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2.小説にもハードルがある
「僕は中学1年の頃背伸びして『坊っちゃん』を読もうとしていた」昔読んでいた本の話し合いについて、古谷がそう答えた。
「もう中二病に入ってたんですか」あんまりな回答を返す烏丸。
「多分山月記あたりの影響な気がする」あまり意に介さない古谷。
「どちらもあまり中学ではやらないような気がしますけど……」
「漫画で読めればもうちょい続いたかもな、前半読んだ当たりで力尽きた気がする」
「飽きっぽいんですか」
「坊やだったからさ」やれやれとでも言いたげに昔の自分についてぼやく。
「でも本も年齢層ってありますよね」
「上限というのはなんとなく想像しやすいけど。幼稚園児あたりに『吾輩は猫である』は読めないだろうから」
「『100万回生きていたネコ』の方が読まれるでしょうね。でもある本を読む年齢層にも上限はあると思いますよ、絵本や漫画は大人に触れにくいかと」
「家の爺さんは昨日僕が引っ張り出してきたスーパーマリオくんをみて年甲斐も無くゲラゲラ笑ってた」
「あらお若い」思わず笑った顔になる烏丸。
「笑いすぎて入れ歯が外れてた」
「あらお若くない」何故か笑顔が増した。