8 相談、茶々
「自分の書いているモノが批判された時、どう対処する」要は、古谷が聞こうとしていたのは烏丸の問題である。
『書くこと』が商売である卯島にとっては、その質問は意味を成さなかった。
「何か、あったのかしら」
「……違う」あまり烏丸自身のことについて、古谷は振れ回りたくは無かった。
「批判そのものは致し方無いことよ、誰かに賛成するってことは誰かに反対するってこと」
「悪意だったらどうするんだよ、向けられた悪意はどうすればいいんだ」縋るように古谷は質問する。
「仕方がない、という他無いわね」
全身の力が抜けてしまったかのように、椅子に倒れこむ古谷。
「古谷君自身の問題では無いでしょ?」分かっていたかのように問いかける卯島、いや分かっていたのか。
「評価と同じように散々批判の類は食らってきたもんね、今更ソレがこたえるわけじゃないでしょ」
「初めっからお見通しってわけですかい」諦めたように古谷は言った。なるべく広くは明かしたくは無いんだけど、と付け足す。
「君自身の問題であれば、助力はする。でも君の問題では無いなら私からはどうしようもないわよ」
「……何でさ」自分の発言が、駄々をこねる子供のようだ、と古谷は思う。
「古屋君自身の問題は、そのまま私にも関わってくるわ。もちろん毎週のエッセイとしてね」
一旦コーヒーに口を付ける卯島。彼女もあまり苦いものは苦手で、ミルクを大量に入れてもらっていた。
「だけれども、君の友達の問題は私には解決出来ない。いや、もしかして彼女かも」
「無い、アレが彼女とか絶対無い」思い返す時間もなく、一瞬で噛み付くように言い返した。
「全力で否定するあたりが却って怪しいのよ、これは私の勘が告げてるわ」ニコニコとした笑顔の卯島。
うるさいやい、と噛み付く形で古谷は反撃した。




