◇8 別+落物+交換会
いつの間にか普通に談笑している古谷と高磯を、横目にみつつ烏丸はメールの一文を見ていた。
「from:辰巳兄 ゴメン、仕事の用事で急に出回りになったので後はご自由にお願いします、つけにしといて」
携帯電話に『怒り測定機能』とかあれば、烏丸の値は恐らくスカウターがぶっ壊れるほどに上昇しただろう。握りしめた携帯で、返信をする。
「to:辰巳兄 トイチでなら考える(10日ではなく10時間)」
ため息一つ、まあ仕方ないと烏丸は考えなおす。これで古谷のプレゼントを考慮する時間が増えたというものだ。来年には兄と同じく社会人になる身だから大目に見よう、となるべく自分に言い聞かせる烏丸であった。
気が付くと、席で話していたはずの2人はいない。ヤレヤレ、と思いつつ烏丸はお代を払って店を出た。
◇
「……どれもしっくりこないなぁ」店を巡りつつ独り言をする烏丸、彼女が今まで巡ってきたのは服屋であったり小物品であったり。そもそも余り相手の嗜好を知らなかった。
「強いて言えば、甘党ではあるけど」流石にサトウキビを贈るわけにもいかない。
どうしようかな、と烏丸考えていたとき、ふと目の前にハンカチが落ちてあるのに気がついた。
誰かの持ち物ですか、と拾い上げて尋ねるもなかなか落とした人が現れない。
数分経って、こりゃ仕方がないなと交番を携帯で探し始めた時。
「あの、すいません」背後から声。ハンカチの落とし主だろうか、と振り向く。
喫茶店で見張っていた高磯だった。
一瞬固まる烏丸。
「あ、これアナタのハンカチですか」動揺がばれないように烏丸は平静を装う。
「一緒の喫茶店にいましたよね?」会心の一撃。
「あ、あれ、そうでしたっけー偶然ですねー」
「古屋君の知り合いですか、チラリと見られてたみたいですけど」
烏丸、撃墜。
「ば、ば、ば」バレてました、と言う前に、
「馬刺しソーダ」まさかのボケ、高磯。
「そんなカクテル無いよね!?」
「古屋先輩の友人なら信頼できますよね」とツッコミ殺しの直後、差し出したのは名刺。
「有難うございます、申し訳ないけど急ぎの用事で。聞きたいこと有ればメールお願いしますね」
立ち尽くす烏丸。
名刺には、彼女の所属であったりその事務所の住所があり、裏には走り書きのように個人アドレスがあった。




