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異世界転移? 嘘だろ……神様死んじゃったよ

 少女が天から落ちてきた。

僕はその事実にどうして良いのか分からず、硬直する。

硬直していると、少女は地面に突き刺さるようにして落ちた。

地面には小さなクレーターが出来てしまっている。


 心配になり、瞬時に駆け寄る僕。

だが、そんな心配は必要なかったようで、少女は僕が駆け寄るより前に、むくりと起き上がり、そして何事もなかったかのように僕のほうを見た。


 何だろうと思い僕も少女を見る。

少女の美しさは近くで見るとより際立ち、僕は顔を赤くさせながらも、一生懸命に少女の無表情な表情からなにかを読み取ろうと努力した。


「普通……」


すると少女はそう呟いた。

普通……何が普通だというのだろうか。


「あなたは普通すぎる。なぜ選ばれたのか謎」

「はい?」


訳の分からないことを淡々と少女は話す。

頭を打ったせいで狂ってしまったのだろうか?


「狂ってなどいない、私は正常。今から端的に用件を伝える。あなたは大人しく聞いていればいい」

「は、はぁ……」


そう言って少女は黙々と訳の分からないことを述べていく。

理解力に乏しい訳ではないけれども、訳の分からないことをいっぺんに言われても理解できる訳がない。


「理解力に乏しいあなたのために復唱する」


すると、少女はそう言ってまた同じことを述べ始めた。

だから理解力に乏しい訳ではないんだけどなぁ……。

まあとにかく、二回聞いてやっと分かったことは、『僕が死んでいるということだ』。


「へ?」


僕はそんな間抜けな声を出し、驚きの表情に顔を変える。


「僕が……死んでいる?」

「そう、あなたは月の欠片に当たって運良く死んだ」

「どこが運良いんだよ……というか本当に?」

「イエス、本当に」


ということは僕は今、幽霊なのか……。


「そう、幽霊」

「冗談……」

「ではない」

「嘘……」

「でもない」

「本当……」

「に」


言おうとしたことに先回りして返事を返される。

いったいこいつは何者なんだろうか?


「それでお前は?」

「神様」

「なんで僕の前に現れたんだ?」

「月の欠片に当たったから」

「なにが目的だ?」

「あなたを異世界に転移させること」


僕は少女の訳の分からなさに困惑するしかなかった。

神様に異世界に転移だなんて、そんなのまるでアニメか漫画じゃあないか。

そんなことが本当にありえるのか?


「あなたのやるべきことは異世界にて魔神を倒す。ただそれだけ」

「魔神……?」

「そう、私たち神と敵対する者」

「はぁ……でもお前らも神様なんだろう? お前らが魔神と戦えばいいじゃないか」


なんで月の欠片に当たったくらいで、なんの取り柄もないごく普通の高校生である僕なんかが魔神という名前からして物騒なこと極まりない奴と戦わないといけないんだ。


「それは出来ない。魔神により神の力のコアとなる神聖石を壊され、今現在、神の力は通常時の十分の一も残っていない」

「はぁ……でも僕だって普通の高校生なんだぜ? 倒せる訳がない」

「だから私たち神はあなたに神の力を与える」

「神の力?」

「そう、神に残った十分の一の力を全てあなたに託す」


そう言うと、神様の少女は僕の心臓辺りに手を向け、何かぶつぶつと呟き始めた。

すると、その手は段々と光輝き、綿毛のような光の光線が僕の心臓辺りに入っていく。

胸が熱くなり、鼓動が早くなる……。

そして身体中に無限とも思えるような力が湧いてくる。

頭は冴え、身体は軽い。

まるで生まれ変わったかのような気持ちになる。


「こ、これが……神の力」

「それでも十分の一、あなたには異世界に行ってもらい、数多の魔物を倒してその力を成長させ、いずれ魔神を倒してもらう」

「成長なんてさせれるのか?」

「可能、むしろ私たち神は神であるが故に成長というものが出来ないので、伸びしろのある人間のあなたにしか出来ないこと」


そう言うと神様の少女は光輝き、段々とその姿を薄くしていく……。


「え? どうしたんだよ」

「あなたに力を託したから、私は死ぬ。ただそれだけ」

「え、そ、そんな……!」

「魔神を必ず倒して」


少女はもうほとんど消えそうな身体で、僕の瞳をしっかりと見つめながらそう言った。

僕も少女の瞳を見つめる……。

少女の願いがこもった瞳を見て、僕は慌てている場合ではないと思った。

少女に意思を伝えるべきだと思ったのだ。


「わかった……僕は魔神を倒す」


心から絞り出したその言葉を少女に伝えると、その少女は無表情を崩してニコリと笑い「ありがとう」と、涙ながらに言った。

少女は消える……消えていく。

なんの未練もなさそうに、消えていく。

そしてそれを見ていると、僕の周りに光輝く魔法陣が展開された。

虹色の輪のようなものが僕の周りを回転しながら、その光をより強めていき、僕が思わず目を瞑った瞬間、身体に浮遊感を感じた。

それに驚き目を開けると、僕は空を飛んでいた。

段々と浮いているのである。

空高く、宇宙にまで行ってしまうのではないかと思えるほどに僕は浮いていき、やがて吸い込まれるようにして、僕は謎の空間に飛び込んだ。

すると奇妙な感覚に襲われ、視界が段々と狭まり、意識が朦朧とする。

気絶しそうになりつつも、なんとか意識を保とうとしたが、やはり堪えきれず、ついには意識を失い、世界は輝きを失った。



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