#1 古谷と高磯の高校生活
高磯にとって、キッカケはなんだったのだろうかはよく分からない。気がつけば幼い頃からクラスでは悪目立ちする方であった。いつの間にかクラスの中心人物からは理不尽な扱いを受け、時には無視され、あざ笑いの対象になることが多かった。彼女にとって、物語は自分の境遇を忘れる対応策の1つだった。
高校に上がった時も、同じ学級の中には出身校が同じ人物がちらほら。彼女にとって、周囲から酷い対応をとられるであろうことは予測が出来た。言ってしまえば、彼女自身にとってこの事はもう辛いことでも何でもなく、ただただ面倒に思えるだけであった。
放課後。高校の部活を見て回ろうと早速周囲の人間とつるみ始めるクラスの人間たちを横目に、高磯はさっさと下校しようとする。どうせ私は貧弱な体だ、運動部も誘ってこないだろうし文化部はもとより勧誘しないクチだろう。そう思って下駄箱から靴を取り出す。
「お早いお帰りだな、部活とか見て回ったりしないのかい?」
……声をかけられた。
「私は部活とかには参加しない予定なので」
「お固い部活じゃないさ、2週に1回の参加でオッケーの文芸部」そういった文芸部の先輩。
「ブラック企業の呼び声みたいですね」とは言いつつ、文芸部という言葉には惹かれた。
自身は今までずっと物語を読む方、そんな物語を作る側に回るのはどういったものなのか。
「まずは見学からお試し下さい、ってか」名札には『古谷修一』と書かれている。
「前回の文集か何かありますか、家に帰って読んでみたいので」
まじか、よっしゃ行ってくると古谷は駆け出していった。




