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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第六章 修学旅行 in 沖縄 with 年末年始のイベント
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第07話 - 一日自由行動だと思ったら、面倒そうな役割を追加された件

前回のあらすじ。

 教祖アリサをストーキングしたらしいテロリストをあっさりと撃沈させ、渉達は無事に話し合いを行う事が出来た。

 確認したかった内容は聞けたものの、修学旅行中にこれ以上テロリストの闖入を防ぐことはできるのか。

 フラグのような発言をしてしまった渉の、明日はどっちだ!?

  ─ 2012年12月23日(日) ─


 ノーマンの操縦による、宇宙飛行めいた魔改造ラプターでの沖縄への移動。

 テロ組織“ラスト・ワン”の教祖にして、師匠の協力者でもあるアリサの濃厚な師匠武勇伝マシンガントーク。

 そして、アリサをストーキングしてきたらしいラスト・ワンの信者闖入事件。

 昨日一日だけで、だいぶ濃厚なイベントがあった気がする。……恐ろしい事に、そのどれもが本来の目的である“修学旅行”と一切関係が無いときたもんだ。


 俺と時を同じくして目を覚ましたらしいノーマン、天野に「おはよう」と挨拶しつつ、はだけた浴衣を脱いで私服に着替える。よく見ればノーマンも天野も俺と同じように浴衣がはだけていた。

 これが莉穂姉だったら、さぞ扇情的で眼福だったことだろう……などと考えながら着替えていると、ふと天野が口を開いた。


「そういや、渉さ。昨日アリサさんが言ってた『人の意思を集める』って話しだが、なんでそれがエルサレムの地下に拠点を構えるって事に繋がるんだ?」

「えっ?! 今更?!」

「いやぁ……ほら、なんか皆知ってる風に納得している中で、『なんで?』って言い出せなくって」

「薫、ナイス質問。俺も同じこと聞きたいと思ってたんだ」

「いや、ノーマンは知っとけよっ!? お前、それが理由で向こうの方に駆り出されてたようなもんだったんだぞっ!?」

「「え? そうなの?」」

「……はぁ~~、お前らなぁ……」


 俺は朝一で頭を抱える羽目になった。



  ▲▽△▼△▽▲



「簡単に言っちまうと、エルサレムってのは“キリスト”、“ユダヤ”、“イスラム”の三宗教共通の聖地なんだよ。尚且つ、それに加えイスラエル政府まで『あそこ、俺らの首都だから』とか言い出しちゃうもんだから、昔から睨み合いが絶えない場所だったのさ。……な? 人の意思が集まり易そうな場所だろ? 政治的にも、宗教的にも……」

「「確かに」」


 俺は昨晩のレストランへと移動し、朝食を取りつつ二人に解説を行っていた。端的にまとめたのが功を奏したのか、二人はあっさりと納得してくれたようだ。


「んで、その他の宗教でも『違うもん! 違うもん! ボクの所の方が聖地エルサレムの正当な所有者なんだもん!』みたいな事を言いながら、ちょっかいを出してくるテロリスト(困ったちゃん)がちょくちょく小競り合いを仕掛けてくるもんだから、その都度、世界防衛軍がしばき倒してたんだ。でも、3年くらい前からその頻度が多くなっていたんでな、『元から絶とう』って方針でノーマンを最前線に送り、紛争の根源となりうる一部の組織を軒並みフルボッコしてきたんだよ」

「「そうだったのか」」


 ノーマンが今更ながらに得心がいった風な顔をしている。

 お前ホント、今まで自分が最前線に繰り出された理由を知らずにボコってたんだな。そんな何も考えてなかったヤツに、手も足も出ずにボコられて壊滅していったテロリスト連中に少しだけ同情したくなるわ。

 はた迷惑な組織ばかりだったから、どの道潰すことは決定事項だったわけだが。


「……ま、そういうわけだ。たぶん、エルサレムの地下には、効率よく意思を集めるためのドデカい魔法陣が刻まれてるんだろう。で、その魔法陣の直下に例の紫水晶のペンダントがある限り、集めた意思をまとめられる……みたいな仕組みになってるんじゃないかな、たぶん」

「「ふーん」」


 ちくしょう。ノーマンも天野も、意思を集める方法については無関心な反応しやがって。あと4ヵ月もしたら、そのよくわからないモンと戦う事になるってのを忘れてるんじゃないだろうか。

 ……いや、正確には“負の感情”を実体化させたものらしいけど……。何にせよ、こう“ふわっ”としていて、よく分からない“何か”を相手に闘わなきゃいけないんだぞ。


「お前らなぁ……。いずれ実体化したものと戦うハメになるんだぞ? もうちょっと関心はないのかよ?」

「そうは言うがな、BB──」

「実体化したところで、前例のある相手ってわけでもないだろ? なら、俺達がどんなに想像を張り巡らせても、時間や労力の無駄じゃねぇか?」

「そうそ、薫の言う通り。ぶっつけ本番、男は度胸、いざと言う時は気合で乗り切りゃいいのさ。どうせ、俺達だけじゃなく、歴代卒業生や在校生の力も借りる気でいるんだろ? だったら、その時はその時で臨機応変に対応すればいいだけだよ」

「……せやな」


 言われてみれば、どういう敵なのか、攻撃手段はおろか姿さえ未確認の存在を相手取ることになるのだ。いくら対策を講じようと、いざ相手にした際に的外れな用意をしていたら意味がない。

 それ以前に、物理攻撃が効くのならノーマンが殴れば良いだけだし。拳が小さすぎるのであれば、魔改造ラプターを人型に変形させ、神力製ピンポイントバリアパンチを食らわせるという手もある。

 逆に物理攻撃が効き辛ければ、俺や魔女達をはじめとした魔法での攻撃手段も準備できるのだ。火炎魔法ファイア氷結魔法フリーズ雷撃魔法サンダーの三種類のみだが、RPGのように弱点を探るという手もある。ノーマンの言う通り、臨機応変に対応する事は十分可能そうだ。


「ところで渉。話しは変わるが、今日の行動はどうする? たしか、今日一日はちゅうみ水族館って予定だったよな?」

「天野、それ違う。正確には“海洋博公園”全体で一日だ。美ら海水族館だけじゃなく、植物園、文化館、プラネタリウム、イルカショー、エメラルドビーチもあるんだから、ちゃんと見て回ってやれ」


 他にも子供が遊ぶ用のアスレチック広場みたいなところもあるが、ノーマンが喜びそうだから黙っておこう。


「そういや、そんな名前だったか。なんせ、沖縄の事なんかさっぱり知らなくてな。……で、どう行動する予定なんだ? 昨日みたいに俺ら全員で団体行動か?」

「……いや、今日は天野・網谷ペア。ノーマン・マージちゃん・篠山ねーちんトリオ。俺・莉穂姉・他3人のチームごとにばらけて移動しようと思ってる」


 女性陣から、「今日の自由行動は、好きにイチャつかせなさいよ」とでも言わんばかりの視線がぶっ刺さっているのだ。それぞれの組に分かれ、デートっぽい時間を作った方が、俺達の身の安全的にも良いだろう。

 それに、施設内の通路はそれなりに広いらしいが、今日は日曜日である。家族連れやカップル(カポー)なんかもいるだろうし、下手に固まって移動すると迷惑だろう。


「そうか、じゃあBBや薫とは、バス移動の時点から別行動の方が良いか?」

「いや、バスは一緒に移動したい」

「ほぅ、BBも寂しいのか?」

「違う。俺達の中の誰が、教祖アリサのマシンガントークの餌食になるかもわからんだろ? 念のため男三人で固まって聞き流してた方が、まだ苦行に耐えられるんじゃないか……という配慮だよ」

「「……あぁ、確かに」」


 俺達は強く頷き合い、バス移動という決戦に向けてご飯をしっかりと食べるのだった。



  ▲▽△▼△▽▲



 ホテルから移動すること一時間と少し。俺達は海洋博公園の大型バス専用駐車場に降り立っていた。

 まだ太陽は低い位置にあるが、天気も良く、冬にしては少し暖かめなので、薄手のコートを羽織るくらいで丁度良い気温である。


 バスを降りた女性陣が、「海キレー」「景色いいね~」などと楽しげに語り合う中、俺、ノーマン、天野の三人の表情は割と死んでいた。

 いやもうホント、教祖アリサのトークがやっぱり止まらないのなんの……。「どうして、おばちゃんやおばあちゃんの話は、とりとめもないままずっと話していられるんですか?」と、“こども電話相談室”に聞いてみたくなったわ。

 ……俺も、日本の法律上まだ未成年だし、“こども”と言えなくもないハズ。来年の夏にでも、本気で電話してみようかな。


「……ノーマン、天野。生きてるか?」

「……あぁ、なんとかな。薫はどうだ?」

「……辛うじて致命傷で済んでる」


 俺を含め、二人の声にも覇気がない。にもかかわらず、莉穂姉をはじめとした他の女性陣は少し喋り疲れたという程度で、見た目はピンピンしていた。

 ……解せぬ。紛争地帯の最前線でテロリスト共相手に、「ヒャッハー! 汚物はフルボッコだっ!」していたノーマンがクタクタになっているのに、なんで女性陣は平気なの?

 QB(キュゥべえ)じゃないけど、「わけがわからないよ」と叫びたい。……そんな元気は無いが。


 俺は、一度大きく息を吸い込み、自身に活を入れてノーマンと天野に向き直った。


「……よし! 伊藤特佐より、各員へ告ぐ! 皆、必ず生きて帰ることっ! これは命令だ!」

「「了解ラジャーッ!」」


 皆の前で急に軍人まがいの事をやり始めたせいで、女生徒や学園関係者から不審な目を向けられてしまった。でも、今は変なノリで気分を紛らわせたかったんや。


「渉、いきなり変な事言いだしたけど、大丈夫? 熱とか無い? お姉ちゃんのおっぱい揉む?」

「莉穂姉のおっぱいは揉みたいっ! ……が、大丈夫。熱も無いし、変な病気ではないから今は辞退しとく。ちょっと、気合で疲れを吹き飛ばしたかっただけだから気にしないで。あと、しれっと誘惑して来ないで、我慢するのが大変だから……」


 ずっと前かがみで歩かなきゃいけなくなりそうだから、本当に勘弁して欲しいです。はい。


「やだ、葛藤してる渉の姿カワイイ。抱きしめて良い?」

「莉穂姉、抜け駆けはズルいと思います!」

「滝川さんの言う通りよ。伊藤さん、今のはペナルティものね」

「渉、どうしても我慢できなくなった場合、私だったら妊娠の危険性はありませんよ? 常に生でOKです」

「「「マチュア先生、もう少し慎んだ発言をしてください」」」


 男をダメにしそうなマチュアの発言に、莉穂姉、滝川、由子お姉ちゃんの三人が綺麗にツッコミをお見舞いした。


「三人のいう通りだ。それに、お前の場合、研究所が全力で色々付属オプション付けてそうだから、ガチで妊娠する機能を付けられてるかもしれないじゃないか。師匠なんて、自分の髪の毛からDNA情報抜き取って俺を創ったくらいなんだぞ。マチュアの中で、培養できないという保証もないから怖すぎるっての」

「……ちっ! バレましたか」

「「「「……えっ?! 本当にできるの?!」」」」


 莉穂姉達だけではなく、半ば冗談で言った俺も驚いている。

 いやでも、あり得るから怖いんだよなホント。研究所の人達、真面目におかしな方向に全力を注いじゃったりするから……。


「……ハッ!? い、いえ……そんなまさか、できるわけないじゃないですか。オホホホ……。ほ、ほら、この目を見て下さい。嘘をついてるように見えますか?」


 そういってマチュアは、俺の顔を掴んで目線を合わせてくる。

 とは言え、眼球に見せかけた高解像度カメラを向けられてもなぁ……。

 あ、いや、動揺が連動してるのか、よく見たらレンズの遠近調整が忙しなく動いてるぞ。コイツ、マジで人間くせぇなオイ。


「うん。限りなく怪しいので、年末年始の研究所でマチュアの全体スキャンをさせてもらうな」

「あぁぁぁ~……、何たる事!」


 マチュアが見事にくずおれた。この反応、やはり黒だな。

 今度、マチュアボディに余計な機能を追加したヤツを見つけて説教しとこう。まったく、俺のあずかり知らないところでアホな真似をしやがって……。技術の無駄遣い過ぎる。


『は~い。それでは皆さんバスから降りられましたので、これから園内の自由行動について説明させていただきます』


 バスガイドさんの中で一番ベテランらしきお姉さんが、拡声器で皆の注意を引く。

 皆が注意を向けた事が確認できると、お姉さんは拡声器を持っていない方の手で何かを掲げながら説明を続けた。


「これから皆さんには、海洋博公園の全施設に入れるフリーパス及び、園内を巡回している電気遊覧車の1日周遊券の入ったパスケースをお配りします。美ら海水族館で有名な場所ではありますが、すぐ近くに見える塔が目印の“熱帯ドリームセンター”や、正面入り口近くの“海洋文化館”、“おきなわ郷土村”などもありますので、是非とも全施設を巡って頂ければと思います」


 バスガイドのお姉さんはそこで言葉を切ると、拡声器を俺達の担任である仁科にしな先生へと渡した。

 それと同時に、周りに散らばっていたバスガイドさん達が、近くの人達に順次パスケースを配り出す。


「それでは、バスガイドさん達がパスケースを配っている間に、簡単な注意事項をしたいと思います。本日は日曜日ですので、家族連れの方が多く来援されると思います。皆さん、他の方々の邪魔にならないよう、あまり大人数でのかたまった移動は控えるようにお願いします。特に伊藤君は注意してくださいね!」

「俺だけですか?! ノーマンや天野だって……あ~、人数が違うか。はい、わかりました……」


 ちょっと反論しようと思ったが、天野は網谷を含めて二人組。ノーマンだって本人を含めて、マージちゃん、篠山ねーちんの三人組。俺の場合、莉穂姉、滝川、由子お姉ちゃん、マチュアの五人組である。

 不本意ではあるが、仁科先生の注意は正しいので素直に従うしかない。

 そんな俺の反応を見た仁科先生が、満足気に注意を続ける。


「よろしい。次に、帰る際の集合時間ですが、16:30までにこの駐車場へ到着するよう心掛けてください。特に、ここから正反対の方向にあるエメラルドビーチから移動する場合、かなりの時間がかかりますので移動時間には十分気を付けてください」

「「「「「はーい!」」」」」

[それでは、何かトラブルがあった際は、私達教師あるいは、伊藤君、野間君、天野君に魔力通信でヘルプ要請を出してくださいね。近くに居る誰かが対応しますので]

「「「えっ?! なんで俺達が?!」」」

[[[[[はーい!]]]]]


 魔力通信で周知された注意事項に、俺達三人が驚愕の声を上げるが、莉穂姉達を含め誰一人として動じる人は居なかった。むしろ、事前に打ち合わせでもしていたかのごとく、魔力通信でいい返事をしていたくらいである。


「それでは、パスケースを受け取った方から順次移動を開始です。楽しんできてください!」


 仁科先生の一言で、パスケースを受け取っていた生徒や学園関係者の皆々様方が散って行く。

 俺達はまだパスケースを受け取ってなかったという事もあるが、しばらくは軽いショックで動けないでいた。

 そんな俺に対し、莉穂姉が優しく肩に手を置き、こう言ってきた。


「渉。あとノーマンと薫君も聞いておきなさいね。……いい? 女の子はね、どんな時でもいざと言う時は男の子に助けてもらいたいものなのよ?」


 あまりにもいい笑顔だったので、「気付かれないように魔法を使えば、そこらの不良なんて軽くひねれる女性しか居ないのに何言ってるんだよ……」とは言い返せない俺であった。

毎度読んでいただき、ありがとうございます。


次回も金曜日更新予定です。お暇でしたら宜しくお願いします。

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