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オタクウィザードとデコソルジャー  作者: 夢見王
第六章 修学旅行 in 沖縄 with 年末年始のイベント
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第01話 - 自家用(?)戦闘機で、音速を超えた空の旅を…

前回のあらすじ。

 少し被害は出したものの、学園祭は無事に終了した。

 しかしその直後、テロの主犯格である教祖アリサから、「来月の沖縄修学旅行、私も同行するから」というとんでもない宣言を受けるのだった。

  ─ 2012年12月21日(金) ─


 爆発騒ぎに手間取った学園祭が終わってから早一月半。

 網谷に頼まれた“天野達が通う秋葉原第一高校の文化祭の手伝い”や、コスプレ衣装貸し出しの際に締結した“由子お姉ちゃんとのデートの履行”などを全て乗り越えた俺の前に、いま新たな試練が横たわっていた。


「渉…。どうしてもコレで行くの? お姉ちゃんも一緒じゃダメなの?」

「分かってくれ、莉穂姉。俺だって本当は、莉穂姉と一緒に行きたいんだ。けど、こればっかりは莉穂姉と一緒に行う訳にはいかない。まだ、コレの安全性が保障されたわけじゃないんだ。だから、諦めて欲しい」


 今にも泣き出しそうな莉穂姉の視線から顔を逸らし、己の願望を抑えつつ、搾り出すように俺は説得を試みる。


「なにしろ、この魔改造F-22“ラプター”は既存の物よりもおかしな加速、機動性能を持っている。どんな加速時の重力(加速G)が掛かるのか分かったもんじゃないんだ。一応、それを軽減するための魔法陣は刻んでいるけど、絶対とは言えない。今回、テスト飛行がてら変則的な動きをしながら沖縄までかっ飛ばすんだ。そんな粗っぽい事に、莉穂姉をつき合わせるわけにはいかないよ」


 俺が先ほどから言っている試練。それは、ついに先日完成した可変型戦闘機、魔改造ラプターの試運転の事を指している。

 もともとは、群馬の研究所の地下駐車場に人型(・・)の状態で立たせていたものだが、俺が義父とうさんに送った設計図を基に調整してもらい遂に完成と相成った。今は籠月こもつき学園の地下格納庫へと俺が魔法で転移させ、ノーマンと共に最終チェックをしているところである。

 それにしても、師匠はこうなる事まで考慮していたのか、だだっ広い空間が学園の地下に用意されていた。

 しかも、格納庫から発進する際は、校庭が割れて地下からエレベータ式に格納庫の一部がせり上がってくるという仕様である。ロボットアニメを見せられて育った俺としては、こういったギミックのある学園というのはワクワクしてしまう。「流石は師匠だ」と、褒めざるを得ない。


「でも、マージちゃんは一緒に行くのよね?」

「あの子は、見てわかる通りすんごい勢いで人体改造されてるし、素の状態でノーマンに張り合えるだけの頑強さがあるから…」


 莉穂姉はまだ何か言い足りなさそうだったが、俺が本気で心配しているという事が伝わったからか納得してくれたようだ。著しく不本意そうな表情ではあったが…。


「痴話喧嘩は終わったのか、BB?」

「失礼な物言いをしないでもらおうか。じゃないと明日、お前だけ緊急脱出ベイルアウトが作動しないよう細工すっぞ」

「フ…、問題ない。そもそも、そんな機能が作動する事態に陥るような操縦はしないし、万が一が起きたところで、俺は泳いででも目的地に着ける自信がある」


 サングラスを光らせながら無茶苦茶なことを言うノーマンだったが、コイツの身体能力なら無理な話ではない。パラシュートが無くても着水、着地時の衝撃は無傷で済むだろうし、方角さえわかれば泳いだり走ったりで目的地に着けるだろう。

 むしろ、そんな事態が起きた日には、真っ先にノーマンとマージちゃんに追いつけなくなるのが“俺”という可能性大である。


「確かに、事故を起きない事を確認するのが本来の目的だからな。明日は頼んだぞ、ノーマン。…で、操縦桿周りの仕様は大丈夫そうか? 操縦席周辺の大きさや配置はあまり変えてはいないが、本来のラプターよりも二回りほど大きくなってるし、この機体専用のボタンやらレバーやらも追加されてるから、問題がありそうな部分があれば今のうちに言ってくれ。作動しないように一時的にカットしとくから」

「その辺は特に問題ないかな。ただ、変形機構の都合で大きくなったのは分かるんだが、なんで座席が操縦席の他に4つもあるんだ?」

「操縦席の真後ろは、俺専用の魔力供給用シートだな。俺自身を魔力タンクとして添え置くための席だ。他3つはサポート要員席。俺だけじゃ魔力供給に難が生じた際のバックアップ用だ。マージちゃんには明日、その席のどれかに座ってもらう」

「OK、把握」


 こうして、俺とノーマンの沖縄旅行前日は機体チェックを入念に行う事で時間が過ぎていった。


 そして、その日の夜11時前。学園の駐車場には20輌近くの大型バスが整列していた。バスのヘッドライトは煌々と輝いており、その光景は圧巻の一言だ。

 これらのバスには学園の全生徒及び、一部の教職員達が乗り込み、6時間ほどかけて羽田空港まで移動する。時間が時間のため交通状況は極めて良好なのだが、生徒達がゆっくりと休めるよう移動速度は遅めなのだ。


「なぁ、もう何度目か分からない上に、今更感が半端ないけど最後にもう一度だけ言わせてくれ。本当に俺達も一緒に行って良いのか? しかも、旅費はタダで」

「おうよ。俺もノーマンもマージちゃんも、別口で那覇空港の世界防衛軍基地に直行する事にしてるからな。座席が余ってるし問題ない。それに、基地の方にも通常よりデカいラプターを収納できるスペースを確保してもらってるし、今更予定は変えられないのさ」


 俺達が魔改造ラプターで直接那覇空港に向かう事が決定した際、座席が3席余ってしまうということで、天野と網谷を折角だから招待してやろうという流れになったのだ。当時から天野は何度となく遠慮していたのだが、網谷が超乗り気だったので俺も由子お姉ちゃんの許可を取り、そのまま現在に至るというわけである。

 まさか移動日当日、それも家族から網谷と揃って外泊許可をもらっており、旅行バッグも準備済みな状態になっても確認してくるとは思わなかったが…。

 天野って、肝が据わったキャラだと思っていたが、こういった棚から牡丹餅ぼたもち的なラッキーにかんしては、無駄に慎重になるタイプだったんだな。


「それに、あんまり遠慮がしつこいと俺にも考えがあるぞ?」

「考えって何だよ…」

「ここに、俺が愛用している透明化ベルトがあります。これを網谷に渡して、天野に抱き着いた状態で効果を発動させるとどうなるか? バスの中で誰にも見られることなく、大声を出しても外に音が漏れることもない、ナニやってもバレない甘い空間が作れ──」

「渉君、是非とも欲しいから貸して下さいお願いします」

「OK、渉。俺はこれ以上遠慮はしない。謹んでお前らの座席を使わせてもらう! じゃ、明日向こうでまってるぜ! さ、行こうか紗友莉さゆり

「あぁ…せっかくのステキ空間がぁ…」


 貞操の危機を感じたのか、覚悟を決めた顔になった天野が網谷を引きり、颯爽とバスの中へと入って行った。

 それにしても、アホな提案をした本人である俺が言うのもなんだが、網谷のやつも手段を選ばないキャラになってきたな。近年よく見る、“おめでた婚”からの「私、普通の女の子に戻ります」宣言を行う日も遠くないかもしれん。天野が搾り取られる生活になりそうで、はたから見ている分には面白そうだ。

 そんな事を頭の隅で考えつつ、順次出発して行くバスを見送り俺達は床に就いた。



   ▲▽△▼△▽▲


  ─ 2012年12月22日(土) ─


 明けて翌朝7:00。地下格納庫にて、俺達は緊急時の装備品を身に着けお互いの最終チェックを行っていた。


「それじゃあ、ノーマン、マージちゃん持ち物の最終チェック行くぞ」

「「おうっ!」」

「各自の旅行バッグ!」

「「よしっ!」」

「いざと言う時のサバイバルキット!」

「「よしっ!」」

「透明化ベルト!」

「「よしっ!」」

「OK、じゃあ各自席について発信準備!」

「「了解ラジャー!」」


 ちなみに、透明化ベルトは通常だと俺とノーマンの分の計2本しか学園に無いが、今回は事前に申請して、軍がテロリストから没収したベルトの1本を借り受けている状態だ。

 万が一、機体を放棄しなくてはならなくなった際、俺達が人目に付かず行動できるようにという目的で装着することになった。問題なく学園に帰還できたら、借りていた分はちゃんと軍に戻すことになっている。


『学園の周囲に人影無し。発進準備OK。格納庫、開きます!』

『了解、マチュア。それじゃ、俺達が居ない間、警備員のお姉さん達と連携してお留守番よろしく!』

『お礼は、帰還後の甘い褒め言葉を所望します』

『……善処しておく』

『期待して待っています。……発進可能、どうぞ!』


 格納庫の開閉をマチュア・コピーが担い、機首がやや上に向くよう床の角度を調整してくれる。

 視界に広がる空は青く、上空からはさぞ良い景色が拝めるだろうと思える絶好の飛行日和だ。


「よし! 防音及び、透明化膜展開……発動確認! 加速G緩和……発動確認! 校庭の周囲、人影無し! 進行方向、機影無し! ノーマン、全力で吹かしても大丈夫だ! 好きに飛び立て!」

「オッケー! んじゃ、遠慮なく……最大加速フルスロットル!」


 ノーマンがそう叫ぶと同時に身体がすさまじい勢いで座席に埋もれ、斜め下に見えていた格納庫の床や校庭の景色が一瞬で視界から消えた。

 体感で10秒ほど経った頃、機体が徐々に水平飛行へと移った。どうやら飛行高度へと到達したらしい。

 速度も最大速度から巡航速度へと落としたのか、先ほどまでの身体が押し付けられるような重力は感じられなくなっている。


「……ふぅ。緩和していてあの重力か…。素の状態で食らったらえらい目にってたんだろうな」

「そりゃそうだろうな。なんせ最大加速フルスロットル時の最高速度は、計器を見る限り秒速2.1kmだったもん」

「ってこたぁ、地表上基準で考えても……音速の6倍強かよ!? たった数秒でマッハ6強に到達とか…緩和してなきゃガチで危険だったな」


 特に身体強化も何もせずに食らって無事だったので、加速G緩和の魔法はかなりちゃんとした効果を発揮していた事が証明された。あとは、離陸時のジェット噴射による轟音がどれだけ軽減されているか、外部からはちゃんと機体が見えなくなっていたのかこれらを帰還してから確認するとしよう。

 とりあえず、機体が変に軋んだりしているといった感じも無いから、このまま飛行しても空中分解を起こすという事はなさそうだ。まぁ、機体強度はノーマンが操縦している限り神力を使って底上げされているので心配は要らないか。

 などと色々考えていたら、左手に三宅島らしき島影が見えてきた。まだ1分程度しか経っていないのに、もう80kmほど飛んだのか…頭おかしいなこの機体。


「ノーマン、このままだと三宅島を突っ切って八丈島まで行っちまうぞ。西に方向転換して沖縄を目指さんと」

「え~? こんだけ速いんだ。今から向かっても20分かからずに着いちまうんじゃないか?」

「いやいや、他の航空機に変な気流の乱れを作るわけにもいかんだろ。一直線ではなく、迂回して行くんだからその辺も考慮しろよ」

「だとしても30分はかからんだろう? 性能実験がてら、寄り道して行こうぜ?」

「俊之の意見にさんせー」


 このお気楽獣耳(けもみみ)娘め。ノーマンだけじゃなく、この席に座っている限り俺達の魔力だってじわじわ減っていくんだぞ。いやまぁ、今のところ気怠さも感じてないから、想定よりも減る量は多くないのかもしれんが…。


「はぁ…、わかったよ。ちょっとだけだからな」

「よっしゃ! じゃあ早速、札幌に向けてレッツゴー!」

「おー!」

「逆方向じゃねぇか! どこが“ちょっと”だよぉぉぉ!」


 俺のツッコミも虚しく、ノーマンは有言実行とばかりに北へと進路を変えやがった。

 そして、他の旅客機に影響を及ぼさないくらいの高度を維持しつつ、若干迂回するような航路で札幌上空屁と到達したのだった。


「ん~。少し遠回りした感じだったが、なんだかんだで10分あれば着くんだな、北海道って」

「いや、普通は無理だよバカ!」

「さぁて、寄り道も済んだし、そろそろ那覇空港の基地へ行こっか。……ところでBB、この機体って気密性とかどうなの?」

「え? そりゃあ、一応宇宙空間でもある程度戦闘が出来るように、気密性とかはバッチリだけど…まさか、お前?!」

「Exactly! 調べるんだったら、もうちょっと空気が無いところでも問題ないかやってみるべきでしょう!」

「おま、また最大加速フルスロットルする気じゃ…うぉっ!」

「ぐっ…う、上へ~まいりま~す!」

「あたしコレ、癖になりそう!」


 俺が言い終わらない内に、ノーマンが機首をほぼ垂直に向けて加速する。

 空の色が変わっていくのを感じながら、「スペースシャトルに乗ってる人って、きっとこんな感覚を味わっているんだろうな」などと思いを馳せる時間を1分ちょっと体験することになった。


 ──そして、およそ30分後。


「伊藤特佐、野間特佐、お疲れ様でした。まだご学友の乗った飛行機は到着していないので、それまでゆっくり寛いでください」

了解ラジャー。では早速だらけさせてもらいますわ」

「あ…ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」


 無事に基地へと着き、魔改造ラプターも格納庫へと入れたものの、そこには両極端な反応をする俺とノーマンの姿があった。


「あの…野間特佐はお元気そうですが、伊藤特佐は酷くお疲れのご様子…。何かお飲み物をお持ちしましょうか?」

「あぁ、いえお構いなく。ただの気疲れなんでしばらく横になってれば回復しますから…」

「は…はぁ、畏まりました。では、本官はこれで失礼致します」


 あのあと、那覇空港上空まで移動するのに大して時間は掛からなかった。なにしろ、ノーマンのヤツが最高速度をキープしたまま成層圏の更に上空──中間圏をかっ飛ばして移動したのだ。

 気流の乱れを気にする必要がないくらい大気は薄いし、そんな上空を飛んでいる飛行物体もまずないから最短距離で那覇上空に到着したのだが、そこからのやり取りに時間を食ってしまった。


 まず、管制塔に連絡する訳にもいかないから基地に直接連絡を取ったものの、地上からは姿も音も確認できなかったせいで誘導に手間取り。着陸した後に、格納庫へ移動する際にも透明化を解除するわけにいかなかったために更に手間取り。基地内に居たラプター好きの軍人さん方から色々とスペックなどを根ほり葉ほり聞かれてゲンナリ。

 そして、今の俺に至る…といった有様である。


「とりあえず、BBお疲れ~。学園の皆が乗った飛行機が到着するまで、まだ2時間以上あるから暫く寝とくといいぜ」

「あぁ、そうさせてもらう…」

「まぁ、皆が着いたと同時に教祖アリサの相手もしなくちゃならないだろうし、しっかり休んどけよ~」

「あ~~~、思い出したくなかった事をこのタイミングで言いやがって!」


 そして約2時間後。ノーマンが言った通り、学園の皆が集まったタイミングで教祖アリサが俺達の前に姿を現したのである。

毎度読んでいただきありがとうございます。


次回も金曜日更新予定です。お暇でしたら宜しくお願いします。

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