノーマン組の方も実戦するだろうから、ついでに的を用意して一声かけておいた。
▲▽△▼△▽▲
「神力精製量と魔力保有量の限界値は、それぞれの力を意識して使用していれば上昇していく。そして、限界値が高い人物と近しい人々も、総じて精製量と保有量が高いという調べもついた。というわけで……俊之、渉。ちょいと、人生を賭けた実験に付き合ってもらってもいいかな?」
「「面倒な実験じゃなければ、別にいいよ」」
「ちょっと面倒かもしれないが、二人は里親の元で暮らすことになるだろ? …といっても、うちの研究員が里親だから会おうと思えば割と簡単に会えるわけだが…。その際、近所の子供と一緒に遊んだり学校に行ったり──要するに、普通の子供のように生活してもらって、周りの人々の変化を観察して欲しいんだ。特に、一緒に居るようになった子達の精製量と保有量の変化具合は、毎日の変化を表にしてボクに報告してくれると凄く助かる。…そういった実験の手伝いをして欲しいんだが、やってもらえないだろうか?」
「それくらいなら、面倒でもないからいいよ」
「渉がやってくれンなら、オレはやらなくてもいいよな?」
「…予想通りの反応になったな。まぁいい、俊之にはいずれ別の頼みごとをすることになるだろうから、今の実験は渉に頼んだよ?」
などという約束を十数年前に師匠と行い、ノーマンは中2の夏頃から軍へテロ狩りに、俺は引き続き幼馴染達の経過観察という役をこなしていたわけだが……。
「限界値が高い人ほど、神力も魔力も回復力がアホみたいに高くなる事は知っていたけど、そういった人達って使い方のセンスも良くなるのだろうか?」
とんでもない勢いで力の使い方をマスターしていく幼馴染や同級生の姿を前に、俺はそう呟かざるを得なかった。
まずは、由子お姉ちゃん・マジカルゆかりんペア。
物覚えが良いのか、センスが良いのか…二人して20~30分ほど頭を悩ませた後、おもむろに立ち上がったと思ったら高威力のサンダーを構築する事に成功していた。
それに気を良くしたのか、火炎魔法、氷結魔法までフル構築できたようで、威力の調整等目に見えて上達していった。
マジカルゆかりんに至っては、「ねんがんの老化魔法を効率化したぞ」といった具合に、身長その他もろもろの成長促進に成功していた。
バストサイズの関係で服がはじけそうになったため、慌てて老化抑制魔法で戻すといった場面もあったが、概ね成長後の姿に満足したらしい。
目を輝かせながら「早速換えの下着や服を買ってくるわ!」と意気込むマジカルゆかりんを、「急成長具合を誤魔化すのが難しいし、老化魔法も老化抑制魔法もまだ秘密にしておきたいから、半年の内に徐々に促進させるように調整してくれないか」と俺が土下座して止めるという一幕もあった。
続いて、莉穂姉を含んだ幼馴染組。
機嫌が悪かったのか、単に力が入っただけなのか、とんでもない威力の掌底を放った莉穂姉が本気で恐ろしかった。
何しろ、500kgの荷重にも耐えられる金属芯でできた的が軽く折れ曲がるほどのだったのだから、その威力は推して知るべしだろう。
万が一、莉穂姉がヤンデレに目覚めてしまった際は、催眠魔法による強引な治療をするか、諦めて俺が魔力と神力を併用した身体強化で耐え忍ぶかの二択を迫られることになりそうだ。
でないと確実に死ぬ、俺が。…抱きしめられても死ぬ、殴られても死ぬ。
その他、滝川、関口、妹尾も神力を使った身体強化の効果に驚きを隠せていないようだ。
今はマージちゃん監修のもと、全員で接近戦の練習をしている。
「さて、ノーマンさんや」
「なんだい? BBさんや」
「俺の方は、ルーン文字を使った魔法式の構築を教えてしまえば完了なんだけど、お前の方はどんな具合よ?」
「そうだな…、本来なら治癒や免疫の活性化とかを教えれば終わりだったんだが、あの調子だったら俺のリダクションアーマーすら使いこなせそうな感じだから、マージに教えるついでに覚えてもらうのもアリかなぁ…って思ってる」
壊しては入れ替わりに出てくる的に対して、飛んだり跳ねたりライダーキックしたりしている幼馴染を遠目に見ながら、俺たちは修行カリキュラムを確認していた。
っていうか、マージちゃんにリダクションアーマーの使い方教えてなかったのか…意外。
「ちなみに、リダクションアーマーを含めて教えるとして、使いこなせるようになるまでどれくらいかかると思う?」
「今日中で終わるんじゃないかな。BBの方は?」
「こっちも今日中には完全にマスターして、俺と同レベルの使い手になると思う」
「やっぱりか…。で、明日からどうする? 今日とは逆の組合せで修行してみる?」
ノーマンがため息交じりに提案してくるが、正直言って由子お姉ちゃんの神力精製量は“並みより少し多い”程度。マジカルゆかりんに至っては、“並み以下”である。
神力を使いこなすには、何度もぶっ倒れながら精製量を上げてもらうしかないだろう。
「いや、二人がGW中に神力を使いこなせるようになれないだろうから、それは得策じゃないと思う。それだったら、いっそのこと……」
あぁ、そうだ。そうした方が、俺達も師匠に会いに行く時間ができるってもんじゃないか。
「BB? 『いっそのこと』何するってんだ?」
「いっそのこと、由子お姉ちゃんとマジカルゆかりんの二人に、他の皆の教師役をやってもらうのさ。今日中に、フル構築魔法式とルーン文字を使った構築をマスターしてもらって! で、俺達は明日以降、異世界へのゲートをくぐって師匠を探しに行く…どうよ?」
「『どうよ』って言われてもなぁ…それをやったとしても、全員明日中に扱い方をマスターして、明後日以降が暇になるんじゃねぇの?」
「そん時は、転送部屋を使って学園に戻ってから交通機関を使って各自の実家に帰るも良し、買い物に行くも良しってやつよ。
もしくは、研究所員の誰かに温泉めぐりに連れて行ってもらって、プチ旅行をしてもらうってのもいいかもな。ここ群馬だし、県内の温泉数は200箇所以上もあるらしいから、時間を持て余すってことは無いと思うぜ?」
「なるほど…。なら、それで行くか」
「おう。じゃ、方針も決まった事だし──」
俺が話し出すのとタイミングを合わせたように、演習場内に大き目の音量で給食時に掛かりそうな曲が流れてくる。
「──みんな~。一旦切り上げてお昼ご飯に行くよ~」
「「「「は~い」」」」
こうして、想定外に早くマスターされそうだった修行への対応策も決まり、俺達は一路食堂へと足を向けた。
金曜日に投稿できるかは…自信がないです。はい…。




