7 原点、計略
烏丸自身にとっての小説の振り出しは、多分ここ以外にはない。久々に土日に実家に戻り、祖父の家の探索をすることになった。
「うっおう……何度見ても汚い部屋ですねえ」と、いまだに畳部分が見えない部屋に向かって愚痴る。
「一応」という形をつけるかもしれないが、烏丸自身にとっての小説を書き始める原点は、間違いなくここにあると彼女は確信していた。再び清掃作業に精を出す。
冗談半分で集めたのであろうタロットカードや、さほど年代の古くもないような硬貨や紙幣。タロット占いの本も隣にあったが、そんなに本自体がめくられた形跡も無い。そんなに占われてなかったのだろう。残りは恐らく、その時その時で流行っていた小説やCD。
それらを片付けつつ、時には山に埋もれながら烏丸はぼんやりと思っていた。
『初めに、おじいちゃんが小説を書こうとした理由は何だったのだろう』と。
――――
座りながら今日集めたぶんのページを一旦まとめている烏丸。その時、頭上まで積み上げられていた本からカサッ、と音がして烏丸の膝のあたりに紙切れが一片落ちてきた。中身を思わず見てしまう烏丸。
『この落書きを みて 振り向いた瞬間 お前は』
「……つッ!」思わず驚き、足を伸ばす。足を伸ばした先には散らばった紙、空を切る烏丸のかかと。
うぇっ、とひっくり返って胴体から床に体を打ち付けてしまった。我ながら全く可愛げのない声をだすな、とある意味冷静になってしまう。痛みで暫くUの字になってもだえ苦しむ。
「うぉぉ……おぉう」結局何が書いてあったのかを見直そうと折り曲がっていた部分を開いた。
『やーい、ひーっかかったーひっかかったー』
無言で破く。2,4,8、16分割。ついでに1枚削って17分割。窓からぶん投げようと思ったが近所迷惑になるので、薪を燃やすための火種にでもしてやる、と心に誓う烏丸であった。
ここまでひどくしてやられると、かえって笑いたくもなる。そもそも見てもらえるか分からないのにこんな小説を書いたりこんな罠を仕掛けたり、本当に下らない。
「アハハハハ……ハァ」
下らないか、と烏丸は畳に寝転び、天井を見上げたまま思った。痛みはまだ続いたままだったが。




