第20話 - エピローグ ~学園 side~
投稿予定を守れなかった…。
ついでに、第一章も終わらせられなかった…。
本当に、申し訳ない(メタルマン感)
─ 2012年4月21日(土) 15:30 ─
あの謎の多い戦いから一夜明け、昨日の遅れを取り戻すための授業方針が発表された。GWを潰して授業の日を一日だけ取る…という事はなく、しばらくは土曜日の授業時間を延ばし補填するという方針で決定したようだ。
尚、この学園のGWは、間に平日があろうと丸っと一週間休みである。全寮制という制限があるせいで、なかなか実家に帰れない生徒が多いので、そのための措置といった意味合いが強い。
実際、この長期休暇既に実家に帰るための航空券や新幹線のチケットを準備済みだったという人が、かなり多かった。先生方もその辺りは学生当時の記憶があるので、実家帰りを優先してくれたのだろう。そういったわけで早速、本日から午後に2限分追加して授業が行われ、今は放課後である。
卒業後、ゴタゴタに巻き込まれる事の多い魔女たち故か、こういった想定外の出来事への対応の速さは素晴らしいと思うね。
まぁ、生徒からすれば、昨日の今日で精神的に疲れているのに、授業が長引くのは面倒だっただろうけど。
ノーマンとマージちゃんの処遇だが、4月の頭……ノーマンから連絡をもらった翌々日には、俺から理事長に話を通し、偽装した書類も手渡し済みだったので、異例ではあるが急遽2-Bに編入という流れになった。
本日は授業数が増えた上に、「クラスメイトが増えるよ!やったね、た○ちゃん!」状態だ。とりあえず、俺の席の隣にノーマン用の席が設けられ、マージちゃんも滝川の隣の席に座る運びとなった。
もともと俺たちの隣に居た生徒については、申し訳ないが本日は一番後ろの席に移動となっていた。…本当に、申し訳ない。
それはともかく、放課後になった今、俺は学園南に位置するプライベートビーチに居た。ノーマンとマージちゃん、ついでに理事長を従えて…。
ちなみに、学園西の崖下には“ヒリゾ浜”という伊豆独特の観光スポットがあり、晴れた日の休日は家族連れで賑わったりする。そこから南東に歩き、切り立った岩山を気合と根性で登りきるか、海側から回り込めば、今俺たちがいるビーチにたどり着くことができる。
とはいえ、ヒリゾ浜は学園北北西に位置する中木港から船で来るくらいしか上陸できない場所なので、観光協会との話し合いで観光客にこちら側のビーチに無理に侵入しないよう徹底してもらっているから、部外者の立ち入りは基本的にあり得ない。
そう、基本的にはあり得ないのだ、今回みたいに学園側が呼び出さない限りは…。
「それにしても、来過ぎじゃないか? たかが30人の受け渡しにしては…」
「いやいや、BBが敷いた監視網を抜けて侵入したテロリストだからってことで、実行部隊の面々が割とマジで警戒に当たらないと危険って判断したみたいだぜ? 本当はもっと大がかりな編成になる予定だったとも聞いたから、頑張って少数にした方だと思うぜ。 ちなみに、視界には見えてないだろうが、もっと沖の方では等間隔に艦隊を広げて、たまにアクティブソナーまで使ったりして監視体制バリバリらしい。 小笠原諸島周辺も、念入りに調査するとか張り切ってたっけな」
「一般漁船に迷惑かかってなきゃいいけどな…」
今現在、南の沖に3隻の艦がテロリスト受け渡しのために横須賀基地から出張してきてくれている。まさかとは思うが、基地の防衛そっちのけで稼働艦を全部太平洋に浮かべてねぇだろうな…。
尚、俺は魔導具を創っては防衛軍に試作品を提供するという事は行っていたが、実は軍の持っている兵器についてはあまり詳しくない。だいたい、用途と寸法と形状を聞いて、創るだけ創って渡して終了。他はノーマンとバカ話したり…という事しかしていないので、軍関係者としてはかなり特殊な位置に居るとは思う。
テロリストが持っていたAK-47を一発で見抜いたのは、NI○TE○D○64の某スパイゲームで散々お世話になったので形状を覚えていたという珍しい例と言える。これは師匠の持っていたお古だったので、W○i版ではなかったのが残念でならない。
そんなわけで、視界に入っている艦の名称は分からなかった俺だが、ノーマンのヤツがさらりと回答してくれた。編成内容は、ミサイル護衛艦「はたかぜ」型の“はたかぜ”。護衛艦「むらさめ」型の“ゆうだち”。輸送艦「おおすみ」型の“おおすみ”の3隻とのことだ。
さすがの俺でも、輸送艦の外見が非常にシンプルだったので、他の2隻とは違う事は分かった。まぁ、明らかに武装が見受けられないから違いが分かっただけで、興味とかは沸いてこないのだが…。
俺の横でウキウキしているノーマンには申し訳ないが、その昂ぶりは俺にはわからねぇや…。
などと考えていたら、輸送艦おおすみからホバークラフトめいた物が出てきた。こちらも、ノーマンの説明によると“LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇”というものらしい。軍用っぽくゴテゴテした形状ではあるが、俺にはホバークラフトのイメージが拭えない。
よく見ると、中心部に巨大な四角いテントのようなものが設置されている。ノーマンによると、人員輸送用のモジュールという話だ。
ヘリコプターのような爆音を響かせつつ、物凄い水しぶきを上げながら25mプール大の揚陸艇が徐々に近づいてくる。ついには、爆音と砂を巻き上げながらビーチに横付けするような形で上陸した。さきほどまでパンパンに膨らんでいた底面のゴム部分があっという間に萎んでいき、前面のフェンス部分がスロープ状に下ろされる。
責任者に挨拶をするため、俺とノーマンとマージちゃんが前に出て出迎えようとしたのだが……。
「「「「「「ノーマン! マージ! それに渉だ! 生だ!生渉だ!ヒャッハー!」」」」」」
「スコット、ラング、ビックス、ウェッジ、ダニーにグレッグまで?! えっ?何で?海軍じゃなくて陸軍の所属だったはずじゃ…。いやいや、それ以前になんで日本の艦に乗ってるの?部隊どころか国が違くね?」
物凄い勢いで降りてきた6人のマッチョ軍団に、俺たちは囲まれてしまった。……いや、間違えた。囲まれたの俺だけだわコレ。
短めに刈りそろえられた髪型が似合う、爽やかスポーツマン系な金髪碧眼のスコット。
完全坊主頭でガタイの良い、プロレスラーと言われても違和感のない黒人のラング。
刈り上げの入ったベリーショートヘアが特徴の、金髪碧眼双子のビックスとウェッジ。
黒髪のソフトモヒカンで、健康的な小麦色肌をしたダニー。
髪型よりも、着ているTシャツに目が行ってしまうグレッグ。本日は“萌”と書かれたものを着用。
どいつもこいつも皆イケメンであり、流暢に日本語が話せるアメリカ出身の人物である。俺も彼らとは2年前から面識があるのだが、その経緯はノーマンが夜中に遊び歩いて不良にならないよう見張る…というアホみたいな大任を買って出てくれたからという理由からだ。
防衛軍上層部とノーマンを除き、俺の姿を知っている数少ない軍人仲間である。まぁ、姿を知っていると言っても、今まではビデオチャットだけだったので、面と向かって会話するのは今日が初めてだ。
「こらこら君たち。テロリストの護送を買って出てくれたから連れてきたというのに、私ら上官より先に特佐たちに挨拶するとは如何なものか?」
「「「「「「ハッ! 失礼致しました!」」」」」」
スコットたちの後ろから、フランクな雰囲気を纏いつつも威厳のある声が響く。途端、モーゼが割った海のようにスコットたちが二人一組で向き合うように道を作り、敬礼しながら声の主たちを俺たちに導いた。
奥からは、30代後半から40代前半といった中年男性が2人こちらに歩いてきていた。どちらも精鍛な顔立ちのダンディな人である。佐官クラスの制帽をかぶっているので、輸送艦と護衛艦の艦長かもしれない。
「始めまして、伊藤特佐、野間特佐、マージ特尉。私は輸送艦おおすみの艦長、渡瀬中佐です。 そして私の隣に居らっしゃる方が──」
「今回特別に編成された艦隊の司令官、草壁大佐です。はじめまして」
「はじめまして、草壁大佐、渡瀬中佐。既にご存知でいらっしゃるようですが念のため…私は──」
俺たちは揃って敬礼でお迎えしつつ、お互いに自己紹介を済ませた。先ほど、スコットたちを落ち着かせた人が渡瀬中佐で、口数の少ない寡黙なダンディが草壁大佐だ。
しかし、まさか艦隊司令官がわざわざ挨拶してくれるとは驚きだった。どうやら、沖中将が信頼している大佐だったらしく、「確実に事を済ませるために、どうか…」と頭を下げられたらしい。上官が疲れた表情で頼んできてしまったら、忙しくても来なきゃならんわな、そりゃ…。ご苦労様です。
その後の展開は早いもので、暗示をかけられて大人しくドナドナされるテロリスト30人を輸送ユニットに詰め込み、完了のサインを書類に書き込んで手続き終了となった。まさに電撃上陸作戦と言えるほどの早業である。
何でも、石廊崎の熊野神社付近から艦隊が一般人たちにガン見されているらしいので、早めに済ませたいとのこと。まぁ、さすがに目立つもんね…。
「伊藤特佐。テロリストが乗ってきたというゾディアックボートの受け取りと、潜水艇の牽引はまた後日とさせて頂きたいので、申し訳ありませんが、しばらくはそちらで管理して頂けるようお願します」
「渡瀬中佐。その件ですが、昨晩の内に私と野間の二人でサルベージを済ませておりまして…。現在は、空間転移魔法を使い、どの国にも属さない無人島に全て停泊させています。横須賀基地周辺で受け入れ準備が整い次第、私が同様の方法にて転送しようと愚考しておりましたが如何致しますか?」
昨夜、夕飯を食べ終えた俺たちはテロリストを大講堂に集め、全員が催眠状態になるよう調整していた。お漏らしされても困るので拘束は解いたが、魔法陣の刻まれたAK-47と光学迷彩ベルトは取り上げた状態にして大講堂で待機するよう命令したのである。
大講堂内部にも監視カメラが複数台設置されているので、俺たちが就寝している間の監視は警備員棟のモニタールームとマチュアに丸投げだ。今後の監視体制における、警備員とマチュアとの連携の試験運用も少しだけ兼ねている。
そんなわけで、寝る前の下準備を済ませた俺たちは、テロリストたちにどういう経路で学園に侵入したのかを問いただした。その際、ゾディアックボート3艇を使って学園近くの入り江に上陸したという情報を引出し、沖合に教祖アリサの加護が付与された潜水艇が停泊しているという情報も得られたのだ。
ゾディアックボートはすぐに見つかったのだが、発見した時の最初の感想は「1艇あたりに10人乗ったら狭そうだな」だった。まぁ、俺が使うわけではないのでどうでもいい話だったが…。
それよりも問題だったのは、潜水艇の方である。教祖アリサの加護…という名の魔法陣だったのだが、どうやらそれは光学迷彩ベルトと同様の原理で周りから見えなくさせるという効果らしいのだ。おかげで、飛翔魔法の魔法を駆使して30分強もの間、海の上を飛ぶ羽目になった。
周りから見えなくするという効果ではあるが、完全に透明化させているわけではない。波のある水面では、魔法陣の効果が発動している水面の動きと、その周囲の波の動きに違和感を覚えるほどの不一致が見受けられるのだ。まぁ、地上を歩いている時と同様、台所の黒い悪魔が動くような音が海面から聞こえてきたという違和感も手伝って早めに見つかったとは思う。
とまぁ、そういった経緯もあり、遊覧船や漁船が接触して事故になるのを避けたかった俺は、ゾディアックボートも含め、まとめて無人島に置くことにしたのだ。
「……ハッ。失礼しました。 あまりに素早い対応だったもので、一瞬理解が追いつかず…。それにしても、噂通りの手腕ですね。 後ほど、潜水艇の詳細データを頂けますでしょうか。大きさがわかれば、こちら側でも転送先の見積もりが行いやすいので」
「承知致しました。後ほど沖中将経由にて横須賀基地にデータを転送させて頂きます」
「宜しくお願いします。 …さて、そろそろ引き揚げ準備に入る。皆、伊藤特佐に話があれば今のうちに済ませる様に!」
渡瀬中佐がそう言うや否や、スコットたちが俺の周りに集まってきた。
「「「「「「渉!連絡先交換を頼む!」」」」」」
「あいよー……って、ノーマンのは要らないのか?」
「「「「「「もう交換済みだからな」」」」」」
「OK把握……じゃあ皆、赤外線通信の受信準備に入ってくれ。…ん?草壁大佐?どうかなさいましたか?」
「その…私も、伊藤特佐と野間特佐の両名と連絡先交換をさせて頂いても良いだろうか?」
話しかけるタイミングを窺うように俺とノーマンをチラ見していた草壁大佐に問いかけたところ、何とも可愛らしいお願いをされてしまった。キュンとは来なかったが、所謂ギャップ萌えを肌に感じてしまったでござる。
もちろん、俺もノーマンも断る理由が無かったので互いに目線を合わせてから頷き合い、こう答えた。
「「はい、喜んで」」
「…失礼。ついでで申し訳ありませんが、私も宜しいでしょうか?」
……渡瀬中佐、貴方もか。
こうして、俺たちの初めての共闘作業は、犠牲者無しの完全勝利にて幕を閉じた。
─ 2012年4月21日(土) 16:25 ─
「ふぅ…結局、私は何もすることがなかったわねぇ…」
徐々に夕焼け空を背景に、沖合から離れていく艦隊を眺めながら空気化していた理事長がポツリと溢した。
「でも、学園の最高責任者である理事……由子お姉ちゃんが居なけりゃ、対外的には俺が好き勝手出来る様に思われちゃうからね。由子お姉ちゃんが近くで見ていてくれないと…」
「理事長」と言おうとしたら、無言の圧力がかかったのでとりあえず「由子お姉ちゃん」と呼んでおいた。どうやら、ご満足いただけたらしい……まさか、公的な場面以外では今後ずっと由子お姉ちゃん呼びが強制なのだろうか…。
「あら?最後の言葉はプロポーズかしら?」
「いいえ、ケ○ィアです」
「おーい、BB。イチャイチャしてないで俺にも早速魔法の特訓を頼むわ。早く飛翔魔法とか空間転移魔法をマスターしときたいからさ」
一昔前のヨーグルトもどきのCMみたいな対応をしていたら、ノーマンから魔法の特訓の催促が入った。今後、籠月学園で進級、進学するに当たって、魔法を自在に行使するのは必須ではあるが、「できれば楽に、最低限の努力である程度の成果を出したい」というスタンスのノーマンにしては珍しい姿勢である。
「いや、イチャイチャはしてねぇって。 それにしても、ノーマンやる気満々だな。教え甲斐があって良いことだが、使いたい魔法は王道とも言える火炎魔法や治癒魔法じゃないんだ?」
「あぁ、さっき言った二つと光学迷彩ベルトがあれば、洗濯して干された女性用下着を間近でしっかり観察したり。女子更衣室で深呼吸したりが可能になるからな!」
「OK。その前にノーマンには使っておかなきゃいけねぇ魔導具があったな、魔法の特訓はそれからだ」
俺は、ラスト・ワンへの対応策よりも、制約魔法の魔導具をいち早くノーマンに使わせなければいけないという使命感に駆られるのだった。
次話は今週中には確実に投稿させます。
そして、次こそ本当に第一章完結です。
これが終わったら俺、別に考えていたハイファンタジー系の作品も書き溜めて投稿するんだ。




