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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第一章 テロリスト襲来
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第03話 - よく見たら、幼馴染が巨乳だった件

先に謝っておきます。女性の皆様ごめんなさい。

でも、男子だったら誰でも気になってしまうと思うの。そこに巨乳がある限り。

   ─ 2012年4月20日(金) 08:30 ─


「うぉっ?!」


 先ほどまでは教室内に緊張した雰囲気が漂っていたが、俺がテロリストを倒したことでいつの間にか落ち着きを取り戻し始めていたようだ。滝川がクラスを代表するかのように、俺の真横まで来てきた。

 完全に不意を突かれた形だったので思わず変な声を出してしまい、それに驚いた滝川が前かがみの姿勢のまま固まっている。


 それにしても滝川……お前さん“けっこうなもの”をお持ちだったようで…。今までまともに胸部装甲を観察することがなかったから気づかなかったけど、その姿勢は反則っすわ。顔を見た後に、視界の端にチラ見えする谷間に目が行ってしまうもの。

 まさか、義姉あね一筋の俺の視線をきつけることができるなんて…。

 それによく見れば、莉穂姉に匹敵…いや下手をすればそれ以上の大きさ(魔力値)かもしれない。…まずいな、テロリストに襲撃されている状況だというのに、莉穂姉のライバル出現かもしれないという現状の方が危機感を覚えてしまっている。

 俺の中で、「テロリストへの対応が最優先だろ!女子の胸囲を気にしている場合か! 今お前がやろうとしていることは、全女子を敵に回すレベルの重罪だなんだ!恥を知れ!」という理性と、「だって、気になるじゃん!バレなきゃいいんだよ!」というどうしようもない好奇心がせめぎ合いを始めた。


 …ごめんなさい、好奇心に負けました。

 というわけで、貴女きじょのその大きさ(魔力値)、失礼だとは重々承知しているがはからせてもらうっ!“視覚目盛魔法スケール・ヴィジョン”始動!

 この魔法は、“対象までの距離”や“対象の大きさ”などを、±(プラスマイナス)0.5%以内の誤差で目視測定が可能となる魔法である。日常生活では、g(グラム)表記のない野菜の大きさを測定し、どれが一番大きいかを確認する時くらいしか役に立たない。そのくせして、“基準となる尺度”を自身に覚え込ませる必要があるという苦労の割には大して役に立たない“魔法の不人気ランキング”で不動の一位を独走している魔法である。

 俺の場合は、「任務とかで使えると便利だから」という理由でm(メートル)mm(ミリメートル)の両方を覚えさせられて(・・・・・)しまった。おかげで中学三年の夏休み前半が、尺度記憶の猛特訓に消費されてしまった。

 受験生ということで、幼馴染たちには「受験対策合宿に行く」と誤魔化したのだが、滝川が「私も受験生だし、一緒に行く!」とか言い出したのは想定外だった。何とか諦めさせたあと、防衛軍の地下施設に籠って様々な距離や角度から“1mのアルミ定規”と“1mm幅に隙間を固定したノギス”を相手に睨めっこさせられたっけな…。最後の数日に至っては、定規とノギスがジリジリと迫ってくるという謎の悪夢を見るくらいうなされたのをよく覚えている。

 だがその甲斐あって、普通であれば5%ほど出てしまう誤差も、俺にかかれば直線、曲線を問わず0.5%以内という精度で測定が可能なのだ。


 そんな魔法界きっての不人気魔法が今、思春期男子の好奇心を満たすために役立つ時が来た!


 対象を視界内にしっかりと補足して魔法を発動させると、重力に引かれて綺麗な曲線を描くたわわな輪郭にライトグリーンのライン……目盛付きの線(スケール・ライン)のベースがしっかりと張り付く。嫌と言うほど叩き込まれた基準尺度が自動的に呼び出され、ライン上に目盛を刻み目盛付きの線(スケール・ライン)を作り上げていく。むろん、この目盛付きの線(スケール・ライン)は魔法発動者以外には見えていないので、秘密裏に測っていることになる。

 目盛付きの線(スケール・ライン)ができ上がると矢印マークが現れ、ライン上を左から右へなぞるように移動する。それに伴い、マークの下を一緒になって移動している数値が徐々に大きくなっていく。やがて、矢印マークが滝川の左脇と左乳房に挟まれる位置で動きを止める。数値も728~735mmの範囲で微妙に変動しているものの、目に見えた増加は停止している。

 おかしい。予想では900mmオーバーの値が出ると思っていたのだが、一体どうして……あぁ!そうか、目視できていない背面の値が測定不能なのか!しかも、良く考えてみれば制服を着たままの測定だから“ブラ”、“Yシャツ”、“ブレザー”少なくとも3枚の特殊装甲が正確な数値を隠蔽いんぺいしているじゃないか!

 なんてこった。やっぱこの魔法、日常では(・・・・)マジで役立たずだ。


 さて、思わぬ勢いで思考が下衆な方向にすっ飛んでしまったが、ほぼ間違いなく巨乳だと判明したこの滝川は、俺とノーマンの幼馴染の一人である。

 げ茶色のストレートヘアを腰まで伸ばし、先端付近を装飾の無いシンプルなリボンで一房に纏めている美少女だ。前髪はおでこを隠す程度の長さで揃えられており、耳の上の髪は前方にらされ胸元まで伸びている。頭頂部付近には無地の白いカチューシャがされており、少女らしいアクセントとして一役買っている。

 冷水器から水を飲む際に、髪の毛を耳に引っ掛けるしぐさが個人的にグッとくる美少女No.1(ナンバーワン)である。

 純日本人女性といった顔立ちをしており、髪型も相まって『鉢巻はちまきと長刀なぎなたが似合いそうだな』と会うたびに思っている。正直、是非ともコスプレして頂きたいところではあるが、このは絵に描いたような一般人だ。オタク(こっち)の世界に巻き込みたくはない。

 しかも巨乳ときたもんだ、たちの悪いカメラ小僧(カメこ)に目を付けられた日には、間違いなく接写せっしゃでローアングルローアングルされてしまうことだろう。最悪、エロ同人みたいな展開になってしまうかもしれない。

 そうならないよう、しっかりと守ってやらねばならないな。…今しがた、バストサイズを測ろうとした下衆が何を言っているんだとは思うが。


「えっと…渉? 大丈夫?」


 …ハッ!しまった、失礼この上ないことに力を注ぎまくってたせいで、反応するのを忘れてた。


「…っと、すまん滝川。ちょっと、思ったよりも顔が近くにあったから、色々と驚いちまってね。 で、コイツだけど、気絶させただけ──」


[渉! 学生寮の10時方向から、そちらに向かって未登録生物反応が高速で接近中! 校舎まで、残り250mを切りましたっ!数はいち!]


「──えっ?!」


「えっ?!何?! …まさかその人、死んで…っ?!」


「あ、いや、それは大丈夫なんだけど……それとは別に、非常に厄介な事が…」


 俺の反応を見て嫌な想像がよぎったのか、滝川の顔がやや青ざめていた。可能な限り笑顔で否定してやったが、かなりぎこちないものになっているだろう。

 だがそんな事より、マチュアからの報告の方が問題である。“形式不明武装多脚砲台ぶそうたきゃくほうだい”ならぬ“高機動未登録生物”が、すぐそこまで接近しているというのだ。このタイミングでの出現となると、敵の伏兵である可能性が極めて高い。


 それにしても、マチュアのセンサーに引っかかってからほんの数秒で250mの距離まで詰めるってどんだけ速いんだよ。魔改造まかいぞうしたバイクにでも乗っているのだろうか、そいつは。

 何にせよ、俺が引き金となってしまったのはほぼ間違いない。原因を作ってしまった以上、俺も本腰を入れて迎撃行動に出るしかなさそうだ。

 恐らく、この“高機動未登録生物”は、どこに配置されていたテロリストが倒されたのかも分かった上で移動しているはず。つまり、ヤツの目的地は十中八九この教室(ここ)である。ドアを開けて入ってきた瞬間に一撃ぶちかまして、悶えている間に催眠魔法をかけてくれる。ただの外傷であれば、死んでいない限り俺の魔法で回復させられるので、仲間にして即戦力として使えるだろう。

 しかし、最初の奇襲では謎の技術を使ってセンサーをすり抜けたくせに、増援に同じ手段を用いないとは慢心したな。来ると分かっている以上、こっちだって反撃の準備ができるというものだ。


 俺はブレザーの左内ポケットに手を入れ、中学時代から一度も使う機会がなかったグロッグ26を取り出す。右内ポケットにはマガジンが2本入っているので、現在装填されている10発とマガジンの20発、計30発撃つ事が可能だ。毎週土曜の夜には、可能な限りメンテナンスするようにしていたので暴発や不発という事はないはずである。

 ノーマンが口を酸っぱくして持つように言ってくる上に、不定期で持ち物検査してくるものだから携帯するのが当たり前になってしまっただけのお飾り武装だったのだが、まさかこんな日が来ようとは…パート(ツー)

 あとは、一発も外すことなく一人ずつ無力化できれば、現在確認されている“残りのテロリストたち”と“高機動未登録生物”を合わせ、ぴったり30発で足りる計算だ。


 …無理ゲー過ぎやしないか、これ。


 追加武装としてテロリストが所持していたAK-47を使えば何とかなりそうな気もするが、これを使うのは非常にはばかられる。多少の異物が混入しようとも動作するという強みがある反面、命中制度が犠牲になっていると言われる代物しろものなのだ。

 敵よりも味方の方が圧倒的に多い俺では、フレンドリーファイアによる犠牲者が出る可能性が高い。

 射撃精度がほぼ100%な“○ュー○東○(ゴ○○13)”や“冴○獠(○○ィーハ○ター)”だったら何とかできるだろうが、俺がこの状況を好転させるとなるとHardモードどころの騒ぎじゃない。NightmareやInfernoもかくやと言った難易度に早変わりだ。

 実戦は数分前が初めてで射撃なんてほぼ2年ぶり、そんな俺が無駄弾を出さずにノーコンテニューで一発クリアするとか…。かの松岡大明神だって諦める事を視野に入れるレベルじゃなかろうか。


 「反撃の準備ができる」などと考えておきながら、わずか数秒でこの残念なお知らせである。実戦経験も無い素人の俺なんぞが、下手に反撃に出たのは軽率だったか。

 だが、仮にテロリストの言いなりになっていたとしても、味方が来てくれる保証は無かったから状況は悪くなる一方だったろうし…。

 いや、悩んでいても仕方ないな。さいを投げてしまった以上、成功率が低かろうが何だろうがやるしかないのだ。

 それにしても、まさか初めから増援を配置していたなんて…。他にどれだけの数が隠れて……あれ?ひょっとして、弾の数足りなくね?

 …まずい、さっさと仲間を増やして対応策を練り直さないと。


 俺は魔法で筋力を強化すると、テロリストのえりを引っ掴んで滝川の前に移動する。俺が銃を取り出したのを見て目を白黒させていた滝川を背中に隠し、有無を言わせぬままテロリスト()を構えてかばう態勢をとった。

 魔法の影響で余計な力が入ってしまい、グロッグ26を持った右手が震える。…ごめんなさい、見栄を張りました。主な原因は、この状況下における不安とストレスです。

 なかなか震えがおさまらないので、盾の肩にグリップを押し付けて無理やり振動を吸収させ、ドアに向かい狙いを定める。発砲音で盾の鼓膜が破れてしまうかもしれないし、“高機動未登録生物”の攻撃で盾が致命傷を受けてしまうかもしれないが、俺たちの安全確保のためだ。致し方のない犠牲として割り切るしかない。

 クラスメイトにはショッキングなシーンを見せてしまうことになるかもしれないが、そこは一般人に死人が出ないタイプの戦闘における(コラテラル・)民間人被害ダメージってことで頭を下げるしかないだろう。最終手段ではあるが、催眠魔法を応用して思い出させないように細工することだってできなくはないのだ。


 それにしても、こういった感じに女子を庇うのは初めてだなぁ…。

 ギャルゲーとか漫画であれば、小中学校時代にガキ大将に絡まれた幼馴染(女子)を庇って恋愛フラグが立つものだが、俺たちの周りは平和だったから何も起きなかったんだよな。まぁ、そこに関しては別に残念でもないのだが、義姉との恋愛フラグも立つことが無かったから、この機会に是非、莉穂姉の前でかっこいい姿を見せたかった。

 とてつもなく失礼な話ではあるが、俺の背中に居るのが滝川であることが残念で仕方ない。


 …いつも通りオタクな理由で残念がっているあたり、思っていたより俺は冷静なのかもしれないな。


[未登録生物反応、高等部校舎に侵入!カメラ映像確認! …これはっ!?何故、()がここにっ?!]


[え?()って──]


 カラララ──


 「──まさか助けが来たのか?!」と問いたかったが、その必要は無くなった。何故なら、くだんの人物がドアを開けて入ってきたからだ。

 静音性の高いスライド式ドアだったが、俺の行動からただならぬ雰囲気を感じて静まりかえっていた教室内には妙に大きく響き渡ったように感じた。


 教室が更なる静寂に包まれる中、その男……いや、少年(・・)は音もなく入ってくる。

 まるでバトル漫画の主人公のような胸筋や腹筋が、黒いタンクトップ越しに存在を主張するボディ。肩や腕にもしっかりと筋肉が備わっているくせに、ガチムチな印象を与えることのない全体的にスマートなフォルム。

 黒い指ぬきグローブとサングラスを装備していることから、厨二病患者から絶大な支持を得そうな雰囲気をかもし出している。だが、タンクトップに迷彩ズボンという姿なので、ミリタリーマニア受けしか狙えそうにない。

 そして、右手には銀色の、左手には黒色の俺が(・・)魔改造をほどこした回転式拳銃リボルバーが握られていた。


 俺がグロッグ26を構えている姿を見て「お?」と少し驚いたものの、すぐに平静を取り戻す少年。

 その少年の手を離れたドアが、映像を巻き戻すかのように自動で閉まっていく。壁の内部に隠れているおもりによるものだ。開ける際にやや力が必要となるが、おかげで閉め忘れはなくなる。テロリストが乱入した後だったのに、ご丁寧に教室のドアが閉じられていた理由がこれである。

 …あのリボルバーは、使いやすさを度外視して頑丈に造ったから凄く重いはずなんだけど、よく握ったままドアを開けられたな。


 俺は今、驚き半分、安堵あんど半分といった表情をしている事だろう。狙った姿勢(エイミング)のまま固まっている俺をよそに、少年は軽く片手を挙げこう言い放った。


「よぅ、BB。実際に会うのは久しぶり」


「…ったく“高機動未登録生物”ってお前だったのかよ。 脅かしやがって!」


 しゃくな話だが、今のやり取りで完全に安堵してしまった俺がいる。盾を持っていた腕からもすっかり力が抜け、そのまま足元へ転がしてしまった。

 背中に隠れていた滝川も驚いてはいるものの、俺の態度から安心感を持ったのか緊張が抜けていくのを感じる。

 さっきまで絶望的と思われた迎撃作戦も、コイツが居る限り確実に成功したようなものだ。


「ハハッ、驚かせちまったか?すまんすまん。 ……あ。今更だけど、ただいま」


 少年が悪びれもせずに謝罪して帰宅の挨拶をしてくる。

 まったくコイツは、こっちの気も知らないで気軽に言ってくれる。さっきまで、本当にもうダメかと思ってたんだからな!

 …まぁ、自分の軽率さをかえりみるいい機会だったけど。


「あぁ、おかえりノーマン。 それと──」


 俺も満面の笑みで返答し──


 パァ──ガッ──ン!


 ──油断したヤツのおでこ(チャームポイント)めがけてグロッグ26を構え直し、引き金を引いた。


 2m足らずの距離だったのでちゃんと命中したらしく、ノーマンの顔が少し天井を向く感じに倒れている。

 おでこからはご丁寧にも煙が漂っており、命中した箇所が一目瞭然となっていた。

 …惜しい、中心よりも18mmも右側にれてしまっているな。狙いが甘かったとはいえ、だいたい1mにつき9mmのズレか…うわっ…俺の射撃精度、低すぎ!


 ちなみに、発砲音とほぼ同時に聴こえた“ガッ”という音は、ノーマンのおでこに当たった9×19mm パラベラム弾がはじかれた際の音である。


「──なんでここに居るのか、理由を聞かせてもらおうか?」

“形式不明武装多脚砲台”ネタが分かる人は、きっと“銀河にほ…エロ”も分かるはず。

分かっちゃった人は、きっと吾輩と同年代ですな。

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