会話のキャッチボール(物理)
「キャラクター同士の会話が噛み合っていない、というのは逆に表現しにくいですよね」烏丸がキャラの設定を前に悩む。
「バトルの描写以外にもキャラが立つ立たないは結構重要よな」推理だと、特に極限での性格を描く必要があるしと古谷は付け加える。
「会話は時々キャッチボールに例えられますよね」
「いきなりボールがあらぬ方向へ飛び出し始めたな」
「私球技の類がとても苦手で」
「変化球すぎる話題のつなげ方だよ!」
ただし、烏丸が大学で所属しているのはバドミントンサークルである。
「バドミントンは打てるのか?」
「スマッシュでチームメイトを攻撃する程度には」烏丸が頭を抱えながら呟く。
「もしよろしければ、今喫茶店にミットとボールが有りますが」話を聞いていた衣川店長が、両手に野球道具を持ってやって来た。
「なんで喫茶店に野球道具を……?」烏丸の疑問は当然である。
「衣川店長だからだよ」古谷の回答も、彼にとっては当然であった。
――――
喫茶店の駐車場でボールを持つ烏丸と、やや屈んでキャッチャーミットを付ける古谷。
「それじゃー行きますよー」
「ほいきたー」
烏丸は全身の力を持ってしてボールを投げる。
烏丸の投げたボールは、古谷の手元を大きく下回り。
古谷の腹を斜め上に叩きつけた。およそ60°。
互いに呆然とした顔をする。
2秒と経たずに、古谷はドウと倒れこんだ。
その後、古谷は烏丸にボールを渡さなくなったという。




