第19話 - 情報提供元の正体
何とか、2日以内の更新ができた…。
内容的にはあと1話で第一章が終われそう…まだ書き溜めも出来てないから何とも言えないけど。
─ 2012年4月20日(金) 14:27 ─
「さてと、マチュアの戯言は置いといて。教祖アリサとのやり取りで気づいた点を挙げていこうか」
「本気なのに…」
本気だから余計に性質が悪いんじゃないか…。
マチュアの呟きを聞き流した俺は、ノーマンと共に考えを巡らせることにした。とは言っても、現時点で気付いた点をお互いに述べるだけだが…。
「はい、BB。 俺が最初に思いつくのは、何と言っても日本語を話した点だ。テロリストたちはアラビア語しか話していなかったから、さすがに驚いたしな」
まずはノーマンが挙手をしながら意見を出してくる。
どうでもいい話だが、“挙手をしながら意見を言う”って、“ノックしながらドアを開ける”と同じくらい不毛な何かを感じるのは俺だけだろうか。
「確かに、俺たち二人して開口一番で驚かされたな。 …じゃあ、俺は『真夜中から待ってたのに』という文句を言っていた点から、6~9時間くらい遅い地域に居るものと考えられる…ってのを挙げておこうかな」
「ほぅ、そう考える根拠とは?」
ノーマンがサングラスをキラリと光らせながら問いかけてくる。俺も負けじと、伊達メガネのフレームを光らせて答える。レンズが無いからフレームしか光らせられないのが本気で悔しい…。
「俺が最初にぶっ倒したテロリスト“ブネ”から、精神感応魔法で聞き出した情報というのを覚えているかね?」
「あぁ、教祖自らポンコツ銃器と光学迷彩ベルトを渡してくれた…とか何とか聞き出したあれか」
「そう、それ。 んで、その時にこうも言ってたんだよね。『学園に侵入する直前に教祖アリサ様から“人間兵器はまだ到着していない”と通達があった』って。 つまり、それからずっと教祖アリサは連絡を待っていたはずなんだ。 学園が制圧開始されたのが午前8時10分頃からだから、通達があったのは午前8時前後と推定できる。その時点で真夜中……だいたい“前日の午後11時前後から、本日の午前2時前後”だったと考えれば、さっき言った時差くらいかな?ってね」
「なるほどな。 で、真夜中からずっと待っていた連絡ってのは、俺たちからのコンタクトだった…と。『意図せずこんな地位に祀り上げられた』って言ってたくらいだし、俺たちに勝って欲しかったのは本心なんだろうな。 はた迷惑な話だから、是非とも防衛軍に自首しに行って欲しいんだが」
「いいや、72人居る…えーっと、側近?って言えばいいのか? そいつらに止められて、仕方なくノーマンに食って掛かるようシナリオを組んだんじゃないの? じゃなきゃ、こんな雑な作戦しないんじゃないか?」
「そうか? その割にはBBが仕掛けたセンサー類を潜り抜けて、視覚的にも見えなくなるような凄いベルトを用意するとか、ちゃんとこっちのセキュリティ対策抜群だったと思うんだが」
「確かに…。自滅させたいだけなら、わざわざ侵入させる手助けをする必要もないよな。 …もしかして、俺が懐に入られた場合に、ちゃんと撃退できるのかテストしてたのか? ノーマンだけじゃなく、俺の本名まで知ってたくらいだし……いや待った」
どうして、ここにノーマンが居ると知っていたんだ?直前に通達した際、ノーマンはまだ学園に居ないとテロリストたちに言っているのだから、まず最初に俺の名前しか出さないはず…。
「ん?どうした、BB?」
「…そうだよ。やっぱおかしいんだよ。 ノーマン覚えてるか?教祖アリサが『“俊之”ではなく“渉”の方だったのね』って言ってた事」
「あぁ、言ってたな。でも、“師匠”から情報提供されていたのなら、知ってても不思議じゃないだろ」
「ああ、うん。俺とノーマンの本名やら魔法陣やらの情報提供元については、師匠で確定だ。一体何故そんな事をしていたのか、異世界まで追いかけて引っ叩いた挙句に口を割らせるから良いとして──」
「えっ?!BB、異世界に行けるの?!」
「──あぁ、師匠が作ったゲートがあるから、そいつにちょいと手を加えて…って、それは置いといて。 問題なのは…ノーマン、お前が無線機で連絡していたと思われていた事だよ」
「まぁ、今まで俺がテロ行為を鎮圧して回ってたから、今回も全滅させてるのは俺だと思ってたんじゃないの?」
「いいか? 教祖アリサは突入開始前のテロリストたちに、『ノーマンはまだ学園に到着していない』と通達しているんだぞ? お前から連絡するとは普通考えない筈だろ? 逆に、お前が俺と一緒に居る事を驚く側に居なきゃおかしいんだよ。 だいたい、俺だってお前がすぐ近くでキャンプしてた事に気づいていなかったくらいなのに、なんで教祖アリサの方が“ノーマンが居て当然”みたいな反応しているのさ? おかしいと思わないか?」
「……まさか、俺の行動がバレていた…だと…? 軍事衛星のハッキングか?」
「いんや違う…だけど、そうであって欲しかったな」
「その言い方を見るに、BBには答えが分かっているみたいだな?」
「まぁね。 じゃ、答え合わせついでに菜……いや、マジカルゆかりんの部屋に行こうか。マージちゃんの引き受けをお願いしたいし。 マチュア、莉穂姉たちはまだ食堂にいるの?」
「はいはい、まだ食堂で渉や俊之をどうするか、私抜きで絶賛話し合い中ですよ。 ふーんだ」
不貞腐れるマチュアに苦笑い気味に礼を言いつつ、ノーマンを引き連れてマジカルゆかりんの部屋へと向かった。
─ 2012年4月20日(金) 15:04 ─
「お? BB、どうやら和平条約の内容が決定したみたいだな」
「全員日本出身なのに和平条約って…戦国時代じゃあるまいに…。 じゃあマジカルゆかりん、そろそろお願いします」
「まったく、いつかまとめて貸しを返してもらうからね」
現在、俺たちは2F食堂に隣接しているエレベーターホール…の観賞用植物の後ろに身を潜めている。
「いいですとも…と、言いたいところだけど、お手柔らかにお願いしやす」
「考えておいてやるわ…。じゃあ、行ってくるわね」
席を立った理事長と入れ替わるようにして菜月先生が現れ、4人の注目を集める。
莉穂姉は凛とした雰囲気があるため、「伊藤さんに見られていると思うと緊張する」と言う生徒も多いというのに、菜月先生は堂々としたものである。その堂々とした姿に、「いつもの紫ちゃんとは思えない」といった感じに滝川が驚いていた。
ちなみに、いつもの菜月先生というのは“トテトテといった感じで歩く、そしてコケる、赤くなる”である。あれを見ると、ちょっとロリコンの気持ちが分かる気がするんだよな。まぁ、それでも俺は莉穂姉一筋だけど。
「──よろしくね、二番目のお弟子さん。 あ。それと、今後魔法の訓練をする時は、私の事は“マジカルゆかりん”と呼ぶように…ね」
尚、滝川が驚いている通り、現在の菜月先生はかなり無理をしている。基本、あの人はドジっ娘の恥ずかしがり屋であり、何もないところでコケるというスキルを持った尊いキャラなのだ。
魔法の先生として活躍できるという唯一のアドバンテージを護ろうと、初見の印象を良く見せたいがために歩き方から態度まで頑張って演じていたのである。
恥ずかしがり屋の菜月先生が莉穂姉の前で堂々としていられるのも、マージちゃんへの印象付けのために周りがよく見えていないからこそできる芸当である。
さて、今回は何分持ちこたえられるだろうか。
ちなみに、教室で初めてノーマンに紹介した時に、俺に対しておしおきしようとしたのも、ノーマンに「自分は渉より偉いのよ。舐めると火傷するわよ」という事を誇示したかったからである。まぁ、ノーマンがノリノリで足を舐めるといったせいで3分と持たなかったわけだが。
余談だが、俺が初めて菜月先生と会ったときは、1分と持たなかった。
俺に向かって「魔法の修行をしてあげるわ。付いて来なさい!」と啖呵を切って歩き出した直後、顔面からコケたのである。ぶつけた事と恥ずかしさとで真っ赤になりつつ、涙目で自分に治癒魔法を使う姿はロリコンじゃなくてもキュンとくるサムシングを感じたっけな…。
自己紹介をして自然な感じに握手を求める菜月先生に、マージちゃんが応えて握手をする。それと同時に魔法陣解析魔法が発動し、マージちゃんの身体に光の帯が這うように広がり、そして菜月先生の手に収束していく。
他の3人が何事かと驚くが、あっという間に収束するので詳しくは分かりかねているようだ。それもそのはずで、魔法陣解析魔法は籠月学園でも大学に進学するか、高等部卒業試験の際に情報開示される魔法である。美希姉の居ない今、高等部に在籍している3人では何をしたのかは分からないだろう。滝川は教室で見ていたので、何らかのサーチ魔法だと勘づいているかもしれないが…。
「うん。それじゃ、挨拶も済んだことだし、早速部屋に行きましょうか。 こっちよ、案内するわ」[渉の睨んだ通り、髪の毛に隠れているけど頭に転送系の魔法陣の反応があったわ。 ただ、精神系の魔法による意識支配はされていないから、操られるといった事はないわ。全て彼女の自由意思で動けている]
[了解。ありがとう、マジカルゆかりん! じゃあ、俺たちはバレない内に撤収するわ]「よし、情報は手に入った。莉穂姉たちに感づかれない内に撤収しよう」
「あいよ」
2Fに点在する観賞用植物の陰に隠れながら、莉穂姉たちの動きに注意しつつスパイゲームのように階段へ移動していると、突然エレベーターホールで莉穂姉とマージちゃんの動きが止まった。
「渉の匂いがする…」「俊之の匂いがする…」
「「「!?」」」
俺、ノーマン、菜月先生の声にならない悲鳴が重なる。「バレたか?!」と…。
「あれ? そんな所でどうしたんですか?エレベーター来てますよ?」
「あ…あ、あらありがとう滝川さん。さ、二人とも、滝川さんたちも待ってる事ですし、行きましょう。さあさあ」
滝川のくれたチャンスに全力で乗っかる菜月先生。俺に至っては「滝川、マジGJ」と心の中でサムズアップ中である。
「「え~…でももう少しだけ」」
「あ、あとで本人たちの部屋に行けばいいじゃないですか。いくらでも嗅ぎ放題ですよ?ね?」
[ちょ…菜月先生!何余計な事言ってるんですか、俺たちまだ食堂横に居るってのに!]
[仕方ないじゃない!ってか、マジカルゆかりんって呼びなさいよ! 何なら、今ここで嗾けても私は一向に構わないわよ?]
[ごめんなさい。私が悪うございました、頑張って階段を猛ダッシュします]
「ん~、そうすると抜け駆けしたとか言われそうだし…。 でも、部屋の外から嗅ぐ分には問題ないだろうから、それで我慢しようかしら」
俺と菜月先生が精神感応魔法でやり取りしていると、莉穂姉が代替案を言い出してエレベーターに向かっていった。
何とかバレずに済んだか…。でもまぁ、部屋に転がり込んでくるって事はなくなったっぽいが、念のため急いで戻るとしよう。
─ 2012年4月20日(金) 15:13 ─
魔法を駆使して全力で身体強化した上での全速力階段上り。エレベーターよりも早く13階分駆け上がり、なんとか自室に戻ることができた。
さすがのノーマンも「ふぃ~、疲れた」と横で呟いている。いや、俺はベッドに横たわって「ぜぇ…はぁ…」しか言えてないんだけどね……神力で身体強化していたようだが、それにしたってマジ化け物だわコイツ。
「ふぅ…。で、BB。あの様子だとマージはシロと見て間違いないのか?」
「はぁ…はぁ……ふぅ…あぁ。少なくともスパイとして操られているって線は無くなった。 ノーマンの動向については、恐らくマージちゃんの頭に刻まれている転送系の魔法陣で、映像データとして教祖アリサが確認できる状態だったんだろうな。だから、お前が助っ人として駆けつけていた事を知っていたんだ」
「なるほどな…で、マージはどうする? …上層部に連絡して処罰を仰ぐか?」
ノーマンが少し緊張した声色で問いかけてくる。本人が意図していなかったとはいえ、マージちゃんは敵側に映像情報を駄々漏れさせていたのだ。最悪の場合、軍の機密漏洩をしたという理由で極刑という事も考えられる。
「まぁ、普通に考えればそうなるだろうな」
「そうか…」
「でも、現時点でマージちゃんがそういう状態だったという事実を知っているのって、俺とノーマンと菜月先生だけなんだよね。 それにさ、情報の開示については、沖中将から『全て君の一存に任せる』って言われたの覚えてる? つまり、開示するのもしないのも、俺の一存で決められる状態なんだよねぇ」
「BBそれって……いやでも、アレはあくまで学園側への情報開示に於いてって意味だろ?! バレたらBBが処罰される側になるぞ!?」
おぉ…ノーマンがガチで焦っておる。男色の趣味は無いが、純粋に身を心配されるのは男女問わず嬉しいもんだねぇ。
まぁ、確かに今の理屈は完全な屁理屈だからな。バレたら「お前たち、おしおきだべぇ!」って勢いで何されるかわからない。
「まぁ、確かにそうかもしれないけど、よく考えてみ? 沖中将からは“学園側に説明する場合に限り”とか“本日発生した襲撃の件に関しては”といった条件は言われてなかったんだよ? 加えて言うと、上層部の総意とも言っていたんだぜ? このミスについては、詳細を確認しなかった俺にも責任があるし。軍の存続のために俺をトカゲの尻尾切り要員にしたせいで、細かな指示を出し忘れた上層部にも責任がある。 要するに、仮にバレたとしても、マージちゃんが処罰されるかもしれなかった内容より、遥かに軽い処罰で済むハズなのさ」
「BB…ステキ!抱いて!」
「嫌だ」
「俊之、抜け駆けは許しません。 もし、押し倒すそぶりを見せたら、大至急警報を鳴らしてこの部屋に人を呼びますからね!」
「すまん、マチュア。嬉しくって感極まっただけの冗談だ。 でもまぁ、何かお礼がしたいのは確かだからな。BB、俺にできそうなことはないか?何でも言ってくれ」
「ん? 今“何でも”って言った? それじゃあ──」
─ 2012年4月20日(金) 18:33 ─
「~~~ッ…」
「うむ。これは…なるほど…なかなか…。硬い中にしっとりとした柔らかさも備えていて、引っかかることも無くサラリとした肌触り…素晴らしい」
風呂上りの上気した肌を更に赤くさせたマージちゃんの耳と尻尾を、夕飯時の賑わう食堂内で思いっきりもふる俺の姿がそこにあった。もちろん、マージちゃんも了承の上での行為だ。昼間に失礼な事を言いまくった件の謝罪と、軍上層部に事実を隠してくれたお礼という事で目一杯もふもふさせて頂いている。
尚、既に触り始めてからカップラーメンができ上がるくらいの時間もふもふしているが、これはマージちゃんの頭に刻まれている魔法陣の解除を周りにバレないようにするため、致し方なく…本当に致し方なく、じっくり触っている風を装っているのだ。
いやー、なかなかしっかりした魔法陣だからなー、どうしても時間がかかっちゃうよなー(棒)…とかアホな言い訳を考えつつ、これで解除完了っと。
「ふぅ…。実に良い毛並でございました。ごちそうさまです」
「うわ~ん。俊之ぃ、渉に穢されたぁ。慰めて~」
「はいはい…。 で。BB、こんなんで良かったのか?」
俺の手から逃れた瞬間、すぐにノーマンの胸に飛び込んで甘え始めるマージちゃん。俺の方をチラっとみながら、軽く舌を出してアカンベーをしていらっしゃる。
ちくしょう。やっぱこの娘、俺の事が嫌いなのか。かなりショックだ。動物好きとして。
「あぁ…うん。まぁ、最後の最後でかなりショックな事言われたけど、久々に動物をもふもふしてるみたいで癒されたわ」
「そうか、なら良かった」
そんな俺たちのやり取りを、陰からずっと観察していた二人組が居たという事に、その時の俺は気付けていなかった…。
「「……なるほど、私たちにはアレが足りないのね…」」
後日、猫耳やらウサギ耳やらタヌキ耳やらに尻尾まで装備した莉穂姉、滝川、理事長がそれぞれ俺に絡んでくる事になるのだが、それはまた別のお話。
今週中にはもう一話投稿しておきたい…。




