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タイトルは「小説の書き方」  作者: ドライパイン
4 古谷の筆は進まない
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ξ 水到渠成

 烏丸の様子を見るのと一緒に――ついでというのも申し訳ないと古谷は感じたものの――烏丸の叔父からの勧めで書店で本を購入した。禅についての本らしい。そういった程度のことしかタイトルだけでは分からなかった。自分の部屋に戻ってから読むと、本の中には禅の言葉が表す格言的な意味合いが書かれていた。

「水到渠成……ねぇ」

 水到渠成すいとうきょせい。学問を身につけると徳も備わり、物事は手を付けなくても自然とあるべき姿に変化する。転じて、この本では無心に努力することが良い結果を生む秘訣であるといった旨が書かれていた。

「叔父さんには悪いけどさ」言い訳のように、一人読んでいる本を置き呟く。ポケットの中にあるラムネ菓子を取り出して、口の中で転がす。酸っぱさが先に来た。

「方針の見えない努力は苦手なんだ」そうはいいつつも、ふと古谷は昔自分自身が小説を書いていた時を思い出す。

確かに、テーマで悩んだ。ストーリーで悩んだ。出すキャラクターの個性や特技に悩んだ。思い通りに文章に表すことが出来ないことに悩んだ。だけれど、書くことに悩んだことは無かっただろう。

「別に昔は、書くことを努力とは思っていなかった、ってだけなのかね?」

 当時のノートが手元にあったので、古谷は軽く数ページを斜め読みする。烏丸も驚くような乱れた字がそこにあった。

「荒れてるなぁ、昔の僕。烏丸のことは言えないわ」中途半端な苦笑いを浮かべる古谷。しばらくノートをめくり続ける。

 ……かっこいいことはいえないけど、石の上には3年座らず、座布団を敷けと思うけど。

 もうちょい、がむしゃらにやってみようか。再びノートに向き合い、古谷はペンを握る。

――

 書き始めて数十分、メールが来た、例の新聞紙の編集者である。

『件名:急ぎの用事になりました

 本文:こ〃めωらぃUゅぅσけ〃ωこぅちょぅた〃ぃ』

「……」このメール無視してやろうか、と思う古谷であった。

 

次回、再び日常(?)編

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