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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第一章 テロリスト襲来
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第11話 - 警備員棟奪還(前半)

警備員棟の生い立ち(?)、新キャラの紹介を盛り込んだら当たり前だけど長くなりました。

というわけで、警備員棟での戦闘は前半と後半に分けます。

   ─ 2012年4月20日(金) 09:58 ─


 教職員棟を飛び出してから全力疾走で早30秒。俺たちは警備員棟の出入り口まで到着していた。

 断トツで一番速く到着したのは当然ノーマンで、「全力疾走するぞ!」と俺が声をかけたと同時に遥か先に移動していたくらいである。スペックが人外なのはデータとして知ってはいたが、実際にの当たりにすると「あ。コイツには勝てねぇや」と本能レベルで感じるんだな…ということを心底理解した瞬間だった。

 ちなみに第二位は俺で、第三位は元・気絶テロリストである。俺の場合は魔法で身体強化した上でのチート記録であったが、何の強化もせずに数秒遅れで追いついた元・気絶テロリストの素の身体能力には驚かされた。さすがに息苦しそうにしているが、目出し帽装備で全力疾走したのだから仕方ないと思う。

 今回の戦いで、唯一まともに手合せしたテロリストは今のところコイツだけだが、きょを突かず真正面から倒そうなどと考えていたら、逆に俺が組み伏せられていたかもしれないと戦慄を覚えたくらいである。もしかして、今回襲ってきたテロリストは全員、身体能力がかなり高かったのかもしれない。

 …ノーマンが居なければ、ガチで詰んでいた可能性が非常に高かったなぁ。改めて己の運の良さに“ヒヤリ・ハット”しつつ、警備員棟の解放作戦開始である。


「さて、これが最後の戦いだ。 教室でも伝えたが…ノーマン、お前にはこの学園内で初めて犠牲・・を出させてしまう事になる。だが、その罪は俺も一緒に背負う。この作戦、必ず成功させるぞ」


「BB…やっぱり俺、こんな犠牲を出す必要はないと思うんだ。他にもやりようはあるんじゃないか?」


 俺のマジなトーンに尻込みしたのか、ここにきてノーマンが待ったをかけてくる。例え戦場に慣れているノーマンといえども、こんな事で犠牲を払うのは気が引けるのだろう。だが、俺たちはやり遂げねばならない。


「確かに、俺とお前が一緒に突入するという方法もあるな。だが、教室でモデルを見せたとおりモニタールームの出入り口は狭い。 俺が先に侵入して敵の注目を集めたとしても、俺の動きが遅くてノーマンがスムーズに侵入できないかもしれない。 逆に、ノーマンを先に行かせても、お前に攻撃が集中して本来の動きが損なわれてしまう可能性が出てくる。そうなっては、犠牲者がいたずらに増えるだけだろ?」


「確かにそうなんだけどさぁ…」


「時間が惜しい。ノーマンは、コイツを抱えて屋上に待機。そのまま休ませてやってくれ。 一際ひときわ大きい天窓が見えたら、そこの真下がモニタールームだ。 教室を解放して回った時のように、俺が入ったタイミングで奇襲してくれ。念のため、スズ○ン○ープも1まき渡しておく」


 腑に落ちないといった雰囲気をまといつつ、息切れしている元・気絶テロリストを脇に抱えたノーマンが、「ぴょ~ん」という音が聞こえそうなくらい軽快なジャンプを披露して屋上に着地する。

 警備員棟は平屋の建物なのだが、地面から屋上まで3m弱ある。それを、人を一人担いだ状態で軽々しく一っ跳びか……師匠、あんた本当にとんでもない人間を作り出しちまったよな。…まぁ、俺もその内の一人だけど。


「マチュア。確認だが、建物自体の出入り口や、付近の廊下に見張りはまだ居ないよな?」


「おりません。 ただ、警備員の一人が、つい先ほどから身振り手振りで何か交渉を始めたようです」


「交渉? まずったな、このタイミングで万が一揉め事が発生した場合、俺だけに意識が向かなくなる可能性が出ちまう。ノーマンの奇襲効果が薄くなりかねんぞ…」


 見張りが居ないのは助かるが、揉め事となると無駄に怪我人が増えるから勘弁して欲しいな。穏便に落ち着いてくれれば良いのだが…。

 俺は手元に残っていたスズ○ン○ープ2巻を左右それぞれの手首に通し、手ぶら状態で侵入できるようスタンバイしつつ、両拳を胸の前でかち合わせながら「何とかならないものか」と唸る。


 なんか、勇者ロボのポーズみたい…などと思った俺は、こんな状況でもやはり平常運転だった。


「あ……どうも御花摘おはなつみに行きたい様ですね。音が拾えないので憶測ではありますが」


「……そうか」


 こういう時、当事者でもないのにちょっと恥ずかしくなってしまうのは、相手に対して申し訳なさを感じてしまうからなんだろうか。何となく、反応にも困ってしまうから不思議である。

 しかし、人質がトイレに行くとなれば、付き添いとして一人くらいは一緒に部屋から出るはずである。ある意味チャンスかもしれない。

 俺は出入り口を少しだけ開き、中に体を滑り込ませる。警備員棟のドアには全てダンパがついており、どうしても閉まり切るまでに時間が長引いてしまうのだ。大きく開いて侵入しなかったのは、なるべく早くドアを閉めたかったための苦肉の策である。

 警備員棟は教職員棟ほどの広さはないが、常に10名前後の警備員がローテーションで働けるよう、仮眠室や談話室、備品倉庫など色々と設備の揃ったした建物である。それともう一つ、生徒にも内緒にされている“とある魔法陣”も設置されている。廊下はかなり幅広で、蛍光灯の光だけでなく、太陽光も入りやすいよう天窓がところどころに存在している。既に10時を回っていることもあり、棟内は明るく見通しが良い状態になっていた。


 この警備員棟は、もともとは守衛棟という名称だったのだが、学園の共学化を発表した2009年当時、「施設管理者が直接雇用しているだけで、警備業法けいびぎょうほうの規制もないただの守衛・・では、共学化に際して荷が重すぎるのでは?」という声が多く、警備員を雇うという話が決まった。その際、名称も警備員棟に変更になったという。

 まぁ、警備員を雇ったとは言っているが、実際は籠月グループと大昔から縁のある人物が警備会社を設立しており、そこに守衛として雇っていた女性たちを斡旋あっせんして籠月学園に来てもらっている状況である。つまり、この学園が魔法教育施設であるという秘密を知っている人間のみが、警備員として勤務している状態に変わりはないのだ。

 内部の作りも守衛棟の時と変更がなく、学園敷地内への出入り口である正門側から順に、受付け部屋、トイレ、モニタールーム…といった配置になっている。実は、今俺が侵入したドアはモニタールームから一番遠いドアである。ここの他にもう一ヵ所ドアがあり、受付け部屋直通のドアとして正門横に設置されている。そちらの方が一番モニタールームに近いドアとなる。

 では何故一番遠いドアを選んだのか、教職員棟から一番近かったからである。正直なところ、こんな事態は想定してなかったので失敗したなと感じてはいるが、後悔先に立たず。


「マチュア。交渉にはまだ時間がかかりそう?」


「いえ、どうも話がついたようで……あ、移動開始しました」


 俺は大急ぎでモニタールーム方向へ移動しながら室内の状況を確認する。小声で話しかける俺に合わせて、マチュアも小さいボリュームで返答してくれるのがありがたい。

 …あれ?今気づいたけど、時計を口元付近まで近づかせれば精神感応魔法テレパシーモードでも会話できる距離になったんじゃ…いや、今はそれどころじゃないな。


「マジか……!!?」


 カチャ──


 6m(メートル)先でレバーハンドルのドアノブが動いた。願わくば、もう少し近づいておきたかったのだが仕方ない。軽くジャンプしながら空中浮遊魔法エリアル・フロートを発動させ、急いで天井に張り付く。

 この魔法は、読んで字のごとく空中に浮くことのできる魔法である。魔法自体は簡単なのだが、本当に浮くことしかできない。アニメとかでよく見るような、ほうきに乗って自由に空を飛ぶといった芸当はできないのだ。それを行うには、三年生になってから習う“飛翔魔法フライ”を使いこなす必要がある。

 走っていた最中だったので、慣性によりモニタールームとトイレの間の位置まで移動できたのは幸いだった。なかなか悪くない位置である。そして更に運の良い事に、トイレに行きたがっていた警備員というのは俺と仲の良いお姉さんであった。ドアから出てきた人を見た瞬間、危なく「キタコレ」とか言いそうになってしまったくらいである。


 これは…流れが俺たちに向いてきているとしか思えない。乗るしかない、このビッグウェーブに。


 この学園のトイレの出入り口は、空港などの公共施設と同じく廊下から直接見えないよう入り組んだ構造となっている。廊下に見える出入り口に入ると、すぐに左に折れ曲がる通路となっており、そこの突き当りを曲がるとトイレに繋がるという構造である。ドアで区切っているわけではないため、端的に言うとモラルを無視すれば男だろうと出入り自体は容易なのだ。

 俺が天井にいることに気づくことも無く、警備員のお姉さんとテロリスト一人がトイレの出入り口に入っていく。逆さまになりながら廊下側の出入り口から覗き込むと、お姉さんがトイレの奥まで移動していく瞬間だった。しばらくするとドアが閉まる音が聞こえてくる。テロリストの方はさすがに気が引けるのか、突き当りの出入り口でAK-47を構えて待機していた。

 俺はテロリストに狙いを定め、催眠魔法ヒュプノシスを使う。


 ジャー──ドサッ──


 消音用の流水音が響き始めたと同時に、暗示待機状態になったテロリストが尻餅をつき壁にへたり込む。いい感じに倒れた時の音がかき消されてくれた。…どうも菜月先生みたいに“立たせたまま暗示を掛けて催眠状態にする”という芸当が真似できないな。待機状態にするのは早くなったとは思うのだが…まだまだ精進が必要なようだ。

 暗示をかけ終え空中浮遊魔法エリアル・フロートを解除して地面に降りると、二回目の流水音が鳴り響き、ドアが開く音が聞こえてくる。


「……へっ?どういう(どゆ)事?」


 姿は見えないが、驚きとともにテロリストが倒れているという不可解な状況に警戒している気配を感じる。


「“美沙都みさと”さん、安心して下さい。犯人は俺です」


 努めて明るい調子で出入り口から顔を覗かせる。最奥さいおうの個室ドアの前で、鳩が豆鉄砲を食らったような表情の美沙都さんが俺を見ていた。


「え?渉君?なんでこんな所に……ハッ! コホン…キャー!渉君のえっちー! もぅ、これだから男子ってサイテー!先生センセ~、男子が女子トイレ覗いてま~す!」


「ちょ…ばっ…ち、ちげぇしっ! 俺はただ、女子が本当に立ちションしないのか見に来ただけだしっ!」


 はたと気づいた美沙都さんが、ノリノリで女子小学生みたいなことを言い出す。俺も俺で、「この“振り”に礼節を持って返さねばなるまい」などと思い、同レベルのアホな言い訳を返してみた。


「「………」」


 ──グッ!


 数秒の間、両者無言で“クイ○$○リ○ネア”のような溜めジャッジメント・タイムで見つめ合ったあと、ほぼ同時に親指を立てて「いいね!」みたいな表情を交わすのだった。

 いや別に、毎回こういった挨拶をしているわけではないのだが、どういうわけかこの人“大隈おおくま 美沙都みさと”さんとは、その場その場のフィーリングでおバカな会話が成り立ってしまうのだ。少女漫画だったら「やだっ!これって運命?」みたいな展開になりそうなレベルのシンクロ率……いや、今のやり取りでそんな展開になる少女漫画は嫌だな。○けんの「こんな○○は嫌だ」で取り沙汰されるレベルで“無い”と思う。

 とにかく、まさかこんな状況にも関わらず平常運転な挨拶されるとは思ってもみなかった。さすが、リアルで弟一人、妹二人を持つ姉御は肝が据わっていらっしゃる。ちなみに兄弟構成は、長姉ちょうしの美沙都さん、19歳の妹、17歳の弟、16歳の妹という順となっている。弟以外は、この籠月学園に在籍中だ。

 性格を反映させたかのような、明るめの茶色に染めたショートカットが良く似合う24歳。表情は勝気さが伝わるようなツリ目だが、不思議とキツい印象は受けない。恐らく、人懐っこい笑顔が絶えないためためだろう。

 スタイルは“並み”と本人は言うが、バストサイズはCカップ以上は確実にあると俺は見ている。他の人たちに比べて胸が目立たないのは、175cmという身長によるモデル体型補正だろう…絶対“並み”のスタイルではない。本人は「もう少し小さくても良かったんだけどな」とは言っているが、見る側としては素晴らしいプロポーションを見れて眼福です。ありがとうございます。


「…って、こんな事をしてる場合じゃねぇや。美沙都さんたちを助けに来ました。もう他に占拠されていた場所も解放済みで、あとはここだけです」


「え?!そうだったの? モニターには銃器を持った連中が、先生や生徒を脅迫している映像が映ってたから、まだ捕まっているのかと…でも一体どうやって映像を誤魔化したの? 少なくとも、監視カメラを誤魔化すための魔法なんて、聞いたこともないのだけど?」


「あ~……、その辺はここが片付いたら大講堂で説明する予定です。理事長には、俺の方からあとで話を通します。 事後承諾みたいな形になるでしょうが、こんな状態ですしね。皆の不安を払拭ふっしょくするためにも、今後の対応や、今回の事のあらましとかの説明は必要だし」


「なんか色々と事情を知ってそうね。入学当初から天才って言われてたけど、渉君って実は極秘エージェントだったり?」


「ん~…極秘ってのは当たってますが、エージェントっていうほど複雑な任務とかはないですね。 ま。その辺も含めて後ほど説明します」


「うっそ、半分以上当たってたの? でもやっぱそうだったか~。こんな状況なのに妙に落ち着いてるし、只者ではないとは思ってたのよね~。うんうん」


 滝川にも言われたが、そんなに落ち着いているように見えるのだろうか。さっきだって、美沙都さんとテロリストが俺の真下を移動したときなんか、心臓ばっくばっくしてたくらいだったのに…どういう表情で自分が行動していたのか気になってくるな。


「あ。ひょっとして現理事長の由子さんとも昔馴染みの仲間だったり?」


「なっ……」[美沙都さん、もしかして精神感応魔法テレパシーの使い手だったんですか?!]


「えっ?!」[この子、直接脳内に?! なにこれ面白い]


 結論、勘が良くてノリの良いだけでした。そうだよな、魔導具無しで精神感応魔法テレパシーを使える人なんて、そうそう居ないよな。


[でも使えないとも言ってないわよ?]


「なん…だと…!?」


 その時、俺の脳内でキー○ンやま○さんのボイスが響いた。「後半へ続く」と…。

次回ネタバレ。戦闘らしい戦闘は、ノーマンがあっという間に終わらせてくれます。

「知ってた」という人は、“犠牲”とは何かを予想しながら待っていて下さい。

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