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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第一章 テロリスト襲来
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第21話 - エピローグ ~ラスト・ワン side~

初めて全部通して第三者視点での描写をしました。

たった5000文字にも満たない文章を書くだけで大変だったのに、これを本一冊分、或いはそれ以上書いている人って本当に凄いと感じましたわ…。

というわけで、投稿までめっちゃ時間が掛かったのはこれが原因です。

…あとアラビア語での会話を意識した、右から左への会話も原因の一つですね。間違いなく。

   ─ 2012年4月2日(月) 17:30 ─


「どうやら…俊之は日本に帰るようね……」


 地下深くに備えられた部屋で、その女性は目を瞑ったまま独りごちた。

 部屋の壁面は土や岩がメインであり、区画整備して補強された洞窟といった印象である。装飾品の類は質素で、勤勉な学生の一部屋といった感じである。本棚、机、椅子、簡素なベッドに卓上ライト…目に付くような物はその程度だ。

 逆に、女性の服装はやや豪華な雰囲気である。

 しかし、ヨーロッパ貴族の令嬢のような派手さはない。女性自身はヨーロッパ系の顔立ちをした美女ではあるのだが、彼女の身体は白を基調としたエジプトの女王を思わせるシックなドレスに身を包まれている。

 襟口から肩にかけては、金と青の細かな刺繍が施された肩掛けを身に着けているが、胸元は大きく開いており女性の豊満な肉体を惜しげもなく晒している。その谷間に収まるように、大きなアメジストらしき宝石をあしらったペンダントが輝いている。

 肩掛けの背後からは薄紫色のベールが流れており、その先端は両手首のブレスレットに繋がれていた。身体のラインが分かりやすいドレスであることも相まって、ベールの存在が妖艶な雰囲気を一層際立たせている。


「この行先は……ふふ…好都合だわ!」


 頭に付けられたサークレットが光を失うと同時に女性は目を開け、座っていた椅子から立ち上がると、急いで部屋をあとにした。


「誰か。 誰か居ないかしら?」


 大広間といった空間に移動した女性は、扉を開けると同時に大声で呼びかける。

 すると、落ち着いた雰囲気を持った中年の男性が音もなく女性の前に歩み寄り、うやうやしくこうべを垂れた。


「(?たしまいさなうど体一、様サリア祖教)」


 男性に話しかけられた女性──アリサは、言語が異なる事に違和感を覚え内心慌てたが、すぐに自分が日本語で話しかけていた事が誤りであったことに気づき、アラビア語で命令を下した。


「(すまりあが話 。いさなめ集に間に祖教を員全徒使るいてっ残にぐす、スレガア)」


「(たしまし知承 。っは)」



   ─ 2012年4月2日(月) 17:45 ─


 先ほどの大広間よりもおごそかな雰囲気のある部屋──教祖の間に、使徒と呼ばれる72名の男性がひざまずいていた。集まっている男性の年齢は様々のようで、下は20歳前後、上は40歳以上といった容姿である。

 使徒たちの服装はアリサと同じく、全員白を基調としたシンプルな法衣のようなものを着用している。

 先ほど大広間でアリサに語りかけた中年の男性──アガレスが、71名を代表するように彼女に語りかける。


「(いさ下令命ごとりな何 。たしまい揃員全、様サリア祖教)」


 アガレスの言葉に頷いたアリサは、石作りの玉座のような椅子から立ち上がり、よく通る高い声で問いかける。


「(?ねすまいてっ知は事たれさ倒が織組の後最たいてし闘共とら我、でい戦の日先 。よちた徒使の人27しれば選)」


「(すまりおてじ存、皆 。っは)」


 使徒たちが頷いたのを背後で感じたアガレスが、皆を代表して答えた。

 アリサは満足そうに大きくう頷き、言葉を続ける。


「(すまみ挑をい戦の後最に軍衛防合連界世、り乗名と“ンワ・トスラ”はら我後今、でこそ)」


 途端、使徒たちに戦慄が走り、教祖の間にざわめきが広がる。その中の一人が、慌てた様子でアリサに進言する。


「(──が在存る誇さ強なメラタデういと器兵間人はにら奴、しかし…し)」


「(たしまきてれらせさめ舐を渋苦くなと度幾はに在存の彼 。ルアバ、すまいてっか分)」


 バアルの言葉をさえぎり、彼の言わんとしている内容をアリサが引き継ぐ。一拍置き、使徒たちが待っていることを確認してから話を続ける。


「(──は法方のそ 。すまきでがとこる作を質人、り取を手先の彼は回今、がすで…)」


 アリサの話を聞いていた使徒たちの眼に希望の光が宿り始め、話し終わる頃には「我こそは!」と言わんばかりに作戦への志願者が続出していた。

 もしも、彼女が語った内容を第三者が聞いていれば、彼らの士気が高まった理由に疑問を持った事だろう。

 何故なら、その内容というのが…


・詳しくは伏せるが、協力者から人間兵器に関する情報が入った

・次の目的地に先回りし、人質を作って人間兵器を捕縛しろ

・私の加護を付与した装備を与えるので心配するな


 こういった内容だ。威厳に満ちた話し方で誤魔化していたが、胡散臭い事この上ない内容である。

 しかし、使徒たちは成功を信じて疑っていない。そんな使徒たちの様子を見ながら、アリサは慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。

 その笑顔の下で胸に埋もれたペンダントが蠢く様に鈍く輝いていたが、それに気づく者は誰も居なかった。


 ある使徒は全員で襲撃を掛けると意気込んでいたが、少し落ち着きを取り戻したアガレスに、「全員で向かっては教祖アリサ様が無防備になってしまう」とたしなめられ、少なくとも半数は残るという方針で作戦がまとまった。


「(すまし達通に員全てっ追第次み済が備準、はていつに選人び及戦作いし詳、はで)」


 アリサがそう結ぶと、使徒たちは一礼をして去って行った。



   ─ 2012年4月2日(月) 18:30 ─


「くっ…アガレスめ。 昔から切れ者ではあったけど、こんな時まで実力を発揮する必要はないのにっ!」


 元居た部屋に戻ってきたアリサは、先ほどまでの威厳に満ちた話し方を止めて悪態をついていた。ペンダントを取りだし目の前に掲げながら、鈍く輝いているのを見て効果が発動されている事を確認する。


「ん~…今残ってるのは、間違いなく私に心酔してる思い込みの激しい連中ばかりだから、コレの効果は抜群な筈なんだけどなぁ。 …だからこそ、私の身を案じたって事かしら? でもまぁ、一気に72人が攻めて来たら、いくらあの子たちが強くても手古摺てこずるだろうから、これで良かったのかもしれないわね…」


 「はぁ…」と、ため息をつきながら足を組んで椅子に腰かける。

 日本語が分かる人物がおらず、口調を意識する必要がないという事も相まって、この部屋に居る時は非常に饒舌である。

 アリサが目を瞑り、サークレットに魔力を込めると淡い光を放ち始めた。それと同時に、彼女の脳裏に部屋とは別の景色が映り始める。

 アリサが居る場所から数百km離れた地点にいる少女──マージを介して投影された風景だ。


「あちゃあ、何かの報告中ってところかしら…イケメンではあるけど、オッサンは私の好みじゃないのよね~」


 自分の事を棚に上げ、他人を中年扱いするアリサ。確かに、彼女の容姿や話し方、声に至るまで若々しいものではあるが、実年齢は既に3桁に突入している。

 魔法で若さを保っているにすぎないのだが、既に半世紀近くこの姿を保っているため、真実を知る者は居ない。

 アガレスなどの中年を過ぎている使徒たちに至っては、十年以上見た目が変わらない彼女を見てきたため、「教祖アリサ様の成せる奇跡」と感じており一層心酔する原因になっている。


「仕方ない。 どうせ24時間分の映像は巻き戻しできるし、進展の確認は明日でいいか」


 アリサは目を開けると本棚から一冊のアルバムを取り出し、ベッドに横たわりながらニヤニヤといった表情でアルバムを眺め始めた。

 時折、思いだしたかの様に微笑むことを繰り返しながら、彼女の夜は深けていった。



   ▲▽△▼△▽▲


   ─ 2012年4月13日(金) 11:03 ─


「よしっ! 俊之とあの子は籠月学園の近くに居るわねっ! ……野宿している理由はわからないけど、ある意味好都合ね…急がないと!」


 喜んだアリサは部屋を出て大広間へ向かい、再び教祖の間へ全員を集めた。


「(すまし謝感に事たっま集が皆、ずらわ関もにけかび呼な急)」


「(すまし致とりな何ばれあと令命ごの様サリア祖教、人27ら我)」


 アガレスの答えに微笑みながら頷き、アリサは使徒を集めた目的を話す。


「(──はのるす加参 。たしまち立が途目るす行実を戦作たえ伝日先、がすで速早ばらな)」


 アリサは序列1番のバアルから、30番のフォルネウスまでを、今回の作戦に参加させる事を発表した。

 尚、序列とは名ばかりで、実態はアリサが適当に作った順番で序列を割り振っている。本来であれば、序列2番のアガレスこそが参謀として1番に居るべきなのだが、2番となってしまっているのはそのためである。

 そしてアリサは、この切れ者であるアガレスこそが計画の障害となるため、真っ先に居なくなるよう今回の作戦メンバーとして加えたのである。



   ─ 2012年4月13日(金) 12:00 ─


「(すまり参てえま捕を器兵間人ず必、で艇水潜と器武のこたけ受を護加の女貴 。様サリア祖教)」


「(すまりおてし待期 。ええ)」


 潜水艇のドックにて、バアルが跪きながら宣言し、柔らかな笑みを浮かべたアリサが心にもない返答を返していた。

 全員が乗り込むのを見届け、アクリルガラスの向こう側にある潜水艇が出発するのを最後まで見届けると、残った使徒に気取られないよう静々と自室に戻って行った。


「ぃよしっ! これで一番の曲者が御縄についたも同然ね!」


 扉が閉まるのと同時に、力一杯のガッツポーズをする。黙っていれば妖艶な美女といった容姿のため、言動を含めて非常に違和感を覚える姿である。

 ふと我に返ったアリサは、少し頬を赤らめながら誰も居ないのに咳払いをすると、先日も眺めたアルバムを取り出し椅子に腰かける。


「長かったわ…本当に…。 でも、あと42人…あとそれだけで終わるわ…。 貴男あなたは先に行ってしまったけど、この計画が終われば私もそっちに行ける……だから、もう少しだけ待っていてね、あゆむ…」


 愛おしそうに一枚の写真を撫でながら、アリサはそう呟くのだった。



   ▲▽△▼△▽▲


   ─ 2012年4月20日(金) 06:58 ─


「……まったく…いつまで待たせる気よ。 俊之が向かってから、5時間半も経つっていうのに…」


 他に誰も居ない部屋で、アリサは悪態をついていた。

 使徒たちへ突入命令を出してからおよそ30分後、俊之が突入したことをサークレットを介して見ていたアリサだったが、更にそこから2時間ほど経過したあたりから映像を確認できない状態でいる。

 恐らくマージが、渉の作った防衛システム圏内へ移動した事によって、意図しないアクセスを妨害されているのだろうとアリサは考えていた。

 そして、彼女はまだ知らない事ではあるが、その考えは正しい。マチュアが籠月学園に配備したシステムを使い、水面下で電子機器類の不正アクセス(クラッキング)を含め、魔法によるアクセスも阻止しているため、学園側から連絡がない限りアリサは連絡が取れない状態にあった。


 ブツッ──


 アリサが睡魔と闘うこと数分、ようやく無線機が反応を示した。

 使徒たちが倒され、俊之が魔力を通して通信してきたに違いない…彼女はそう考えると、眠気を吹き飛ばすように大声で文句を放つ。


「ちょっと!連絡してくるの遅すぎるじゃない! こっちは真夜中からずっと連絡が来るのを待ってたのに! 何でもっと早く連絡を寄越さないのよ?!」


 およそ一年の付き合いとなる三人のファーストコンタクトは、こうして幕を開けた。

しばらくは、毎週金曜日か土曜日の投稿になると思います。理由は、前回のあとがきをご参照のほど。

こんな、ヤマもオチもイミも無い感じの…まさにヤオイな作品にアクセスして頂いている方に対し、「暇つぶしになれば」とか始めに書いておきながら、暇つぶしにもならない更新頻度で面目ないです。


あと、渉が「あーでもない、こーでもない」といった具合に色々と悩んで謎解きしようとするのは、この章が最初で最後になります。

第二章以降は、「もう正体を隠す必要ないし、ノーマンのごり押しを頼りに出たとこ勝負しよう」といった感じに開き直った行動に出る予定ですので、今までよりかは話が進み易くなる……と思います。

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