冷静になってみる事の重要性
「書いている時のテンションって高い方か?」久々に古谷の方から切り出す。
「私はノーマルですけど、古谷さんひょっとしたら高いんですか?」烏丸が疑問を口にする。
「書いてる時は『コレ行けるじゃん、面白いじゃん』ってなって書く」
「その後どうなるんです?」
「翌朝モニターを見て『何書いてんだ自分』ってなる」古谷の目が遠いところをみている。
「ランナーズ・ハイならぬライターズ・ハイですか」自分にはあったかな、と思い返すも彼女には今ひとつピンと来ない。
「意外だな、普段のテンション見たら結構大騒ぎしながら書いてると思ったのに」
「人を見てどんちゃん騒ぎするかのように言わないでください、私もいい年なんですから」
「いい年になって書いている小説は何だっけか」古谷は揶揄するような言い回しをした。
「現代異能が若い人専用の文化というのは納得いきませんって!」烏丸は身を乗り出して食って掛かる。
「読者層の話だよ、お爺さんお婆さんが手には取りにくいかなと」なだめるように古谷は制した。
「古谷さんのお爺さんの愛読書って何ですか?」
「……愛読書とは違うが、この前TRPGのルルブを読んでた。現代異能でした、ゴメンナサイ」
ほらねーと得意げな烏丸。
「いや、ウチの爺さんが特殊なだけであって」
「しょ、少量でも需要は有るんですし……」烏丸は目を逸らす。