第13話 - そして大講堂へ
祖父の17回忌で田舎に帰ってました。
スマホでも少しは編集できるかな…とか思いましたが、やっぱ無理でした。
スマホで長文打つの慣れない…。そう考えると、ギャルとかすげぇよな…。
─ 2012年4月20日(金) 10:16 ─
心底残念そうなノーマンを放置して警備員たちに向き直り、学園に侵入した連中は全て捕え終わっていること、これから大講堂で今回の事のあらましや説明などを行う旨を伝えた。
さすがに学園敷地内の出入りの警備をしている都合上、現在状況の確認としての見回りとモニターの監視、正門の受付業務を放棄するわけにもいかないので、代表として美沙都さんが大講堂の警備という名目で聞きに来ることになった。
「散らばったガラス片や、縛り上げたテロリストたちは、こちらで掃除しておきます」
警備のリーダーであるお姉さんが笑顔でそう伝えてくれた。艶のある黒髪を、後ろでシンプルにまとめた姿が似合う30歳。半年ほど前に幼馴染との結婚をはたしたばかりの新婚さんである。ノーマンの行動がテロリストの親玉にバレてしまったせいで、要らない気苦労を掛けてしまって申し訳ない気分だ。今夜は旦那さんにしっかり甘えて下さい…と心の中で労う。
今後、こんな占拠状態になる前に確実に迎撃、あるいは水面下で対応するよう改めて策を練ろう。
「ありがとうございます。 一人、トイレ入り口で放心状態みたいなヤツがいますんで、一応スズ○ン○ープをお渡ししますね」
お姉さんに見送られ、俺たちは大講堂へ向か──
「あ! ノーマン、屋上に放置してるテロリストとスズ○ン○ープを回収し忘れてる」
「いけね。ちょっと取ってくるわ」
「………」
──お姉さんから、何とも言えない生暖かい視線を頂くことになってしまった。
ごめんなさい、締まらない巣立ちで。でもホラ、立つ鳥跡を濁さずって言いますし…。
「スズ○ン○ープの件は、さっきの会話で分かってたけど、なんでテロリストまで?」
「まぁ、その…成り行きで?」
美沙都さんの疑問に対し「そういや連れてくる意味はなかったよな」と思った俺は、ぎこちない笑顔で誤魔化した。そうこうしていると、テロリストを抱えたノーマンが降ってきたので今度こそ大講堂に向かった。
─ 2012年4月20日(金) 10:19 ─
「あ、そうだ。ノーマン、今回の説明と併せてマージちゃんの紹介もしたいから、荷物をまとめて教職員棟にダッシュしてもらえるよう連絡してもらえるか?」
「あいよ。合流場所は教職員室前にしとくな」
移動中にマージちゃんの存在を思い出したので、ノーマンに呼び出しをお願いする。チョーカー型通信機を使ってマージちゃんに連絡をし始めたノーマンを横目に見ながら、俺はマチュア経由で防衛軍上層部に連絡を取るため、腕時計に話しかけた。
「沖中将、お話しておかなければならない事が…」
「マチュアから報告は貰っている。正直、我々としては学園関係者への説明は承服しかねる話だ。 しかし、ここまで大々的に暴れてしまった上、テロリストが野間特佐の行動予定を把握していたという話も聞いている。加えて、まだこちらも敵組織の正体を掴めてはいない、次もまた学園が狙われる可能性は否定できない以上、『何も知らせないというのは不要なストレスになるだろう』というのが、元帥や大将たちの見解だ。私個人としても同様に考えている」
俺とノーマン直属の上司にあたる沖中将が、頭の痛そうな声で返答してくる。不承不承といった雰囲気が声からでも伝わってくるあたり、本当なら隠し通したかったという思いが溢れ出ている。
「はい。そこで、“どこまで”情報開示して良いか確認したく」
「幸いそこの学園に在籍していた人物は軒並み口が堅く、創立当初から現在に至るまで自分たちが魔法使いであることを世間に隠し果せているという実績がある。 更に、君の“師匠”である“伊藤博士”が主導で作り上げ、現理事長の曽祖父“籠月弦十郎”氏が創立した学園だ。彼らには世界連合軍発足以前から、我が日本を含め各国も世話になっていたのでな、その彼らが育てた学園を信じてみようという事で話がまとまっている」
「義を重んじて王道を往くというわけですか…では、“私が知っている情報は全て”開示してもよいと受け取って構いませんか?」
「うむ。伊藤特佐、“全て君の一存”に任せる」
教職員棟へ歩きながらの報告をしていたのだが、沖中将の発言に俺の足が止まる。釣られるようにノーマンをはじめ、美沙都さんと元・気絶テロリストの動きも止まった。
「……はい? ちょっと待って下さい。それってつまり、学園側に情報開示するという事を軍は黙認するが、開示内容の全責任は俺に丸投げって事ですよね!?」
「君は相変わらず話が早くて助かるよ」
「俺は助かってませんよ!」
「ま。犬に噛まれたとでも思って諦めてくれ」
先ほどまでの重々しい雰囲気から一転、口ぶりがその辺のおっちゃんレベルにまで軽くなる沖中将。
「家庭で飼ってる犬に噛まれるのと、狂犬病の疑いがある犬に噛まれるのとでは、相当違いがありますけど?」
「だったら問題ないな。我々は血統書付きの犬並みに確かな軍人だ。狂犬病の疑いは無いぞ」
くっ…揶揄したら軽快に返されてしまった。
「…真面目な話、君には申し訳ないとは思っているよ。でもな、考えてもみてくれ。元帥だけでなく大将クラスまでもが黙認するという方向で容認してしまったのだ。万が一にもこの事実が露呈した場合、世界連合防衛軍の中枢が完全に消えることになる。それだけは何としても避けねばならんのだ」
「汚いさすが組織きたない。…でもまぁ、組織単位で考えれば納得できる話ではありますね。個人的には極めて不服ですが」
「それにな、儂、中将じゃろ? その割には、部下の功績が大きくて大将連中よりも目立っちゃってるのよ。 先々週なんて『沖中将は、ご自分よりも優秀な人材をお持ちなようで羨ましいですな』なんて大将数人から皮肉を言われたんじゃぞ。 それがさっき、マチュアから儂を含めた元帥や大将宛の直通連絡があった途端『ちょwwwテロ組織根絶発表して主戦力を引いた途端、自国でテロ騒動起こされるとかマジJPNwww』とか軍専用掲示板にスレ立てされてたんじゃよ!どう思うね?!」
「世界各国の紛争云々言ってねぇで、身内での小競り合いをまずは止めろやカス…って思います。つか、軍の上層部の癖に口軽いな。更迭しちまえよ、そんな連中」
「と。そんなわけで、儂もここで退場する訳にもいかないわけじゃ。すまぬが分かってくれ」
「ごめんなさい、その理屈はさっぱり分かりません」
「意地があるんじゃよ!男の子には!」
「知らんがな、自重しろや爺ぃ! …ったく、交信終了!」
ちなみに、沖中将は黙っていれば立派な髭を蓄えた59歳のダンディな小父様である。間違っても“男の子”というような年齢ではない。職務として会話をする分には頼りになる上司だが、私用での会話となると今のような流れになってしまい、なんとも残念なお人だ。
「BB、話は終わったな? マージはさっき着いたらしいから、さっさと行くぞ」
「話には聞いていたが、すさまじい運動性能だな、マージちゃんも…」
「どこの組織でも、内部の対立みたいなのはあるもんなのねぇ…」
再び歩き出す中、美沙都さんの漏らした呟きが春風に乗り青空に吸い込まれていった。
─ 2012年4月20日(金) 10:26 ─
教職員室前に着くと、そこには涙目になりながらプルプル震えているマージちゃんと、それを興味深げに見ているギャラリーの山ができていた。ちなみに、ギャラリーの9割はマージちゃんの存在を話に聞いていた2-Bの生徒たちである。残りの1割は数名の教員といった構成になっている。他の生徒や先生は既に大講堂に移動したあとのようだ。
ノーマンの姿を確認した途端、マージちゃんが目にもとまらぬ速さでノーマンに抱き着いて胸板に顔をうずめる。…一瞬、本気で残像が見えたわ。
「うぅ…俊之ぃ…なんか、戦場に居るより怖かったよぉ…」
「よしよし。すまねぇな、BBの話が長引いちまってさ」
ノーマンが、犬をあやすようにマージちゃんの頭を撫でる。まるで大型犬をなでている様な感じだが、ノーマンの胸板付近でふよんふよんと変形するマージちゃんの胸部装甲が、人間の女性であることを否応なしに分からせてくれる。目のやり場に困るなぁ…。
「あれは不可抗力だろう。 でも、すまなかったなマージちゃん。カメラ越しで一度顔合わせしてるけど、改めて初めまして。今後とも宜し──」
パシッ!──
俺が差し出した右手が、マージちゃんに叩かれる。よく見たら「キッ!」と音がしそうな形相で睨みつけられていた。アイエェエ?!睨まれてる?!睨まれてるナンデ?
「馴れ馴れしくしないで! 俊之は渉なんかには絶対に渡さないから!」
「──えぇ~…」「「「えぇーっ!」」」
俺のゲンナリした声と黒薔薇三連星の歓声が同時に響き渡り、残りの先生と生徒たちからは「ざわ…ざわ…」とした戸惑いが聞こえ始めた。さっきノーマンから聞いた話から、なんとなく俺をライバル視してそうな雰囲気は伝わっていたが、まさかここまで敵視されていたとは…。一度ビデオ通話をして以降、俺の前に姿を現さなかったのはこれが理由か。
「いや、マージちゃん良く聞いてくれ。俺は別にノーマンなんて欲しくもなんともないんだ。だから安心してくれていい。 でも、注意するとしたら、3-Bに一人だけライバルになりえる幼馴染が居るから、むしろそっちの方をだね──」
「何よっ!あれだけノーマンを利用しておきながら、やることやらせたらポイ捨て?サイテーな男ねっ!」
「──oh…」「「「ふぉーーっ!」」」
どうしよう、さっきの状況によるストレスと俺に対する対抗心で、マージちゃんが聞く耳を持ってくれない。まるでヤリチンクソ野郎みたいに言うの止めて下さいお願いします。あと、腐女子のテンションが止まる所を知らなくて五月蝿い。
取り付く島もないので仕方なくノーマンにアイコンタクトを送ると、「ここは任せろ」といった風に頷いてくれる。とりあえず、マージちゃんが落ち着くのを待つ間に、俺は先に理事長室に行くことにした。
「仁科先生。すみませんが狼耳の彼女が落ち着き始めたら、サングラスの少年と一緒に大講堂へ案内して下さい。俺はこれから理事長室に行き、事のあらましの説明と大講堂使用許可を一応もらってから壇上に向かいます」
「分かったわ」
「滝川。今、ノーマンとまともに面識があるのがお前だけだから、すまないけど仁科先生とノーマンとの橋渡しをお願い」
「うん。渉も頑張って」
仁科先生と滝川に見送られながら、俺は理事長室のある2Fに移動した。
─ 2012年4月20日(金) 10:32 ─
コンコン──
「籠月理事長、伊藤渉です。お話があり、伺いました。 入室しても宜しいでしょうか?」
「……渉君?来てくれたのね。 …ごめんなさい。入室を許可したいのだけど、施錠機能が壊れたのかここ2時間何をやっても開かないのよ。 外部に連絡しようにも、電話まで使えなくなってしまっていて…」
理事長室をノックして声を掛けると、扉越しに現理事長“籠月 由子”のくぐもった声が聞こえてくる。一瞬人が来たことによる嬉しさが感じ取れたが、すぐに落胆した声音に変わった。
「あ。それなら──」
ガチャ──
「──さっきまで厳戒態勢のために、俺の仲間が学園内のシステムを一時的に支配下に置いていたせいですね。 ご覧の通り既に解除されているので出入り可能です」
「渉君! 君なら必ず助けに来てくれると信じてたわ!」
「うぉっ?!」
感極まったのか、籠月理事長が俺に駆け寄ってきて抱き着く。元々168cmと高めの身長である彼女だが、今はヒールを履いているために俺とほぼ同じ背丈になっている。開錠のために色々試したのか、髪の毛やブラウスがやや汗ばんでおり、しっとりとした27歳の大人な色気が鼻腔を刺激する。
互いの頬が触れそうになり、豊かなバストが俺の胸板に押し付けられ変形しているのが分かってしまう。横目に映る艶やかな紫がかった黒髪を撫でたくなる衝動を堪えつつ、俺は残された理性を振り絞り理事長を引き離していった。
「い…いやいやいや、籠月理事長。そこはちゃんと雇っている警備員を信じましょうよ。 ホラ、そこにも一人居るわけですし」
俺と理事長の姿を食い入るように見ている美沙都さんに目を移しながら、「冷静になってください」と言外に伝える。そう、さっき2-Bの皆と分かれたあと、俺と美沙都さんで理事長室に来ていたのだ。
扉を開けた瞬間に抱き着かれるなど想定外だったので、色々な意味でドキドキしてしまい、美沙都さんが見ていることを忘れてしまっていた。よく見ると美沙都さんの目が「えっ?!この二人ってもしかしてデキちゃってるの?!」と物言いたげにしている。
「あの、籠月理事長。失礼ながらお聞きしますが、お二人は恋人同士なのでしょうか?」
前言撤回。物言いたげどころか、実際にガチで質問しちゃったよ、この人。これはノーマンといい勝負の爆弾発言人間だな。おかげで理事長も美沙都さんの存在に気付いてくれたが、「良い目撃者を作れた」みたいな顔になっている。
「あら貴女、なかなかいい目をしているわね。確か、うちの卒業生の…大隅さんだったかしら?」
「惜しい、大隈です。しかし、覚えて頂けていたようで恐縮です」
「失礼、間違えてしまってごめんなさい。 でも、そうなの。もう12年以上前に出会ったあの時から、私は渉君の──」
「盛り上がっているところ申し訳ありませんが、籠月理事長、今はそれよりも重大なお話があります。 つきましては、大講堂にて学園関係者の皆にご説明させて頂きたく、使用許可を頂けないでしょうか」
放置していたら何か好からぬ事を口走りそうだったので、横から割って入り強制的に流れをぶった切らせてもらった。
「──渉君がそうまで言うとなると、それ相応の事なのでしょう。分かりました、使用を許可します。 学園内全域への放送も必要ですか?」
「可能であれば是非お願いします。既に教員各位より、大学を含めた在校生全員は大講堂に移動してもらっておりますが、その他の常勤事務員は、各自の持ち場から離れていないでしょうから」
「分かりました」と言うと理事長が机まで移動し、引出しの中から一枚のカードを取り出す。大講堂の音響操作機材の承認用カードキーである。これをメインの機材に翳すことで、学園全域への放送が可能となるのだ。
「さ。行きましょう。皆さん待っているのでしょう?」
「あ、はい。…あの…自分で歩けるので、腕を解いてもらえませんでしょうか」
カードを取って戻ってきた理事長が、扉を出ると同時に俺の右腕に自分の左腕をからませて移動し始める。凄く歩き辛い上に、横乳が当たって嬉し恥ずかしといった感じになるので止めて頂きたいと抗議したが、俺の顔を見るなり美沙都さんにバレない角度で「フフッ」と妖艶に微笑むだけだった。
ダメだこの人、美沙都さんに何が何でも俺たちが“只ならぬ関係”である事を印象付けさせる気だ。
いいよ。いいですとも。そっちがその気なら、こっちはこっちであとで目いっぱい莉穂姉とキャッキャウフフするだけですからね!
などと考えつつ、理事長に腕を取られたまま大講堂に続く階段へ向かう。3Fへ向かう階段のすぐ近くに1Fの階段があるので、ノーマンたちの様子を探ってみたが既に大講堂へ向かったあとらしく、下の階には誰も居なかった。「こんな姿を見られなくて良かった」と密かに胸を撫で下ろし、3Fへと移動した。
─ 2012年4月20日(金) 10:42 ─
「「あ、渉……」」「え、理事長……」「おぉっと?」「「………」」
3Fへ上がりきると、大講堂扉の前に居た莉穂姉、滝川、仁科先生、ノーマン、マージちゃん、元・気絶テロリストがこちらに気づき全員がほぼ同時に反応した。
莉穂姉と滝川は、信じたくないシーンを見たかのように固まり。
仁科先生は、見てはいけないものを見てしまったように言葉を失い。
マージちゃんは、先ほどの事に罪悪感を感じたような申し訳ない表情で眉をハの時にし。
元・気絶テロリストは、衛兵のように大講堂扉の横で直立不動。
そしてノーマンは、おでこにツヤを出して「修羅場? 修羅場?」と言いたげにワクワクテカテカしていた。コイツはあとでシバく。くそう、右腕がホールドされていなければ、今すぐにでもグロッグ26を取り出せていたものを…。
3Fに着くまでに、無理にでも腕を解くべきだった…という後悔を胸に、俺は教職員棟の高い天井を仰ぎ見ながら「どう説明したもんだろう…」と頭を痛めていた。
次回、2017/4/18には何とか投稿しときたい。




