ε 書店員烏丸の現状報告
「そういえば、例の小説はどこまで進んでる?」妹のテストを一通り見て時間を潰してから古谷は尋ねた。
「あら、その確認の為の視察でしたか」
「本店調査か何かみたいな扱いは勘弁してくれ」
「適当な感想を言ったら倍返しですよ」
「その流行語はもう流行らない、しかも何をどうやって倍返しするんだよ」
「ス○ブラで」
「烏丸サンめちゃくちゃ強いだろ勘弁して下さい」ちなみに烏丸妹も強い。
「じゃあマブ○ラで」
「それはバッジおはじきゲームだろうがジャンル違うわ!」
――
「プロットの作成が終わって、そこに入れる小さい出来事を今考えている最中なんです」烏丸が大学ノートのようなものを自分の鞄から取り出して古谷に見せる。
「……」見せられた古谷は沈黙する。
「どうしたのさ?」と烏丸妹がノートを見てみると、そこには読解不能な文字が広がっていた。
「何これ、宇宙語?」思わず妹がこぼす。
「前見た時は普通の字だと思ったんだが」問い詰めるように古谷が聞く。
「……昨日はサークルで飲み会があってですね、その飲み会の酔いの勢いで書いたものがこちらになります」
「3分クッキングみたいに言われてもちゃんとした文字は出てきませんが」古谷が圧のある言い方をする。
「ゴメンナサイ、別のページはまともですから!」といってペラペラめくる烏丸。
「……いや、部分部分でミミズが張っているような字が見えるんだけど」一方妹は姉の失態を見逃さなかった。
「そ、その日は眠くてですね! なんとか書こうとしたらこうなってしまったんですよ、それにほら国会には速記者がいますからそのスタイルをとってですね」
「解読できるの?」と妹。
「出来ませんけど」あっけんからんと姉。
「昼寝をきちんと取らないからこうなるのだ……」何故か睡眠の重要性を説く古谷。
「何を普段の昼寝を正当化しようとしてるんですか、叔父が店番中寝てるの古谷さんのせいですよ!」
「2人共不思議な会話をしますねぇ……」と英語の分からない古谷妹は思う。




