第01話 - 始まりは突然に…
はじめまして。今までROM専でしたが、お気に入りの作品の更新を待ってる間に気晴らしで書き溜めていたものを投稿してみました。
物好きな人の暇つぶしになれば幸いです。
※以下の項目にアレルギー反応がある方は閲覧をお控え下さい。(2017/4/12 あらすじに記載していたものを前書きに移しました)
・主役二人が思春期なため“エロい妄想”や“下ネタな表現”を多用する場面が無駄にあります。
・“俺TUEEE”ではなく“俺のダチTUEEE”な話のため、もどかしく感じる展開が多いと思います。
・ハーレムな舞台設定ですが、主役二人にはそれぞれ心に決めた女性がいるので“色んな女性とのキャッキャウフフ”は少ない(予定)です。
・メインの語り手である渉が義姉萌えのため、妹萌えはほぼありません。
・まともに物語を書くのはこれが初めてなので、話の構成や表現に拙さが出ると思います。
・更新頻度の高い投稿が確約できません。
─ 2012年4月20日(金) 08:26 ─
突然だが、日本の中学生あるいは高校生の男の子に問いたい。
あ…男の娘は答えなくても良いです。たぶん、考えたこともない内容だろうから…。
では改めて、日本の中学生あるいは高校生の男の子に問いたい。君らは今までに──
“テロリストが学校に攻めて来て校内をジャック。 そんな中、「チッ、面倒臭ぇ。…だが、久しぶりに暴れてやるか!」といった感じで、過去に特殊訓練を受けていた自分が颯爽と事件を解決! その日以降、全生徒から注目の的にっ!!”
──という状況をシミュレートしたことがあるだろうか?
もし妄そ……シミュレートしたことがあるのなら、そのテロリストたちをどのように排除したのか可及的速やかに教えて欲しい。実は今、割と困った事態になっているのだ。
何故なら──
タタタタタンッ──
「!لا أتكلم!لا تتحرك」
──今まさにアラブったテロリストが、AK-47を天井に向けて発砲しながら教室に乱入してきやがったからである。
まったく、どうしてこんな事に……いや待てよ。よく考えたら3週間前のあの日、俺は何かフラグになりそうな発言をしたような気が…。
▲▽△▼△▽▲
─ 2012年4月2日(月) 21:30 ─
<ヒュインッ!>
「うぉっ?!」
ベッドで微睡んでいた俺の耳に、某スパイゲームの“敵兵に発見さた時の音”が突然聞こえてくる。おかげで、体がビクッとなって眠気が吹き飛び、変に裏返った声を出してしまった。
メッセージに気付きやすいだろうという理由だけでこの音をチャットソフトに設定したわけだが、突然鳴ると心臓に悪いな、これ。
「…ったく“アイツ”め。また下らない話だったら承知せんぞ」
寝起き特有の気怠さを振り払うように立ち上がり、PCが置かれている学習机に移動する。モニターのスイッチを入れ、チャットウィンドウを確認してみると一言だけ書き込みがされていた。
[Mon., Apr. 2, 2012] wrote
(14:30:31) No.Man.
>> BB~
「呼び掛けだけで用件の記載は無し……か。 はぁ、急ぎの面倒事を頼んでくるパターンだな、こりゃ」
この書き込み主“No.Man.”こそ、前述した“アイツ”こと“野間俊之”である。
短髪でオールバック気味な髪型をしているため、おでこがチャームポイントになっている16歳。常にサングラスをかけており、渋さが足りないT-8○○みたいな顔立ちをした少年である。
俺や幼馴染たちからは“ノーマン”の愛称で呼ばれており、チャット名はそこからの引用だ。
尚、メッセージにある“BB”とは、ノーマンが俺に付けた愛称“Big Brother”を略した呼び方である。
どこぞの掲示板に書かれていた“児童向け番組が好きなオタクの大人”を揶揄した“大きいお友達”という言い回しがお気に召したらしく、
「俺より3週間くらい年上で、日曜の0730から0900までの番組を好んで見てるから、“大きいお兄ちゃん”略して“BB”って呼ぶわ」
などとぬかしやがったのが始まりである。
この不本意ながらも的確なニックネームを付けてくれやがったノーマンだが、2年前から世界連合防衛軍の人間兵器として世界各地で勃発している紛争の鎮圧作戦に多大な貢献をしている。文字通り世界を股に掛けて大活躍中の兵士だ。
ちなみに、幼馴染たちには「海外留学に行く」という古典的な理由で誤魔化している。
チャットに表示されている時刻が日本時間より7時間遅れているので、現在はトルコ周辺の国から連絡しているようだ。
ひょっとして、イスラエルに居るのだろうか。
あそこは熱心な信者に人気のスポットがあるから、某RPGの選択肢ではないが「殺してでも うばいとる」といった諍いが昔からチラホラあった地域である。今回も、タカ派な連中を物理的に説得して回っているのだろう。
さて、先ほどノーマンを人間兵器などと紹介したが、ヤツはれっきとした人間である。ただ、戦車を素手でぶん殴るだけでスクラップにできるような人物なので、誰が言い始めたわけでもなく“人間兵器”という二つ名が浸透していたのだ……敵対する側の連中に。
さて、強靭を通り越して最早人外と言えるノーマンの身体だが、これはヤツが規格外な量の“神力”を持ち合わせているために実現されている。
“神通力”とも呼ばれているこの能力は、本来であれば身体能力や、自然治癒能力が並みの人間より優れている程度に留まる。決して人外レベルになることはない能力である。稀にスポーツ業界で目覚ましい活躍をする選手が現れるが、これは限られた量の神力を上手く使いこなしている例の代表と言える。
ところが、ノーマンは膨大な量の神力を駆使し、衣服を含めた全身に神力製の爆発反応装甲を展開することに成功したのだ。
これにより、普通であれば手足が消し飛ぶような攻撃すら、命中と同時に神力を爆発させて弾き、かすり傷程度で済ませることが可能となったのである。攻撃する時も、神力で身体強化しつつ、対象を殴った瞬間にリアクティブアーマーを爆発させることで破壊力の底上げが可能となったのだ。
神力ないし魔力を駆使して身体強度を向上させなければ、リアクティブアーマー自体の衝撃で骨折なり脱臼なりしそうなものだが、ノーマンは素の状態で異常に頑丈なので問題はなかったようだ。
ちなみに、ノーマンがリアクティブアーマーを編み出したのは、「もう二度と服をダメにしたくない」という理由からである。これは初戦闘の際、余裕ぶっこいて私服で敵陣に突っ込み、膝に榴弾を食らったのが事の始まりだ。
食らったのがノーマンだったので体は無事だったのだが、ズボンがホットパンツ状態になってしまい、「危うく股間の大鴉を晒してしまうところだった」などと焦ったのがきっかけらしい。まぁ、少年漫画のように“上半身は破けたが、下半身は無事”という状況は、そうそう起こりえないからな。集中砲火なんて食らった日には、素っ裸間違いなしである。
それにしても、ホットパンツ状態なのにポロリしなかったってことは、絶対にレイヴンなんて名ばかりだと思うんだ、俺。
一つ断っておくが、どんなに神力の扱いに長けた人だろうとノーマン式リアクティブアーマーを展開したら5分と持たないので、間違っても「服を破きたくない」などという理由で使うような技ではない。“○○ルトラ○ン”や“怪○ズバッ○”のような“制限時間付きの正義の味方”にでも憧れない限り、絶対に真似しないよう注意して頂きたい。
しかし、「目には目を歯には歯を」とはよく言ったものだが、いくら武装しているとはいえ“人間”に対して“人外”を嗾けるのはオーバーキルだろう。おかげで民間人にも防衛軍にも、ついでに敵側にも死傷者がほぼ出ていないという話だから、正しい選択だとは思うけど…。
…とまぁ、ノーマンの人外っぷりを語り始めると切りが無いので、いい加減アイツの頼みごとを聞いて話を進めるとしよう。
(21:33:42) Wa.I.
>> へいへーい、どうしたね?
ちなみに、この“Wa.I.”というのが、“俺”こと“伊藤渉”のチャットネームである。安直だがイニシャルからの引用だ。
釣り目気味による雰囲気のキツさを中和するため、フレームが太くレンズの無い伊達メガネを装備している16歳である。ノーマンとの差別化を図るため、髪の毛は女子のショートヘア程度の長さにしている。前髪はセンター分けにしているが、その他は無造作ヘアである。少し寝癖が残っていても、ファッションとして誤魔化そうという魂胆によるものだ。
自他ともに認める重度のオタクであり、手遅れなレベルの姉好きである。
幼馴染やクラスメイトからは、単に“渉”と呼ばれており、“BB”などと呼んでくるのは、後にも先にもノーマンだけだったりする。
(14:34:45) No.Man.
>> BBが居る学園に通いたいから、手配をしてくりゃれ~。
(21:35:10) Wa.I.
>> ……あぁ!地域密着型のお仕事が終わったんですね。わかります。
(21:35:37) Wa.I.
>> で、手配の件だが、うちの学園は特殊だから、俺が手を尽くしても一ヵ月は掛かるぞ?
(14:35:59) No.Man.
>> ありがとう!
(14:37:09) No.Man.
>> BBなら犯(ヤ)ってくれると信じてたぜ!
鎮圧作業の完了報告をすっ飛ばして、復学を頼んでくるあたり実にノーマンらしい。一瞬「何言ってんだ、このデコ助野郎は?」とか思ってしまった。
しかし、今回のお願いが楽な部類で良かった。今までは、
『BBえも~ん。こういう武装が欲しいんだけど、創ってくれない?』
などと、俺を“○○レツ斎”か何かと勘違いしてそうな頼みごとばかりだったからな。俺は天才発明家ではないというに…。
まぁ、試しにやってみたら意外と完成できることが多いので、才能はあるのかもしれないがな。
(21:37:22) Wa.I.
>> ところで、帰国予定はいつ頃なんだね?
(14:39:05) No.Man.
>> 三日後だな。木曜日の夕方着予定だ。
(21:39:11) Wa.I.
>> 馬鹿な!早すぎるっ!
(14:40:20) No.Man.
>> フッ…俺は世界を縮めちまう男だからな。
(21:40:29) Wa.I.
>> おいこら兄貴に謝れ。タイピング遅いくせに!
(14:41:11) No.Man.
>> 俺が遅い?!俺がスローリー?!
(21:41:32) Wa.I.
>> 俺とお前のレスポンスの違いを良く見てみるんだな。プゲラwww
このままバカなやり取りを続けるのも吝かではないが、そろそろ復学について話を進めよう。
メッセージでやり取りすると時間が掛かるため、ビデオ通話に切り替える事にする。チャットウィンドウの隅に目を移し、通信状況がクリアであることを確認。PC側面のフックに掛かっているヘッドセットを装着し、ビデオ通話を開始する。
<ティリリティリリ♪ ティリリティリリ♪>
『こちらノーマン。大佐、聞こえるか?』
某スパイゲームの“無線のコール音”が鳴り響き、繋がると同時にノーマンがいつもの挨拶をしてくる。
「良好だ、ス○ーク。 早速だが、今後の流れについて話そう。まずは──」
俺もお決まりの返答をしつつ本題に入り、帰国後の行動予定、留学したことになっている学校の書類の偽造、学園制服の調達、予習・復習の範囲など、必要事項を詰めていく。そして、内容を復唱する段階で、もう一人手続すべき人物がいたことを思い出して焦ったりと、なんやかんやで気付いた時には午前0時を回っていた。
「──っと、もうこんな時間か。じゃあノーマン、さっきも言ったがこの学校はGW期間がまるっと休みになる。学園側への手続きは、4月末までには完了できるだろうが、HRで二人が紹介されるのは5月7日の月曜になるだろう」
『了解。 そっち側で準備が整ったら、都度メールで報告を頼む』
「あいよ。 でも入学前に一度“マージちゃん”と直に顔合わせしておきたいから、そうだな──」
卓上カレンダーに目を移し、日付を確認してノーマンに告げる。
「──4月末の日曜、22日に下田駅で合流しよう」
『了解。 では前日にメールで具体的な合流地点、時刻を連絡してくれ。俺らの方でそちらに合わせる』
「了解。 では復唱する。 21日、合流場所と時間を俺がメールにて連絡。 22日、現地で合流。 手続きは進展があり次第、都度報告。 以上、問題ないな?」
『大丈夫だ。問題ない』
「お前それ、失敗フラグ…いやなんでもない。 それじゃ、おやすみ~」
『Good night』
通話が終わり、ヘッドセットを戻して思いっきり伸びをする。
ふと目を落とすと、さっきまでのやり取りをメモしたタブレットが目に映った。改めて見ると地味に面倒な作業のオンパレードである。何が「楽な部類で良かった」だ。二時間半前の自分を引っ叩いてやりたくなる。
また暫くは忙しい日々を過ごす羽目になりそうだ。
「ふぅ…“マチュア”、問題はなかったか?」
「えぇ、渉。こちら側にもノーマン側にも不正アクセスの痕跡無し。今回も安全でした」
PCの方に顔を向けながら問いかけると、機械合成された声で反応が返ってくる。
このマチュアは、俺と師匠、そして義父さんの三人がかりで、数年を費やして完成した人工知能だ。俺たちからすれば、娘のような存在である。
本来であれば、マチュア専用の自立稼働型ボディもあるのだが、現在は諸事情により俺のPCでサポート役に徹してもらっている。情報収集から、不正アクセスへの迎撃行動まで任せられる頼もしい相棒だ。
ちなみに、ここまで高性能なAIは俺たちが知る限り他に存在しない。そのため、防衛軍でさえも一部の関係者以外には存在が秘匿されているほどのOTの結晶である。
「なら良し。 ところで、聞いていただろうけど、今回はマチュアの力を色々頼ることになると思う。すまないが──」
「水くさいですよ、渉。 貴方は貴方で、学生としてもやるべきことがあるのですから、こういう時は遠慮なく頼ってくれて良いのです。 そのために、私はここに居るのですから」
「──ありがとう。頼りにさせてもらう。 本当、実によくできた娘だ」
頼みごとばかりしてくるノーマンと比べて、なんて暖かい言葉をくれるんだ。子供に親孝行された父親というのは、こういう気分なのだろうか。
…いかんな、目頭が熱くなりそうだ。
「できればそこは、頼りになる妻と言って頂けると…」
「世界中探してもAIと結婚できる文化はないから、それは無理カナー。イヤーザンネンダナー」
「では、そういう文化ができれば、私を妻と認めてくれるとっ?!」
「さっ、明日から忙しくなるぞ~。AIとはいえ、マチュアもしっかり休めよ~。おやすみ~」
「もぅっ!意地悪っ!」
マチュアの文句を聞き流しながら、さっさとベッドに逃げ込む。「三十六計逃げるにしかず」だ。
それにしても、どうも最近マチュアの父親好きが加速してきた気がするな。敢えて棒読みにしたのに、食い下がってくるし…。
前述の説明から予想できる通り、この学園内でマチュアの存在を知っているのは俺だけである。当然、会話できる相手も俺だけだ。人間同様に会話できるほどのAIなので、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていたのかもしれない。
今度のGWにでも“師匠の研究所”に戻って、他の人とのコミュニケーションを取らせてやるか。
そういえば、“マージちゃん”は学校なんて初めてのはずだ。ノーマンに“べったり”という話だが、他の人とも仲良くできるだろうか。
ここには俺しか男子が居ないから、ノーマンを巡って修羅場にならないか心配だなぁ…。
「はぁ…。 何も起きなきゃ良いけど…」
「何か心配事ですか?」
「いんや。なんでもないよ。 じゃ、今度こそおやすみ…」
▲▽△▼△▽▲
─ 2012年4月20日(金) 08:27 ─
…あ。たぶんこれ、テロリスト無関係なフラグだわ。
一話ごとの文字数は5000字以上、7000字未満を目標に投稿予定です。
今回は、4話分まとめて投稿します。