1 批判、暗転
深夜近く自分の下宿で、寝る前に――あんまり体には良くないことを十分理解はしているものの――烏丸はワープロに向かって今日の分の原稿を打ち込んでいた。可能な限り、自分達の書いていく小説を世の中に出していく。これは古谷と2人で決めたことである。世間に出す、という前提の元書くことでより良い作品にしようという心がけ、というのは烏丸にとって結局口実であった。何とはなしに、こうして世の中に書いて出してしまったほうが小説としてあるべき形だと烏丸が思ったためである。古谷の意図は正確に確認してはいない。
ふう、と溜息をつき烏丸はキーボードを打つ手を止めた。その時、烏丸の目に「感想が書かれました」という文字が映る。通常は感想をもらえることもなく、アクセス数だけでやきもきしがちな烏丸にとって心躍る瞬間であった。
しかし、瞬時に彼女は青ざめる。
「読みました。はっきりといって、酷い小説だと思います。あなたには小説を書くということが向いていないのではないでしょうか。このまま執筆を続けるのは無意味です、一度推敲か消去をお勧めします」
鼓動が早まる。動揺、焦り、恐怖。表すことが出来ない感情に一瞬烏丸は、座りながらにして立ちくらみのような感覚を覚える。しばらく画面を見つめて、マウスもキーボードも動かすことが出来ない。
かなりの時間を置いてから、吐息と共に烏丸はウィンドウを閉じた。
「ようやく批判らしい批判が来ましたね、私も有名小説家です!」普段古谷に見せるような、相手を笑うための作り笑顔を一瞬浮かべる烏丸。しかし、その発言とは裏腹に、頭をすぐにうなだれてしまった。やがてそのまま、逃げるようにして電気を消して布団に潜り込んだ。
…………眠れない。




