第15話 - 学園祭三日目 ~午前の部・敵が本気を出し始めたようです~
前回のあらすじ。
予期せぬコスプレ撮影会が始まってしまったものの、その他にアクシデントが起きることも無く無事二日目の学園祭を終わらせることができた渉達。
侵入してきたテロリスト達の引き渡しも済み、ついに学園祭最終日を迎える事となった。
─ 2012年11月4日(日) ─
パァアアンッ!──
その日、俺達は思い出した。
油断していると、犠牲者が出てしまうという危険性を…。
相手にしていた連中が、暴力を行う者であるという事実を…。
▲▽△▼△▽▲
本日は学園祭最終日。二日連続でトラブルもなくテロリストを無力化していた俺達は、早々に焦りを感じていた。と言うのも、入場ゲートの監視を行っていたマチュア・コピーからの連絡が信じ難い内容だったからだ。
[今日の入場者は、全グループが4人以上での参加だと?!]
[はい。昨日とは異なり、単独での参加者はおりませんでした。本日は7人が侵入予定との事でしたので、2人組、もしくは3人組となるグループを探したのですが、いずれも該当するグループは確認できておりません]
ぬかった。てっきり、馬鹿正直に入場チケット1枚につき1人で侵入してくると思っていたのに…。
昨日の入場状況を、外から観察してた奴が居たんだな。それで、一人で入場するとかえって目立つという事に気付いたんだ。
教祖アリサを崇拝するテロ組織ラスト・ワンには、バカしか居ないんだろうと高を括っていたのだが…甘く見過ぎていた。
学園祭に入場できる上限は、チケット1枚につき5人まで。上限に満たないグループがないか、下田駅周辺で手当たり次第に声かけまくってる網谷ファンの姿が散見されていると、昨日のニュースや夕刊で取り上げられていた。恐らく、そういった連中に声を掛けて、目立たないよう即席のグループを組んで参加したに違いない。
入場してすぐにバラバラに行動したとしても、参加者が多くなる2日目、3日目ともなると珍しい行動でもない。別行動をとったからと言って、テロリストとして見るのは早計に過ぎるというもの…。
[とりあえず、マチュアは怪しい動きをしている人物を探すことに注意してくれ。俺は今から、学園関係者全員に連絡して助力を乞う]
[了解]
マチュアとの魔力通信を切り替え、魔導具を装備している全学園関係者に向けて一斉送信を開始する。
[全学園関係者に連絡します。今日乗り込んできているテロリストですが、昨日までとは異なり一筋縄にいきそうにありません。お忙しいところ恐れ入りますが、身の回りに挙動不審な人物が居ましたら、すぐにマチュアに報告を頂けるようご協力をお願いします!]
[[[[[はいっ!]]]]]
こうして、全員に協力を仰ぎはしたものの、食べ物屋や出店をしているクラスは押し寄せる客を捌くのに必死。警備員のお姉さん方も見回りしてくれているが、人が多すぎて両親と迷子になってしまった子供の世話や、呼びかけの放送を行うなど…どうしても死角はできてしまう。
俺は俺で、ノーマンにテロ掻っ攫い怪人役を押し付け、網谷ファンにバレないよう伊達メガネを外したり髪型を変えたりして見回りの方に参加していた。
そして11時過ぎとなり、いつもであれば爆弾を仕掛ける素振りの連中が出始める頃だなと思い始めた時、それは起きた。
パァアアンッ!──
「なっ?! 今のは、破裂音? [まさか、ノーマン。お前の私室に常備されてるガンパウダーが?!]」
[いやBB、それはねぇよ。火種になるような物は周囲に無いし、そもそもBB特製の頑丈な断熱&絶縁性の入れ物で保管されてるんだぜ? 意図的に中身をぶちまけない限り着火しねぇって。
他にも、暴発の危険性がある弾丸なんかは、サビがないかをチェックしたら必ず空間拡張バッグを通して島の倉庫にしまってるんだ。俺の部屋は無関係だよ]
実際の所、破裂音の原因なんて見当は付いていた。だが、「できれば予想が外れていて欲しいなぁ」と願いつつノーマンに魔力通信を送った次第である。まぁ、即座に否定されてしまったので現実と向き合うしかなくなったわけだ。
そもそも、ノーマンは学園の中で誰よりも火薬類の扱いに慎重だし、保管方法を徹底している奴だから、万に一つもあり得ないとは思っていたけどな。……いつぞやは、朝から目覚ましドッキリとしてC-4を起爆していたが…。
[じゃあ、つまり──]
[あぁ、ついに──]
[[──テロリストが行動に出たか]]
[渉、俊之! 大学棟、ビーチ側の喫煙スペースにて、小規模な爆発が発生しました!]
俺とノーマンがテロリストに対して気を引き締めていると、マチュア・コピーから緊張気味に魔力通信が入った。爆発はあったものの、小規模という事に胸を撫で下ろしつつ被害状況を確認する。
[マチュア、被害状況はどうだ? 最悪、被害者が死んでさえいなければ、ルーン文字を刻んだ俺の本気治癒魔法で何とかなる。被害者や目撃者の記憶だって、催眠魔法を使えばどうとでも──]
[渉、落ち着いてください。先の爆発に於いて、死傷者は出ていません。数人ほど爆発の瞬間を目撃した者はおりますが、巻き込まれる位置でなかった事が幸いしました]
[──ホッ…、なら良かった。……それで、マチュアが爆発物を見逃すってことは、ごく一般的な何かに扮されて設置されていたって事だよな? 仕掛けた犯人の現在の居場所や、爆発物の詳細を頼む]
[はい。まず、犯人ですが──]
マチュアからの報告によると、犯人は現在のところ人ごみのど真ん中に移動中とのことだった。魔力通信で送られてきた映像を見るに、演劇部員がいくら頑張っても、ノーマンをうまく誘導するには無理が生じるようなレベルの人ごみである。
そこで、俺がテロリストと思しき犯人に対し、遠距離から催眠魔法を使用。徐々に人ごみから外れるように思考を誘導させ、演劇部員と協力して怪人に扮したノーマンが拉致&逃亡できるルートをさり気なく作り上げた。
その後すぐに捕獲作戦を決行。テロリストらしき人物を一名、無事ゲットと相成ったわけである。
▲▽△▼△▽▲
「……で。こいつの服を弄ってみたら、マチュアが言っていた“タバコ型爆弾”が出てきたってわけだ」
ひっ捕らえた男を檻に叩き込む前に、荷物や服などを調べた結果。荷物からは“C-4っぽい見た目の粘土ブロック”が、認識阻害の魔法陣が刻まれた入れ物から見つかり、服からは“タバコの箱に黒色火薬が詰め込まれた爆弾”が見つかった。この男はテロリストと見て間違いないだろう。
先ほど喫煙スペースで爆発したのは、遠隔式の起爆装置を取り付けられたタバコ型爆弾だ。俺は持っていた爆弾を裏返し、箱の裏に貼り付けられた起爆装置をノーマンに見せつける。
「なるほど。意識の無い男を弄るか…、BBもついに男の世界に興味を示し始めたってわけだな?」
「ノーマンも気付いただろうが、この爆弾に使われている起爆装置は、今まで捕えてきたテロリストが使ってた“C-4粘土にぶっ刺さしていた物”と同じだ。前々から、『爆弾は偽物なのに、起爆装置は本物なんだな』と思ってはいたが、まさかここに来てフラグ回収するような輩が現れるとはな…」
「フッ…、ツッコミの来ないボケってこんな気持ちなのか。俺、理解した」
怪人姿のノーマンが何かを呟きながら明後日を見て黄昏ているが、俺は意に介さず続ける。
「このテロリストは爆発物を仕込む際、箱の中に一本だけ仕込まれている本物のタバコを取り、箱を尻のポケットにねじ込むフリをしてベンチの下に転がしたんだ。人目からもカメラからも死角になりやすい場所だし、映像を見る限り動作もさり気なかった。まんまと一杯喰わされたよ、まったく…」
「じゃあ仮に、人の良い参加者が『落としましたよ』なんて言って、タバコの箱を手に取った瞬間起爆されたら…」
「少なくとも、片腕は吹っ飛ぶだろうね。運が悪ければショック死だ。……でもまぁ、俺が見たところ、中に仕込まれているのは花火用の火薬をごちゃまぜにした感じのものだな。軽く湿気てる火薬が混じってるから、夏に売れ残った花火を地元の個人商店あたりで見つけて大人買いし、それを分解したんだろう。ノーマンが見てくれればより詳しく分かるだろうが、運が良ければ大やけどで済むかもしれん」
俺はノーマンに返事をしながら箱を傾け、手の平に敷いたティッシュの上に少量だけ火薬を取り出す。
品質をざっと確認したあと、ティッシュとタバコの箱をノーマンに手渡した。
「なるほど。さっきの小規模爆発は、テロリストにとっては運良く爆発した方で、こっちにとっては運良くベンチが一つ吹っ飛んだくらいの損害だけで済んだって事か。……って、怪人スーツを着たままの俺に渡すなよ。静電気でパチッといっちまいそうで怖いわ」
「自然に受け取った癖に…。じゃあ、島の倉庫にぶち込んどくけど、いい?」
「そうしてくれ。火の気もないし、保管状態良さそうだったからな」
こうして、テロリストをひっ捕らえてタバコ型爆弾を見つけ次第、俺経由でトータルエクリプス島の研究施設地下倉庫へと叩き込むという方向で話がまとまった。現在のところ、テロリストが持っている中で一番の危険物だしな。隔離して遠隔操作できなくしてしまうのが確実である。
さて、現在のところ残っている問題は爆発騒ぎの後始末だが、これについては既に手は打ってある。
今頃は、「爆発騒ぎは、大学棟に置いてあった巨大クラッカーが暴発した事が原因」という内容の放送が学園内に流れている頃だろうし。目撃者達に対しては、老化魔法で身体を成長させたマジカルゆかりんが、警備員に扮して事情聴取を行うフリして催眠魔法を掛け、“巨大クラッカーが暴発した瞬間を見た”という暗示を刷り込み済みである。
あとは、今後起きるであろう事件をいかに早く処理するか。できれば、起爆させられる前に対応したいところではあるが、起爆装置が付いているとは言えパッと見はタバコの箱なのだ。
起爆装置が下になるように置かれたり、そもそも監視カメラや人の目が行きそうにない場所に置かれたら、騒ぎが起こらない限り対応も出来ないというのが現状である。何しろ、テロリスト達は日本人に見えるよう認識阻害の魔導具を装備しているのだから、見た目で当たりを絞れないのだ。
また、学園に在籍している生徒の中にはハーフやクォーターの女生徒が居るし、近隣の町に住んでいる人の中にも外国人は居る。仮に魔道具を使われていなかったとしても、参加者に外国人が居るのはおかしくないのである。
まぁ、今のところ捕まったテロリスト達は、軒並み魔導具を使って日本人に擬態していたわけだが…。
いや、今までが簡単に攻略でき過ぎていただけだ。泣き言を言おうと何しようと、テロリストを捕まえて、被害者を出さないように尽くすという点に変わりはない。
「それじゃあ、ノーマン。俺はまた見回りに出かけてくる。テロリストらしい人物を見つけ次第、さっきやった要領で俺が誘導す──」
[渉、俊之。たった今、高等部校舎2Fの男子トイレにて小規模爆発が確認されました。至急、現場付近に移動し、犯人確保の準備に入って下さい]
マチュア・コピーから、魔力通信による事故報告が入る。
まったく、行動を起こそうとした先からこれだ。きっと、俺の顔は今微妙な表情になっていることだろう。
俺はノーマンと顔を見合わせ軽く肩をすくませると、すぐに現場へと向かう為に返事を返すのだった。
[了解][了解]
さて、今度はどうやって周りを誤魔化そうかね…。
毎度読んでいただきありがとうございます。
また、評価を入れて下さった方もいらっしゃったようで、ありがとうございます。
頑張って完結まで書ききれるよう努めていきますので、お暇でしたら引き続き宜しくお願いします。
次回も金曜日の更新予定です。




