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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第一章 テロリスト襲来
15/141

第15話 - ラスト・ワン

前回、今回、次回ともに説明回です。

今回はいつもより短め。

   ─ 2012年4月20日(金) 12:55 ─


 人数が多かったこともあり、大講堂から人がはけるまで数分を要した。今はサドンデスタイムのお知らせを送った幼馴染たちと合流し、地味に大所帯のまま教職員室に来ている。


「あれ? BB、食堂に行くんじゃねぇの?」


「あぁ、行くよ。ただし、コイツらのリーダーが持ってる無線機を…んー…奪ってから…なっ! ふぅ、やっと取れた。ちょいとキツく縛りすぎたな」


 俺はスズ○ン○ープとテロリストリーダーの体に挟まれた無線機を引き抜き、すぐさま魔法陣解析魔法マジック・アナライズを使う。もし、この無線機に魔方陣による魔力通信機能が施されていなかった場合、ノーマンたちがアンブッシュしていた地点にすら届か怪しいと感じるほどのコンパクトな代物なのだ。

 本当に教祖様と通信が可能であるのなら、必ず魔法陣が刻まれているはずだと思い調べてみると、やはり魔法陣が刻まれていた。刻まれてはいたのだが…。


「本当に何を考えているんだ、コイツらの教祖様ってのは…」


「なぁ、BB。教室でAK-47を調べてる時もそうだったが、今その無線機にも光の波紋みたいなのが広がって、BBの手元に収束していってたよな? あの時みたいに、何か分かったんじゃないのか?」


「あ~…まぁ、この無線機に刻まれた魔法陣については分かったんだが…。何と言うか、魔法陣の効果を知れば知るほど、教祖様とやらの目的がさっぱり分からなくなるというミラクルが発生していてな…まぁ、移動しながら説明するわ。 …っと、そうだった──」


 思わず漏らした独り言に、ノーマンが興味津々といった感じで教えて欲しそうにしてくるので、魔法陣の効果について歩きながら説明することにした。だがその前に、ついでだから元・気絶テロリストも縛って教職員室に転がしておこう。


「(ぞうらもてせさ束拘がいなます、様いなせらが怖を者係関園学。労苦ご力協、でま今──)」


「(知承)」


 なんか、コイツの反応がだんだんと某ゲームのおやびんみたいになってきたなぁ。


「(わぶ呼てっ“ーゼンガ”をとこの前お、はらかれこ。っしよ…)」


「(ろしに名のそ、らなぶ呼。だのるあが名ういと“ネブ”たっ賜りよ様サリア祖教、はに俺 。ろめや、いお)」


 もう呼ぶ機会もないだろうと思い勝手に呼び名を決めたら、普通に名乗られてしまった。それにしても、ブネか…まるで“○ザ○さん”のお母さんに濁点を付けたような名前だな。こういった名前は、アラブ圏では割とポピュラーな名前なのだろうか。日本で言う“太郎”みたいな。

 ついでだし、他の連中の名前も聞いてみようかな。


「(?だんな前名て何、てっーダーリるてしねん寝おでこそ、あゃじ…ぇへ)」


「(だ“ルアバ”)」


「(?るすりたてっ知、てっ前名の員全たし加参に戦作の回今、さにみなち 。いなゃじるてし前名たしカイ。ねルアバ…ぇへ、へ…?!!)」


「(──“ンモイパ”“ストバルバ”“ンモア”“ルォフレァウ”“スバルマ”“ンジミガ”“ゴサァヴ”“スレガア”、はのるいてれ倒に他でここ、ずま。るか分、ぁあ)」


「(わいいうも。握把、KO)」


「(かうそ──)」


「名前聞いただけで何か分かったのか? っていうか、よく覆面相手なのに誰それと分かるもんだな。…いや違うか、それぞれの腕章にある数字で認識してるのか」


 ブネがテロリストの名前を順に挙げていく際、その目線が顔ではなく肩付近に集中していた事に気づいたノーマンが俺と同じ結論に至る。リーダーであるバアルが“1”。アモン、バルバトス、パイモンがそれぞれ“7”、“8”、“9”…俺も、全部を覚えているわけじゃないが、このあたりの名前はゲームやアニメなどでよく見かけるので覚えている。


「あぁ、間違いなくそうだろうな。 そして、名前を聞いて分かった事だが…コイツらは、少なくともあと42人仲間が居るって事だ」


「あと42人? また微妙な人数だが、なんで分かったん……あぁ!“ソロモン72柱(ななじゅうふたはしら)”か!」


 そう、コイツらの名前は間違いなくソロモン72柱から取っている。英語だと“Goetic demons”と呼ばれているアレだ。厨二病に罹患りかんした患者であれば、一度くらいは目にした事があるだろう72体の悪魔の名前から取っているのである。

 アラビア語を喋り、ソロモン72柱から名前を取ってくる…パッと浮かぶのはイスラム教徒という可能性なのだが、それは教祖アリサ様とやらを心酔している時点であり得ない話だ。イスラム教は唯一神アッラーを崇めているのだから、教祖様に心酔する事は無いだろう。


「ていうかさ、BB。さっきまでは時間的な余裕が無かったけど、今ならだいぶゆとりがあるから、組織名とか他に仲間が何人いるのかを聞いてみちまおうぜ」


「ん~…妙に教祖様を心酔してたから、下手にその辺を聞いたら暗示が解けちゃうんじゃないかといささか不安ではあるが…まぁ、その時は再度暗示を掛ければいいか。 ってわけで…(?だ何は名織組、らかれそ ?る居名何とあは間仲のちた前お、ネブ)」


「(だ“ンワ・トスラ”で名命の様サリア祖教、は名織組 。名24り残は間仲)」


「「……何の障害もなく、普通に答え聞けちゃった!?」」


「って、なんでノーマンまで驚いてるんだよ。言い出しっぺの癖に」


「いやぁ、BBが暗示が解けちゃうかもって言ってたから、ある程度喋った辺りで『くっ…頭が…』みたいな展開にでもなるのかなぁ…とか考えちゃってさ。特に何も起きなかったからつい…」


 意外にもあっさり答えが聞けた事は良かったが、教祖様が何故ノーマンの行動を知り得たのかはいまだに不明だ。これもダメ元で無線機を使い、教祖様本人に聞いてみるか…。コイツらにポンコツ銃器を持たせた理由や、魔法の使い方を知らないだろうバアルに、この無線機を持たせた理由も不明だしな。


「しかしまぁ、やっぱり残りの人数は42名か…。それに、最後の一つ(ラスト・ワン)ね…最後のテロ組織って事を意識してるのかねぇ」


「その可能性は高いな。なんせ、BBに転校手続きを頼んだ時点で、俺らは徹底的にテロ組織が残ってないかを確認し終わったあとだったんだ。 少なくとも、地上で暗躍している組織は根こそぎ無力化したんだがな…俺らが調べもつかないくらいの地下にでも引きこもってたんだろうかね」


「その可能性は非常に高いな。 まぁ、その辺はコイツらを軍に引き渡すまでに聞き出すとしよう。さすがにちと腹が減ってきた。これ以上、莉穂姉を俺たちの都合で待たせたくないし、ひとまず昼食を取ろう」


 莉穂姉たちを振り返ると、表情にこそ出してはいなかったが、皆無意識にお腹辺りを押さえていた。いつもだったら既にランチを終わらせ、午後の授業が始まる頃なのだ無理もない。


「歪みねぇな」


「もちろんです。姉好き(シスコン)のプロですから」


「さっきも思ったけど、それ自慢げに言えることじゃねぇからな、BB」


 ノーマンの戯言を無視し、俺たちは教職員室を後にした。



   ─ 2012年4月20日(金) 13:03 ─


「ところでノーマン、さっきの件だが」


「ん?歪みねぇ姉好き(シスコン)についてか?」


「いや、そっちじゃなくて無線機の話」


「あぁ、それね。で、どういった仕掛けがされてたんだ?」


「仕掛けってほどではないんだが──」


 無線機に刻まれていた魔方陣は、確かに魔力通信が可能になるものではあった。それも、対になる魔法陣同士での強固なものだ。どれだけ距離が離れていようと、これなら確実に通信が可能と言えるほどの代物である。

 ただし、魔法陣に意図的に(・・・・)魔力を流し続けなければ、効果が発動されないという構成になっていたのである。光学迷彩膜を張るベルトや、無限AK-47のように機械的にスイッチが入ると自動的に(・・・・)魔力が供給……いや吸い上げられて発動するといったタイプではなかったのだ。

 こういった魔導具については、籠月学園の生徒であれば今の時期の一年生ですら使える代物ではあるのだが、少なくとも今回襲撃してきたテロリストに関して言えば、意図的に魔力を流せるような人材は居なかった。つまり、この無線機は本当にただの無線機に成り下がっていたのである。リーダーのバアルがいくら教祖様に報告してもレスポンスが来ないはずである。なんせ、普通の通信機の性能しか発揮できていなかったのだから。


「──という訳だ。 な?何を考えてるのか分からんだろ?」


「なるほどな。 もしかして、教祖様とやらは初めから誰とも連絡を取るつもりはなかった…ということか?」


「いや、その可能性は低い。なんせ魔力通信をするための陣自体はしっかり構築されているんだ。それこそ、魔力通信先の位置情報を逆探知されないように綿密に組むほどに…な」


 そうこうしている内に、学食のある寮まで来ていた。毎日眺めてはいるが、こうして下から眺めていると寮というより高級ホテルといった雰囲気である。


「BB、格好カッコよく決めようとしてるところ悪いけど、その姿だと締まらないぜ?」


「うるせぇ!ノーマンだって似たようなもんだろ!」


「俺は背中にまで張り付かれてないもん」


「うぅ…不本意だ…。でも、力づくで離すのも気が引けるというジレンマ…」


 そう、俺たちは教職員室を出てすぐ、幼馴染を含む女性陣に張り付かれたまま移動する羽目になってしまったのだ。思春期男子であれば、一度は妄想するようなシチュエーションではあるが、実際に体験するとなると非常に恥ずかしいという事が分かった。それはもう、嫌ってほどに…。

 今も寮の2Fにある学食のそこかしこから、奇異の目で見られているのが分かる。大講堂で説明し終わったあと、理事長から本日の授業は大学を含め臨時休校とする旨が発表されたため、皆この時間にもかかわらずゆっくりと昼食をとっているのだろう。俺たちも今から昼食をとるくらいなので、助かるといえば助かるのだが、今の状況だとそれが仇となっている。


 ちなみに、ノーマンの状況について説明すると、右腕にマージちゃんが張り付いており、左腕には3-Bに在籍している幼馴染の篠山ささやまねーちんが張り付いている。

 俺の方はというと、右腕に莉穂姉、左腕に滝川、そしてノーマンが言った通り、背中に理事長が張り付いている状態である。移動するたびに左右の腕と背中に、凶悪なまでに柔らかいものが押し付けられてしまい気が気でなかったので、何とか理性を保とうとして無線機の説明をしていたのだ。そのおかげか、下半身がスタンドアップトゥザヴィクトリーするのは防げたので良しとしよう。


「はぁ…、ここで立ち往生していても腹は膨れないし、さっさと2階に行こうか」


 精神的な疲れを隠せないまま一歩を踏み出した俺の耳元で、莉穂姉が色っぽく呟いてきた。


「ねぇ…渉が頑張ってくれれば、義姉ちゃんのお腹は膨れると思うわよ」


「それたぶん胃袋が満足してるわけじゃないよね?!」

次回の投稿も、3~4日ほど間が開きます。遅筆で申し訳ない。

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