5 事実は小説よりも奇なり
「そうは言っても、ご都合主義とでも言いたくなるようなことが現実には起こることはありますよ」
「戦時には時折恐ろしいほどの戦果を上げてしまう人がいたよな」
「戦闘機乗りが30回撃墜されてしかも生き延びたりですよ」
「日本じゃ難しいかもね、空母艦から出てしまえば真下は海だし……いや陸のほうが危険じゃないか?」
「どっちもそう危険度で言えば変わりませんよ、一回の生存率に30乗したらどちらも恐ろしいことになります」
「だよなぁ……」
二人して飲み物を口にする。流石に今日はクリームだけを注文することは無かった。代わりにキャラメルだったりミルクだったりを全力でかけていたが。
「小説なんて自由に書いて良いものさ、昔の人だってハーレムもの書いてたんだから」案に源氏物語を指す古谷。
「あれは別にハーレムものじゃ無いですよ!」何故か語気が強まる烏丸。
「アンタの時代小説好きは分かってる、正しく言えばあれは連続ドラマ小説」慌てて古谷は訂正した。
「その解釈はギリギリアウトです」
「何がさ?」
「まずは読んでみてください、読めばわかります」
「『指輪物語』級の長編をいつ読めばいいんだよ……」
「一日で読破という奇跡を私に見せてください!」
「出来るかよこのおバカ!」
「あ、店長さんシロクマお願いします」烏丸、いきなりの注文。
素早くエプロンを置き、買い出しに出る衣川店長。
「……ある意味、店長は小説よりも奇な行動をしてるかも」
「補給係として伝説になるかもしれないですね」
「買い出しに行かせておいて、挙句の果てに補給係と呼ぶか」
「補給は大切じゃん?」
「アンタそれもやってたのか」
「単婚派なので、装甲空母の方とカッコカリ状態です」
「ああ、胸の大きさ的に」全部を言い終わる前に烏丸にノートで叩かれた。